2010年8月30日月曜日

実務家と理論家で意味が異なる債券用語

債券用語は同じものを異なった呼び方で呼んだり、同じ言葉を別の意味で使ったりして混乱しやすい。
スポットレート r(t)
実務家は割引債イールドの意味で使う。この場合のtは満期。理論家は短期金利の意味で使う。離散時間では時点tから始まる1期間の割引債イールド、連続時間モデルでは時点tにおける瞬間的割引債イールドを指す。
フォワードレート f(t、T
理論家は、離散時間モデルでは時点tにおける将来時点TからT+tまでの1期間における割引債イールド、連続時間モデルでは、時点tにおける将来時点Tの瞬間的な割引債イールドをさす。一方、実務家は現在の割引債イールドから計算される将来時点の利回りをさすことが多く、こちらはインプライド・イールドあるいはインプライド・フォワードレートと呼ばれる。

2010年8月29日日曜日

初校をお願いいたします

田舎に帰っている間に、ジャーナル編集事務局から「ゲラが出来ましたので、初校をお願いいたします」というメールが来ていた。とりあえず、大掛かりなドッキリカメラではないようだな。
ネットで調べると、「初校」とは「校正者が最初の校正を終えること、また最初の校正を終えたゲラ刷り」のことらしい。自分の論文が見慣れたアナリストジャーナルの書式に収まっているのをみると感慨深い。それでは、人生で初めての初校にとりかかる。

2010年8月28日土曜日

ポップ・ソングとして完璧



田舎からの帰りの新幹線で『Ride on Time』(山下達郎)、『Pet Sounds』(The Beach Boys)、『What's going on』(Marvin Gaye)を続けて聴いて、いい気持ちになった。
山下達郎は自分のアルバムのなかで『Ride on Time』が一番好きだといっていた。その一曲目が『いつか』である。ポップ・ソングとして完璧な曲だと思う。

「めまいするほど速い毎日の時の波
押し寄せて流される冷たそうな人の海

だけどいつまでも顔を曇らせ
つらい日を送ることはない

SOMEDAY 一人じゃなくなり
SOMEDAY 何かが見つかる」

作詞は吉田美奈子、作曲は山下達郎である。何度、聴いたことだろう。今聴いても全然古くない。オレにとっては希望の歌である。演奏もいい。特に伊藤のベース。
聴いたことのない人は、是非一度聴いてほしい。
楽曲の『Ride on Time』はアルバム・バージョンよりはシングル・バージョンのほうが好き。でも、最後のアカペラはかっこいい。(ちなみにシングル・バージョンは『Greatest Hits! of Tatsuro Yamashita 』で聴くことができる。Sparkleもお奨め)。
続いてThe Beach Boysの(というかブライアン・ウィルソンの)『God Only Knows』。ポップ・ソングのなかで、最も美しい曲だと思う。特に最後の対位法的なコーラスの部分の美しさは筆舌に尽くしがたい。バッハのフーガと並ぶ美しさだ。オレのやつは”Pet Sounds Sessions"というマニアックなコレクターズ・アイテムに入っていたやつで、(モノラルを適当にステレオ化したのではなく)元の音源からリマスターしてステレオ化したやつ。オリジナルのモノラルもいいが、『God Only Knows』はこのステレオのほうが好きだ。
最後に『What's going on』。これもポップ・ソングとして完璧。何度聴いても飽きない。すごいとしか言いようがない。
『Ride on time』を初めて聴いたのが高3のとき、『Loveland, Island』を聴いたのが一浪の暑い夏のとき。あのころの鬱屈とした日々での救いが達郎の音楽だった。


2010年8月25日水曜日

ファイナンスで呼び名が異なる同義語

債券分析におけるパーシャル・デュレーションとキーレート・デュレーションは同じもの。グリッド・ポイント・デルタも多分同じだと思うけどこれは自信がない。
確率的割引ファクター(stochastic discount factor)、状態価格デフレーター(state price deflator)、状態価格密度(state price density)、プライシング・カーネル(pricing kernel)は同じもの。
同じ概念に異なる名前があると、最初は非常に戸惑うので統一して欲しいと思うが、それぞれの用語にいろいろと由来があるので、慣れてくると逆に味わい深い。

pound keyとhash key

外資系の電話会議で、最初に電話オペレータが「質問がある場合はpound keyを押せ」というのだがpound keyが「#」のキーだと知らなくて苦労した。米国以外ではhash keyと言うのね。ツイツターのハッシュタグを見ていて昔のことをふと思い出した。
ここ3週間くらいドル円は85円前後で方向感がなかったのに、マスコミやTVに出でているエセ経済学者が「どんどん円高になっている」と表現していて違和感があった。政治家も余計なことを言わなければいいのに。
「異常な円高」というからには「正常な円高」もあるんだろうな。異常と正常の違いを定義しないと、だれも納得できないでしょう。そもそもドル円の85円が「異常」だとしたら、異常な状態は長続きはしないので、ほっとけばいいということになる。

2010年8月23日月曜日

日本の経済学者

先進国も新興国も長期金利が急低下している。おかげでエマージングのドル建てソブリン債に為替ヘッジ付きで投資している私の投信もすごく儲かっている。そろそろ一回利食いで売りたくなるくらいだ。
ブラジルやロシアの3%後半というのは買われすぎの気がしないでもない。
アメリカの証券会社のエコノミストが「アメリカは日本みたいにはならない」とあいかわらず強気のレポートを出しているようだが、私には欧米も日本のここ十数年の動きをトレースしているように見える。アメリカが日本のようになるのかどうかは、これから証明されるのだが、どちらになるかは非常に興味深い。
欧米が日本経済の動きを追っているようにみえる現在というのは、日本の経済学者にとっては千載一遇のチャンスだと思う。日本で起きたことを厳密に分析して英語で発表すれば欧米の経済学者にとっては非常に興味深い物になると思う。
1920年代の世界大恐慌がケインズ経済学を生み出したように、日本の平成不況が新しい経済学を生み出すことを期待している。

2010年8月21日土曜日

日本の投信の問題点

いつか、日本の投資信託の問題点を整理して書こうと思っていたのだが、立田博司さんが日経ビジネスのウェブサイトで既に上手にまとめられていたので、リンクを張っておく。ここに書かれていることは概ね正しい。


Bruce Kovnerはすごい


『More Money Than God』の3章まで読み終えて4章のSorosに入る。3章はCommodities Corp.のMichael MarcusとBruce Kovnerについて書かれていた。左がMarcus、右がKovner。この二人は『Market Wizards』の一人目と二人目。MarcusがKovnerを採用して教えたらしい。Kovnerはハーバードで政治学を勉強したがPh.D.は取れなかったらしい。
WikiによるとKovnerの2009年の運用資産は140億ドルで、個人資産が35億ドル(約3000億円!)。
『Market Wizards』によると1978年から1987年の10年間で平均リターンが87%!!。これはすごい。2000ドルが10年で百万ドルになる。1987年当時のインターバンクの為替、先物市場で最大のトレーダーの一人。一方で、インタヴューを全て拒否しており、プロフィールを低く保っている。"I fell in love with the yield curve"と語っており、金利系の裁定取引などもやっていたようだ。
本もたくさん読んでおり、トレーダーらしくない、落ち着いた学者タイプのようだ。以下、『Market Wizards』より。
「トレーディングのエキスパート・システムの開発にともなう問題は、トレーディングと投資のゲームの”ルール”が変わってしまうことだ。
ポジションを取るときは、常に事前にストップ(損切り水準)を決めておく。それは私が寝ることのできる唯一の方法だ。
私が教えた30人で生き残れたのは5、6人だ。よいトレーダーは強く、独立しており、行き過ぎの局面で逆の行動をすることができる。他人がポジションを取りたくないときに、ポジションを取ることができる。正しいサイズのポジションをとることができるほど自分を律することができる。欲深いトレーダーは、いつも吹き飛んでしまう。
巨大なトレーダーが市場を動かせるとは思わない。短期的には可能でも、最終的には失敗する。
年間で損を出したのは1981年で16%。初めて商品市場で経験する弱気相場だった。強気相場と弱気相場では性質が異なった。また、マネー・マネージメントが貧相だった。相関のある多くのトレードを行っていた。そのため多くのリスク管理システムを開発した。自分の全てのポジションの相関に厳密な注意を払った。そのときから毎日自分のトータルリスクを推計している。
為替はIMMに対する裁定取引以外はインターバンク市場のみを使っている。24時間トレードできる。利益の50%から60%は為替取引から得ている。通貨のクロス(Crosses)が最も重要な取引。
私は、市場で付いている価格は正しい価格だと見なしている。私がやろうとするのは、その価格を変化させる何が起きているのかを分かろうとすることだ。よいトレーダーの仕事の一つは、別のシナリオを想像することだ。
全ての通貨に対してコール・レベルを設定している。ある通貨が設定したレンジを越えたら、呼び出す(call)ようにスタッフに指示している。
全ての通貨に対して、少なくとも週に一回はシナリオを作成している。レンジを想定し、それをブレイクしたときにどうするか(買うか、売るか)を決めている。
私にとって、市場分析はものすごく多次元のチェスのようなものだ。その喜びは純粋に知的なものだ。
一つのトレードがポートフォリオの1%のリスクとならないように非常に努力している。次にエクスポージャーを減らすために自分のトレードの相関を分析する。相関は日次で計算している。
クロス・レートはよりよいトレード機会を提供している。なぜなら注目している人が少ないから。一般的なルールとして、より少なく観察されているほど、よりよいトレードとなる。(The less observed, the better the trade.)
トレンドフォロー的なテクニカル・システムは高いインフレの時代は使えるかもしれないが、安定した、穏やかなインフレの時代にはそれぞれのテクニカル・システムが互いに潰しあうことになる。
If you don't work hard, it is extremely unlikely that you will be a good trader.
初心者トレーダーへのアドバイスとしては、まず第一に『リスク管理』が、よく理解すべきもっとも重要なことだ。次に『小さめのトレード』、『小さめのトレード』、『小さめのトレード』がアドバイスだ。自分が適切と考えるポジションの大きさに対して、少なくともその半分以下にすべきだ。素人トレーダーはポジションのサイズが5、6倍ほど大きすぎる。」

2010年8月18日水曜日

フェルメールとダリ


左がフェルメールの『レースを編む女』、右はフェルメールの『「レースを編む女」に関する偏執狂的=批判的習作』(笑)。
フェルメールもダリも大好きだ。スペインのフィゲラスにあるダリ美術館は面白いのでお奨めです。ダリは自分がフェルメールほどの才能を持っていないことを自覚していたのだと思う。そのために別の新しい、ダリしか表現できない世界を開拓できたのだと思う。

2010年8月17日火曜日

マリアバン解析


『数理ファイナンスの基礎』は数理ファイナンス全般に関して書かれており、とくにマリアバン解析と漸近展開について書かれているのが本書の特徴。マリアバン解析に関して書かれた書物は少ないので貴重(マリアバン解析については重川の『確率解析』も詳しい)。タイトルの「基礎」というのはあくまで「数理ファイナンスとしては基礎」という意味であって、ある程度(金融工学ではなく)数理ファイナンスに関して勉強してきた人でないと内容を理解するのは相当困難と思われる。少なくともシュリーヴの「ファイナンスのための確率解析2」を読んで理解できる人でないと厳しい。
マリアバン解析はICSの中村先生のコンピュテーショナル・ファイナンスの一回目の宿題に突然出題されて、さっぱり分からなかったものだ(笑)。中村さんはややサディスティック。でも、あの授業はもう一度受けたい。今なら理解できそう。

2010年8月16日月曜日

カルマンフィルタによるトレンド推定プログラム in C++


北川の『時系列解析入門』は昔の『時系列解析プログラミング』にモンテカルロ・フィルタの章を加えて、そのかわりにFortranのサンプル・コードのページを除いたもの(ちなみにサンプル・コードは今でも統計数理研究所の著者のウェブに公開されているはず)。俺が持っている『時系列解析プログラミング』は使いすぎてもうボロボロになっている。このFortranのコードをPascal(Delphi)に移植しながら、時系列分析に目覚めていったのだった。随分昔にPascalに移植したのでもう忘れていて、今回C++に移植しなおすことにした。
後ろに準ニュートン法の最適化プログラムも載っているのだが、めんどうくさいのでそこは『Numerical Recipes』の準ニュートン法dfpminを使うことにする。ついでにLU分解などのコードも『Numerical Recipes』のものを使う。『Numerical Recipes』はFunctorを使っているので、最初は使い方がさっぱり分からなかったのだが、Functorの使い方も勉強したので今は分かる。
ちなみに『Numerical Recipes』は少し高くてもCD-ROM付きのものを買うべき。1版のC,2版のC++のレシピーのコードとその使い方のexampleコードが付いている(残念ながら第3版のexampleコードは付いていないが1版、2版のexampleを見れば使い方は分かる)し、Fortran版、Pascal版のレシピー・コードも付いている。第3版のコードは随分と洗練されている。
最適化に関しては茨木、他の『最適化プログラミング』もお奨めだが、こちらも絶版で中古も高い値が付いている。

2010年8月15日日曜日

練習ラウンド @佐野ゴルフクラブ


6月6日以来、2回目となる佐野ゴルフクラブでICS同期と練習ラウンド。in 64、out 75 で139。前回の143よりは少しいい。雨が時折降る。暑くなくてよかった。昼めしを食べてリラックスしすぎたためか、後半に突然スイングが乱れた。アイアンをもっと練習しないと。
途中、ミマさんがスーパーショット。ボールは前のティーマーカーにピンポイントで当たり、そのまま真後ろに跳ね返ってきて、後ろで見ていたわれわれを直撃しそうになった(笑)。あの小さいティーマーカーは当てようとしても絶対当たらないなぁ。すごい確率だと思う。ミマさんは二日酔い&寝不足でぐったりしてたり、なぜか靴底が真っ二つにはがれたりしながらも、神懸りてきなパットを何本も決めていた。不思議だ。
佐野ゴルフクラブはフェアウェイはきれいなのだが、今年の夏の暑さでグリーンがかなり荒れていた。そもそもベントグラスは関東以西の日本の夏には絶えられない。無理がある。ただし、おれのパットの調子が悪かったのはグリーンが荒れていたせいではない。
収穫は、30ヤード前後の距離を8番アイアンのハーフスイングで寄せることができるようになったこと。無駄なパットやアイアンを減らすことができればあと20くらいはスコアを伸ばすことができる気がする。

2010年8月12日木曜日

平成23年度 ICS入試説明会のご案内

ICSの入試説明会が行われるようだ。もう3年前か。あっ、という間だったな。

この学費で、あのクオリティの授業を受けられることを思うと、本当に割安だと思う。まあ、税金が使われているわけだが。特に金融業界や財務、M&Aに関連した仕事をしていて、自分の力を強化したいと思っている人にはお勧めです。
ただし、大学院なので手取り足取りは教えてくれません。あくまで自分から勉強する態度で臨まないと、お金と時間の無駄になります。華麗な転職が保障されているわけでもありません。

詳細はこちら

一橋大学大学院国際企業戦略研究科 金融戦略・経営財務コース(MBA)では、平成23年度入学対象者のための入試説明会を開催いたします。参加申込み等、入試説明会の詳細につきましては、下記概要をご覧いただきますよう、お願いいたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

-------- 記 --------

開催概要

日時:2010年9月8日(水)
【開場(受付開始)】 18:00~
【開演(説明会開始)】 18:30~ (20:15終了予定)
会場:学術総合センター2階 一橋記念講堂
東京都千代田区一ツ橋2-1-2
内容:1.金融戦略・経営財務コースの概略
2.講義内容・教員紹介
3.入試情報
4.在校生の声
5.卒業生の声
6.質疑応答
※閉会後:教員、在校生、卒業生との懇談会
(参加者が教員等と直接対話をする機会を設けます。)
参加費:100円(資料代として)
※当日受付にてお支払いください。
お申込み方法:(1)お名前、(2)ご所属、(3)ご住所(※参加票送り先住所)、及び、件名に「平成23年度入試説明会参加希望」とご記入の上、 下記メールアドレスまでご送信ください。
【申込み先】 ics-fs-opencampus2010@ics.hit-u.ac.jp
【申込期限】 2010年9月5日(日)
会場へのアクセス:竹橋駅(東京メトロ東西線)、神保町駅(東京メトロ半蔵門線・都営三田線・都営新宿線)各駅から徒歩4分。詳細は下記「交通案内」をご覧ください。
http://www.ics.hit-u.ac.jp/jp/fs/direction.html

ご注意

  1. このメールアドレス(ics-fs-opencampus2010@ics.hit-u.ac.jp)は申込受付専用の為、質問等をご記入されましても回答できかねますのでご了承ください。入学試験等に関するご質問につきましては、ホームページに記載されております所定のお問合せ先へご連絡くださいますよう、お願い申し上げます。
  2. お申込みは先着順で受け付け致します。受付完了後、確認メールを随時配信いたします。配信には、数日を要する場合がございますので、予めご了承ください。
  3. お申込みが定員(500名)に達した場合は、やむなくお断りの連絡をさせていただく場合がございます。
  4. 入試説明会開催の1週間程前に「参加票」をご送付させていただきます。送付先のご住所を必ずご記入ください。また、勤務先等への送付をご希望される場合は、企業名、部署名等も忘れずにご明記くださいますようお願いいたします。

2010年8月9日月曜日

連続時間のカルマンフィルタ4

高橋・佐藤の「モンテカルロフィルタを用いた金利モデルの推定」にも連続時間の確率金利モデルの状態空間表現について書かれていた。
Δtが十分に小さいとき、確率金利モデルの確率微分方程式に対するオイラー近似によってシステムモデルが導出される。
さらに線形確率微分方程式の場合のようにY(t-Δt)によってY(t)が解析的に解ける場合は、その表現を使うことで、exactなシステムモデルが与えられる。

だいぶ分かってきた。

2010年8月8日日曜日

リニア新幹線の想定ルート

今朝の日経の一面。南アルプスルート以外はありえないでしょう。長野県のエゴで多くの人が迷惑する。木曾谷ルートや伊那谷ルートにでもなったら、世界中の笑いものだよ。一部の人間のエゴのために全体の最適性が損なわれるということはやめにしないと。

連続時間のカルマンフィルタ3

状態のダイナミクスが確率金利モデルのように連続時間で定式化されているときに、カルマンフィルタの推移方程式をどう書き下せば良いのか悩んでいたのだが、ようやく分かってきた。
前から持っていて読んでいたLemkeの"Term Structure Modeling and Estimation in a State Space Framework"の8章にちゃんと書いてあった(覚えていなかった)。
『連続時間モデルの場合、困難なのはファクター過程のSDEから、離散時間の推移方程式に変換することである。SDEを離散化する必要がある。
基本的にはSDEを解いてX(t+1)がX(t)で表現できるように定式化すればいい。
個人的にこの"Lecture notes in economics and mathematical systems"というシリーズ(たぶんドイツのSpringerが出しているのだと思う)は好き。ただ、どれも値段が高いのが難点。

More money than God, Market Wizards, Commodities Corporation



"More money than God"を読んでいると、Schwagerの"Market Wizards"への言及があって懐かしかった。Schwagerの"Market Wizards"と"The New Market Wizards"の2冊は私の人生を変えた本だ。この本で初めてヘッジファンド、Jim Rogers、Michael Steinhardt、Paul Tudor Jones、Stanley Druckenmillerなどを知った。この2冊の本の中で、ヘッジファンドの大物運用者が驚くほど率直に自分たちのことを語っている。
トレンドフォローという運用戦略を強く意識したのもこの2冊を読んでからだった。トレンドをいかに推定するか、という問題から時系列分析、とくにカルマンフィルタに興味を持ち、今に至っている。

"More money than God"の3章にCommodities Corporation (CC) が出てくる。さっきWikipediaで知ったのだが、CCは1989年にオリックスの出資を受けた後、1997年にゴールドマン・サックスに買収されている。現在はGoldman Sachs Hedge Fund Strategiesという名前で、Goldman Sachs Asset Managementの一部になっているらしい。
"More money than God"によると、CCにおいて最も重要な要因は"トレンド・フォローイング"への変身だった。Frank Vannersonが"Technical Computer System"を開発してMichael Marcusなどのトレンドフォロワーを採用し、それまでの「ファンダメンタルズ分析とチャート分析」の会社からトレンド・フォローイングの会社に変わっていったそうだ。
"Market Wizards"の一人目がMichael Marcusなので、久しぶりに"Market Wizards"を読み返したくなった(内容はほとんど忘れているので)。


2010年8月7日土曜日

制御工学におけるラプラス変換の必要性

(1) 制御システムの数理構造を、実空間の世界f(t) から演算子sを用いた複素空間F(s)の世界に変換する。ラプラス変換はそのときのf(t) からF(s)に変換する基礎理論である。
(2) 物理学の制御システムは元を正せば実時間の微分方程式に帰着できるが、実学ではf(t)F(s)に変換し、演算子sの下で代数式としている。
(3) ラプラス変換で用いる演算子sは、実時間との間に次のような対応がある。
d/dt → s (ただし、微分可能なとき)
S dt → 1/s (S は積分記号)
したがって微分方程式を演算子sを用いて表すことができる。
(4) を用いた伝達関係法のメリット
a. 微積分を用いた数理解析がまったく不要になり、すべて代数計算で解析できる。
b. システムの動きや論理がブロック線図で考察でき、さらにシステムの組み替えまでも図式で行える。
c. 実学の上で必要となる主な位置関係について、標準形や変換表が利用できる。

ふうむ。時系列分析でフーリエ変換すると計算が楽になることがあるのと同じイメージか。

フーリエ変換ではf(t) 波形をすべて周波数成分のみの合成で表しているが、ラプラス変換では、時間的な変化を表す過渡項e^-atと定常的な周波数成分を合成したものと考える。
以上から、次のことがいえる。

(1) f(t) 波形を周波数成分の合成として表したいとき、言いかえればf(t) の過渡項を分けて考えないときは、フーリエ変換結果のF(jω) が対応する。
(2) f(t) を過渡項と定常項を分けて考えるときはF(s)が対応し、s=a+jωの実数部が過渡項、虚数部が定常項となる。
(3) したがってF(s)の定常状態を解析するときは、s=jωとおくことができ、求められたF()を周波数伝達関数とよび、伝達系の周波数特性を求める基本式となる。

そういうことか。
無限級数を線形近似するためのパデ近似をNumerical Recipesでチェックしておくこと。

2010年8月5日木曜日

連続時間のカルマンフィルタ2

状態変数のダイナミクスは確率微分方程式で記述される。でも観測方程式は離散時間。推移方程式は確率微分方程式の解(積分方程式)を用いて離散近似したVARモデルになって、結局離散時間の状態空間表現と同じようなものになる。係数は指数関数的なものになる。
連続時間のモデルについてはDurbin/Koopmanの『状態空間モデリングによる時系列分析入門』に分かりやすい例が載っていた。この本は結構いいね。ちゃんと読もう。もうAmazonでは手に入らないようだな。
津野の『Kalman-Bucyのフィルター理論』に目を通したけど、ほとんど頭にのこっていないな。もう一度読み直そう。
フィルター問題とは、「G可測な確率変数X(ω)に対して、H可測な確率変数、すなわち時点tで観測可能な確率変数X*(ω)で、X(ω)を最適に近似するものを求める」こと。
最適性の基準は2乗平均ノルムを採用する。
Ωのσ加法族H⊂Gをとる。ヒルベルト空間L2(ΩG)の元XのL2(ΩG)への直交射影のx*のHへの条件付期待値である。
(X,{Yt})がガウス系であれば「Xの観測可能空間への直交射影」と「Xの観測空間への直交射影」は一致する。

2010年8月3日火曜日

自分で企画しろ

ワインと音楽の夕べ。
三浦先生のラスト・メッセージは「自分で企画しろ」だった。「僕は最後の10年間は、自分で大学院を作ってそこで働いた。だからおもしろかった。優秀な人が大企業の中でつまらない人になっていってしまった。今は不景気だから、逆にやりたいことができるはず。どんどん自分で企画して実行していけばいい」というような内容だったと思う。シャンパンとワインで完全に酔っていて細部は違うかもしれない。
チェロとバイオリンの二重奏。バイオリンの表現力は幅広い。いろいろな音が出せる。後半はアイススケートで使われるような有名な曲が続いた。バイオリンのきれいな女性は中川先生の同級生だそうだ。中川先生の司会はとても和む。
師匠にお礼をいっておく。あと2,3個書けと言われた(^^;)。