2014年9月1日月曜日

『アベノミクスの終焉』 服部茂幸

データを丁寧に分析しながら、いわゆるアベノミクスと呼ばれる経済政策の効果を検証した良書です。その結果、第一章において以下のように異次元緩和が成功したという証拠はないと結論づけています。

(1)異次元緩和が始まると、経済成長率は低迷した。しかも、低い成長率を支えるのは、政府支出と消費増税による駆け込み需要である。異次元緩和が日本経済を復活させているという証拠はない。

(2)消費者物価の上昇も、輸入インフレによるところが大きい。円安の停止により輸入インフレが止まれば、消費者物価の上昇も止まる可能性が高い。実際、2013年末より消費者物価は上昇していない(14年4月の消費増税による物価上昇は除く)

(3)そもそも、アベノミクスの前の日本経済は全体的に世界同時不況から回復してきていた。

(4)アメリカやヨーロッパとの比較においても、日本のほうが経済回復のペースは速い。就業率についても、日本は危機前のピークをすでに越えているのに対して、アメリカでは08年の危機で急低下したまま、ほとんど回復していない。アメリカで成功しているとはいえない政策を日本で行って、日本経済が復活する保障はない。

アベノミクスの黒田=岩田日銀に対しても厳しい評価ですが、ミンスキーの流れをくむ著者らしく、不動産バブルを発生させて破裂させて世界的な金融不況を引き起こしたとして米国の中央銀行総裁のグリーンスパン、バーナンキに対しても厳しく批判しています。