岩波の『世界』3月号の細野祐二さんの「東芝・債務超過の悪夢」、たしかに面白いので一読をお勧め。
「東芝の誤算は、2015年に発覚した粉飾決算事件を受けて、2016年4月1日から開始する連結決算事業年度の会計監査法人が、今までの新日本監査法人からPwCあらた有限責任監査法人に変更になったことに始まる」
粉飾決算の結果、新日本から変更になった「PwCあらた監査法人にとっては、当たり前のことを当たり前に言っても、優良顧客喪失のリスクがないばかりか、むしろ社会全体がPwCあらた監査法人を評価してくれるのである」
「東芝が今回減損で計上すべき特別損失額は7772億円となり、S&Wの追加原価次第では、この金額はさらに拡大する可能性がある」
細野祐二氏の『法廷会計学vs粉飾決算』と『公認会計士vs特捜検察』を図書館で借りてきた。
2017年2月25日土曜日
2013年11月3日日曜日
『日本の競争戦略』 マイケル・E・ポーター
「日本の半導体メーカーの後退理由は何であろうか。端的にいってしまえば、これらの企業はすべて、オペレーション効率のみによる競争の犠牲となったのである。相互破壊的な消耗戦は現在も続いている」
「(97年当時)すべての日本の半導体メーカーは、トランジスターからマイクロ・プロセッサーまでフルラインの製品を揃えている。対照的に米国の半導体メーカーは、何をしないかについて終始明確であった。例えば95年までにTI以外の全メーカーは、メモリー・チップから撤退している」
「継続的改善の積み重ねは、戦略ではない。競合他社の模倣や同じ手法を少し上手に行うことも、戦略とは呼べない。競争に対するこのような日本企業のアプローチと戦略の欠如がもたらす危険性は、いくつかの代表的な産業事例によって鮮明に例証されている」
「他のアジア諸国のメーカーは、汎用製品において日本のオペレーション手法をたやすく模倣できるようになった。すべてのメーカーが同じ物を提供するなか、顧客は価格を基準に選択し、それは必然的に利益を減少させる結果につながる」
日本の戦略なき競争の例として半導体の他にアパレルとチョコレートが上げてあります。
「すべての顧客に対してすべてのものを提供しようとするということは、戦略へのアンチテーゼである。日本のチョコレートメーカーの類似戦略および模倣戦略は、国内市場の収益性を犠牲にしたのみならず、国際的競争優位を生むいかなる可能性も排除してしまった」
継続的改善のみで戦略がないというのは某弊社も含まれるのでガクブルしてる。
「オペレーション効率は、企業が卓越した業績を追求する二つの方法の一つでしかない。もう一つの方法が、戦略である。すなわち、特色のある製品やサービスを提供し、独自のポジショニングを打ち出して競争する方法である」
「オペレーション効率とは、同じかあるいは似通った活動を競合他社よりもうまく行うことを意味する。戦略の中核は、事業で競争する上で必要な活動を競合他社とは異なるやり方で行うことにある」
「戦略は、独自のポジションを選択し、それに応じて活動を調整するということにとどまらない。戦略とは、顧客に価値を提供する上で、トレードオフを行うことである。トレードオフが発生するのはいくつかの戦略的ポジションとそれらに必要な活動に整合性がかけている場合である」
「つまり、何をしないかという選択が、戦略の核心である」
「戦略を持っている日本企業は希である。日本では継続的なオペレーション効率の改善と戦略とが混同されている」
「戦略の欠如は日本型企業モデルに内在する多くの要素によってももたらされる。成長を追及する一方で収益性を無視する傾向は事業の模倣化と総合化につながる。幅広い製品ラインや多機能性、短いサイクルでの新製品導入等、日本企業に共通の企業行動は戦略上のポジショニングを曖昧にしてしまう」
マイケル・ポーターの「何をしないかという選択が、戦略の核心である」という言葉から、冨山和彦氏の「捨てることにこそ戦略の本質がある」を思い出しました。 『結果を出すリーダーはみな非情である』 冨山 和彦
「リーダーの不可欠な資質のひとつは、論理的な思考力、合理的な判断力である」
「日本では経済全体としては資本主義だが、会社の中は社会主義的な仕組みで成り立っている」
「利害対立が生じた場面で、ある人たちにとって不都合な意思決定をしなければならないとき、そこで求められるリーダーシップはまったくの別物だ。むしろ現場で力を発揮しているリーダーは、共同体内に不協和音を生じさせるような場面では意思決定ができなくなってしまう」
2013年9月15日日曜日
読んどいたほうがいい論文の自分用メモ
リカードの中立命題(等価定理)が成立する条件を詳細に分析しているそうなので、読んでみようかと。
"Are Government Bonds Net Wealth?" Barro(1974)
有名なモジリアーニ=ミラーの定理
"The Cost of Capital, Corporation Finance and the Theory of Investment" Modigliani and Miller (1958)
結論だけ使われて読まれない論文ランキングの1位はおそらくこれ。
"Capital Asset Prices: A theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk" Sharpe(1964)
「カルーシュ・キューン・タッカー条件」はほぼ毎日使っているのに、論文は読んだことがなかったですね
"Nonlinear Programming" Kuhn and Tucker (1951)
ちなみに、W.Karushの論文はシカゴ大学数学科の修士論文のようで、ネット上に無料のものはないみたいです。
"Minima of functions of several variables with inequalities as side constraints" W.Karush (1939)
世代重複モデル(Overlapping Generations Model: OLG Model)で国の債務を分析。
"National Debt in a Neoclassical Growth Model" Diamond, P.A. (1965)
"Expectations and the Neurality of Money" Lucas (1972)
"Econometric Policy Evaluation: A Critique" Lucas (1976)
「ルーカスは経済環境に応じて内生的に決まってくる経済変数を普遍的な構造パラメーターとして取り扱ってしまうケインズ経済学の方法論的問題点を厳しく批判している。この論文のタイトルにちなんで、内生変数を構造パラメーターとして取り扱う問題点は、ルーカス批判と呼ばれている」齊藤2006
Caltechの物理学・数学・天文学部門では、「ファインマン物理学」のウェブによる無料配信を、数年間かけて準備してきたが、ついに実現
「ファインマン物理学」
"Are Government Bonds Net Wealth?" Barro(1974)
有名なモジリアーニ=ミラーの定理
"The Cost of Capital, Corporation Finance and the Theory of Investment" Modigliani and Miller (1958)
結論だけ使われて読まれない論文ランキングの1位はおそらくこれ。
"Capital Asset Prices: A theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk" Sharpe(1964)
「カルーシュ・キューン・タッカー条件」はほぼ毎日使っているのに、論文は読んだことがなかったですね
"Nonlinear Programming" Kuhn and Tucker (1951)
ちなみに、W.Karushの論文はシカゴ大学数学科の修士論文のようで、ネット上に無料のものはないみたいです。
"Minima of functions of several variables with inequalities as side constraints" W.Karush (1939)
世代重複モデル(Overlapping Generations Model: OLG Model)で国の債務を分析。
"National Debt in a Neoclassical Growth Model" Diamond, P.A. (1965)
"Expectations and the Neurality of Money" Lucas (1972)
"Econometric Policy Evaluation: A Critique" Lucas (1976)
「ルーカスは経済環境に応じて内生的に決まってくる経済変数を普遍的な構造パラメーターとして取り扱ってしまうケインズ経済学の方法論的問題点を厳しく批判している。この論文のタイトルにちなんで、内生変数を構造パラメーターとして取り扱う問題点は、ルーカス批判と呼ばれている」齊藤2006
Caltechの物理学・数学・天文学部門では、「ファインマン物理学」のウェブによる無料配信を、数年間かけて準備してきたが、ついに実現
「ファインマン物理学」
2013年8月25日日曜日
ハーバード・ビジネス・レビュー8月号は「起業に学ぶ」
ハーバード・ビジネス・レビュー8月号は「起業に学ぶ」。入山章栄氏が出ているので手を取ったら、他にもDeNAの南場智子氏、堀江貴文氏、マーク・アンドリーセン、フェイスブックのCOOのシェリル・サンドバーグなど錚々たるメンバーで面白かった。
アンドリーセン「私たちが探しているのはプロダクト・イノベーターであり、同時に会社を起こしたいという起業家精神を持ち、さらにCEOになる度量と自制心も持つ人です。そのような人が本当に実力を発揮して10年間懸命に働けば、素晴らしい結果が出ます」
「その三つのうち一つでも欠けていると不幸な結果となるのが普通です」
「CEOになる能力は身につけられると思います。ですから、私たちはもっぱらイノベーターをCEOにするための訓練に時間をかけています。逆にCEOをイノベーターにする訓練に時間をかけることは、まずありません」
堀江「僕は将来を考えることに意味はないと思っていますし、そんな先のことを考える時間もありません。考えないから不安にもならない。後先考えずにいまやりたいことを一生懸命やる。その連続でいまここに立っています」
入山「アメリカの起業論でもっとも確立されたコンセプトはアントレプレナーシップ・オリエンテーション(EO)と呼ばれるものだ。EOはアメリカの起業研究者で知らないものはいない、と言ってよいほどである」
「コービン&スリーバン(1989)では、小規模企業が成功するために経営幹部に必要な姿勢に注目し、とくに革新性・積極性・リスク志向性の三つが重要だと主張。新しいアイディアを積極的に取り入れる姿勢であり、前向きに事業を開拓する姿勢、不確実性の高い事業に好んで投資する姿勢のこと」
クリステンセンらの2008年の論文によると革新的な企業家に共通する思考パターンは、質問力、観察力、仮説検証力、ネットワーク思考力の4つにまとめられるそうだ。
2013年8月18日日曜日
『不格好経営』南場智子
南場智子さんは、津田塾大学、マッキンゼー、ハーバードMBA、マッキンゼーのパートナーからDeNA代表取締役社長という経歴ですね。
「自分が経営者だったらもっとうまくできるんじゃないだろうか。なんでもっと思い切った改革ができないのか。なぜ中途半端に実施するんだ。私だったら…。もしそんなふうに感じているコンサルタントがほかにもいたら優しく言ってあげたい。あなたアホです。ものすごい高い確率で失敗しますよ、と」
「世の中のほぼすべての人が知っている「言うのとやるのでは大違い」というのを、年収数千万円のコンサルタントだけがうっかりするというのは、もはや滑稽といえる。しかもコンサルティングで身につけたスキルや癖は、事業リーダーとしては役に立たないどころか邪魔になることが多い」
「コンサルタント時代は、クライアント企業の弱点やできていないところばかりが目についてしまい、大事なことに気づかなかった。普通に物事が回る会社、普通にサービスや商品を提供し続けられる会社というのが、いかに普通でない努力をしていることか。マッキンゼー時代のクライアントにばったり会ったりすると、今もとても恥ずかしく、土下座して謝りたくなってしまう」
ずっと取締役COOをつとめた共同創業者の川田氏の退任スピーチ。「今日は俺は好きなようにさせてもらう」と壇上でいきなりビールを飲みはじめ、「上場企業の役員がこういうことを言っちゃいけないけど、俺はあの時代の金融機関はクソだと思った」で始まった。
怪盗ロワイヤルというゲームを作ったのは、新卒5年目の大塚剛司という若者だった。直前のプロジェクトに失敗し、ゲームを作ったことも、ほとんどやったことすらない大塚を、社運をかけたソーシャルゲーム立ち上げのプロジェクトに抜擢する。
「大塚は、その日からフェイススブックのゲームを遊び倒した。人気ゲームだけでなく、ヒットしていないゲームも総ざらいし、成功するゲームのエッセンスを彼なりに抽出した。そしてそのエッセンスを「全部盛り」にし、彼なりにアレンジしてまとめあげたのが、怪盗ロワイヤルだった。当時怪盗ロワイヤルがあまりに面白いので、天才の仕事と言われたが、実際はド根性の秀才仕事だったのだ」
「何かをやらかした人たちに対する対応は、その会社の品性が如実に表れると感じる。私たちは、このときのように、お詫びをしなければならない事態になって、ますますファンになり、その会社のために頑張りたくなるようなパートナーに恵まれてきた。モバゲーなどで広告主となってくださった日本コカ・コーラさんやサントリーさんなどにも、何かあるたびに頭が下がるような対応をしていただき、社格とはこういうことなのかな、と感じ入る」
社長の一番大事な仕事は意思決定。頭出しの報告のときに意思決定にポイントとなる決定的な重要情報はなにかを大まかにすり合わせておいて、その情報が欠落していなければ、迷ってもその場で決める。継続討議にはしない、と。
経営コンサルタントは経営者に助言するプロフェッショナルであり、高度な研鑽が必要な、とても奥深い職業だ。コンサルタントになるなら、その道の一流のプロとなるよう、努力し、とことん極めて欲しい。」
「私が言っているのは、事業リーダーになりたいからまずコンサルタントになって勉強する、というのがトンチンカンだということにすぎない」
迷いのないチームは迷いのあるチームよりも突破力がはるかに強い」。
「不完全な情報に基づく迅速な意思決定が、充実した情報に基づくゆっくりとした意思決定に数段勝る」。
「事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか」
若くしてコンサル会社に身をおくことのマイナスの癖として、できる限り賢く見せようとする姿勢、上から目線、クライアント組織のキーパーソンにおもねる発言をしやすい、の3点をあげている。
何でも3点にまとめようと頑張らない(物事が3つにまとまる必然性はない)。重要情報はアタッシュケースでなく頭に突っ込む。自明なことを図にしない。人の評価を語りながら酒を飲まない。ミーティングに遅刻しない、とのアドバイス。
DeNAのMobageの技術的な話についてはこの本が詳しいです。 『Mobageを支える技術 ~ソーシャルゲームの舞台裏~』 (WEB+DB PRESS plus) DeNA
2013年8月11日日曜日
デルの凋落 『イノベーション・オブ・ライフ』
クリステンセンの『イノベーション・オブ・ライフ』の7章にデルがエイスースにアウトソースしていった結果、凡庸な企業に成り下がっていったケースが紹介してある。純資産利益率を重視して製造に関わる資産をアウトソースしバランスシートから外しReturn on Net Assets(RONA)は高くなった。デルにはブランドだけが残った。
「製薬、自動車、石油、情報技術、半導体など多くの業界の企業が、デルと同じように、将来の能力の重要性をよく考えもせずに、アウトソーシングを推進している。この動きをあおっているのが、金融関係者やコンサルタント、研究者などだ。彼らはアウトソーシングを行えば、簡単にすばやく利益を上げられることを知っているが、その結果手放す能力を失うことのコストには気づかない。このような企業はエイスースのような企業を生み出すリスクを負っている」
「米の半導体企業は、製品設計などの、より複雑で利ざやの大きい段階を社内に残す限り、問題はないと考えていた。だがアジアのサプライヤーは、ますます高度な製品の製造、組み立てに取り組み、上位市場に移行し続け、米の委託企業が製造能力を完全に失った製品や部品を製造する能力を手に入れた」
「アウトソーシングを考えるとき最も重要なのは、自社が将来成功するために、どんな能力が必要になるかを考えること。この能力は必ず社内に残しておく。そうしなければ未来を手放すことになる。能力の力と重要性を理解しているかどうかが、優れたCEOと凡庸なCEOを分ける」
「企業の能力は、「資源」「プロセス」「優先事項」の三つの分類のいずれかにあてはまる。これらの能力を総合的に考えることは、企業に何ができるかを、そしておそらくより重要なことに、何ができないかを分析するうえで、欠かせない」
「プロセスには、製品開発、製造のほか、市場調査、予算策定、従業員の能力開発、報酬決定、資源配分などを行う方法が含まれる。目に付きやすく、測定しやすいものが多い資源とは違って、プロセスはバランスシート上には表れない」
「企業が大きく複雑になればなるほど、経営幹部が従業員を教育して、企業の戦略的方向性とビジネスモデルに合った優先事項を、自力で決定できるように教えこむことが、ますます重要になる。つまり企業が成功するためには、経営幹部がじっくり時間をかけて、明確で一貫した優先事項を打ち出し、組織全体で広く理解されるよう、腐心しなくてはいけない。またそうするうちに、企業の優先事項を、企業が利益をあげる仕組みと調和させる必要がある。企業が生き残るには、企業戦略を支えるものごとを、従業員に優先させなくてはならない。そうでなければ、従業員は企業の基盤を揺るがすような決定を下してしまうことがある」
ちなみに『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(入山章栄)によると
「「当面の事業が成功すればするほど、知の探索をおこたりがちになり、結果として中長期的なイノベーションが停滞する」というリスクが、企業組織には本質的に内在しているのです。これが「コンピテンシー・トラップ」と呼ばれる命題です。
有名な「イノベーションのジレンマ」の中心命題は「競争環境を一変させるような『破壊的なイノベーション』が発生したときに、成功している企業の経営者・企業幹部ほどその経営環境の変化を十分に認識できず、それに対応できない」というものです。たしかにこの考え方は「成功する企業ほどイノベーションができなくなる」という意味でコンピテンシー・トラップとよく似ています。
イノベーション研究の分野で高名な現ハーバード大学のレベッカ・ヘンダーソンは、イノベーションのジレンマの考えがその本質をどちらかといえば経営者や企業幹部の認知の問題としてとらえているのに対して、コンピテンシー・トラップはその本質を組織の問題に求めている、と述べています。」と述べている。
2013年8月10日土曜日
「Amazon ランキングの謎を解く」服部哲弥
途中まで読んで積読だった「Amazonランキングの謎を解く」服部哲弥(2011)を読了。
刺激的でおもしろかったです。統計、確率(測度論)、偏微分方程式なども扱われます。ただ、それらが分からなくても読み進められるように工夫してあります。
Amazonのランキングの比較的シンプルな数学的モデルを作り、実際のランキングのデータを驚くほど再現できています。その結果、Amazonのビジネスモデルはロングテールではないと推定しています。
「ツェトリンの研究成果は、先頭に跳ぶ(move-to-front)確率を用いて定常状態を具体的に表したことである」
「b<1ということは書籍点数の大部分を占めている普通の本が点数Nの大きさを頼りに束になってかかっても、ひと握りのビッグヒットの売り上げにかなわない。この結果を見る限り、書籍に関してロングテールビジネスモデルは成立しないことが、データと理論をつき合わせて見出されたことになる」
「単純化されたモデルに基づく数学的結論が、社会現象のようなきわめて多くの要素が関係する複雑な現象―しかも、精密科学のようにお金や時間をかけて条件を精密に制御して実験することが期待できない現象―に関するデータを思いのほかよく説明できたことはそんなに当たり前とは思えない」
「インターネット時代の社会活動の集計においてランキングの順位をプログラムして表示し、結果としてロングテールの様子が公になりうるという意味で、本書で展開してきた確率順位付け模型の解析は、今後とも実際的な応用の場が広がるだろう」
《著者のウェブサイト》
"オンライン ランキングとロングテール,そして無限粒子系" 服部哲弥 あるいは, アマゾンの謎順位 - Amazon書店はロングテールに非ず
"Stochastic ranking process approach to the Amazon online bookstore ranks" T.Hattori
「Amazonランキングの謎を解く」を読むと、ビッグデータ時代になってもシンプルな統計モデルの重要性は変わらない気がします。むしろ、これまではデータがなくて確かめようもなかった統計モデルもビッグデータで検証可能になる機会が増えるんだと思います。確率・統計の知識の必要性は変わらない。
Amazonのビジネスモデルは投信ビジネスにもあてはまるかもしれませんね。「投信点数の大部分を占めている普通の投信が点数Nの大きさを頼りに束になってかかっても、ひと握りのビッグヒットの売り上げにかなわない。この結果を見る限り、投信に関してロングテールビジネスモデルは成立しないことが、データと理論をつき合わせて見出される...」なんてね。
2013年7月28日日曜日
フィリップ・コトラー「マーケティングは日本を救うか」
世界的なマーケティング学者のコトラー氏は、来日した際はたっての希望でJR東京駅の駅ナカを視察。「世界中の鉄道事業者が参考にすべきだ」と感想を語ったそうだ。また日本のマーケティング研究者は「事例や理論を世界にもっと発信すべきだ」と言う。
日本社会はマーケティングの考えを矮小化する傾向、はたしかにあるかもしれませんねえ。某弊社のマーケティングをみるにつけ、ため息しかでてきません...
1990年以降の日本の低迷期はどこに問題があったのか、という問いにコトラー氏が答えています。
「70年代から80年代の日本企業は『よりよい製品をより安く作る』ことにかけてチャンピオンだった。当時はそれだけで欧米のメーカーと違いを出すことができた。日本国内だけで十分な収益を上げることができ、一部の消費財では輸出に注力しなかったのも理由。成功したことで若干、守りに入っていた。失敗を恐れすぎている。そこからは成長は望めない。チャンピオンということで驕慢にもなっていた。
そして最も重要な事は戦後の日本を牽引してきた松下幸之助、本田宗一郎、盛田昭夫のような創業者でクリエーティブな考えを持つ人材の系譜が途絶えてしまったことだ。
(60年代に)マーケティングに必要な4つのP(プロダクト=製品、プライス=価格、プレイス=流通、プロモーション=販売促進)を提唱したが、日本ではまだ理解が進んでいない気がする。マーケティングそのもののステータス(地位)が低い。
どうもマーケティングをプロモーションとだけ捉え、テレビで30秒の広告を打てばいいと考えているだけのビジネスパーソンが多くいる。マーケティング担当者が果たして製品開発にまで入り込んでいるだろうか。価格や流通の販路(チャンネル)の決定についても関与の度合いが弱い。
マーケティングの担当者は経営全般に深く関わるべきだが、日本の企業の大半ではそれにふさわしい職種となっていない。米国などではCMOという役職があるが、日本でCMOを据える会社はごく一部だ。
日本の経営者はおそらく、マーケティングは営業部門が受け持つと考えてるのだろう。そうではなくて、CMOは市場と深く関わり、どのような商品を先々作るのかということに参画しなくてはいけない。さらに新製品を投入する時期やチャンスを見極めて、新製品のポートフォリオ(組み合わせ)を最適化することも求められる。顧客の声の把握だけでなく、技術の進歩にも精通し、新しい技術を商品開発に持ち込む力量も問われる。
CMOは経営の意思決定を行う立場にいて、このキャリアを経てからCEOに就いて経営全般を見るのがいいと考えている。
(日本にCMOにふさわしい人材が育ちにくいのは経営トップが)マーケティングによって製品や組織を変えることができることを認識していないからだ。違いを打ち出せるはずなのに、そのことが分かっていない。マーケティングをサービス機能やコミュニケーションの手段だと捉え、企業が目指すべき重要な役割を担えることに気づいてない。
顧客増が大切なのだ。先進国ではさまざまな商品やサービスがあふれている。なぜ、そうした環境で売れないのかを考えれば答えはこうなる『自分の会社に目を向けてくれる顧客が少ない』のだ。足りなければ顧客を増やすしかない。
自社について顧客により深く理解してもらい、頼るくらいの特別な感情を持ってもらうまでの関係を気づくことが大切。あるアウトドア用品メーカーは長く使った用品でも満足していなければ返品を受け付けている。『この会社は自分のためにここまでやってくれるのか』と思ってもらうことだ。」
(もっと顧客を増やす手段は)「新興国への取り組みだ。これまでのマーケティングはお金のある先進国などにいる20億人を対象としてきた。これからは新興国などの50億人も含めて考えるべきだ。」
2013年3月27日水曜日
『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』
積読だった『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』を読み終わりました。リーマンショックのときのポールソン財務長官、米国金融機関の経営者達の言動に迫ったノンフィクションです。原題は『Too Big to Fail』。リーマンのくだりでは、以前に見た映画『マージンコール』の映像を思い出しますね。
読んでいて、タッチが『野蛮な来訪者―RJRナビスコの陥落』(1990)に似ているなと思ったら、謝辞で、これまで出版されたビジネス書のなかで著者が一番好きな本がそれだと書いていて、納得。これも面白かったけど翻訳は絶版ですね。図書館で借りて読んだな。 『野蛮な来訪者―RJRナビスコの陥落〈上〉』 (ブライアン バロー)原題は『Barbarians at the Gate』 Bryan Burrough。
『野蛮な来訪者』や『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』を読んで感じるのは、ビジネス関連のアメリカのノンフィクション・ライターのレベルの高さですね。本当に良く調べているし、面白い。
金融関連のノンフィクションで他にお勧めは『世紀の空売り』と『天才たちの誤算』ですね。前者はサブプライム危機で売りに回ったコントラリアンたち、後者はLTCMの破綻について書かれた本です。
急いで出版したのか、翻訳には金融用語で誤訳かタイポと思われるものがいくつかありますね。「元債権トレーダー」とか。
以下、備忘録
「スウェイゲルと同じく、バーナンキも学者らしく態度にぎこちないところはあるが、経済学者にしては驚くほど世間話がうまく、ポールソンと彼のチームにオフィスを見せてまわった」
「CDOに使われていた複雑な手法のいくつかは私の理解を超えていた。CDOの中間部分やさまざまなトランシェからどうやって利益を生み出すのかといったことは、わからなかった。私にすらわからないものが、世界の残りの人たちにどう理解されるのかと思うと、途方に暮れた」(グリーンスパン)
「最高リスク管理責任者(CRO)マデリン・アントシンクを雇ってはいるが、インプットはゼロに等しかった。彼女は執行委員会でリスクが問題になったときにも退室を命じられることが多く、2007年の終わりには執行委員会そのものから追放された」
「リチャード・ファルドはリーマン、リーマンはリチャード・ファルド。会社のロゴを胸につけた経営者がいるとき・・・被害は甚大なものとなります」
ファルドは51%の議決権を持っている。
ヘンリー・ポールソンがGSからコーザインを追い出したときに、CEOは2年で辞めて後はジョン・セインとソーントンにまかせると言ったけど辞めないで、ロイド・ブランクファインをセインと並ぶ共同社長に指名。ブランクファインの統括するビジネスはGSの80%の収入をもたらしていた。
AIGの創始者コーネリアス・バンダー・スターは27歳で上海に渡り中国人に保険を売り始め、アジア諸国に手を広げた。軍の友人だったマッカーサーの力を借りてアメリカ軍に保険を販売。日本が外国の保険会社に市場を開放するまでAIGジャパンは海外損保事業でAIG最大の売り上げをもたらした。
「AIG・フィナンシャル・プロダクツ(FP)は1987年にグリーンバーグと、ベル研究所出身の金融学者ハワード・ソーシンとの非凡な取引から生まれた。ソーシンは”デリバティブのストレンジラブ博士”として有名になった」。ストレンジラブ博士は映画『博士の異常な愛情』の登場人物ですね。
ソーシンはミルケンのドレクセル・バーナム・ランベールで働いていたが1990年の同社の破産前の1987年にドレクセルの従業員13人を連れてAIGに逃げ込んでいた。そのうちの一人が32歳のジョゼフ・カッサーノ。
AIG・FPは「いくつかのヘッジファンドの慣行どおり、トレーダーが利益の38%を獲得し、残りを親会社に渡していた。ビジネス成功の鍵は、S&PによるAIGのトリプルAの格付けだった」
ソーシンはグリーンバーグと仲たがいして1994年に他の設立者とFPを去っている。グリーンバーグはその前からプライスウォーターハウスクーパースと共同で密かにソーシンの取引を記録するシステムを構築し、後で解析、模倣できるようにしていた(mjsk)。カッサーノはFPに残りCOOに。
1997年のアジア危機のときカッサーノはJPモルガンにCDSのビストロ(BISTRO: Broad Index secured trust offering)を紹介されている。最終的に買わなかったがFPの分析者に商品の研究をさせてCDSはほぼ安全と判断している。
「ビストロにおいて、銀行は帳簿上の何百という融資を取りまとめ、それぞれ債務不履行に陥りそうなリスクを計算し、SPV経由で、投資家に少しずつ商品として販売することによってリスクを最小化する」
カッサーノはAIGをCDSのビジネスに進出させ2005年にはこの分野の大プレーヤーに。「不遜に聞こえるかもしれませんが、理性が及ぶかぎり、この取引で1ドルでも失うシナリオはとうてい思いつきません」。上司のマーティン・サイバンも同意した。「だから夜も安心して眠れるのだ」
「ロバート・ルービンはその人事に反対した。「トレーダーがほかの分野で成功したためしはない」ルービンはウィンケルマンに言った。「本当に大丈夫かな?」 「あなたの経験はお起きに参考になるけど、ロイドは大丈夫だと思う」ウィンケルマンは答えた。」
「クリントン政権の圧力下で、(ファニーメイとフレディーマックの)両社はサブプライム住宅ローンを引き受けはじめた。その動きは、これで誰にとっても持ち家が夢でなくなるという論調で報道発表されたが、普通の基準では家が持てない人にローンを提供するのは、そもそも危険なビジネスだった」
リーマン・ショック・コンフィデンシャル』上巻340pにある「2007年の(バークレイズの)ダイアモンドの収入420億ドル」というのは4千2百万ドルの間違いですね。さすがに多すぎます。
フラワーズがNYで同伴していたのがジェイコブ・ゴールドフィールド。ゴールドマンがLTCMを支援した際に、この会社の全情報を自分のノートパソコンに不正にダウンロードした人物。
アメリカの金融機関の経営者は、社内の激烈な競争を勝ち抜いてきただけあって、煮ても焼いても食えそうもないのばかりですね。
JPモルガンは、リーマン、メリル双方のクリアリング・バンクであり、さらにAIGの顧問だった。ダイモンは誰よりも事情を把握していたんですね。
本は、ポールソンがリーマンに破産申請を促す電話をSECのコックスにさせたところ。
リーマンの取締役会にはIBMの元会長ジョン・エイカーズやヘンリー・カウフマンなど錚々たるメンバーですね。そして今その取締役会がリーマンの破産申請に関する投票を行い、可決されたところ。
元GSでJ.C.フラワーズ社会長で新生銀行取締役でもあるクリストファー・フラワーズってほんと曲者だな。メリルについてBoAに公正意見書を書き送り、フォックスピット・ケルトンと合計で手数料として2000万ドルを得ることになっている。一週間みたないあいだの稼ぎ。
当時はリーマンの次はメリルが危ないと見られていたんですね。2008年9月14日の深夜、BOAとメリルの合併が発表され、ついで15日の午前1時にリーマンの連邦破産法11条の申請が発表された。
「JPモルガンとゴールドマンにAIGを救済させようと決めたのは(ニューヨーク連邦準備銀行総裁のティモシー・)ガイトナーだった」
ダン・ジェスターは元ゴールドマン副CFOで、財務省特別顧問。
「生真面目な経済政策担当次官補フィリップ・スウェイゲルは、大胆に行動すべきであり、政治的影響を恐れて問題解決から目をそらしてはならないと強調した。「日本の二の舞になってはいけません」」
リーマンがチャプター11、AIGが政府に救済された後も、モルガン・スタンレーは資金流出にみまわれ、資金が枯渇しかけていたんですね。
東京のモルガン・スタンレー証券社長ジョナサン・キンドレッドがMSのCFOケラハーに電話「面白い話です。いま三菱から電話があった。取引したいそうです」。この電話は晴天の霹靂だった。三菱UFJの玉越会長がアメリカに投資することはないと発言していたからMSは三菱を選択肢から排除していた。
「ケラハーは、驚くと同時に疑問も感じた。以前にも別の日本の銀行と仕事をした経験から、日本の銀行はつねに動きが遅く、リスクを嫌い、きわめて官僚的であるという評判どおりだと思っていたからだ」
MSとワコビアとかGSとワコビアの組合せの話もあったんですねえ。GSとCitiとか、JPMとMSとかも検討されてますね。中国のCICの名前も。GSとCitiはCitiが拒否。JPM側はMSの内容が悪すぎると判断したようですね。
銀行持ち株会社になり、「充分な預金を確保し、さまざまな規則にしたがえば、連銀の貸出枠から短期融資が受けられる」
「「おいおい、日本人のころはわかっているだろう。彼らはことを起こさない。迅速に動くことはぜったいにない」ポールソンは言い、中国かJPMとの取引にもっと集中すべきだと示唆した」
「「助かった。これで解決だ!」ジェイミー・ダイモンは叫び、JPMの役員フロアの廊下を走って、ジェイムズ・リーのオフィスに飛び込んだ。「マックから電話があった」ダイモンは安堵のため息をついて言った。「日本企業から90億ドルを獲得したそうだ!」」
「政治の問題は、大惨事を回避したからといって、功績は認められないことだ」(バーネット・フランク)
三菱東京UFJ銀行からモルガン・スタンレー宛に振り出された90億ドルの小切手
2012年11月24日土曜日
世界の経営学者はいま何を考えているのか―知られざるビジネスの知のフロンティア
入山章栄さんの『世界の経営学者はいま何を考えているのか』はおもしろい。お薦めです。海外の最新の経営学をまとめて紹介する本は、今までなかったのでとても貴重だと思います。ヤバイ、経営学もちゃんと勉強したくなってきた。最前線というか知のフロンティアってどこもおもしろいよね。とくに経営学は仕事にも直接関係してくるし...
入山さん、本の冒頭、経営学についての三つ勘違いの最初に「アメリカの経営学者はドラッカーを読まない」を持ってきていて、「つかみはOK」ですね。日本人がなぜこれほどドラッカーが好きなのかは本当に謎です。
「これは確信を持って言いますが、アメリカの経営学の最前線にいるほぼすべての経営学者は、ドラッカーの本をほとんど読んでいません」
「アメリカのビジネススクールの教授の大半は、ドラッカーの本を『学問としての経営学の本』とは認識していないし、研究においてもドラッカーの影響は受けていない、ということです」「おそらくドラッカーの言葉は『名言ではあっても、科学ではない』からではないでしょうか」
「ビジネススクールにいる経営学者のするべき仕事とは、『企業経営を科学的な方法で分析し、その結果得られた成果を、教育を通じて社会に還元していく』ことであると、アメリカの主要なビジネススクールでは考えられているのです」
「真理の探究のためには、可能なかぎり頑健な理論を構築し、それを信頼できるデータと手法でテストすることが何よりも重要です。これは、他の科学分野、たとえば物理学や化学、あるいは経済学でも同じことです」
現在の世界のマクロ分野の経営学は主に三つの理論ディシプリンから構成されているそうだ。1)経済学ディシプリン、2)認知心理学ディシプリン、3)社会学ディシプリン。マイケル・ポーター、オリバー・ウィリアムソンは1、ハーバード・サイモン、ジェームス・マーチ、ダニエル・レビンサールは2。
近年は企業間でハイパー・コンペティションが進展していて、もはやライバルとの競争を避けるというポーターの競争戦略では不十分らしい。ユニークなポジションを取りつつ攻めの競争行動が有効である可能性があると。
情報の共有化は重要だが、組織全員が同じ知識を持つことは非効率であり、むしろだれがどの知識を持っているかを組織メンバーが正確に把握することが重要だと。日本企業では、たとえば総合商社が優れたトランザクティブ・メモリーを持っているのではないかと。
元コンサルとかの著名ブロガーが書く、独善的な「なんちゃって経営論」や「とんでもビジネス論」を読む時間があれば、入山さんが紹介しているアメリカの経営学者の論文を読む方がはるかに有益ですね。でも社会人だとなかなか論文にアクセスできないかも。
『Myles Shaverが1998年に「海外子会社設立時に独自資本と買収のどちらがいいか」についての論文で指摘するまで、経営学者が「内生性の問題」に無関心だった』というのは、驚くべきことだなぁ。
「『当面の事業が成功すればするほど、知の探索をおこたりがちになり、結果として中長期的なイノベーションが停滞する』というリスクが、企業組織には本質的に内在しているのです。これが『コンピテンシー・トラップ』と呼ばれる命題です」
『コンピテンシー・トラップ』の命題を、5年前の某弊社に捧げよう...
経営学のコンセンサスの一つに「イノベーションを生み出す一つの方法は、すでに存在している知と知を組み合わせることである」ということがあるそうだ。実はこれと全く同じ事を星新一が自分の小説を書く方法として語っている。また、イノベーションという概念の生みの親ともいえるシュンペーターも次のように述べているそうだ。
「他のものを創造すること、あるいは同じものを異なる方法で創造することは、これらの構成素材・影響要素を異なるやり方で組み合わせることである。いわゆる開発とは、新しい組合せを試みることにほかならない」
欧米亜ではビジネスを科学的に研究しようとしてますが、なぜか日本では少ないようですね。
日本、米国、欧州はそれぞれ企業文化も違うので、ビジネスの科学的な研究の結果をそのまま日本に持ち込んでもうまくいかないかもしれませんが、少なくとも科学的に研究する手法には学ぶべき点は多いと思います。
日本企業では、一人ひとりはとても優秀なのに、それを活かせなくて全体としてはパフォーマンスが悪いという例が多いんじゃないかと思います。マネジメントを科学的に研究する米国の手法をうまく活かせば、日本企業にはまだ伸びしろがあるんじゃなかろうかと感じているところです。
2011年8月28日日曜日
「日本電産 永守イズムの挑戦」読了
この本はおもしろかったです。お薦めします。文庫化にあたり、永守社長のインタビューなどが加えてあるので、文庫版を買ったほうがいいです。「海外企業の場合は、業績の悪い会社を買ってはいけません。海外企業の場合には、高い高級品を買ったほうが、たとえ買収価格が高くても、悪い会社を買ってとんでもない化け物をつかむよりも、リスクが少ない。安物にだまされるよりいいということです。
(資本参加する企業のサイズが大きくなると買収リスクが高まるのでは?との質問に) いえいえ、必ずしも規模の大きいほうがリスクが大きいということはないのです。人材がいますから、リスクはむしろ小さい。むしろ中途半端な規模の会社のほうがリスクは高いと思います。
人材がいれば、こちらが指導してあげれば、それでやってくれます。規模の小さい会社の再建も大きい会社の再建も、同じだけ時間はかかるし、私の労力はほとんど変わらないのです。それなら、大きい会社を買収したほうがいい。」
巻末の「永守重信語録」からいくつか抜粋
「雇用創出こそ企業の最大の社会貢献である。
仕事が達成できない理由に”人が足りない”からというのが口癖になっている幹部がいる。そういう部門をよく観察すると一番教育ができていないし、工夫も不足している。
チャレンジのないところから決して成功は生まれない。何もしない者より、何かをしようとした者を応援する。そんな社員に拍手を送る会社であり、経営者でありたい。
『ノー』の連発からは何も生まれない。『すぐやる』『必ずやる』『出来るまでやる』という、常に前向きな姿勢をもってこそ、すばらしい成果が待っている。」
2011年4月16日土曜日
ユニクロ帝国の光と影

「ユニクロ帝国の光と影」を読んだ。山口の田舎から出てきて、ファーストリテイリングを世界的企業に成長させた柳井社長には前から興味があった。私は、合理的経営を愚直に実践し続けることで会社を成長させた経営者として、ウォルマートのサム・ウォルトン、ヤマト運輸の小倉昌男さんとユニクロの柳井正さんを尊敬している。
柳井社長とファーストリティリング側からの情報提供量が少ない中で、苦労してまとめた本という印象。柳井社長の父・等に関する情報と中国工場への取材に基づく情報が、これまでの「ユニクロ本」にない新しい付加価値だと思う。
第八章が柳井社長へのインタビューになっているがそれだけでは分量が少なく本として成り立たないので、「一勝九敗」や「成功は一日で捨て去れ」からの引用とか、元社員へのインタビュー、柳井の父・等についてや、中国工場への取材なども加えてある。
柳井社長は影響を受けた企業としてデルをあげているが、オリジナリティよりも「業界の先例を研究してそれに改善を加えるのがユニクロ流」なのはマイクロソフト的だし、大きく成功しているにもかかわらず病的なまでに強烈な危機感を持ち続けているところはビル・ゲイツに似ている。
SPAとはGAPの造語でSpecialty store retailer of Private label Apparelから3文字をとったものだが、この本は、ユニクロが日本で最初の本格的なSPAになれたことが成功の要因と結論づけているようだ。また、小郡商事からのユニクロ商法の原点として(1)返品なしの買取仕入れ、(2)安売りが武器、(3)単品ごとの管理をあげている。
あとは当たり前のことを当たり前にこなしていって成長した感じ。あたりまえのことをあたりまえにするのも難しいのだが。著者は柳井のことを「非情の人」として書きたいようだが、この程度のことはどこの経営者でもやっている当たり前のことだと思う。後継者が育っていないことも、どこの企業も悩んでいる問題であってユニクロだけの問題ではないだろう。
この本では玉塚元社長の更迭を重要な出来事として追っているが、柳井社長の玉塚氏に対する評価は非情に手厳しい。だからこそ更迭したのだろうが。玉塚氏は更迭後に、澤田氏とリヴァンプを設立し、いまはローソンの副社長に就任している。
ブラトップの開発責任者で2008年に「日経WOMAN」の<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>に選ばれた、執行役員の白井恵美氏にいたっては、<周りの人と協力できないし、自分のことをすごく才能があると勘違いしているが、仕事が全くできない人>とばっさり切り捨てている。
ユニクロの柳井社長が尊敬する経営者はウォルマートのサム・ウォルトン、ダイエーの中内功、日本マクドナルドの藤田田。
柳井流の厳しい経営を表す言葉としてよく引用される「泳げないものは溺れればいい」と言う言葉は、実はビル・ゲイツのことを書いた本からの引用らしい。
ファーストリテイリングにおける2010年での株主構成比は柳井夫妻と二人の息子の一家4人で45.8%。
2010年2月7日日曜日
コーチング
土曜日を丸一日つぶして親会社の「マネジメント研修」を受けてきた。
「マネージャーの役割」、「部下を知るコミュニケーション」、「チーム力を高めるリーダーシップ」について少人数のグループに分かれて議論したり、ロールプレイイングしたり。
丸一日費やして、おれのマネージャーとしての能力は向上したのか?
う~ん、なんだかなぁ。いろいろやった割には何も変わっていないな。
こういうのって、MBAのケーススタディをやった後に感じるものと同じ胡散臭さを感じるのだよなぁ。結局、『正解というものはないので、皆さんで考えてください』ということになってしまうのよなぁ。
内容が系統立っていない。準備された資料も”セルフアセスメント”という21項目のチェック表、”部下のデータベースを作るための質問”40問、チームビジョンを明確にするための質問例10問の3つだけでA4で6枚程度。この程度で、この研修にはいくら金がかかるんだろうな。
最後に参考文献ということでこの会社の社員が書いたコーチング関係の本がずらっと出ているが、タイトルが微妙に違うだけで中身は殆ど一緒なものを焼きなおして出しているんだろうなということが、タイトルを見ただけで想像できる。丸一日かけてこんなことをするより、このなかのどれか一冊(どうせ中身は同じなので)を配ったほうが効率的なのでは。
今日のコーチ(41歳)が元コンサルと最初に聞いてしまったのも影響したかも。コンサルと聞いただけで胡散臭さを感じてしまうのよね。社会におけるコンサル会社の存在意義をまったく感じられない。まあ、オレが偏っているんだとは思うが。
前に古本屋で買ったまま、ツン読になっている『ザ・コンサルティングファーム 企業との危険な関係(Dangerous Company)』でも読んでみるか。
「マネージャーの役割」、「部下を知るコミュニケーション」、「チーム力を高めるリーダーシップ」について少人数のグループに分かれて議論したり、ロールプレイイングしたり。
丸一日費やして、おれのマネージャーとしての能力は向上したのか?
う~ん、なんだかなぁ。いろいろやった割には何も変わっていないな。
こういうのって、MBAのケーススタディをやった後に感じるものと同じ胡散臭さを感じるのだよなぁ。結局、『正解というものはないので、皆さんで考えてください』ということになってしまうのよなぁ。
内容が系統立っていない。準備された資料も”セルフアセスメント”という21項目のチェック表、”部下のデータベースを作るための質問”40問、チームビジョンを明確にするための質問例10問の3つだけでA4で6枚程度。この程度で、この研修にはいくら金がかかるんだろうな。
最後に参考文献ということでこの会社の社員が書いたコーチング関係の本がずらっと出ているが、タイトルが微妙に違うだけで中身は殆ど一緒なものを焼きなおして出しているんだろうなということが、タイトルを見ただけで想像できる。丸一日かけてこんなことをするより、このなかのどれか一冊(どうせ中身は同じなので)を配ったほうが効率的なのでは。
今日のコーチ(41歳)が元コンサルと最初に聞いてしまったのも影響したかも。コンサルと聞いただけで胡散臭さを感じてしまうのよね。社会におけるコンサル会社の存在意義をまったく感じられない。まあ、オレが偏っているんだとは思うが。
前に古本屋で買ったまま、ツン読になっている『ザ・コンサルティングファーム 企業との危険な関係(Dangerous Company)』でも読んでみるか。
登録:
投稿 (Atom)










