2015年1月31日土曜日

ファイナンスのためのデータリテラシー


J-MONEY Winter2015 の新金融ゼミナールに一橋ICSの横内先生

「「膨大な情報『ビッグデータ』を分析して、実社会で何かしら役立つことを抽出し、論理的な解を導き出す」のがデータサイエンスであり、「データのプロとしてデータの取得、蓄積、解析、検証の全段階に関与して責任を持つ存在」がデータサイエンティストです。
 データサイエンスは、実は日本が発祥という歴史。1990年代に統計数理研究所の所長の林知己夫先生が数量化理論を中心とした「データの科学」を、そして同時期に慶應義塾大学教授の柴田里程先生が「データから新たな価値を創出する科学」として「データサイエンス」を提唱したのが始まりです。
 現在は米国経由で再輸入され、企業の経営やマーケティング戦略立案のヒントが得られるともてはやされているデータサイエンスやデータサイエンティストですが、林先生や柴田先生が掲げた当初の姿とは少々違った形で広まっているのではないかと危惧しています。
 データサイエンスは「データに語らせる」ための科学です。与えられたデータを自らの仮説を検証する目的で解析するだけなら、それは「データを黙らせる」ことであり、適当なソフトウェアを動かせば済むでしょう。
 上司の指示に従ってプログラムを動かしレポートにまとめる大量の「兵隊=データサイエンティスト」さえ用意すれば、人海戦術でなんとかなるとの楽観論に基づいているように思えます。しかし、それがどれだけの価値の創造に結びつくのか。ひょっとすると見当違いな結果を生み出す危険なアプローチかもしれません。

ちなみにこのJ-MONEYという雑誌は無料にしてはクオリティが高い。J-MONEYのウェブサイトから申し込めると思う。

2015年1月17日土曜日

合理的期待形成仮説


『マクロ経済学』齊藤、岩本、太田、柴田(2010)は本当に素晴らしいと思います。「本教科書の類書にない特徴として、第4部を中心に第3部を含めてミクロ的基礎を有するマクロ経済学を、学部生でも理解できるように説明していく」
14.1「合理的期待形成仮説とは『経済主体ができるだけ正確な予想をする』という抽象的なことを述べているのではなく、『経済主体が将来の均衡と整合的なように価格を予想する』という具体的な内容を含んでいる」
「時間が刻々と経過する動学的な経済環境における将来のマクロ経済に関する予想とは、単に近い将来のマクロ経済の均衡だけではなく、現在から遠い将来に向って進行するマクロ経済の均衡経路と整合的な期待形成でなければならない」
「本章では、金融市場で形成される資産価格や貨幣市場で決定される物価水準には、「近い将来」ばかりでなく、「遠い将来」のマクロ経済の均衡経路がストレートに反映されていることを明らかにしていく」
「合理的期待形成仮説の合理的という語感から『期待形成と整合性を保っている均衡経路が効率的である』という印象を与えかねないが、そうしたことを意味しているわけではない。合理的期待形成の”合理性”は、あくまで『均衡経路と期待形成の整合性』を指しているのであって均衡経路の効率性ではない」
「金融市場における金融リスクを評価する理論的な枠組みについては、いっさい議論していない。...主な理由は、金融リスクを取り扱うためには、不確実性下の意思決定に関する進んだミクロ経済理論の知識が必要となってくるからである」
今気づいたんだけど、謝辞にA先生の名前が。