2010年10月31日日曜日

世界国債暴落 世界を蝕む日本化現象

高田創さんは信頼している人のひとり。現在、みずほ証券金融市場調査部長チーフストラテジスト。

 「世界国債暴落」というややセンセーショナルなタイトルだが、中身は真面目で丁寧な世界国債の現状分析になっている。ギリシアの実質デフォルトや世界的に財政赤字が拡大している環境のなかで、日本や世界の国債市場をどうみればよいかが書かれており、非常にタイムリーな出版だと思う。
 個人的には第7章の「ソブリン格付けは信じられるのか」がおもしろかった。ムーディーズの「ソブリン格付け」の考え方が分かりやすく整理してある。簡単に言うと、 ①利払い能力、 ②借り換え能力、③財政均衡能力。それを踏まえて「バランスシート調整下のソブリン格付けの考え方」が述べられている。
 2002年5月にムーディーズは日本国債をA格まで引き下げた。その7年後に一転して日本国債の格付け引き上げを発表している。背景に、 ①ムーディーズの理論体系の転換、 ②日本国債の特殊性を加味した判断、 ③世界の日本化、を指摘している。
「国債はそんなに簡単に暴落しないと考えるのが」筆者達の結論的な認識である。
現在の投資環境はグローバルにつながっており、債券市場の影響が株式市場などにも直結することから、債券投資家に限らずあらゆる投資家必読の書ではないかと思う。
 なお、最初のページの脚注でわざわざK氏について触れているのは、上品な著者らの皮肉に聞こえる。

2010年10月30日土曜日

経済、金融政策を考えるときに読んでおきたい本

私が読んで、参考になったと思った本。でも、いまだと結構、絶版になっているようだな。経済合理性のためとはいえ、しょうもない本が増刷される一方、重要な本がどんどん絶版になる日本の出版業界。重要な本は電子出版での流通が望ましい。小説でも重要な本があっという間に絶版になる日本。今読めなくても、将来絶版になる恐怖からついつい買って積読に。ル・クレジオの「巨人たち」とかも再版してくれないかな。





2010年10月26日火曜日

マクロモデル分析の新潮流 塩路悦郎 一橋大学教授

日経新聞の「やさしい経済学」のコーナーで塩路教授が解説していた。
「新しいマクロモデルとは、旧来型における機械的な家計・企業の前提を、将来についての予想も考慮しながら最適な行動を選ぶ家計・企業の前提に置き換えようとする試みなのである。
これまでのマクロ経済学では「古典派」対「ケインズ派」の対立と見られてきた。古典派モデルの特徴は価格が完全に「伸縮的」だと想定する点にある。もう一つの特徴は実物変数が名目変数とは無関係に決定される、という性質。
新しい動きの最初が、1980年台前半にプレスコット米アリゾナ州立大学教授らが提唱した実物的景気循環(リアルビジネスサイクル=RBC)理論。古典派の流れをくんで価格は完全に伸縮的とされ、名目変数は重要な役割を果たさない。古典派との違いは家計・企業は将来の経済状況や政策を予想しながら現在の行動を決定すると想定した点にあった。比度日とは経済の構造や政府の意図を理解して合理的な予想を立てるとされる。
重要な要因は生産能力である。生産能力は生産要素(生産設備と労働時間)の量とそれら生産要素がどれだけの生産性を発揮するかで決まる。生産性の高い経済ほど起業は生産設備の増強に積極的になり、高くなった賃金につられて家計もより長い時間働こうとするからである。RBC理論では景気変動の主な源泉は生産性の変動と考えられた。好景気とは通常以上の勢いで生産性が伸びているときで、生産性が通常の伸び方に比べて一時的に鈍ると不況になる。
ケインズ派では価格は短期的には粘着的とされ、生産は基本的に需要で決まると考えられていた。ケインズ派の多くは『長期的には生産性がGDPを決めるが短期的には価格の粘着性によって需要がGDPを決める」という話を展開する。
RBCは「長期も短期も生産性が大事だ」とする。
1990年代中ごろから「人々は将来について予想を立てつつ最適に現在の原則を尊重しつつ、価格の粘着性という新しい要素を加えた研究が盛んになった。これが「ニューケインジアン」。景気の将来予想が悪いときには現在の物価上昇率も低めになる。
ニューケインジアンのモデルは次の3本で表せる。第1が総需要を決定する式、第2がフィリップス曲誠意、第3が金融政策ルール。
DSGE(Dynamic Stochastic General Equilibrium)「動学的確率的一般均衡」。DSGEはこうした特徴を持つマクロ経済理論全てを含む点に注意。現時点で有力なDSGEはRBCとニューケインジアン。
3つの困難がある。第1は、金融政策の効果が「個別企業はたまにしか価格を変えない」という仮定から導かれている疑念。第2はこのモデルが現実のデータにうまく合うには、労働市場に何か不完全性があるとみなすことが大事。第3は、現在のモデルでは、今回の金融危機のような大きな出来事の原因を説明する力があまりない。」


2010年10月23日土曜日

経済学とはなにか (根井雅弘)

「自由放任主義の下では大恐慌のように大量失業が発生する可能性があるので、総需要管理を慎重に行い経済を完全雇用に近い状態へ誘導、完全雇用が実現すれば市場メカ二ズムに信頼を置く新古典派の復活、というサミュエルソンの新古典派総合は1970年代前半までは、経済学界の主流派だった
実際は、「総合」というよりは、両者が並列している妥協の産物であった。ケインズ経済学が中心のマクロ経済学と、一般均衡理論が中心のミクロ経済学が、両者をどのように連結するべきかという問題をよそに個々バラバラに研究・教育されていた
アメリカのケインジアンは、歴代のアメリカ大統領に雇用維持のための財政赤字は無害だと説いて、冷戦下の「軍産複合体」に利用されやすい状況をつくってしまったのではないか。本当はケインズ革命が成就したあとに「雇用の内容」を問う方向へ経済学者の関心が向かうべきであった
J・ロビンソンは「不確実性」の下での意思決定を問題の中心においたことが『一般理論』の核心であると解釈していたので、「均衡」分析によって『一般理論』をモデル化したIS/LM(ヒックスの初期の仕事)を決して認めなかった
AからBへの距離はBからAへの距離と同じである。しかし時間においては、今日から明日への隔たりは24時間であるのに、今日から昨日への隔たりは、詩人たちがしばしば注意してきたように、無限であるそれゆえ、時間に対し空間的比喩を適用すると、それはきわめて扱い難いナイフのようなもので、均衡概念はそれを振り回す人の腕をしばしば傷つけるのである(ジョーン・ロビンソン『資本理論とケインズ経済学』)
1960年代後半からアメリカがベトナム戦争の泥沼に陥り、軍需を含めた総需要が過大になるにつれて、インフレ問題が論争の的になってきた。サムエルソンやソローなどのアメリカのケインジアンはフィリップス曲線をできるだけ内側にシフトさせる所得政策を提言したが、インフレ期待が厄介に
長期的にはフィリップス曲線は自然失業率を通る垂直線となる、という「自然失業率仮説」の登場によってフィリップス曲線の信頼度が著しく低下したことは間違いない。それは同時に、主流派であった新古典派総合が次第に影響力を失っていく過程でもあった
ロバート・ルーカスやトーマス・サージェントたちは、合理的期待形成仮説をもって、人々が政策の効果に関して事前に合理的期待を形成するならば、短期的にも、政策の効果はないと主張して、一躍、学会の注目を浴びるようになった
ルーカスの仕事の核心は、マクロ経済学をミクロの経済主体の最適化行動によって基礎づける方法論を確立したこと。現代の経済学界は、一部の例外を除いて、ルーカスの方法論を受容しているといってよいだろう
ルーカスは、『非自発的失業』という用語自体を無用なものと考えている。『失業者』とは将来もっと条件のよい職に就くために『職探し』をしている人たちと捉えられる
わが国の学界でも少数派になったケインジアンの吉川洋は、ルーカスのあとに登場した『リアル・ビジネス・サイクル理論』によって、新古典派は「終着駅」に着いたと解釈している
マンキューらのニューケインジアンは新古典派総合と同じ欠陥を持っており、主流派の一角に食い込んではいるものの、『長期的雇用理論』としてのケインズ経済学の再生に関心を持っている人たちの問題意識とはかけ離れていると判断せざるを得ない
社会研究の知られることの少ない、知ることの困難な領域に深く分け入る際には、自らの仕事を注意深く進め、その限界を十分意識して進めるならば、すばらしい貢献を成し遂げることであろう(A・マーシャル『経済学原理』)
同時期に複数の学派が存在し、お互いに反目している場合、「対話」を通じて自分たちに足りないものを発見する方向に行けば生産的なものが生み出される可能性があるが、単にお互いが「反目」しあっているだけなら貴重な時間の無駄になる恐れがある」

経済政策を売り歩く人々(ポール・クルーグマン)


「政策プロモーターとは、政治家が聞きたがっていることを言って聞かせるエコノミストのことである。真剣な経済学者たちの考え方は、政策プロモーターのわかりやすいスローガンよりも真理へのよりよいガイドであるばかりではなく、より興味深いものであるという確信を得られれば幸いである。
経済的困難に際しては、政治的に利用しやすい経済学のアイディアが前面に出てくる。それは、しばしば明らかに誤っているのだが、真剣に考えることに耐えられない向きには、なるほどと思わせるような類のアイディアなのである
政策プロモーターの大きな特徴は、彼らがどこから来たかではなく、どういう言葉で話し、誰が彼らの話に耳を傾けているかという点にある。学者は大抵、他の学者を対象として論文を書く。仮に、もっと広く一般大衆を対象に書くとしても、常に自分の同僚の反応を頭の片隅においているだろう
その結果、学者は、自分や他の学者達が間違っていると考えていることは、いかに聞こえが良かろうとも発言することを控えるようになる。そして、学者の言葉の裏に潜むものは、どんなに簡単なことであっても、一般人が理解できないようなものであることが多い
一般人に売れるのは、ほとんどが政策プロモーターの著作である。なぜなら、テレビに出演する多くが政策プロモーターだからであり、またそれが彼らの仕事だからである。一般視聴者たちは、見るものをそのまま受け止め、それらは先入観として残ってしまうことになる
学者は、政策プロモーターを演じることもできるが、そうしているうちに学者であることを止めてしまう。少なくとも、学者仲間達は、彼のことを学者とみなさなくなってしまう。
政治家からすれば、政策プロモーターはきわめて役に立つ。学者と違って、彼らの見解はたやすく選挙民の関心をひきつけるものに転換させることができるから。特に、経済が不況に陥っているとき、政策プロモーターが高成長のマジックを呼び戻す方法を知っているとうそぶくときにはなおさら
テレビによく登場する人物は、大した専門家ではないというのが通説である。なぜならば、実際に研究をしている専門家は多くのテレビ出演をこなすほど暇ではないからである。また、テレビ番組の質の高さは、必ずしも高度な研究に関するものでなくてもよい」

政策プロモーターの典型が勝間和代だ。

2010年10月22日金曜日

行列指数関数(2)

Matlab/Scilabにはexpm()という行列指数関数が準備されている。Matlab/Scilabのexpm()では、スケーリングと正方化(scaling and squaring)されたパデ近似が使われている。
行列を対角化可能な場合は固有値と固有ベクトルに分解するmatrix decomposition methodがもっとも効率的。matrix decomposition methodはどこかで見たことがあると思ったら、中村先生のコンピュテーショナル・ファイナンスの2章の『至高のgenerator作り』でやったやつだな。あのときは1年後の格付け推移行列を求めた。

フリーのMatlabクローンであるScilabのサンプル・コードは以下のとおり。

*** sample code ******************************

A=[0 1 2; 0.5 0 1; 2 1 0]
Asave=A
expm(A) //Scilabの元々の行列指数関数
A=Asave

//スケーリングと正方化 scaling and squaring

[f,e]=log2(norm(A,'inf'))
s=max(0,e+1)
A=A/2^s
X=A
c=1/2
E=eye(3,3)+c*A
D=eye(3,3)-c*A
q=6
p=1
for k=2:q
c=c*(q-k+1)/(k*(2*q-k+1))
X=A*X
cX=c*X
E=E+cX
if p
D=D+cX
else
D=D-cX
end
p=~p
end

E=D\E

for k=1:s
E=E*E
end
E1=E

//固有値と固有ベクトルによる行列の指数 matrix decomposition methods
//例1
B=[0 1 2; 0.5 0 1; 2 1 0]
[D,V]=bdiag(B) //Matlabのeig()の場合、DとVが逆の可能性があるので後でチェック
E=diag(exp(diag(D)))
V*E*inv(V)

//例2
B=[-49 24;-64 31]
[D,V]=bdiag(B)
E=diag(exp(diag(D)))
V*E*inv(V)

*** sample code *********************************

このScilabでの実行結果は以下のとおり
スケーリングと正方化つきパデ近似の結果と行列分解法の結果が同じであることが分かる。

*** 出力 ****************************************
Scilabによる行列指数関数

-->A=[0 1 2; 0.5 0 1; 2 1 0]
A =

0. 1. 2.
0.5 0. 1.
2. 1. 0.

-->Asave=A
Asave =

0. 1. 2.
0.5 0. 1.
2. 1. 0.

-->expm(A) //Scilabの元々の行列指数関数
ans =

5.3090813 4.001203 5.5778403
2.8087901 2.8845155 3.1930144
5.173746 4.001203 5.7131756

-->A=Asave
A =

0. 1. 2.
0.5 0. 1.
2. 1. 0.

-->

-->//スケーリングと正方化 scaling and squaring

-->

-->[f,e]=log2(norm(A,'inf'))
e =

2.
f =

0.75

-->s=max(0,e+1)
s =

3.

-->A=A/2^s
A =

0. 0.125 0.25
0.0625 0. 0.125
0.25 0.125 0.

-->X=A
X =

0. 0.125 0.25
0.0625 0. 0.125
0.25 0.125 0.

-->c=1/2
c =

0.5

-->E=eye(3,3)+c*A
E =

1. 0.0625 0.125
0.03125 1. 0.0625
0.125 0.0625 1.

-->D=eye(3,3)-c*A
D =

1. - 0.0625 - 0.125
- 0.03125 1. - 0.0625
- 0.125 - 0.0625 1.

-->q=6
q =

6.

-->p=1
p =

1.

-->for k=2:q
--> c=c*(q-k+1)/(k*(2*q-k+1))
--> X=A*X
--> cX=c*X
--> E=E+cX
--> if p
--> D=D+cX
--> else
--> D=D-cX
--> end
--> p=~p
-->end
c =

0.1136364
X =

0.0703125 0.03125 0.015625
0.03125 0.0234375 0.015625
0.0078125 0.03125 0.078125
cX =

0.0079901 0.0035511 0.0017756
0.0035511 0.0026634 0.0017756
0.0008878 0.0035511 0.0088778
E =

1.0079901 0.0660511 0.1267756
0.0348011 1.0026634 0.0642756
0.1258878 0.0660511 1.0088778
D =

1.0079901 - 0.0589489 - 0.1232244
- 0.0276989 1.0026634 - 0.0607244
- 0.1241122 - 0.0589489 1.0088778
p =

F
c =

0.0151515
X =

0.0058594 0.0107422 0.0214844
0.0053711 0.0058594 0.0107422
0.0214844 0.0107422 0.0058594
cX =

0.0000888 0.0001628 0.0003255
0.0000814 0.0000888 0.0001628
0.0003255 0.0001628 0.0000888
E =

1.0080788 0.0662139 0.1271011
0.0348825 1.0027521 0.0644383
0.1262133 0.0662139 1.0089666
D =

1.0079013 - 0.0591116 - 0.1235500
- 0.0277802 1.0025746 - 0.0608872
- 0.1244377 - 0.0591116 1.0087891
p =

T
c =

0.0012626
X =

0.0060425 0.0034180 0.0028076
0.0030518 0.0020142 0.0020752
0.0021362 0.0034180 0.0067139
cX =

0.0000076 0.0000043 0.0000035
0.0000039 0.0000025 0.0000026
0.0000027 0.0000043 0.0000085
E =

1.0080865 0.0662182 0.1271046
0.0348864 1.0027547 0.0644409
0.126216 0.0662182 1.0089751
D =

1.0079089 - 0.0591073 - 0.1235464
- 0.0277764 1.0025771 - 0.0608846
- 0.1244350 - 0.0591073 1.0087975
p =

F
c =

0.0000631
X =

0.0009155 0.0011063 0.0019379
0.0006447 0.0006409 0.0010147
0.0018921 0.0011063 0.0009613
cX =

5.780D-08 6.984D-08 0.0000001
4.070D-08 4.046D-08 6.406D-08
0.0000001 6.984D-08 6.069D-08
E =

1.0080865 0.0662183 0.1271048
0.0348864 1.0027547 0.0644410
0.1262161 0.0662183 1.0089752
D =

1.0079089 - 0.0591074 - 0.1235465
- 0.0277764 1.0025771 - 0.0608846
- 0.1244352 - 0.0591074 1.0087975
p =

T
c =

0.0000015
X =

0.0005536 0.0003567 0.0003672
0.0002937 0.0002074 0.0002413
0.0003095 0.0003567 0.0006113
cX =

1.0D-09 *

0.8321428 0.5361264 0.5518949
0.4415159 0.3117848 0.3626738
0.4651685 0.5361264 0.9188691
E =

1.0080865 0.0662183 0.1271048
0.0348864 1.0027547 0.0644410
0.1262161 0.0662183 1.0089752
D =

1.0079089 - 0.0591074 - 0.1235465
- 0.0277764 1.0025771 - 0.0608846
- 0.1244352 - 0.0591074 1.0087975
p =

F

-->

-->E=D\E
E =

1.036393 0.1425675 0.2615269
0.0791531 1.0127849 0.1346981
0.2575922 0.1425675 1.0403277

-->

-->for k=1:s
--> E=E*E
-->end
E =

1.1527624 0.3294314 0.5623219
0.1968960 1.0562215 0.2972511
0.5462318 0.3294314 1.1688526
E =

1.7008831 0.9129553 1.4034189
0.5973082 1.2783914 0.7721247
1.3330036 0.9129553 1.7712983
E =

5.3090813 4.001203 5.5778403
2.8087901 2.8845155 3.1930144
5.173746 4.001203 5.7131756

-->E1=E
E1 =

5.3090813 4.001203 5.5778403
2.8087901 2.8845155 3.1930144
5.173746 4.001203 5.7131756

-->

-->//固有値と固有ベクトルによる行列の指数 matrix decomposition methods

-->//例1

-->B=[0 1 2; 0.5 0 1; 2 1 0]
B =

0. 1. 2.
0.5 0. 1.
2. 1. 0.

-->[D,V]=bdiag(B) //Matlabのeig()場合、DとVが逆の可能性があるので後で注意
V =

- 0.6540388 - 0.6360390 0.3508493
- 0.3800874 - 0.2120130 - 0.9055908
- 0.6540388 0.7420455 0.3508493
D =

2.5811388 0. 0.
0. - 2. 0.
0. 0. - 0.5811388

-->E=diag(exp(diag(D))) //要素ごとのexponentialを計算
E =

13.212176 0. 0.
0. 0.1353353 0.
0. 0. 0.5592611

-->V*E*inv(V)
ans =

5.3090813 4.001203 5.5778403
2.8087901 2.8845155 3.1930144
5.173746 4.001203 5.7131756

-->

-->//例2

-->B=[-49 24;-64 31]
B =

- 49. 24.
- 64. 31.

-->[D,V]=bdiag(B)
V =

- 0.4160251 - 1.8027756
- 0.5547002 - 3.6055513
D =

- 17. 0.
0. - 1.

-->E=diag(exp(diag(D)))
E =

4.140D-08 0.
0. 0.3678794

-->V*E*inv(V)
ans =

- 0.7357588 0.5518191
- 1.4715176 1.1036382

-->

-->

2010年10月20日水曜日

oazoの丸善で買い物、行列指数関数


帰りにoazoの丸善によって伊藤清先生の「確率論と私」を買う。ついでにコルモゴロフの「確率論の基礎概念」、森毅の「位相のこころ」も買う。こういう本格的な数学の本が文庫化されるのはありがたい。がんばれ”ちくま学芸文庫”!!

連続時間の確率微分方程式から状態空間モデルの遷移方程式を導出する方法は分かってきた。確率微分方程式の解を求めて状態ベクトルのVAR式に変形すればいい。問題は遷移方程式に行列指数関数が出てくること。eの肩に行列が乗っている!。これをどうやって計算すればいいのかさっぱりわからなかったのだが、この論文を読んでようやく分かってきた。


19通りもあるらしい。解く問題によって一長一短があり、どれがベストとは言えないらしい。前に読んだ本はメソッド2の”パデ近似”を使っていた。パデ近似についてはNumerical Recipesにも記述あり。メソッド6の行列分解が使える場合はこれが一番簡単そう。

2010年10月19日火曜日

世紀の空売り(5)

「ショートしていると、全世界を敵に回すことになる。こちらがショートしているのを百も承知であってくれた企業は、ムーディーズだけだった」。
格付け界で最上位にあって、株の二十パーセントをウォーレン・バフェットが所有する名門機関。そのCEOが、クィーンズ出身のヴィンセント・ダニエルに、ぼんくらか、さもなければ詐欺師だと言われたのだ。
「格付け機関はCDOの格付けで、ゼネラル・モーターズの債券を格付けするときの十倍以上も稼いでいた。そういう季節が完全に終わろうとしていたんだ」
「証券化の専属部隊がウォール街の巨利の中心で、そこの機能が停止しかかっていた。そして、それが現実となったときは、投資銀行の収入がたたれるときだ」とアイズマン。
「連中は知らなかった。自分が経営する銀行のバランスシートのことを、知らないんだよ」
「世界で五本の指に入る投資銀行を、からっぽ頭の男が経営している!」とアイズマン。

マイケル・バーリの息子はアスペルガー症候群と診断された。そして自分自身もそうだとさとる。
”視線を合わせることなど、言葉を用いない多様な行動に、著しい欠陥が見られる・・・”
”同年代の友人関係が築けない・・・”
”楽しみや興味、あるいは達成感などを、他人と分かち合おうという自発性に欠け・・・”
”相手の目つきから、社会的もしくは情緒的もしくはその両方のメッセージを読み取るのが困難・・・”
”怒りを表現するための常道の調節や制御機能が不完全・・・”
”コンピューターに強く魅力を感じる理由のひとつは、話しかけたり、打ち解けたりする必要がないというだけでなく、コンピューターが論理的で、整合性を備えていて、気分に左右されない存在だからである。それゆえ、アスペルガー症候群の人々にとっては、理想的な興味の対象となる・・・”
”多くの人が趣味を持っている・・・アスペルガー症候群に見られる奇行が、正常なものと違う点は、そういう楽しみが、孤立した特異なものになり、本人の時間と社交性とを奪ってしまう場合が多いことである・・・”

オレも全部当てはまるなぁ・・・。オレもアスペルガーなのか?

サブプライム・モーゲージ市場が下がり始めているのに、しばらくは逆にCDSの価格も下がったと書かれている。このあたりが、プライシングまで証券会社に依存するCDSのむつかしさだな。

JPモルガンは、CEOのジェイミー・ダイモンじきじきのお達しで、すでに2006年の晩秋、サブプライム・モーゲージ市場から退いていた。ドイツ銀行は、リップマンがいたおかげで、常にゆるく網を握っていた。それに続いたゴールドマン・サックスは、単に網を手放すだけでなく、方向転換して、サブプライム市場が下げるほうに大きく賭け、その動きによって、気球の致命的な上昇をいっそう速めた。
モルガンスタンレーのハーウィー・ハブラーが残していった損失額は、90億ドル強と報告されている。ウォール街史上、飛び抜けて最大の損失額だった。

最後のカモ、みずほ証券

アイズマンは、グリーンスパンを軽蔑にも値しないほどの人物だと見ていて、こんなふうに評した。「アラン・グリーンスパンは史上最悪の連邦準備制度理事会議長として、評判は落ちる一方だろうな。あまりに長いあいだ、あまりに低く金利を設定したことなんて、序の口だよ。サブプライム市場で何が起こっているか知りながら、目をそむけてたのは、消費者がどんな目にあおうと痛くもかゆくもないということさ。ほんとうは頭がいいのに、何もかも根本から思い違いをしているんだから、気の毒な人間だと言ってもいいね」
「(アメリカの金融システムが)循環型のマルチ商法に見えるとしたら、それは、ほんとうにマルチ商法だから、そう見えるんです」
「わたしはウォール街の大手投資銀行内で良心の呵責に悩んでいる人に一度もお目にかかったことがありません。誰の口からも、『これは間違っている』という言葉を聞いたことがありません。」

世間では専門的知識の持ち主だと評される人間たちが、じつはメディアのご機嫌取りに時間を費やす人間たちであるという現状に、バーリは憤慨していた。マネー・マネジャーほど客観的な仕事はないはずなのに、その業界内ですら、事実と論理が、あやしげな社交的手腕に凌駕されてしまう。
まだ残っている顧客宛に、マイケル・バーリはこう書いた。
「今やかくも大勢の人間が、自分はサブプライムの終末や、商品取引ブームや、斜陽経済の到来を予見していたと言っているのには、まったく呆れてしまいます。そういう面々は、テレビに出演したり、インタビューに答えたりして、必ずしも明確な裏付けもなく、次に何が起こるかを自信たっぷりに、耳障りな声で予測しています。この前起こったことについて、とんでもない思い違いをしていた人間に、次に何が起こるかを人前で話す資格などないと思うのですが、どうでしょうか?さらにいえば、わたしの記憶によると、当時わたしの意見に賛同してくれた人間は、そんなに大勢はいなかったはずです」
あるトレード業界紙が、2007年度の優秀なヘッジファンドを75社紹介する特集号を出したが、サイオンは(利回りでいえば、最優秀かそれに準ずる地位にあるのに)掲載されなかった。

初のモーゲージ・デリバティブを作り出した元ソロモンの著者の友人はいまだに、「デリバティブは銃みたいなものだ。問題は道具じゃない。道具を使う人間のほうだよ」とよく言う。
メザニンCDOは、1987年ドレクアエル・バーナムのマイケル・ミルケン率いるジャンク・ボンド部で発明された。モーゲージに裏づけされたCDOの第1号は、1980年代と90年代にソロモン・ブラザーズのモーゲージ部で修練を積んだあるトレーダーが、クレディ・スイスに転職後、2000年に創り出したものだ。アンディ・ストーンという名のそのトレーダーは、頭脳面ばかりでなく、人事面でも、サブプライム危機と因縁を持っていた。ストーンは、ウォール街でグレッグ・リップマンの初の上司となった人物なのだ。

ウォール街では、強欲は前提条件であって、見かたによっては義務に近い。問題は、強欲への流れを創る報酬システムだろう。
もしかしたら「投資」の定義とは、”自分に有利なオッズで行う博打”かもしれない。「世紀の空売り」の勝負の奇妙かつ複雑な点は、敵味方に分かれた重要人物たちのほぼ全員が、財布をずっしりと重くしてテーブルを離れたということだ。ハーウィー・ハブラー(MS)は、単独のトレーダーとしてはウォール街史上最大の損失を出したが、それでもなお、みずから稼いだ数千万ドルの金を懐に入れることが許された。ウォール街の大手投資銀行のCEOたちもまら、博打の負け側にいた。その全員が、ひとりの例外もなく、自分の経営する企業を破産に追い込むか、さもなければ、アメリカ政府の介入によって破産を免れた。そして、全員がやはり金持ちになった。
賢い決断を下す必要がないとしたら、つまり、お粗末な決断を下しても金持ちになれるとしたら、どれくらいの数の人間が賢い決断を下そうとするだろう?ウォール街の報奨制度は、全面的に間違っていた。今でも間違っている。

金融危機を解決する立場にあった人々とは、もちろん、事前に予見できなかった人々にほかならない。ヘンリー・ポールソン、ティモシー・ガイトナー、ベン・バーナンキ、ロイド・ブランクフィン、ジョン・マック、ヴィクラム・パンデット・・・。たいていのCEOが現職にとどまり、よりによってその面々が、密室の中の要人となって、次に何をすべきかを考え出そうとしていた。そこには、ひとにぎりの政府高官も参与していた。その全員の共通点は、アメリカの金融システムの中心にある基礎事実を把握する能力が、アスペルガー症候群を患った隻眼のマネー・マネジャーに遠く及ばなかったということだ。

2010年10月17日日曜日

世紀の空売り(4) 格付け機関は張子の虎である

ウォール街の投資銀行も、めざすところは基本的にすべての製造業と同じ。原材料(住宅ローン)の仕入れにはできるだけ経費をかけず、商品(モーゲージ債)にはできるだけ高い値段を付けること。商品の価格は、商品に与えられた格付けによって変動し、その格付けは、ムーディーズとS&Pが使うモデルによって決まる。モデルの仕組みは社外秘とされ、ムーディーズもS&Pも、不正操作など不可能だと断言している。しかし、そういうモデルに携わる人間が、不正な働きかけに弱いということは、ウォール街の常識だった。
「ウォール街に就職できない連中が、ムーディーズに就職するんですよ」とゴールドマン・サックスのトレーダーからヘッジファンドに転職したある人物が言う。格付け機関の内部にはまた別の階級制があって、サブプライム・モーゲージ債の格付け役は、その中でもさらに陽の当たらない場所にいた。「格付け機関の社員の中で、いちばんましなのは企業信用の担当者ですね」とモルガン・スタンレーでモーゲージ債の開発に当たっていた計量アナリスト。「次がプライム・モーゲージの担当者。その次が資産担保の開発者で、この連中はたいてい能なしです」(サブプライム・モーゲージ債は、モーゲージ債ではなく、資産担保証券(ABS)に分類される)。
年収数百万ドルのウォール街のトレーダーたちが、年収七万ドルないし九万ドルの能なし連中をおだてて、考えられるかぎり最悪のローンに可能な限り高い格付けをさせる作戦行動に乗り出した。格付け機関は、個々の住宅ローンを評価しているわけではなかった。モデルを使って見たり評価したりしているのは、ローン・プールの全体的な特徴でしかなかった。
その一例がFICO(消費者信用格付け)スコアの扱い方。FICOスコアは、あまりにも単純な物差し。例えば、借り手の収入が計算に入らない。データの操作がしやすい。借り手になりたい人は、ローンを借りて、それを即座に返済すれば、スコアを上げることができた。格付け機関によるスコアの使い方はもっとお粗末。格付け機関がローンのパッケージ業者に提出させていたのは、借り手全員のFICOスコア一覧ではなく、ローン・プールの平均FICOスコア。そもそもスコア550の人間が債務を果たせる望みは無に等しいが、埋め合わせにスコア680の借り手をひとり見つけ出して、平均値を615にしてしまえば、基準は満たせた。ローンを組んだことがなく(したがって返済不能や遅延の履歴がなくFICOスコアの高い)低所得の移住労働者が利用された。


2010年10月16日土曜日

世紀の空売り(3) トリプルBをトリプルAに


今回の金融危機の本質はサブプライム・ローンだ。見せかけの低い釣り(ティーザー)金利が二,三年続いたあとで、”普通の”変動金利に跳ね上がるというローンの構造。ゴールドマン・サックスがひねり出した魔術=アメリカ下位中流層の人々にとって事実上の信用洗浄(ロンダリング)サービスであるCDO。それにトリプルAの格付けを与えた無責任な格付け機関。ゴールドマンに食い物にされCDSを引き受けたAIG。

『世紀の空売り』の第三章~五章には「The Greatest Trade Ever」にも出てきた抜群に変なやつ、グレッグ・リップマン(Greg Lippmann)が出てきて笑わせてくれるが、それよりも大事なのは、今回の金融危機を理解するうえで大切ないくつかのことが分かりやすく書かれていることだ。

ただし、176ページの「ブラック・ショールズのオプション価格設定モデルが、どうもおかしな仮定にもとづいていることに気づいた。例えば、将来の株価が通常のベル型分布になるという仮定だ」という記述は明らかな初歩的間違い。ブラック・ショールズ・モデルは「株価のリターン」が正規分布になると仮定しているので、「株価」は対数正規分布になり、ベル型分布にはならない。

邦銀でも、ある銀行はサブプライム関連商品で痛い目にあい、ある銀行はほとんど無傷だった。無傷だった銀行は、ちゃんと中身を分析して買わないと決断した、とそこの銀行の人から直接聞いたことがある。ちゃんとやるべきことをやっていれば投資で大やられすることはない。やるべきことをやらないまま投資するひとが多すぎる。

2010年10月14日木曜日

世紀の空売り(2) マイケル・バーリ

Michael Burryは面と向かって人と話すのが苦手。2歳のときに癌で左目を失って義眼に。集団にうまく溶け込めない。二十代後半までには、友達のできないタイプの人間だという自覚を得る。長続きする対人関係を一度も築けなかった。「友達が要らないたちなんでしょう。自分の頭の中で、楽しく暮らしていけるんです」
頑固なこだわり。とりつかれるか、まったく興味を持たないか、そのどちらか。
投資とは、自分ひとりの力で、自分にしかできないやりかたで、学ぶべきものなのだ。
バーリはベンジャミン・グレアム、ウォーレン・バフェットのような”バリュー投資家”だ。レバレッジや空売りは使わない。年間100ドルの10Kウィザードを使って、部屋にこもって財務諸表を読むだけだ(10Kというのはアメリカの業績報告書の書式)。それでいて圧倒的なパフォーマンスをサイオン・キャピタルで残している。おそらく、バフェットよりも運用はうまい。創業1年目の2001年、S&P500は11.88%のマイナス、サイオンは55%上昇。翌年、S&P500は22.1%のマイナス、サイオンは16%上昇。2003年はS&P500が28.69%の上昇、サイオンは50%上昇。
生身の人間に話しかけるとき、何が相手の気分を損ねてしまうのかが、バーリにはまったくつかめなかった。
バーリが買う株は十倍に跳ね上がるけれど、その前にまず半分に下がる。
自分の務めは、世の趨勢に異を唱えることだ、とバーリは思っている。
やがてバーリはアメリカの住宅用不動産の価格が下がることを確信し、CDSを買いまくる。バーリはGregory Zuckermanの『The Greatest Trade Ever』にも出てきて、This will be my Soros tradeと考えた、と描写されている。
長いあいだ周囲の世界からほぼ完全に孤立して生きてきたことの、思わぬ副次的効用のひとつだった。自分が正しくて世界が間違っていることを、バーリはたやすく信じることができた。
私はマイケル・バーリほどの才能を持っていないが、気質としては似たものを感じる。

2010年10月10日日曜日

世紀の空売り(1) スティーヴ・アイズマン


『ザ・クオンツ』もそうだが、アメリカの金融業界は魅力的なキャラクターの宝庫だ。『世紀の空売り』の最初に出てくるアイズマンもかなりのもの。一言で言うと「人の機嫌を損ねる才能に恵まれている」(笑)。
あるブローカーが催した昼食会に呼ばれたアイズマンは、数十人の投資家たちを前に、いかにこのブローカーの経営者氏が自社の事業を把握できていないかをとうとうとまくしたてて、そのあと中座して、二度と席に戻らなかった(「トイレに行きたくなってね。戻らなかった理由は、自分でも分からないよ」とは本人の弁)。
日本のある大手不動産会社社長は、あらかじめ自社の財務諸表をアイズマンに送ってから、通訳を連れて、投資の依頼にやってきた。アイズマンは財務諸表に重要な項目が明示されていないことに気づいていた。しかし、それをただ指摘するかわりに、犬の糞でもつまむみたいに、財務諸表を持ち上げた。「これは・・・・・・トイレット・ペーパーですね」と言うと、通訳に「訳してください」
アイズマンの妻は「基準のゆるいウォール街でさえ、無礼で、はた迷惑で、攻撃的な人間だと思われています」と言う。「礼儀作法に関心がないんです。ほんとうに、何度も、何度も、何度も、改めさせようとしたんですけれど・・・・・・」
「駆け引きとして、無礼にふるまっているわけじゃないんですよ。表裏がないから無礼になってしまうんです。みんなに変人と思われていることは知っていますけど、本人はそんなふうには思っていません。自分の頭の中で暮らしている人ですから」

私もよく、変人と言われるが、アイズマンと比べるとかわいいものだ。

アイズマンの部下のダニエルは会計士時代にソロモンなどウォール街の大手投資銀行の監査をしているが、ソロモンの上司たちは、部下のトレーダーが何しているのか何も分かっていなかったと言っている。

世紀の空売り、 伊福部昭の芸術4 SF交響ファンタジー宙

今日の日経の「活字の海で」の欄は、「中南米作家に再び光、ノーベル賞発表も後押し」で、ラテンアメリカ文学が紹介してある。ラテンアメリカ文学は本当におもしろいし、現代の世界文学、日本文学にはかり知れない影響を与えているので、是非読んでみてください。個人的にはマルケス、ボルヘス、コルタサル、リョサ、プイグ、カルペンティエールなどが好き。
日経読書欄は『世紀の空売り』と『ゴジラの音楽』。『世紀の空売り』は買っておいたまま、積読になっていたので、今日から読み始めよう。
『ゴジラの音楽』もおもしろそうだけど、買っても読む暇がないので買うのはやめておこう。そのかわりCDの『伊福部昭の芸術4 SF交響ファンタジー 宙(CYU)』を聴く。これは伊福部がゴジラなどの映画音楽をメドレー形式に編曲したものを広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団がスタジオ録音した鳥肌もの。これは本当にお奨めです。修論を書くときのBGMでよく聴いた。
①ゴジラの動機、②間奏部、ときて3曲目が、日本人なら誰でも知っている(?)あの有名な「ゴジラ」タイトル・テーマ。
このCDを聴いていると、少年の頃、映画館の暗闇のなかで、手に汗を握りながら見たゴジラ、モスラ、キングギドラなどの雄姿がよみがえってくる。

2010年10月9日土曜日

ザ・クオンツ(5) ルネッサンスのメダリオンなど


P348: MITのアンドリュー・ローとアミル・カンダーニは、2007年10月のマーケット崩壊についての研究成果を、「クオンツに何が起きたのか?(What Happened to the Quant?)」という報告書にまとめた。

P385: 「ルネッサンスは、いくぶん型破りな投資運用会社です。我々のアプローチは、数学者という私の経歴が土台になっています。我々は数式によって決定されたトレーディングによって、ファンドを運用しています。・・・我々は非常に流動性の高い上場商品しか運用しておりません。つまり、CDSやCDOには関わっておりません。我々のトレーディング・モデルは、最近になって下落した株を買い、最近上昇した株を売るという、逆張りの傾向があります。」

P395: その年、すべてのヘッジファンドが損失を出したわけではなかった。2008年、ルネッサンスのメダリオン・ファンドは高速コンピュータを駆使し、マーケットの極端なボラティリティに乗じて、80%という驚異的な運用成績をたたき出した。ジム・シモンズがその年のヘッジファンド界の最高報酬額、25億ドルを手にした。
ユニバーサ・インベストメンツのファンドは、ナシーム・タレブの長年の共同研究者でもあるマーク・スピッツネーゲルが運用しており、2008年には、ほとんどのクオンツ・モデルが予測しているよりもはるかにマーケットのボラティリティが高くなる方向に投資し、150%もの利益をあげた。ファンドの「ブラック・スワン・プロテクション・プロトコル」は、大きくアウト・オブ・ザ・マネーになっている株や株価指数のプット・オプションを買い、リーマン破綻と市場の暴落時に確実に利益をあげた。

P412: 2008年の終わりには、(エド・ソープの)そのストラテジー(システムX)は、レバレッジなしで、18%の利益を出していた。その一年のあいだに、週次ベースでマイナスを出したのは一度きりだった。

P399: 多くのクオンツ、いやほとんどのクオンツは、一人でじっと考え事ばかりしている役立たずだ、と彼(ポール・ウィルモット)は言った。彼らは社会性に欠けた頭でっかちで、荒っぽくてガツガツした金融の世界とは全く相容れない、水晶のように美しい数学の世界に自己陶酔しているだけだ。難しいのは人間の心理や行動の部分だ。我々はマシンではなく、ヒューマンのほうをモデル化しているのだから。
銀行やヘッジファンドは金融市場での経験が全くないクオンツを採用してモデルを作らせている。そして、予想もしなかったようなことが起きたときにそのモデルが有効なのか、科学的な検証もないまま、モデルを導入している。それなのに、モデルが機能しなくなって損失を出したことに驚くとは!
かつて金融市場は昔ながらの信頼関係によって運営されていた。しかし最近は、数学や物理学の博士号取得者だけが、複雑な金融市場を学ぶのにふさわしいと見なされている。それが問題なのだ。博士号取得者はサインとコサインの違いは分かるかもしれないが、割高な株や債券と割安なそれとを見分ける方法については、ほとんど何も分かっていないことが多い。自分たちが作ったすばらしいモデルの精緻な部分にばかり目がいって、全体をみることができなくなってしまう。さらに悪いことに、彼らは自分たちのモデルはマーケットの仕組みを完璧に反映していると信じ込んでいた。彼らにとっては、モデルがザ・トゥルースだった。このような盲信はきわめて危険なものだ。
ウィルモットと(ウォール街を往く物理学者)エマニュエル・ダーマンは共同で「フィナンシャル・モデラー宣言」と題する論文を書いた。
「物理学は、物質の未来の形や動きを驚くほど正確に予測することができたため、それが金融モデルの設計者にもインスピレーションを与えた。物理学者は、同じ実験を何度も何度も繰り返し、物質の力関係や魔法のような数学的法則を発見することによって、研究を行っている。・・・しかし、金融や経済はそれとはまったく別物である。貨幣価値という、心理的な部分が関わってくるからだ。金融論では、金融の基本的な法則を発見するのに、物理学の手法や正確さを模倣しようと努力してきた。・・・しかし、金融にはそのような原則はない、というのが本当のところなのである」

・私は世界を創造したのは自分ではないことを、そして世界は数式のようにはいかないことを、肝に銘じる。
・私は価値を予測するために堂々とモデルを使うが、数学に偏りすぎない。
・私は正当な理由なしに、エレガントさを重要視して、現実をないがしろにすることは決してしない。
・私はまた、私のモデルを使う人に対し、モデルの正確性を過信させるようなことを言わない。
・私は、自分の仕事は社会や経済に対して、自分が思っているよりもはるかに大きな影響力を与えうることを理解する。

P409: 53歳のとき、(ピムコのビル・)グロースは連続してマラソンを走ることを決めた。5日連続で、5回のフルマラソンを走ったのだ。5日目、彼の腎臓が破裂した。橋に差しかかったとき、血が脚を伝って流れているのが見えた。でもグロースは走るのをやめなかった。彼は完走し、ゴールの向こうで待機していた救急車に倒れこんだ。

ビル・グロースもハンパないな。

ケインズを学ぶ -経済学とは何か (根井雅弘)

根井雅弘さんは京都大学大学院教授で、われわれ素人のために経済思想史を分かりやすく解説する本を何冊も書かれている。
日本経済が長期低迷し、先進国経済も日本の後を追いつつあるようにみられる。素人が経済学者を「なんちゃって経済学者」と平気で揶揄する今の日本において、いろいろな人が、いろいろなところで、いろいろな経済政策、金融政策を声高に主張していて、まさに混乱の極みである。
われわれ素人は、自分に都合のいい結論を提示してくれる理論を盲目的に支持する前に、われわれに経済思想史の知識が欠如していることを自覚して、さまざまな理論を冷静に比較分析できる力を身に着ける努力をしたほうがいいように自戒をこめて思う。

「経済学者が歯科医たちと同じ位置にとどまって、控えめで有能な人とみなされるようになることができたとすれば、それはなんとすばらしいことであろうか!」(J.M.ケインズ『説得論集』)。なかなか歯科医のレベルになるのはむつかしい(笑)。
「学派のなかに身をおくことは、とても居心地がよいものですが、それは同時に思考の硬直化をもたらす最大の原因でもあります」
「ケインズは、世の中でケインジアンと呼ばれている人々と自分自身がいかに異なっているかを嘆息しながら、『私は、現在、ただ一人の非ケインジアンであることがわかった』と述べた。」

ケインズがハロッドに宛てた手紙
「私には、経済学は論理学の一部門、すなわち、思考の一方法のように思えます。・・・経済学は、現代世界に適したモデルの選択技術と結びついたモデルによって思考する科学です。そうならざるをえないのは、典型的な自然科学とは違って、経済学が適用される素材が多くの点で時間を通じて同質的ではないからです。
モデルの目的は、半永久的ないし相対的に不変の要因を一時的ないし変動的要因から分離することによって、後者について思考し、またそれが特定の場合において惹起する時間的継起の理解についての論理的方法を開発することなのです。
優れた経済学者が希なのは、よいモデルを選択するための『用心深い観察力』を用いる才能が、高度に専門化された知的技術を必要としないものの、とても希なもののように思われるからです。
私は前に、経済学は内省と価値判断を取り扱うものだと述べましたが、私はさらに、それは動機、期待、心理的不確実性を取り扱うものだと付け加えてもよかったと思います。人は常に素材を不変で同質的なものとして取り扱うことに対して警戒していなければなりません。
経済学は、大地へのリンゴの落下が、落下することに価値があるかどうかというリンゴの動機に依存したり、大地がリンゴに落下してほしいと願ったかどうかということに依存したり、地球の中心からどれだけ離れているかについてのリンゴ側の誤算に依存したりしているかのように考えるものなのです。」

ところで、この手紙のなかには、さらに、経済学は『モラル・サイエンス』であって、自然科学とは異なるという趣旨の文章が続くのですが、このモラル・サイエンスという言葉を直訳して『道徳科学』としたのでは、その意味を理解することはできないでしょう。モラル・サイエンスとはかいつまんで言えば、アダム・スミスやデイヴィッド・ヒュームの時代から続く『モラル・フィロソフィー』の系譜に連なるもので、社会の一員としての人間を取り扱う学問を指しています。したがって、経済学が一つのモラル・サイエンスであるという場合、その意味するところは、人間社会の現象を経済的側面から研究する学問ということになるわけです。

ケインズはあるところで次のように言っています。
「経済学の研究には、なんらかの人並み外れて高次な専門的資質が必要とされるようには見えない。それは知的見地から言って、哲学や純粋科学などのより高級な部門に比べると、はなはだ平易な学科ではあるまいか。それなのにすぐれた経済学者、いな有能な経済学者すら、類まれな存在なのである。平易で、しかもこれに抜きんでた人のきわめて乏しい学科! こういうパラドックスの説明は、おそらく、経済学の大家はもろもろの資質のまれなる組合せを持ち合わせていなければならない、ということのうちに見出されるであろう。そういう人はいくつかの違った方面で高い水準に達しており、めったに一緒には見られない才能をかね具えていなけれなならない。彼はある程度まで、数学者で、歴史家で、政治家で、哲学者でなければならない。彼は記号も分かるし、言葉も話さなければならない。彼は普遍的な見地から特殊を考慮し、抽象と具体とを同じ思考の中で取り扱わなければならない。彼は未来の目的のために、過去に照らして現在を研究しなければならない。人間の性質や制度のどんな部分も、まったく彼の関心の外にあってはならない。彼はその気構えにおいて目的意識に富むと同時に公平無私でなければならず、芸術家のように超然として清廉、しかも時には政治家のように世俗に接近していなければならない。」
もちろん、世の中の経済学者がすべてこのような理想を満たしているわけではありません。とにかく数学が好きで、歴史や政治や哲学などがいっさい関係しない世界に浸って、そこでしか通用しないきわめて洗練されたモデルを作ることに生き甲斐を感じている「数理経済学者」と呼ばれている人たちもいます。しかし、ケインズが理想とする経済学者はそういう人ではないのです。

市ヶ谷フィッシュセンターで夜釣り、麺や庄の



市ヶ谷駅のすぐ前にある市ヶ谷フィッシュセンターで部下3人と鯉釣りをする。貸竿、エサ込みで一時間870円。東京の真ん中で、静かに浮きをながめてぼ~っとするのは不思議な感覚だった。すぐ前にはJR市ヶ谷駅のホームがあって電車にのりこむ人たちが見える。
結局、全員一匹もつれなかった(笑)。器用にエサだけ食われる。鯉もあなどれない。
その後で『麺や庄の』にいく。カウンターだけの狭い店。しばらく外で順番を待つ。魚介だしの利いた豚骨ラーメンがおいしかった。

2010年10月8日金曜日

マリオ・バルガス・リョサがノーベル文学賞受賞



マリオ・バルガス・リョサがノーベル文学賞を受賞した。おめでとうございます。もっと早く取っていてもおかしくなかった。名前の表記がリョサとジョサがあって統一されていない。新聞だとリョサになっていたな。

『嘘から出たまこと』はジョサの書評集。最初のエッセイ「嘘から出たまこと」が素晴らしい。この部分だけでも買う価値がある。小説、フィクションの本質を見事に捉えて提示している。
「(小説は、)単に嘘をつくだけではなく、正体を隠すこと、仮面をかぶることによってのみ表現できる興味深い真実を語るのである。...人間は自分の運命に満足できないもので、ほとんど全員が ― 金持ちも貧乏人も、天才も凡人も、有名人も無名人も ― 今と違う生活に憧れる。そんな欲求を ― イカサマな形で ― 静めるためにフィクションは生まれた。すなわち、誰もが求めてやまぬ理想の生活を提供するために書かれ、読まれるのがフィクションである。小説の根底には、いつも悪あがきが煮えたぎり、欲求不満が脈を打つ。」
「現実生活の不満は、文学によって時に静められ、時に煽り立てられるが、決して真の意味で改善されることはない。我々の持つ空想癖はまさに悪魔の施し物かもしれない。今の自分と理想の自分、持っているものと望むものの溝を常に広げているのだから。
 しかし我々は、抜け目ない想像力のおかげで、限りある現実と際限ない欲望との乖離を和らげる妙薬、すなわちフィクションを備えている。フィクションによって我々は、自分を失うことなく自分を乗り越え、他人になりきることができる。フィクションのなかに溶け出して我々は多重人格者となり、自分以外の多くの人生、真実の枠に囚われていれば不可能な多くの人生を、歴史の牢獄から抜け出すことなく試すことができる。」
「嘘から出たまこと」の後は、ジョサによる名作の書評になっている。一流の作家による一流の作品の書評なので面白くないわけが無い。



2010年10月6日水曜日

ツイッターでのある不毛なやりとり

(相手) この人事最悪。なんちゃって経済学者!財務省担当者曰く「究めて少数意見の学者・・」ですからね。RT 【ニュース】首相のブレーンの阪大・小野教授が内閣府研究所長に就任(産経)

(相手) 教育!教育!教育!って言ったのはブレア元首相。それを真似して雇用!雇用!雇用!って言ったのが菅首相。菅さんの方が内容の無さで勝っている!そのおバカな政府雇用創出案の仕掛け人O教授が 内閣府研所の所長になったっていうのだから恐ろしいな。

(おれ) この人、O教授の論文を読んだことないか、読んでも理解できないいまま批判してるんだろうなぁ。別にO教授を擁護する気はないが。

(相手) 論文は読んでませんが、雇用創出について何を言っているかはわかってるつもりです。ところであなたは読んでいるのですか?

(おれ) 私は読みました。私はO教授の理論を支持しているわけではありません。論文も読まずに、分かった気になって、ツイッター上で学者を批判するのは、いい加減すぎませんか?少なくとも読んで理解してから批判するべきでは。

(相手) 読みたい本がたくさんあるのに、評価できない論文を読んでいる時間などない。私のほうが早くから彼を知っている。議員時代に彼の話を何回も聞いている。貴方の方こそ、何も知らないくせに偉そうなことを言わないほういい。

2010年10月5日火曜日

証券アナリストジャーナルのウェブサイトで論文をダウンロード




ブルームバーグ、ウエスタン、シティ合同の為替セミナーに参加後、丸善にによって上の本を買って帰る。解析概論は買う気はなかったのだが、全面的にTeXで書き直されていて、圧倒的に読みやすくなっていたのでつい買ってしまった。一冊は会社に据え置きにしよう。
証券アナリストジャーナル編集事務局の方に指摘されて知ったのだが証券アナリスト検定会員の場合、証券アナリストジャーナルのウェブサイトから、右上の「マイページ」にログインすれば、過去の論文が無料で見たり、ダウンロードできるんだね。知らなかった。400円取られるものだと思っていた。
ということで、さっそくいくつか読んでみる。2009年3月号の「クオンツ流動性危機後の資産運用 -計量投資アプローチのこれから」はゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの長澤さんと内山さん。さすがに、自社の「グローバル・アルファ」が大やられしただけに、的確な分析がなされていて興味深い。
クオンツ危機は市場で「集中度」が高まったことで発生した。したがって今後は(1)低集中、高独自性ファクターの開発、(2)ポートフォリオ構築方法の再検討、(3)リサーチ活動への継続的投資が必要と結論づけている。

2010年10月3日日曜日

百年の孤独 ガブリエル・ガルシア・マルケス


今日の日経のおしまいのページはラテンアメリカ文学者の鼓直氏。ガルシア=マルケスの「百年の孤独」「族長の秋」などを訳された方。「百年の孤独」は本当におもしろいノーベル文学賞作品。だまされたと思って是非読んでみてください。時間のない方は「エレンディラ」もお奨め。本当にすごい。

ザ・クオンツ(4)、および「格付けの深層」


今日の日経の読書面に「ザ・クオンツ」と「格付けの深層」。
2007年のクオンツ危機は皆が似たポジションを取ることによるリターン低下とレバレッジ引上げ、アンワインドが原因でLTCMやそれ以前にもよくある話。10章の315ページ。
「紙のように薄くなったスプレッドからより多くの収益を絞り出す唯一の方法が、レバレッジだった。1990年代LTCMに起こったこととまったく同じである。1998年には、ウォールストリートのほぼすべての債券アービトラージ・デスク及びフィックスト・インカム・ヘッジファンドが、LTCMのトレーディング手法をまねるようになっていた。その十年後に起きているクオンツ・ファンドの破滅的な崩壊は、あの時の状況と驚くほど酷似していた。」
とにかく、市場では常にコントラリアンでいようとしないと。常にマイノリティの側にいようとしないと大やられするものよ。マジョリティだとちょこちょこはもうかってもやられるときに大きい。マイノリティだとちょこちょこやられても、もうかるときに大きい。損は少なく、儲けは大きくが生き残る鉄則。
一方、サブプライム危機はCDOのトリプルA格付けの問題で根が深い。「格付けの深層」も読みたい。

ポップ・ソングとして完璧(2) Can't Take My Eyes Off You


家族ぐるみでお付き合いのある近所のお子さんがブラスバンド部で演奏しているビデオを見ていると何曲目かでフランキー・ヴァリ(Frankie Valli)の名曲『Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)』をやった。久しぶりにオリジナルを聞きたくなった。
オリジナルはボーイズ・タウン・ギャングではないですよ。ましてやトミー・フェブラリー6でもない。フランキー・ヴァリの1967年の作品。曲を作ったのはBOB CREWEとBOB GAUDIO 。
私が持っているのはRHINO RECORDSが1988年に出した『Frankie Valli and THE 4 SEASONS 25th Anniversary collection』という3枚組み。これは今は手に入りにくいらしいが、この曲は他のベスト版にも必ず入っていると思う。
間奏のリフが非常に印象的。聞いているだけで楽しくなる。口ずさみたくなるサビのメロディー。ヴァリの全体に明るく甲高い歌声。ポップ・ソングとして完璧。古きよきアメリカ。
映画『ディアハンター』のなかで非常に効果的に使われていた。後半の悲劇を知った上で見直すと、登場人物がみんなでこの歌を歌うシーンで思わず泣けてしまう。

I love you baby, and if it's quite all right,
I need you baby to warm the lonely night.
I love you baby.
Trust in me when I say

このアルバムはいい曲ばかり入っているが、『Swearin' to God』も大好き。この曲は明らかに山下達郎の『Love Space』に影響を与えている。『Swearin' to God』には実はロングバージョンがあって、それはそれは素晴らしいので、いつか手に入れたい。

2010年10月2日土曜日

心の中に「バブル」を起こそう 「一日一バブル」宣言

「セレンディピティの時代 」茂木健一郎 第23章

「爆発的に何ものかに取り憑かれ、我を失うほどに熱狂する。
バブルとは、何ものかが自分の中で膨れ上がり、暴れまわり、自分がどうなるかわからない、自分がどうなるかわからない、自分で自分がコントロールできない、今まで立っていた地平はどこへ行ってしまったんだー!と叫びたくなるような一連の出来事である。バブルはやがて去っていくけれど、バブル以前と以降では、確実に人格が変わっている。新しい自分に入れ替わっている。
人間の脳には、もともとバブルと呼べるような仕組みが備わっている。それが「一瞬の閃き」。私が「アハ! 体験」と呼んでいるものである。
目や耳などの感覚器官から外部の情報を得て、それを処理して最もふさわしい行動を選択して行う、というのが、普通の脳の活動だけれども、何かに気づいたときに、その通常業務をやめて、脳の神経細胞を0.1秒だけ一斉に活動させる。0.1秒だけ、脳の中の思念をぜんぶその問題に投入する、というのが「閃き」である。
脳の司令塔である外側前頭前野(LPFC)が「今おもしろいことをやっているから、みんな一瞬それに集中してね!」と、脳内の全神経細胞に指令を出す。これが0.1秒間起こるが「閃き」の仕組みなのである。
なぜたった0.1秒かというと、それ以上だと通常業務に差し障りがあるから。そしてその0.1秒が過ぎると、おー、なんと! 世界が変わって見える、ということがあるのである。
恋愛はバブルの代表選手だ。」

以下概略。
 セレンディピティを育てるために、「一日一バブル」を心がけよう。新しいものに出会って自らが変わるために、自分で自分の中にバブルの熱気を巻き起こそう。そのためには「脱抑制」に努めよう。もっと自由になろう。自分の内側から沸きあがってくる衝動に目を向けよう。
「生命」としての動きを止めないこと。周りにぼんやりと見えているものに気づき、そこに注意を向けることで偶然の幸運との出会いは始まる。
偶然の幸運は、絶えざる運動の中にしか現れない。人生の他のさまざまな大切なことと同様に。