2010年11月28日日曜日

ビョルクで期間構造モデルの復習

無裁定市場において、満期時点に関係なくすべての債券のリスクの市場価格は等しい。リスクの市場価格は一般均衡の意味での価格ではない。無裁定な債券市場において全ての時点Tに対するT債券の価格F^Tは期間構造方程式を満たす。F^Tのファインマン・カッツ表現を得るのはそれほど難しくない。

BSモデルではマルチンゲール測度が一意に決定される。一意性はBSモデルが完備であることに由来する。一方、様々な債券の価格は一部は短期金利のPダイナミクス、一部は市場の力によっても決定される。
期間構造は他のあらゆる金利デリバティブ価格と同様にマルチンゲール測度Qの下でのr-ダイナミクスを特定化することにより完全に決定される。μ-λσは、マルチンゲール測度Qの下での短期金利のドリフト項である。
ハル・ホワイト・モデルはパラメータを時間に依存させることによって、無限次元のパラメータベクトルαを導入することで、観察される債券データに完全に一致させることができる。しかしこのことがパラメータ推定値の数値的な不安定性をもたらすという危険が伴うことに注意すべき。
理論的な債券価格と観測された価格の完全な一致を得る別の方法としてHeath-Jarrow-Mortonの方法がある。これはフォワードレート曲線の初期条件として、観察された期間構造をおよその値として用いる。

この本は、シュリーヴ『ファイナンスのための確率解析Ⅱ』と違って途中の数式による証明をほとんど省略している。したがって全体の見通しや直感的理解はこちらのほうが得られやすいかもしない。

2010年11月23日火曜日

演習で学ぶ現代制御理論 森泰親

数値例による演習と詳細な解答を通じて現代制御理論の理解を深めることのできる良書。
現代制御は、状態方程式を用いて時間領域で解析・設計することが可能となり、所望の制御系を設計できるかどうかの見通しがよくなった。その代わり、理論が難解になった。古典制御に比べて現代制御がむずかしいと感じる理由は次の4つ。(a)状態方程式というものになじめない、(b)行列計算についていけない、(c)定理と証明ばかり目立ち、その目的が見えない、(d)肝心のアルゴリズムがまとめられていない。
いったん状態方程式でシステムを表現してしまえば、化学プラントもジェット機も同じように扱うことができるのが状態方程式の特徴のひとつである。本書では、電気回路、機械振動系などのシステムを状態方程式で表現する演習の具体例を通して状態とは何かの答えを探る。
現代制御では行列計算を多用する。行列式の展開、逆行列計算、対称行列の性質、重複固有値を持つ場合の固有ベクトル計算などは、数多くの数値例を通して理解を深めることができる。また、行列のランク計算、行列の正定、半正定、負定の判定は、比較的大きなテーマなので1つの節を設けている。
 「現代制御の現場での適用を考えたとき、計算機とMATLABは必要不可欠な道具であろう。しかしながら、それらは、現代制御理論を理解した後にいよいよ実際に使ってみるときに必要となる道具であって、いま理論を理解しようとするときには、便利すぎるMATLABはかえって邪魔になる。それは、どうしても、現代制御理論の理解よりもMATLABの使い方に興味が走ってしまい、プログラムの入口と出口の引数設定方法の解釈に留まり、肝心の中身を軽んじるからである。
 指数、対数、三角関数などの意味や原理がまったくわからなくても手元に電卓があれば即座に答えを手に入れることができる。この場合、単位や入力方法の勘違いで間違った答えが出ていても気が付かないであろう。もっと極端に、電卓が壊れてまったく違う答えを表示していてもそれを信用するであろう。これは非常に危険なことである。答えを簡単に入手できるMATLABはこの電卓と同じだと思わなくてはならない。現代制御理論を十分に理解しないままでは、MATLABに使われ振り回されているのであって、それを道具として使っているとはいえない。
 教科書に書かれている式の展開を、自分の手でひとつひとつ確認することで行間を読み、はじめて現代制御理論を自分のものにすることができる。」

状態空間モデルの経済学への応用、Nonlinear Filters 谷崎久志先生

谷崎久志先生のウェブサイト http://bit.ly/b2pJIL 状態空間モデルの経済学への応用、Nonlinear Filters、Computational Methods in Statistics and EconometricsなどのPDFが無料でDLできる(印刷不可)。

「状態空間モデルの経済学への応用」(絶版)は可変パラメータ・モデル(回帰モデルの回帰係数が時間とともに変化するイメージ)で日米のGDPや為替を分析。私が時系列分析に興味を持つきっかけとなった本。カルマンフィルタが何かもよくは知らなかったが、こういう分析がしてみたいと思った。
Nonlinear Filters(Tanizaki 1996)はまだ読んでいないが、モンテカルロ・フィルタ(パーティクル・フィルタ)やMCMCについても書かれている模様。印刷不可とはいえ、本のPDFをそのまま無料で公開している谷崎先生は太っ腹。

2010年11月22日月曜日

鶴カントリー倶楽部

西コース69、東コース60で129。アイアンが安定してきた。ドライバーがひどい。昼からは前の前の組との間隔が詰まりすぎで、延々と待たされる。コースは山の上に作った感じで高低差がかなりあるので初心者にはつらい。ただ、打ち下ろしのホールでチョロしてしまったボールが止まらないで下まで転がっていってグリーン手前まで届いたのには苦笑い。

2010年11月20日土曜日

シュリーヴ2で期間構造モデルの復習

マルチファクター(アフィン・イールド)モデルでは、抽象的なファクターを推移させることから始め、これらのファクターから金利を得る。しかし金利は資産の価格ではないため、リスクの市場価格を金利のみから推測することはできない。
このモデルでは割引債の価格を求めるための唯一の手段はリスク中立価格評価式を使うことであり、そしてリスク中立測度を得ない限り、これを使うことはできない。したがってこれらのモデルは最初からリスク中立測度の下で構築する。
リスク中立測度の下では割り引かれた割引債価格はマルチンゲールとなる。割引債とマネーマーケットを取引することでは裁定取引ができない。モデルを構築した後で、割引債や派生証券の市場価格と整合的になるようにキャリブレーション。実確率測度、リスクの市場価格は決して登場しない。
対照的にHJMモデルは各時刻における状態をフォワード曲線で近似する。HJMにおいては割引債価格は間接的にリスク中立価格評価式から得られるのではなく、直接的に得られるので、このモデルが裁定を許容する価格を与えないように注意する必要がある。
HJMはブラウン運動によって起因されるモデルが無裁定であるための必要かつ十分な条件を与えるものであり、単に1つのモデルという以上のものと言える。ブラウン運動に起因されるモデルは全て、HJMの無裁定条件を満たさなくてはならない。
実務への応用のためには、フォワード金利が対数正規分布に従うモデルを構築した方が都合が良いと考えられるが、これは不可能。かわりに単利のフォワードLIBORを状態変数として用いるものがフォワードLIBORモデル、市場モデル、あるいはBGMモデルと呼ばれる。

2010年11月15日月曜日

シュリーヴ2、アイズレー・ブラザーズ

シュリーヴの「ファイナンスのための確率解析Ⅱ」の日本語訳のP350の補題8.5.1およびP351の下から5行目の「優マルチンゲール」は「劣マルチンゲール」の間違いです。原書ではちゃんとsubmartingaleとなっているので、翻訳時の間違いと思われます。他にも何箇所か翻訳時の間違いがあるので注意が必要です。

The Isley Brothersの『Go All the Way』は輸入版はもう発売されていたので、待ちきれず輸入版を購入。待っていたよ、このときを。素晴らしい。言葉にならない。今聴いても全然古くない。アイズレーの最高傑作だと思う。アメリカでもCDになってなかったみたいだな。とにかく聴いてほしい。一曲目のGo All the Wayからめちゃくちゃかっこいい。特にギターのリフ。基本的にはファンクなのだが、リズム・パターンが独特で洗練されている。どうやったら思いつくのだろう。
山下達郎やプロデューサーのジャム&ルイスにも多大な影響を与えている。

2010年11月13日土曜日

ステート・ストリート 第7回リサーチ・カンファレンス

 

 
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ主催の第7回 リサーチ・カンファレンスに行ってきた。場所は東京ミッドタウン。既にクリスマス・イルミネーション。
(1) 2011年 マクロ的展望: ”オール・オア・ナッシング”が当たり前に SSGM ティモシー・グラフ
(2) 投資家行動のイノベーション: リスク志向における為替収益性のインパクト SSGM ジョン・アラバジス
(3) レジーム・シフトとダイナミック・ポートフォリオの構築 SSA デービッド・ターキングトン
(4) ダウンサイド・プロテクションと流動性マネジメント SSA サイモン・ミルグレン
(5) システミック・リスクの測定手法 SSA ウィル・キンロー
(6) 座談会: 「嵐の後のノルマルシー」
アステラス企業年金基金、日産自動車財務部、日東電工企業年金基金、ラッセル・インベストメント

SSGAは、State Street Global Marketsの略、SSAはState Street Associatesの略。SSAはステート・ストリートのグループ会社だが、独立していて、高度なリサーチやアドヴァイスを行う組織らしい。ハーヴァードと関係があるらしい。
年金基金の方々の座談会がおもしろかった。直接、年金の方々のお話を聴くのは初めてだったのだが、本音でいろいろと語っておられた。ダウンサイド・リスクの管理が最大の課題。先物・オプションの活用。リバランス。日本株式のウェイト。オルタナティブの扱い。アクティブ、パッシブの比率、など。
日本株に関しては日東電工企業年金基金は日本株は全てロング・ショートに変更するということだった。日本株にはプラスのβが期待できないという考え。他の基金の方も株式のリスクは減らしたいという考えだが、長期的な成長を考えると株式のエクスポージャーもある程度持ち続けざるをえないという認識。その際にどうやって株式のリスクをコントロールするか。

2010年11月11日木曜日

2010年11月10日水曜日

Kalman-Bucyのフィルター理論(1)

離散時間のフィルタはカルマン・フィルタと呼ばれる(Kalman 1960)。連続時間のフィルタはカルマン・ブーシー・フィルタと呼ばれる(Kalman-Bucy(1961)。
津野のこの本は連続時間のカルマン・ブーシー・フィルタの数学、特に確率論の立場から解説したものである。実務の話はいっさい出てこない。類書がない、非常に貴重な本だと言える。

「フィルター問題では2乗平均ノルムを採用する。確率空間(Ω、、P)上の確率変数X(ω)でXの2乗平均ノルム∥X∥が有限になるものの全体L^2(Ω、)がフィルター問題で考察する確率変数の空間である。この空間L^2(Ω、)はHilbert空間になる。
フィルター問題の基礎は直交射影である。Ωのσ加法族HGをとる。L^2(Ω, G)の元XのL^2(Ω, H)への直交射影の像X^~は、X(ω)のHへの条件付期待値である。すなわち次式が成立する。
                  X^~(ω)=E[X|H](ω)

2010年11月8日月曜日

ブルームバーグのエクセルAPIセミナー

ブルームバーグのエクセルAPIセミナーに行ってきた。場所は丸ビル21階。ブルームバーグは機能が多くて、多分全体の5%くらいしか使いこなせてないと思う(汗)。
ブルームバーグ側もそこは把握していて、よく使う機能をエクセルのテンプレートとして準備してくれている。XLTPでそれらのライブラリを見ることができる。企業の財務諸表や財務指標からアナリストの推奨履歴まで一目で分かるシートがそれぞれ作ってある。
XFDVで投資信託の配当込み基準価額を計算してくれるシートをダウンロードできる。これは便利。これを自分でやると結構めんどくさい。そんな時間はこれを使って節約し、もっと他の貴重なことに使うべきだ。
社債の格付け、CDSデータ(WCDS)や評価(CDSW)、デフォルト確率推移までダウンロードできる。カウンターパーティリスクの評価もできる(CVA)。
新しいエクセルAPI関数として、補間関数=BInterpol()、日付算出関数=BAddperiods()、日付計算関数=BCountperiods()、決済日算出関数=BDP(フォワードティッカー,"SETTLE_DT")。端末からXLTP XCLRと入力することでこれらの関数の利用方法を参照することが可能。


2010年11月7日日曜日

喜連川カントリー倶楽部

喜連川コース 70、OUT 63で133。やっぱり練習しないとすぐにスコアが落ちるね。
すごくきれいで適度にむつかしいコース。すごく好きになりました。
帰りの東北道が大渋滞でつかれたよ。( ̄ρ ̄)

2010年11月3日水曜日

The Isley Brothersのアルバムがリイシューされる!!


おお、なんと!! オレの大好きなThe Isley Brothersのアルバムが一斉にリイシューされる。超ウレシー。全部アナログ・レコード(死語)で持っているんだよね。普通の人には左の『Between the Sheets(シルクの似合う夜)』がお奨めだけど、個人的には右の『Go All the Way』が一番好きで超ウレシー。ずっと手に入らなかったのよね。なんかテンションあがってキター。

測度論、確率論(1)


 株価、債券価格(金利)、為替など、金融市場の数学モデルを作る場合、各時刻で偶然起こった現象を含んだ確率過程として記述する。偶然性は、標本空間と呼ぶ可測空間(Ω、)を導入してとらえる。『標本空間』の上に確率測度を設定することができる。つまり、確率過程は、(Ω、)上の『状態空間』と呼ばれる別の可測空間(S、)値を取る確率変数の集まりX={X_t;0≦t<∞}である。
 我々の目的のために、状態空間(S、)はボレルσ族を具備したd次元ユークリッド空間をとる。つまりS=R^d、=B(R^d)である。ここでB(U)はある位相空間Uの開集合をすべてふくむ最小のσ族を表すものとする。
シュリーブの『ファイナンスのための確率解析Ⅱ』の8章、アメリカン・オプションのところで「停止時刻」が出てくるが、測度論、確率論の知識を前提に議論が進むのでなかなか理解が進まない。やはり測度論、確率論を一度きちんと勉強しないといけないと思う。

大まかに言えば、測度はある空間の部分集合の非負関数で完全加法的なものである。ここで完全加法的とは互いに素な集合の列の和の測度が、それぞれの集合の測度の和となることを意味する。
測度論は積分論の基礎であり、この両理論は現代数学、とくに解析学、関数解析学、確率論において重要な役割を演じている。
Aが『有限集合』であるとは、Aに属する元の個数が有限であることをいう。空集合も有限集合と考える。有限集合でない集合を無限集合という。
Aが『可算集合』であるとはAが自然数全体の集合Nと同等であることをいう。Aが『高々可算集合』であるとはAが有限または可算集合であることをいう。Aが『非可算集合』であるとはAが有限集合でも可算集合でもないことをいう。
整数全体の集合Zは可算集合である。集合Aが高々可算集合、B⊂AであればBも高々可算集合である。
Eを集合とする。x、yの関数dが次の四条件を満たすときにE上の距離であるという。 [0]任意のx、y∈Eに対して0≦d(x、y)<∞が対応する。 [1]任意のx、y∈Eに対してd(x、y)=d(y、x)、[2]任意のx、y、z∈Eに対してd(x、y)≦d(x、z)+d(z、y) [3]任意のx∈Eに対してd(x、x)=0であり、逆にx、y∈Eに対してd(x、y)=0であればx=y.このときEとdの組(E,d)を『距離空間』、Eの元を『点』という。AをEの任意の部分集合とするとき、dをAに制限すると(A,d)も距離空間となる。(A,d)を(E,d)の『部分距離空間』という。
Ωを空でない集合とする。これは有限集合でも無限集合でも良い。このΩを標本空間として、その部分集合に対して確率を定義したいが、一般に確率はΩのすべての部分集合に対して定義されているわけではない。そこで確率の定義されているΩの部分集合全体をBとする。
部分集合A⊂Ωに確率が定義されている。1)Ω∈B、2)A∈B⇒A^c∈B、3)部分集合列 An∈B (n∈N) ⇒ ∪_{n=1}^∞ A_n ∈B 。これらを満たすΩの部分集合の集まりBをΩ上のσ集合体という。
B1とB2をΩ上のσ集合体とする。B1∩B2はΩ上のσ集合体である。SをΩの任意の部分集合族とする。このときSをふくむ最小のΩ上のσ集合体が一意的に存在する。これをσ[S]と書き、Sから生成されるΩ上のσ集合体という。
E=(E,d)を距離空間、OをEの開部分集合全体からなる集合族とする。このときOから生成されるE上のσ集合体B(E)≡σ[O]をE上の『ボレル集合体』、Eの部分集合でB(E)に属するものをEの『ボレル集合』という。
Eを距離空間とする。このときEの開部分集合、閉部分集合、コンパクト部分集合、可算集合、有限集合はすべてEのボレル部分集合。 (注意:ボレル集合体は距離空間に限らず、もっと一般の位相空間についても同様に定義される。ここでは距離空間しか扱わない)
特に重要なのはEがd次元ユークリッド空間R^dの場合。R^d上のボレル集合体B(R^d)を簡単のためB_dと書き、『d次元ボレル集合体』、またB_dに属するR^dの部分集合を『d次元ボレル集合』という。

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Xを抽象空間とする。Xのベキ集合、すなわちXのすべての部分集合の族を2^xで表す。Aを2^xの空でない部分族とする。Aが集合の交わりに関して閉じているとき、すなわちB、C∈AからB∩C∈Aが出るとき、AはXの上の乗法族であるという。
Aが有限和、補演算(補集合をとる操作)に関して閉じているとき、AはX上の『有限加法族』(finitely additive class)(または『集合体』(algebra of sets))であるという。
Aが単調極限に関して閉じているとき、AはXの上の単調族であるという。X自身がAに属し、かつAが可算直和と固有差に関して閉じているとき、AはXの上のDynkin族という。
Aが可算和、補演算に関して閉じているとき、AはXの上の『σ加法族』(σ-algebra)(または『可算加法族』『完全加法族』『ボレル集合体』(Borel field))という。