2010年3月31日水曜日

半年間かけて開発してきた商品案を昨日提案したのだが、商品化される気配が感じられないな。俺はこの会社に合ってないんだろうな。仕事の内容は面白いんだが、成果を正当に評価されないと空しい。
このまま老いていくと思うと耐えられない。会社を替わるか、自分で新しく始めるべきなんだろうなぁ。日本ももう少し気軽に起業できる社会だといいんだが・・・。
写真は八重洲ブックセンター前の桜(?だと思うが自信がない)。俺も一花咲かせたいものだ。
とりあえず投稿用に論文を書き直そう。それからヘッジファンドの運用モデルの開発を本格化と。同期からメールが来ていた。ヘッジファンドを立ち上げるために香港に着いたそうだ。うらやましい。でもおれにはまだその準備はできていない。
今日で最後かもしれないので、ICSのイントラネットを眺めておく。明日からは見れないのかな?今日でICSとの正式な関係が終わると思うと寂しい。今日は柄にも無く、なんだかネガティブだなぁ。

2010年3月28日日曜日

ゴルフ

6月にICSのコンペがあるというので参加表明したのだが、後で「佐山杯」だということを知った。佐山先生も来るんだろうな。俺みたいな素人が出ていいのかな?
ということで、少しでもうまくなるように練習を始めた。1日目は本の知識を頼りに自己流で打ったところ、すべて右に大きく曲がった。
二日目は知人に一緒に来てもらって指導してもらった。どうも俺の場合手だけで打っていたようなので、体の軸の回転を意識するようにと指導された。するとまっすぐ飛ぶようになった。二日目でまっすぐ飛ぶなんて、俺って天才・・・?

2010年3月25日木曜日

離散時間モデルによる数理ファイナンスのテキストのなかでベスト


数理ファイナンスの金字塔であるハリソン=クレプス=プリスカの定理を証明したあのプリスカが書いた教科書である。しかし説明は平明であり難解さはない。同じ趣旨の本として、シュリーヴの「ファイナンスのための確率解析Ⅰ」があるが、あれよりもこちらのほうが数段良いと断言できる(あちらも嫌いではないが、内容や記述ににまとまりがない)。連続時間ではシュリーヴの「ファイナンスのための確率解析Ⅱ」が優れているので、「ファイナンスのための確率解析Ⅰ」の代わりにプリスカのこの本を読んでから、「ファイナンスのための確率解析Ⅱ」を読むのがベストの勉強法だと思う。
例えば、第5章の最適消費投資問題においても①微分による解法、②動的計画法、③マルチンゲールによる解法がきっちりと例を示しながら書かれている。私は、この本のおかげで目からうろこが何枚も落ちた。
ただし、微分・積分、線形代数、確率がある程度理解できていないとこの本は厳しい。でも、挑戦する価値のある本である。離散時間のテキストでは間違いなくベストである。
実は、この本の成り立ちには日本が深く関係している。今は無き山一證券が筑波大学に客員教授として招いた博士課程クラスの講義ノートが基になっているのである。なぜ日本の金融はあのころから強くなれていないのだろうか。
『ハリソン=クレプス=プリスカの定理の結論は
「資本市場が完備性という条件を満たしているならば、無裁定条件が成り立つとき、またそのときに限り、将来の収益のある種の平均値が、その商品の公正な価格を与える」
というものである。1970年代末に証明されたこの定理は、「完備市場における無裁定条件と同値マルチンゲール測度存在の等価性」と呼ばれている。市場が完備で無裁定条件が成立しているときは、「将来の収益の平均を計算するに当たって、将来の株価の変動を表す確率分布そのものではなく、それにある修正を施した確率分布 -同値マルチンゲール測度- が存在し、それをもとに平均を取ると、それがこの商品の価格になる」。
ハリソン=クレプス=プリスカの定理は、アロー=ドブルー以来の一般均衡理論をもとに、確率積分、数理計画法などの手法を駆使して導かれた、金融経済学上の一大金字塔である。』(『金融工学の挑戦』 今野浩)

修了式、交流会

3月23日(火)の修了式をもって、私のICSでの生活は完全に終了した。長かったような短かったような。
先生方からそれぞれお言葉を頂いた。みな印象深かったが、大橋先生の「もっともっと磨けるはずだった」と佐山先生の「これまで大学院の勉強に使っていた時間をいかに有効に使うかが大事だ」というお話は特に胸に強く響いた。
その後で大橋先生からひとりひとりに日本語と英語の立派な『学位記』と修了証明書、成績証明書、そしてきれいな花束を手渡された。
さて、ICSの2年間を振り返ってみてどうだろうか。
各科目については不完全燃焼で悔いが残る。もっときっちり勉強できたはずだ。時間の使い方、集中力の高め方など工夫すべき点が多い。
修論は予想以上に大変だった。ただ、最終的に自分のできることはやりきったと感じることができた。優秀論文にも選んでいただけたので、こちらは達成感がある。入学前から修論でやりたいことが明確だったので、途中でぶれることなく進めることができたのが勝因だと思う。
全体として考えると、とりあえずICSの先生方のお力添えで、数理ファイナンス(金融工学)という広大な山脈の地図とコンパスを手渡され、いくつかの登山ルートのスタート地点まで案内されてきたところだと思う。進むべき方角だけは分かっている。でも、ここからは本当に険しい山道を自力で(あるいは協力しつつ)登っていかなければならないのだと思う。
2年間、アカデミックの世界にどっぷり浸かれたことは本当に貴重な経験だ。もっと若いうちにやっておけばもっと良かった気もするが、佐山先生も「100年きっちり生きるつもりで勉強している」とおっしゃっていたので、何歳から始めてもけっして遅すぎるということはないだろう。
今後は、アカデミックの最先端の理論を、欧米に比べて大幅に遅れている日本の実務界に積極的に応用していって、日本の金融を強化することに役立てたらいいなと考えている。
そして、いつかは自分のヘッジファンドをアメリカで始められたらと考えている(そのためには英語をブラッシュ・アップしないと・・・)。

2010年3月20日土曜日

修士論文発表会

19日に修士論文発表会を行った。疲れたのは疲れたが、さすがに2回目なので前回ほどは緊張しないですんだ。マイクがあったのも助かった。ただ、レーザーポインターの使い方が分からずに、しかたなくスクリーンを手で指して説明したのでドタバタした感じ。ただ、体を動かしたことは緊張を和らげた。

話している最中は傍聴者を認識する余裕は全く無かったが、精神的支柱が船を漕がれていたのだけはなぜかクリアーに認識できた。もう少しうまく喋れるようになりたいと切実に思う。

全員の発表が無事に終わると8階のオープンスペースで軽く飲む。同期の姿が少なくてさみしい。一緒に発表した同期の関係者として東大の高橋明彦先生がいらっしゃっていて驚く。同期の紹介でお話をするこが出来た。野村マネジメントスクールのときも少しだけお話をしていたのだが、なんとなく顔は覚えていただいていたようでうれしい。私の発表に関しても、「多期間ポートフォリオ選択問題も興味があり、マリアヴァン解析の応用を研究している」とおっしゃっていた。私のようなものの発表もきちんと聞いていただいていたようで身が引き締まる思いだ。

野村マネジメントスクールの講義のなかで債券のアービトレージの話が出てきた。そのときは期間構造の推定の話がメインだったのでパラメータの推定の話はなかった。どうやって推定するのかずっと気になっていたので、これを機会に高橋先生にお聞きした。統計数理研究所の佐藤さんとやったモンテカルロ・フィルタのように統計的に推定することもあるが、最後はいろいろと試行錯誤して決めにいくと言われた(いろいろと数字を試してみて感覚的に決めるということ)。それからLTCMのメンバーたちはまったく統計的にはやっていなかったと話していただいた。

マリアヴァン解析は、中村先生の(今から思うと目からうろこがたくさん落ちる素晴らしい授業だが、これを基礎科目というのかという)「コンピュテーションナル・ファイナンス」の1回目の宿題がいきなり「オプション価格をマリアヴァン解析でシミュレーションして求める」というもので、さっぱり分からなかったものだ。師匠の英語の論文でもマリアヴァン解析が使われていた。高橋先生の『数理ファイナンスの基礎 マリアバン解析と漸近展開の応用』もマリアヴァン解析の本なので、高橋先生の専門の一つがマリアヴァン解析なのだろう。マリアヴァン解析については私はよく理解していない。勉強する必要があるな。デリバティブの計算が簡単になるようなイメージがあるが・・・。重川の『確率解析』はマリアヴァン解析について書かれているようだが純粋に数学の本なので難しい。

中川先生ともゆっくりお話することができた。シュリーヴ2の輪読会を計画していますというと、『1章、2章をちゃんと理解しないといけません』とおっしゃっていた。来年度の「金融数理の基礎」は測度論からやるようなので、受けてみたい気がする。私がブログをやっていることや、先生のブログの読者になっていることも認識されており、「ブログがんばってください」といっていただいた。中川先生もお忙しそうですが、ご活躍をお祈りしております。

師匠ともゆっくり話すことができた。師匠のゼミからはもうひとり発表したのだが、私と同じ時間だったので聞けなかった。師匠も私たちに学会誌への投稿を薦められた。この際なので、もう一頑張りして投稿してみよう。

あとは修了式で終わりだ。長かったような、短かったような。

余談だが、マリオ、じゃないシュリーヴの写真を貼った投稿のときにページ閲覧者が普段の倍になった。さすがシュリーヴということか。

2010年3月16日火曜日

シュリーヴのModel Riskに関する短いエッセイ

一橋大学大学院国際企業戦略研究科 金融戦略・経営財務コースの『平成21年度修士論文(優秀論文)発表会』が開催されます。

くわしくはこちら

影の師匠、中川先生もブログで「胸を張って修論の成果を発表していただきたいと思います。」とおっしゃっているので、頑張って胸を張ろう。

「修論を手直しすれば学会誌に投稿することも可能な場合もあると思います。修論をもっと深めて学会誌に論文投稿したいと考えている方は、指導教員に一度相談してみてはどうでしょうか。 」

うーむ。考えてみるか。



Steven ShreveのウェブサイトでModel Riskに関する短いエッセイを発見したが、面白かった。リンクはこちら

サブプライム危機と金融工学の関係について考察してある。ガウシアン・コピュラのモデルとしての限界等についても述べてある。

上の写真がシュリーヴ。勝手に痩せた金髪のフランス人のイメージを持っていたが、実際はスーパーマリオだった(ドイツ人?)。

シュリーヴ2の7章「エキゾチック・オプション」に目を通したが、殆ど頭に残っていないな。

2010年3月13日土曜日

債券、クレジット・リスク関連の本


イールドブックのセミナーで缶詰になっていたころ、気分転換に丸善まで立ち読みに行き、何冊か本を買った。そのうちの一冊が上の本。中川先生のブログで指摘されていて気づいたのだが、「師匠」が訳されていた。全く気づかなかったな。師匠は最近、精力的に訳されている印象。

この本は、もともとは今は無きリーマン(現在は買収されてバークレイズ)の債券のクオンツ分析チームのレポートを本にまとめたもの(翻訳はその抄訳)。前から英語版の存在は知っていたが、買うほどではないかなと購入は見送っていた。ちなみにリーマン(バークレイズ)の債券ツールは"POINT"という。

それなのに今回、翻訳を買ったのは、今後、債券、クレジット・モデルの開発が本格化するので、実務界のアプローチも知っておいたほうがいいと思ったからだ。他にいいと思った本は、シューンブッハーの『クレジット・デリバティブ』と、同じく中川先生が授業中に推薦していた菅野正泰さんの『信用リスク評価の実務』。


菅野さんはICSで修士をとられたあと、京都大学大学院で博士をとられて神奈川大学准教授になられた。前は新日本監査で働かれていたようだ。この本は、非常に説明が分かりやすい。

あとは木島、青沼、長山らの『クレジット・リスク』と楠岡、青沼、中川先生の『クレジット・リスク・モデル』も手に入れた。

青沼先生には、今の社長との縁で、当社で勉強会を開いていただいた。中川先生と書いた本の中では、最適化ツールのNuOPTをぶん回していたと授業中に中川先生がおっしゃっていた。青沼先生は東大の大学院のとき中川先生と一緒だったのかな。温厚な、素晴らしい方です。

シュリーヴ2 6章

シュリーヴ2の6章「偏微分方程式との関係」を読む。読めば読むほどいい本だという気がしてくる。

債券価格を時間と(時間で変動する)金利をパラメータとする未知の関数で表す。未知の関数に対する偏微分方程式を見つけるためには、マルチンゲールを見つけて、その微分を求め、そのdtの項をゼロと等しいとすればよい。偏微分方程式に予想した解である方程式の偏微分を代入して整理する。この等式は全てのrに対して成り立たなければならないので、rにかかる項をゼロとおく。するとtについての常微分方程式を得る。これに終末条件を加えて解を求める。

ここら辺りは中村先生の授業でやったなあ。当時はさっぱり分からなかったが、今ならフォローはできる。

Hull & White モデルはVasicek モデルを一般化して時刻変化する係数を許容した。こららやCIRはDuffie & Kan が定義したアフィン・イールド・モデルの例である。

『原資産価格が確率微分方程式で与えられるとき、その資産価格はマルコフで、その資産を基とする経路依存でないあらゆる派生証券価格は、偏微分方程式によって与えられる。経路依存の証券を価格評価するためには、まず経路依存のペイオフが依存する変数を見定める。そして次に、1つまたはそれ以上の追加的な確率微分方程式を導入して、関連する変数を表現する一連の方程式を得る。もしこれができれば、ここでも派生証券価格は偏微分方程式で与えられる。』

このことから、価格評価の微分方程式を見つけて、派生証券のヘッジを組み立てるための、次の4段階の手順が導かれる。

1.派生証券価格が依存する変数を決める。これらの確率過程を状態過程と呼ぶ。
2.状態過程に対する一連の確率微分方程式を書き下す。その動きを起因するブラウンを除けば、これらの方程式右辺に現れる唯一の確率過程は、状態過程それ自身だけである。このことが、状態過程のベクトルがマルコフであることを保障する。
3.マルコフ性により、各時刻での派生証券価格が時刻とその時刻での状態過程の値との関数であることが保障される。割引オプション価格はリスク中立測度の下でのマルチンゲールである。割り引かれたオプション価格の微分を計算し、dtの項をゼロとおき、それによって偏微分方程式を得る。
4.割り引かれた派生証券価格の微分式においてブラウン運動の微分にかかっている項は、ヘッジ・ポートフォリオ価値の推移においてブラウン運動の微分にかかる項とつり合わなければならない。これらの項をつり合せることで、派生証券の売りポジションに対するヘッジを決定する。

ここらあたりがモヤモヤしていたのだが、すっきりした。やっぱり良い本だ。

2010年3月12日金曜日

ICS修了者発表、留学生の飲み会

ICSの修了者が発表された。2008年入学の40人中34人が無事修了。修了者の皆さん、よかったですね。\(^◇^)/

本多ゼミは全員、無事修了。よかったよかった。

残念だったひとは、次にがんばってください。結果的には修論を製本して出せた人は大体OKだったようだ。でも、中には残念だった人もいると思う。

実は、修士論文発表会の内々の打診が3月2日にあったので、俺としては今日はあまり感慨がない。でも、それがなかったら今日の1時までドキドキだっただろうし、感慨もひとしおだったろうに。

夜は、証券時代に一緒に缶詰になって勉強し留学した仲間と日本橋で飲む。ICSに通っていた頃は参加できなかったので、久しぶりに懐かしい顔を見た。かれこれ20年の付き合いになる。留学生でも俺たちの代以外は飲み会などやっていないようで、貴重な友人だ。俺たちのときはアメリカ、イギリス、シンガポール、イタリア、ドイツ、そしてスペインに留学した。バブルでしたな。

今では、みんな会社は変わってしまったが、ときどきあって旧交をあたためる。

2010年3月10日水曜日

修士論文発表会、イールドブック



3月19日(金)に卒業生を代表して修士論文を発表することになった。オレで良いのか、という気もするが。18:30~19:30に竹橋の学術総合センター2階の中会議場で行われる。参加申込不要の公開行事なので、もしご興味があればお越しください。

前回のプレ発表会は散々な出来だったが、次はもうすこしうまくやりたい。人前で話すのは苦手なのだが。資料も手直ししないと。
9日、10日はシティグループ証券のイールドブックのセミナーで9時から5時まで缶詰で疲れた。写真は会場となった新丸ビルからの眺め。下に写っているのは東京駅だが工事中のようで姿が見えない。自動販売機のコーナーにツタヤのDVD自動レンタル機があって驚く。

イールドブックというのは債券の管理ツール。もともとはソロモン・ブラザーズがモーゲージ証券(MBS)の管理のために開発したもの。今日は債券ポートフォリオのパフォーマンス要因分解、ポートフォリオ最適化、トラッキング・エラー、VaR、モーゲージ証券分析についての講習が行われた。
債券のトータルリターンは金利要因(カーブ・リターン)と個別銘柄要因(スプレッド・アドバンテージ)に分解される。カーブによるリターンはMCP(マッチド・カーブ・ポートフォリオ)を用いて国債(またはスワップ)のイールドカーブを要因とする個別銘柄毎リターンで①ロールダウン、②パラレル・シフト(10年)、③形状変化の3つに分解。銘柄固有リターンは①超過スプレッドによるキャリー、②スプレッドの変化、③コンベクシティ・アドバンテージ、④形状変化アドバンテージに分解される。
おもしろいのは、要因分解のときは10年の変化幅で完全にパラレルでやるのに、トラッキングエラーの推定のときは主成分分析でやる(第1主成分なので完全なパラレルではない)。
スプレッドのロールダウンは特にスプレッドの期間構造モデルを使うわけではない。
イールドブックは非常に機能が豊富なので、使いこなせるようになるまでが大変そう。かなり細かい設定ができることが長所であり、逆にどう設定すればいいのか直感的には分かりにくくそこが短所。

来期は、債券およびクレジット分析をメイン・テーマと考えているので、4月までにシュリーヴ2の全体に目を通しておきたい。分からないところは思い切って飛ばしつつ、なんとか第5章のリスク中立価格評価法までたどり着く。しかし、『伊藤の公式』をいちいち『伊藤-デブリンの公式』というのは鬱陶しい。 『伊藤の公式』でいいんじゃないの。ギルサノフの定理に丸山は付けないくせに。

2010年3月7日日曜日

信用リスク評価の数理モデル

信用リスク関連の洋書を借りてきてパラパラと目を通す。1冊がそれぞれ高いのでどれを買うか迷っているが、既に持っている木島、小守林の『信用リスク評価の数理モデル』で主なモデルはカバーされているようだ。

「金融自由化の進展に伴い、従来のようにデフォルトするかしないかを判定するのではなく、デフォルト確率を正確に予測し、信用リスクに見合うリターンを確保するという考え方が重要になって来ている。また、デフォルトの可能性のある債券の評価やクレジット・デリバティブの価格付けでは、デフォルト確率をいかに予測し、それをどのようにモデルの中に反映させていくかが重要なテーマである。

 欧米ではこのような信用リスクに関する研究が1980年代後半から盛んになり、現在でも日々新たな研究成果が生まれている。わが国でも、バブル崩壊による信用リスク顕在化という厳しい現実の下、欧米に遅れること10年を経てようやく多くの金融機関が信用リスク評価と管理のための技術獲得に取り掛かったところである。

 将来のデフォルト時点を現時点で完全に予測できることはできないので、この不確実性を表現する道具として確率統計および確率過程のフレームワークを利用する。このため、デフォルト時点の確率分布の考え方を最初に整理しておいたほうがよい。

 経済学と数理工学との学際領域である金融工学という分野で、わが国が欧米のはるか後塵を拝しているということは疑いのない事実であり、これはひとえに金融工学の理論を理解し、それを新商品開発やリスク管理に結び付けることのできる人材の絶対的不足に原因がある。」

7章が市場性資産の信用リスク評価について書かれている。

「市場性資産の信用リスクを国債とのスプレッドでとらえる場合には、他の金融資産管理との整合性をとるために、デフォルト時点と回収率を組み込んだ社債の価格付けモデルが必要となる。この章では、デフォルトのある割引債(割引社債)の評価モデルをリスク中立化法のフレームワークで説明する。利付き社債は割引社債のポートフォリオとして価格付けされる」

7章の主な参考文献をDLしておく。多くの論文をDefaultRisk.comでDLすることができて、ありがたい。

Black and Cox (1976) "Valuing corporate securities: Some effects on bond indenture provisions"
Black and Scholes (1973) "The pricing of options and corporate liabilities"
Duffie and Singleton (1997) "An econometric model of the term structure of interest rate swap yields"
Duffie and Singleton (1998) "Simulating correlated defaults"
Duffie and Singleton (1999) "Modeling term structures of defaultable bonds"
Hull and White (1990) "Pricing interest-rate-derivative securities"
Jarrow, Land and Turnbull (1997) "A Markov model for the term structure of credit risk spread"
Jarrow and Turnbull (1995) "Pricing derivatives on financial securities subject to credit risk"
Longstaff and Schwartz (1995) "A simple approach to valuing risky fixed and floating rate debt"
Merton (1974) "On the pricing of corporate debt: The risk structure of interest rates"

膨らむ投信保有コスト、 BRICs投信に2兆円

2010年3月7日(日)の日経の記事で「信託報酬が6年連続上昇」とあった。2009年末で1.35% (°∇°;)。憂うべきことである。信託報酬というのは投資信託の運用資産から自動的に徴収されるコスト。今の金利水準から考えても1.35%はいくらなんでも高すぎる。詐欺に近い。なんで暴動がおきないのか。日本の受益者はバカにされているのである。

21世紀アセットの「グレートチャイナCBファンド」の2.97%にいたっては詐欺である。CBだったら大したパフォーマンスは期待できないだろうにそこから2.97%も引くとは言語道断だろう。こんな投資信託は買ってはいけない。

「BRICsや新興国の株や債券は直接売買することが難しいため、海外の運用会社に運用を委託したり銘柄選定の助言を受けたりする。こうしたコストが上乗せされるため、信託報酬が高く設定されるケースが多い」と書いてある。冗談ではない。オレなんか10年前から新興国の株を自分で運用していたぞ。

日本の運用会社だって十分運用できるのだ。結局、客に投信を売るときに外国物は外資系の名前の方が売りやすいからだろう。販売会社のレベルが低いのが問題だ。ついでに言うと顧客のレベルも低いのが問題だ。日本全体の金融リテラシーの低さの問題だ。そのコストが結局受益者に全部押し付けられている。

日本において運用会社が銀行・証券の子会社の立場から独立できていないことが最大の問題だ。投信の流通チャンネルが古い銀行・証券に押さえられていることが問題だ。

日本の銀行、証券、投信会社がこんな受益者をバカにしくさったビジネスを続けていると遅かれ早かれ強烈なしっぺ返しをくらうのは間違いない。今の金融知識はゼロに近い高齢者からネットを使いこなせる受益者への世代交代が近いうちに起きる。そのときに、今の銀行・証券のビジネスモデルは完全に崩壊するよ。

ついでに言うと、投信会社の社長、会長、役員を銀行・証券の天下り先に使うのは止めてくれ。役人の天下りは批判するくせに、日本の企業は役人の行動はトレースするんだからな。まったく、勘弁してくれ。

BRICs投信に2兆円というのも、キ〇〇〇沙汰だな。ブラジルなんてこれまで何度も通貨のデバリューを繰り返してきているだろう。そんなところに日本の金がドッと流れ込んでバブっているのになんでそんな国の株、債券、通貨の投信を買うのかね。資金が逃げ出したら一気に基準価額が暴落するけど。大損しなければいいけどな。

ガラス工芸展、ラゾーナ川崎、石焼きハンバーグ

 
大学時代の友人がガラス工芸の展覧会をやるので行ってきた。場所はJR川崎駅西口のラゾーナ川崎。ラゾーナ川崎は駅とつながっていて雨に濡れないで行ける。3月7日(日)までやっているのでお近くの方はいってみてください。『十年十色展』という無料のこじんまりした展覧会です。ガラス絵の体験と持ち帰りもできます。

ラゾーナ川崎は巨大なショッピングモールだった。駅前にこんな巨大なモールがあるとはビックリ。展覧会で旧友たちと再会後は石焼きハンバーグの『STONE BURG』で石焼きハンバーグを食べる。とってもおいしかったです。おすすめ。

 
『東京ガラス工芸研究所』第18期の卒業生の作品が展示してあります。卒業後は自分の家で自作の電気炉で作っているらしい。

2010年3月6日土曜日

クレジット・リスク関連の本の備忘録

図書館の本
①Credit : the complete guide to pricing, hedging and risk management / Angelo Arvanitis and Jon Gregory
②Credit risk modelling : the cutting-edge collection : technical papers published in risk 1999-2003 / edited by Michael B. Gordy
③Managing credit risk in corporate bond portfolios : a practitioner's guide / Srichander Ramaswamy
④Credit risk : modeling, valuation and hedging / Tomasz R. Bielecki, Marek Rutkowski
⑤クレジット・リスク・モデル : 評価モデルの実用化とクレジット・デリバティブへの応用 / 楠岡成雄, 青沼君明, 中川秀敏共著
⑥クレジット・リスク: 金融リスクの計量化(下) 木島、青沼、乾、近江、長山、林、室町
⑦Credit risk modeling : theory and applications / David Lando ; : cl
⑧CreditRisk[+] in the banking industry / Matthias Gundlach, Frank Lehrbass (eds.)
⑨Credit risk valuation : methods, models, and applications / Manuel Ammann

自分の本
⑩クレジットリスク / Duffie, Singleton
⑪Credit Risk Modeling / Bielecki, Jeanblanc, Rutkowski
⑫定量的リスク管理 / McNeil, Frey Embrechts
⑬信用リスク評価の数理モデル / 木島、小守林
⑭信用リスク計測とCDOの価格付け / 室町
⑮資産の価格付けと測度変換 / 木島、田中
⑯金融デリバティブズ / 小田

2010年3月2日火曜日

統計科学の数理 答案返却

統計科学の数理の試験の答案が返却されたので、久しぶりにICSに行く。写真は三浦先生が絶対潰すなと言い残していった8階のオープンスペース。入学前の面接試験のときも、修論の口述試験のときもここで待たされたので、印象深い。8階には教授陣の部屋があるのだが、大師匠の部屋を除いて全て電気が消えていた。
統計科学の数理は「落としようがない」と言いながら、結構間違えていて恥ずかしい。あんまり偉そうなことを言うべきではないな。
会社は3月ということで来期の施策の打ち合わせが多いのだが、来期は『クレジット・リスク』のモデルをやりたいと言っていたところ、紆余曲折を経て『クレジット・リスク・モデル』をやることになった。ということで、ICSの図書館に寄ってクレジット・リスク関連の本を持てるだけ借りて帰った。
俺のイメージでは、クレジット・リスクのモデルは無裁定の概念を利用した期間構造モデルをスプレッドの期間構造に拡張するというものだけれど、それでいいのか? クレジットは今までノータッチだったので、一から勉強することになるなあ。とりあえずダフィー&シングルトンの『クレジット・リスク』の全体に目を通そう。マートンのモデルが構造型と呼ばれるのに対してダフィーらのモデルは誘導型と呼ばれるらしい。あるいは強度(intensity)モデルとも。中村先生や中川先生の授業で聞いたような。クラスノートを読み返してみよう。
修了者の発表は来週あたりなのかな?