2014年12月7日日曜日

ジャン・ティロール 『国際金融危機の経済学』

Tiroleは今年のノーベル経済学賞ですね。
Tiroleの『国際金融危機の経済学』、オアゾの丸善だと洋書が6840円で翻訳が2000円。
「IMF改革、国際的な最後の貸し手機能、および融資形態等のトピックについては、著名な経済学者の間で白熱したやりとりもあり、最近多く議論されてきている。議論すること自体は健全ではあるが、過度に敵対する立場をとるのはあまり建設的なこととは思えない」
「経済学者はいまだに基本的には資本移動の自由化を支持している。しかし危機の解釈に関しては意見が大きく分かれている。とくに危機に際して資本管理や国際金融制度のガバナンスをいかに行うかについては、意見が分かれている」
「このような危機は、本来望ましい資本移動の完全自由化にともなって起こる、望ましくはないが避けがたい副産物にすぎないのであろうか。世界は、試練が日常茶飯事に起こっている企業モデルに近づくべきか、それとも破綻はほとんど起こらない地方債モデルへと近づくべきだろうか(たとえば、対外直接投資やポートフォリオ投資の自由化と、短期資本移動の自由化前における金融仲介業を監督する強力な機関の設立)。」
「短期資本移動に対しては、暫定的あるいは永続的な規制を課すべきだろうか。これらを外国為替制度とどううまく折り合いをつければいいだろうか。危機は適切に対処されたのだろうか。そして、国際金融制度は改革されるべきなのだろうか」
「本書は、このテーマについて私がどれだけ理解しているか問い直したことをきっかけに執筆したものである。ここ数年の間に何度か、説得的で論理的な提案へと考えが揺れ動いたこともあれば、同じく雄弁ながら単純で一貫性のない議論にも同じくらい説得力があるように思えた」
「これはたんに私の思索が不十分であるからかもしれないが、同時に深く尊敬している経済学者たちが、事実認識に関しては幅広く合意に達しているのに、それを説明する理論については強く対立していることを知って不思議に思ったことも事実である。」
「本書では、国際金融機関の本来の任務を規定した原則に立ち戻り、市場の失敗の具体的な形を特定化し、危機の防止と国際金融制度設計についての指針を提示したい。他のアプローチや補完的なものを排除するものではない。いうまでもなく、ここにとりあげた特定の視点が、問題を明確化するうえで役立つことと信じている」

トマ・ピケティ 『21世紀の資本』

会社の帰りにオアゾの丸善によったらピケティの『21世紀の資本』、もう売っていた。
分厚いけど、意外と軽いです。
あと、Tiroleの『国際金融危機の経済学』も売っていた(洋書が6840円で翻訳が2000円)。
ピケティは翻訳の文体がクルーグマン本みたいなチャラい感じではなくてよかった。ということで、ピケティとティロールを買って帰る。


みすず書房の表紙のデザインと質感は相変わらず素晴らしい。よく見ると"LE CAPITAL"の字が二つに分断されていて本の主張を象徴している。

帯のコピー。「本書の唯一の目的は、過去からいくつか将来に対する慎ましい鍵を引き出すことだ」

『21世紀の資本』の日本語ホームページ
http://cruel.org/books/capital21c/

"The World Top Income Database"
http://topincomes.g-mond.parisschoolofeconomics.eu/

ピケティ「歴史分析と、ちょっと広い時間的な視野の助けを借りると、産業革命以来、格差を減らすことができる力というのは世界大戦だけだったことがわかる。」

やはり、個人的にはピケティ『21世紀の資本』の翻訳の文体は好きではない。

「マルクスは、(1848年の)その結論を正当化するように研究を進めたのだ。マルクスは一目見てわかる通り、すさまじい政治的な熱意をもって書いたので、時に仕方ないとはいえ拙速な断言をいろいろやってしまった。だからこそ、経済理論はなるべく完全な歴史的情報源に基づかなければならないのだ」

「19世紀の経済学者は終末論的な予言をやたら気に入っていたが、今度はおとぎ話を気にるようになったらしい。クズネッツに言わせると、辛坊さえすればやがて成長が万人に利益をもたらす。当時の哲学は次の一文でまとめられている。「成長は上げ潮であり、あらゆる船を持ち上げる」。」

「クズネッツの理論が80年代と90年代にもたらした大きな影響を正しく伝えるには、それがこの種の理論として初めてまともな統計手法を使ったものなのだということを強調せねばならない。」

「実は、所得分配統計の時系列データが初めて整備されたのは、1953年にクズネッツが記念碑的な『所得と貯蓄における高所得グループの比率』を刊行したときなのだ。」

「13年から48年にかけての米国の所得(格差)が大幅に圧縮されたのは、ほとんど偶然の産物だということをクズネッツ自身もよく知っていた。これは大恐慌と第二次世界大戦が引き起こした複数のショックにより生じたものがほとんどであり、自然または自動的なプロセスによるものはほとんどなかった」

「14年から45年にかけてほとんどの富裕国で見られた、急激な所得格差の低下は、何よりも二度の世界大戦と、それに伴う激しい経済政治的なショック(特に大きな財産を持っていた人々に対するもの)のおかげだった」