2009年4月29日水曜日




1年半前に海に浮いているところを娘が拾ってきたアカミミガメ。


あっという間にでかくなった。






デフォルト発生のモデル化

 共変量X(u)が一般の確率微分方程式に従う場合には、X(u)の振る舞いを知るためにはモンテカルロ・シミュレーションに頼らざるを得ないことがある。確率微分方程式の数値解法についてはKloeden and PlatenのNumerical Solution of Stochastic Differential Equationを参照。

 しかし、高格付け債ではシミュレーションで発生させたパスがデフォルト領域に到達するのは非常に稀。何の工夫もしないモンテカルロ・シミュレーションで累積デフォルト確率を推定すると、計算負荷が膨大になり、推定誤差も大きくなってしまう。

 推定精度を高める工夫の一つとして分散減少法を考えることになるが、デフォルト領域に到達する確率が大きくなるようにギルサノフの定理を使って確率微分方程式のドリフトを調整するという技術が開発されているそうだ。

Tanaka, H., "Application of an Importance Sampling Method to Time-dependent System Reliability Analyses Using the Girsanov Transformation," Structural Safety and Reliability (Proc. of ICOSSAR'97), Vol. 1, pp. 411-418, Balkema, Rotterdam (1998).


Nigel J. Newton., Variance reduction for simulated diffusions
SIAM Journal on Applied Mathematics Volume 54 , Issue 6 (December 1994) Pages: 1780 - 1805 Year of Publication: 1994 ISSN:0036-1399

2009年4月18日土曜日

深い考察

深い考察をしないで宿題を出したところ、「それで何が説明できるのかについてあまり深い考察がされていないと感じました」と、見事に指摘されてしまった。

悪い癖だなぁ。昨年もよく指摘された。時間が無くなって、適当にやってしまうのね。

問題の意図をきちんと汲み取って、深く考察するようにしないといけない。これでは娘の受験勉強といっしょになってしまう。

「深い考察」を今年のテーマにしよう。深い考察をするためには、無駄な時間を省いて深く考察するための時間を確保しないと。

2009年4月16日木曜日

マルチンゲールによる確率論

 ゼミでBrennan and Xia(2002)のDynamic Asset Allocation under Inflationを取り上げて発表した。まだまだ消化不良だが、1年前は、この手の連続時間モデルにはさっぱり歯が立たなかったことを思うと、ICSで鍛えられたおかげで、「この手の論文を理解できるようになる」という当初の目標は達成できていて、非常に手応えを感じる。ありがとうICS。

 この論文の基本的なアイディアはCox and Huang(1989)のマルチンゲール・アプローチである。動的な問題を予算制約によって静的な問題に変換し、価値関数にかわって最適な投資額が未知となる。静的な問題は標準的なラグランジュ法で解くことができる。

 パラメーターの推定はカルマンフィルターによる最尤法である。連続時間のモデルになれてくると、モデルの記述がすっきりしていてロジックが分かりやすくなる。

 Brennan and Xiaの手法は、修論で使うモデルの候補のひとつになる。もう一つはCampbell and Viceira(1999)。Campbell and ViceiraはEpstein and Zinの再帰的効用関数を離散時間で近似して解いている。

 この調子で確率論を強化したいと思ったので、oazoの丸善で「マルチンゲールによる確率論」D.ウィリアムズを買う。この本は、数学をきちんと勉強してきていないオレでも分かりやすい。ついでに微分積分の強化のために「解析概論」(高木)も買う。

 秋学期に(無謀とは知りつつ)統計科学の数理と金融数理を取りたいと思うので、今から修論をきっちり準備しつつ、統計と金融数理の準備もしていきたい。

2009年4月11日土曜日

命題、公理・定義・定理

命題 proposition

 1つの判断または主張を表す文章で、それが真であるか偽であるか判定できるものを命題という。

公理 axiom、定義 definition、定理 theorem

 数学の命題の証明には、いくつかの事柄を使い、それらの事柄の証明にはさらにまたいくつかの事柄を使う。しかしどこまでさかのぼってもすべての事柄を証明しつくすことはできない。そこでいくつかの基礎になる事柄を無条件に前提として認め、これを根拠にして推論を進める。このように、推論の基礎として用いられる命題を「公理」という。公理または既に正しいと認められた事柄をもとにして新しい結果の正しい理由を説明するのが「証明」で、証明された事柄のうち重要であとの証明に用いられるものを「定理」という。また、定理から簡単に導かれてしかも定理と同じように使われるものをその定理の「系」という。また、いろいろの証明に必要な用語の意味を定めたものを「定義」という。

補題 lemma

 論証・証明に用いる補助定理、副命題。

2009年4月4日土曜日

異時点間効用関数

 Epstein-Zinの異時点間効用関数については、動的経済システムの最適制御(村田, 1998)に詳しい。この本にはベルマン方程式による多期間最適化の応用も出ている。この本を最初に読んだときは、さっぱり理解できなかったが、さすがにICSで1年間、鍛えられたおかげで今は理解できる。残念ながらこの本は、今は手に入りにくいようだ。

 Asset Pricing for Dynamic Economies (Altug-Labadie, 2008)はファイナンスの重要なテーマを経済学の視点も加えながら、解説している。式展開も丁寧。テーマの取り扱い、記述と式展開のバランスが絶妙で、個人的には非常に気に入っている。Altugはロンドンでも教えているトルコ人らしい。数字の1をIと書くやり方に一瞬戸惑ったが。丸善で偶然見つけた本だが、無人島に行くとしたら持って行きたい。