2010年12月31日金曜日

高木貞治 近代日本数学の父

高木の人生を追いながら、日本に欧州の数学が導入されていく様子、ドイツが数学の中心だったころのドイツの数学者達、高木が類体論を完成させていく様子が描かれています。
初めての洋行、1900年の春にベルリンからゲッチンゲンに移る。本当はウェーバーのいるシュトラスブルグに行こうとしたらしいが、途中でゲッチンゲンに立ち寄ってヒルベルトに会い、計画が変更された。ゲッチンゲンでは「週に一度、談話会があったが、その談話会というのはドイツはもちろん数学の世界全体の中心地であった。高木は25歳にもなって『数学の現状に後るること正に50年』というようなことを痛感した。」
「それでもそれから三学期、すなわち1年半の間ゲッチンゲンの雰囲気の中に生息しているうちに、なんとなく50年の乗り遅れが解消したような気分になったという。『雰囲気というものは大切なものであります』」
「ヒルベルトの研究の仕方というのは非常に独特で、数論に心が向く時期には数論に専念するが、行くところまで行き着くと数論から離れ、全然別の領域に移っていくというふうであった。」
「類体の概念を『分岐しない類体』の範疇で把握すると『アーベル体は類体である』とは言えないが、類体の概念を拡大して『分岐する類体』を考えることにすると、どのアーベル体も類対として諒解される。これが高木類体論の『基本定理』であり、理論全体の根幹となった発見である。」
「類体の理論を建設して、その土台の上に『クロネッカーの青春の夢』と一般相互法則という二本の柱を打ち立てるのは、数論の世界にヒルベルトの心が描いた夢であった。『クロネッカーの青春の夢』を大きく包み込むかのような、簡明で壮麗な巨大な夢である。高木はこのヒルベルトの夢を継承し、『分岐する類体の理論』という、ヒルベルトの大きな夢をさらに大きく包み込んでしまう理論を構築した。高木もまた数学に夢を描く数学者であった。『クロネッカーの青春の夢』もヒルベルトの夢も、高木の夢に包まれてことごとく実現したのである。」
最後の洋行で32年ぶりにヒルベルトを訪問した高木。「毎日、(効き目があるというので)生の肝臓を食べて不治の難病と戦いつつ、時には若手の助手連中に揚げ足を取られたりしながらも、どうしても排中律の証明などを書かずにはいられないヒルベルト」
「余生などというのは論外で、『生きながらの餓鬼道ではありませんか』と高木は嘆息し、『恐ろしいのは、これも不治なる知識追求症です』と心情の声をもらした。」
『解析概論』が書き下ろしの単行本ではなく、『岩波講座数学』に分載されたのが初出だったこと、高木は学生の集中力は30分が限度という持論を持っていて、きっかり11時半に教室に現れて、12時にぴたっとやめたことなども書かれています。
意外だったのは数学の抽象化というのは比較的最近の出来事だったこと。抽象化の傾向が目立ち始めたのはWW1の直後、20年代のはじめころ。「新思潮は『決河の勢』をもってまず代数学を征服した。ついで位相学を再建し、線形作用素の理論を統一し、確率論に数学的なる基礎を与えるという勢いを示し、『数学の全嚝野を風靡してその面貌を一変せしめるに至った』。」

2010年12月26日日曜日

「インデックスファンドの魅力」とよく言うけれど

FP系の人は「インデックスファンドの魅力」とよく言うけど、インデックス・ファンドの魅力はコストが若干安いことだけだ。90年以降の日本株インデックス・ファンドを魅力的というのか。今後は世界的にも右肩上がりの株価上昇が期待できなくなっている。安易に儲かる時代は終わったことを覚悟せよ。

今後の20年を考えたときに、欧米が日本の失われた20年を後追いする可能性はそんなに低くない。新興国はバブル&バーストを繰り返すだろう。インデックス投資、長期投資、分散投資が魅力的って素人でも言えるけど、本当にそれでいいのか、もう少し真剣に考えてみたら。それでもいいと思うんなら自分の金でポジション取って勝負してくれ。
コストの安さは重要だ。ただ、相場ではその安い分が一日で吹き飛ぶこともある。コストが少し安いから、という理由で積極的に買う理由にはならない。「インデックス」ファンドは魅力的ではないのだ。
簡単に分散投資できる手段としてインデックスファンドは良いという人の意見も分かる。しかし、そもそも分散のための分散投資をする必要はない。上がるものを買い下がるものを売ればいい。

2010年12月24日金曜日

問題視されているリーマンの「レポ105」による会計操作

「ヘッジファンド投資ガイドブック」には、最近問題視されているリーマンの「レポ105」によるバランスシートの見かけ上の圧縮についてもわりと詳しく書いてある。
リーマンの2007年11月の決算時で自己資本225億ドル、総資産6911億ドル。レバレッジ比率約30倍。総資産はトレーディング用のロング・ポジションと担保付貸出が大半。後者はヘッジファンドに対するプライム・ブローカー業務による部分とレポからない、いずれもオーバーナイトが中心の短期の資産。現金は73億ドルで1%を占めるにすぎない。
負債側は、レポによるファンディングとショートポジションが60%を占め、長期負債はわずかに18%にしかすぎない。12%の買掛金はヘッジファンドからの現預金。
レポとリバース・レポが重要な割合を占めていた。
リーマンが社内で「レポ105」と呼ぶレポ取引による会計操作の目的はバランスシートを縮小し、ネットベースのレバレッジ倍率を小さく見せることだった。これは格付けを維持するためであった。格付け会社はグロスではなくネットベースで見るからである。
通常のレポ取引では102ドル相当の価値のある債券を相手に提供して100ドルの現金を調達し、2ドルの部分が超過担保に相当し、これが価格変動分に対するクッションになる。しかしこの場合には105ドル相当の債券を提供することによって、この取引はレポ取引ではなく売買取引扱いとなり、調達した現金で負債を返済することによって、バランスシートを縮小した。しかし資産の質は時間とともに流動性の劣る資産の塊になってしまった。彼らのファンディングはレポ取引が中心であり、有価証券を担保に資金を調達する。リーマンも最後はこのファンディングで行き詰った。
投資銀行はレバレッジの拡大によって、高いROEを達成してきた。このときの資金調達の主要な部分が、レポ取引とリバース・レポ取引の活用。バランスシート拡大のための資金調達手段であるレポは、短期のロールオーバーが中心。したがって資産サイドの大幅な下落により自己資本が毀損するような状態になると、株価が売られるだけでなく、レポの担保の掛け目も厳しくなる結果、現金の調達力が低下し、しかもレポの期間も1週間から、3日、1日というように短期化してくる。

リーマン破産に関するJENNER&BLOCKのチェアマンAnton R. Valukasによる2200頁のレポートはこのウェブサイトで見れる。


2010年12月21日火曜日

格付け機関の意義

(1)格付けのビジネスはS&P、ムーディーズ、フィッチの3社の独占的状態が続いている。
(2)格付けはあくまでも投資をするうえでの「参考意見」でしかない。
(3)投資家は自前で信用調査をするか、格付け機関のの格付けを利用するしかない。格付けに変更はつきものであり、その変更には最大限の注意が必要。格付け会社は自らがトリガーを引いて当該の会社の危機を助長したり、倒産に貶めるようなリスクを避けたいがゆえに、格下げのタイミングは往々にして遅れがちになるといわれる。クレジット・アナリストの役割の1つは、こうした格付け会社の動向を推察し、格付けの変更が公表される前に動くことができるかどうかである。
(4)格付けの変更の際、特に投資適格債(ハイグレード債)から非投資適格債(ハイイールド債)に落ちるときが最も影響が大きい。投資家の大半は投信のガイドライン上、非投資適格債に落ちると売却せざるを得ない。業者はビッドを急激に下げるか、提示しなくなる。
(5)格付けの変更に対して価格変動は非対称的。価格は下方弾力、上方硬直という動きになる。格下げというリスクにはきわめて敏感に反応。
(6)格付け会社の収入源は、依頼者である発行者、もしくは仕組み債の組成者から。このスキームは利害関係の観点からは好ましくない。。依頼者は費用を払って少しでも良い格付けを得たいし、格付け会社は競走上積極的にし仕組み債の価格付け方法(優良格付けの取り方)を開示することによって、自社の利用を促したい。このビジネスは重要な収益源となった。
(7)このCDOの格付けに際しての前提条件となる重要なパラメータは、予想デフォルト率、相関係数、回収率など。過去の延長線上で計算していたものを、新たな状況を考慮して再計算すれば、当然大幅な格下げとならざるを得ない。

2010年12月20日月曜日

ヘッジファンドの運用評価尺度



シャープレシオとは
「リスクに見合ったリターンの度合い」を示す。無リスク資産に対する平均超過リターンを超過リターンの標準偏差で割ったもの。背景には当然CAPMの概念がある。つまり手元資産がゼロで無リスク金利で借り入れをしてリスク資産に投資した場合のリターンを考えている。ICSの本多先生が授業でインフォメーション・レシオと比較しながら、インフォメーション・レシオには背景となる理論がないのに対し、シャープ・レシオはそれを支える理論があるが、しばしば理解されないで使われているということを述べられていた。

シャープレシオ適用に対する問題定義
シャープレシオは簡単できわめて理にかなった尺度であるため、伝統的な資産運用やヘッジファンド運用の世界で広く使われている。しかし厳密にはシャープレシオが適用可能なのは「リターンの分布が正規分布であること」が用件。この欠点に対して様々な新しい評価尺度が提案されている。
●目標リターンを下回る部分のみに注目したリスク尺度LPMを用いた評価尺度
オメガ(1次)、ソルティノ・レシオ、アップサイド・ポテンシャル・レシオ(2次)、3次のカッパ。
●最悪(Drawdown)なリターンの状況に注目したリスク評価尺度
カルマー・レシオ(最悪)、スターリング・レシオ(平均)、ブルケ・レシオ(標準偏差)
●ある確率p%で発生するリターンの状況のなかで最悪なリターンを示すVaRに注目したリスク評価尺度
超過リターン対VaR、コンディショナル・シャープレシオ、修正シャープレシオ

Eling(2008)の実証結果によると、ヘッジファンドのリターンは、正規分布を仮定したシャープレシオを用いても、正規分布を仮定できないという考えのもとにその他の評価尺度を用いたとしても、結果として得られる各ヘッジファンドのパフォーマンス順位付けには大きな差が見られない。

一方、ロー(2002)はヘッジファンドのリターンは自己相関を持っている場合が多く、月次のリスクを単純に年率換算すると実際のリスクより小さな値になってしまうことを実証・指摘した。

う~ん、この本(高橋、浅岡2010)は今まで読んだヘッジファンドの中で最も良い。分析が深く、最新の論文もサーベイしてある。ついでにロー教授から直接、ただでもらった「HEDGEFUNDS」(2008)も読みたくなった。

ヘッジファンドに対する投資家の志向の変化
(1)流動性の重視、(2)透明性の向上、(3)レバレッジ比率の低下、(4)複雑なものから、より単純なのものへ、(5)報酬の低下

Linehill Golf Club

Linehill Golf Club。in=62, out=67, total=129 。フェアウェイもグリーンもバンカーも池も凍っていた。「下半身のタメがない」とキャディさんにダメだしされる(笑)。一度、きちんと自分のスイングをチェックしないと120の壁は超えられないな。

2010年12月15日水曜日

ボラティリティサーフェスの方法論、史上最大のボロ儲け

ブルームバーグのセミナー「ボラティリティサーフェスの方法論」に行ってきた。竹でできたボールペンをくれた。講師はアルーン・ヴァーマでコーネルの応用数学のPhDだそうだ。この辺りは不勉強。バンナ=ボルガとか、初めて聞いた。勉強しないといけないことが多いな。

資料を見るとVolgaがボラの2次偏導関数、Vannaが原資産とボラの2次の偏導関数ですね。
【初耳】ローカルボラティリティ、ストキャスティクスローカルボラティリティ(SVは知っている)、クロスカレンシーインプライドボラティリティ、ブレークイーブンボラティリティ、ジョイントヘストンモデル、コンシスタントインプライド配当と非アメリカン化スキーム。う~ん、なんのこっちゃ???
データがまばらな場合のボラティリティサーフェス。①カルマンフィルタ、②PCA、③ファクターの擬似逆行列、④可能性とフィッティングの最大化。カリブレーションに利用できるオプションがあまりにも少ない場合はヘストンフィットは信用できない、そうだ。
ブルームバーグのボラ関連機能。OMON FXFM FFIP(FFターゲットレートの予想確率) FXDV OVDV(92 で3Dサーフェスグラフ) VOLC(リスク中立ドリフトを差し引く方法で計算) XODF HVG HVT


oazoの丸善で「ヘッジファンド投資ガイドブック」を買う。ふと見るとポールソンが表紙の本が。「The Greatest Trade Ever」の翻訳、「史上最大のボロ儲け」が出ていた。もう少しましな邦題を思いつかないものかね。
「史上最大のボロ儲け」と「世紀の空売り」は、サブプライム・モーゲージの崩壊に賭けた投資家の話で、ほぼ同じテーマですが、前者が有名人のポールソン中心なのに対して後者は比較的無名の投資家中心です。どちらもおもしろい。

2010年12月11日土曜日

ダウンサイドリスクモデル

証券アナリスト協会 検定会員の特権として証券アナリストジャーナルの過去の論文を無料でダウンロードできるので、ダウンサイドリスク関連の論文・サーベイをDLして読む。「ダウンサイドリスクモデル再考~年金基金の基本ポートフォリオ策定への応用~」(竹原2008)。30年以上前に提案された代表的ダウンサイドリスク尺度である、下方部分積率(Lower Partial Moments, LPM)の持つ意味を再考。

年金の基本ポートフォリオは、平均分散モデルをベースとして策定され、モンテカルロ・シミュレーションにより、その妥当性が検証されることが一般的だが、サブプライム危機以降、十分に機能しなくなっているのではないか。
シンクタンクやコンサルの美しいプレゼン資料では、オルタナティブ資産をユニバースに追加すると効率的フロンティアの上方シフトが起こることが示されるが、それは「本当か?」。「リスク=標準偏差」とは限らないのではないか。市場が低迷した今こそ、私達は「リスクとは何か?」について再考すべきではないか。
「何のための資産運用なのか」、「何に使うのか」が明らかとなって、相対的に決まるのが、本当のリスク尺度であって、リスク尺度は人によって違う。
例えば、プットを使ってダウンサイドリスクをヘッジしたポートフォリオのリターンは正規分布と異なるため、それを平均分散モデルにより評価することはできない。対数型、ベキ型を含むHARA族の効用関数を非線形計画問題に帰着させ、最大化させる。
数理計画法の研究者の視点からすると、対数型、ベキ型効用関数におけるリスク認識が数理計画における内点罰金関数に対応するのに対して、LPMというリスク尺度は外点罰金関数に対応する。例えば、年金における積み立て不足を絶対に許さないのが、対数型、ベキ型効用関数で、積み立て不足を極度に好ましくないと思うのがLPM。
リスク尺度とは「投資家の持っている制約条件と相対的なもの」。
1994年ごろ、日本株の暴落で積立金不足に陥った年金基金が、一斉に年金債務を考慮した資産運用を訴え始め、信託銀行の企業年金部署が年金ALMモデルの開発を急いだが、当時の主流は「成熟度分析」と呼ばれる効率的フロンティア上での3~5種類のモデルポートフォリオの提示にすぎなかった。これは平均分散モデルをベースとした「付け焼刃」にすぎない。
現在のオルタナティブ投資の検討は、再び同じことが繰り返されているのではないかと危惧している。それは抜本的な議論の先送りになりかねないし、それを提案する運用機関やコンサルのすべてが、リスクの本質を正しく理解しているかも疑問。
代表的ダウンサイドリスク尺度としてのLPMの理論面に関してはBawa(1975)、Bawa and Lindenberg(1977)を、アセットアロケーションへの応用についてはHarlow(1991)を参照。
次数k=1の場合、LPMとCVaRは似ているが、筆者はLPMとVaR、CVaRとは明確に区別すべきだと主張。VaRは5%、1%といった有意水準を設定して計算されるのに対して、LPMは最小許容収益率τ(タウ)を設定しなければならない。τは基金の制度内容、年金債務現在価値、マクロ経済予測を考慮して決定されなければならない。
LPMはポートフォリオ収益率の正規性を前提としないという点で標準偏差より理論的に優れたリスク尺度であり、τを決めるために問題を先送りさせないという点で、基金のガバナンス向上を促す。
実際にLPMを測定し、LPM最小化ポートフォリオを構築する場合にはヒストリカル法、あるいはシミュレーション法によることがほとんど。目標収益率τは定数である必要はなく、インフレ率、ベンチマークリターン、積立比率等を反映して時間変化するものとすることができる。
ショートフォールに対するペナルティ次数kについては、分散との類似性、オプティマイザが2次計画問題に対するソルバーで実現可能という実装上の要請から多くの場合k=2とされる。したがってこのリスク尺度に魂を込めるのは、時間変化を許容したτの設定方法。
目標収益率τを設定できることが、受託者としての資質の1つ。コンサルにおいても、クライアント基金の状況を分析して、τの提示がなされるべき。
フィーを取って年金ALMというサービスを提供するのであれば、基金の現状分析、τの設定、ダウンサイドリスク分析レポートまでは、プロとしてなすべき仕事の範疇ではないか。
τとしてどのホライズンでのリターンを考えるか、ヒストリカルデータの利用可能性、シミュレーション方法など解決すべき技術的問題は多い。
オプティマイザの目的関数は、単純にダウンサイドリスクの最小化のみでよい。どこまでリスクを許容できるか、どの程度のリターンが必要かは、すべてリスク尺度に内包されている。効率的フロンティアを描いて、フロンティア上の1点を選択する必要はない。最小ダウンサイドリスク・ポートフォリオが最適ポートフォリオなのである。
実際のところダウンサイドリスクをLDIなどの実務に応用するのは容易ではない。ヒストリカルデータは将来のリスクを十分に反映するものとは言えず、オルタナティブ資産はデータの蓄積さえ不十分。既存の平均分散モデルをベースとした方法論にも、時間と費用を抑えるというメリットはあるが、それは変化を放棄することにほかならない。


2010年12月5日日曜日

YOGA for SPORTS

ヨガはいつもは本とビデオを参考にしてやっているのだが、いいDVDはないかとツタヤで探したところこれがあった。基本的な内容を双子らしいモデルが丁寧に実演してくれていてとてもよい。でも絶版みたい。「YOGA for SPORTS」 http://amzn.to/hShSsG

Jaguar XK LCと東芝CELLレグザ

The Nikkei Magazine Styleというのがときどき日曜の日経についてくる。3百万円の時計とか、私とは無縁の世界。でも、今日のは2つほど惹かれるものが出ていた。一つは東芝CELLレグザ。もう1つはジャガーXKラグジュアリー・コンバーチブル。まあ、買えはしないが。

東芝CELLレグザ、凄過ぎ。通常の140倍を超える演算処理速度。3テラのHD。地デジ8チャンネルを同時録画できる!録画は約25時間前から自動更新。
今は廃刊になったが「NAVI」という外車中心の雑誌を若い頃によく読んでいた。いつかフェラーリやポルシェを買うことが仕事のモチベーションだった。いつしか車への興味は薄れていった。今は、いつか自分のHFを作ることが支え。ジャガーXK LCは1300万円か。ポンと買えるようになりたい。

2010年12月4日土曜日

立てよ!日本のフィナンシャル・エンジニアよ! ジーク・クオンツ!!



ファースト・ガンダムの劇場版「ガンダム1・2・3」を見ながら、「ジオン軍の失敗」を読む、至福のとき。画像は、私が好きなシーンのひとつで、ザクが燃え尽きるのを横目に大気圏突入をするガンダム。もっとも私はファースト・ガンダムと「逆襲のシャア」しか見ていないので、それほどコアなガンダムファンではない。

虐げられた宇宙生活者の反乱だったジオンを見ていて、不当に評価が低い日本のクオンツとイメージが重なった。そこでツイッターで「立てよ!日本のフィナンシャル・エンジニアよ! ジーク・クオンツ!!」とつぶやいたところ結構な賛同をいただいた。そのように感じているのは私だけではないのだなと思った。
背景には、日本企業の経営におけるジェネラリストとスペシャリストの扱いや、高度技術を使った開発プロセスをどのように管理するかなど、さまざまな問題がからみあっている。
トップ・マネジメントが必ずしも最先端の技術を完全に理解する必要はないと思っている。会社の方向性を示せればいいという気もする。一方で差別化できる技術がないと結局他社と似たような商品しか出せなくて、マーケティングの些細な戦略など、本質からはずれた議論で終始してしまう。
若い優秀なクオンツや学生さんが正当に評価されるような社会に日本がなるように、微力ながら努力していきたい。
三菱UFJ投信の糸島さんという優秀なファンドマネジャーの方も、昇進していくとファンドマネジメントの本業よりもその他もろもろの雑務の比率が増えてきて、それが嫌で三菱UFJ投信を辞めたという。
日本の資産運用会社はいずれ米欧の資産運用会社と直接競合する。それなのに外国資産の運用を彼らに外部委託するなんて、ありえないでしょう!。敵に塩を送っている。何で自分達で運用しようとしないの。日本の資産運用会社で生き残れるところはあるの?グループ会社に商品売ってもらって生き延びる?

2010年12月2日木曜日

応用一般均衡モデル

野村證券の川﨑研一エコノミストの話を聞く機会があった。随分前に「応用一般均衡モデルの基礎と応用」を読んだ事があったので感慨深い。GTAPと呼ばれるモデルを使っている。TPP、FTAなどの話、官僚、政治家の話などを聞く。川崎さんは経済企画庁を辞めた後、リーマンを経て野村。今でもボランティアでGTAPを使って政府のためにシミュレーションをしたりするそうだ。小野善康さんの話なども伺う。

2010年11月28日日曜日

ビョルクで期間構造モデルの復習

無裁定市場において、満期時点に関係なくすべての債券のリスクの市場価格は等しい。リスクの市場価格は一般均衡の意味での価格ではない。無裁定な債券市場において全ての時点Tに対するT債券の価格F^Tは期間構造方程式を満たす。F^Tのファインマン・カッツ表現を得るのはそれほど難しくない。

BSモデルではマルチンゲール測度が一意に決定される。一意性はBSモデルが完備であることに由来する。一方、様々な債券の価格は一部は短期金利のPダイナミクス、一部は市場の力によっても決定される。
期間構造は他のあらゆる金利デリバティブ価格と同様にマルチンゲール測度Qの下でのr-ダイナミクスを特定化することにより完全に決定される。μ-λσは、マルチンゲール測度Qの下での短期金利のドリフト項である。
ハル・ホワイト・モデルはパラメータを時間に依存させることによって、無限次元のパラメータベクトルαを導入することで、観察される債券データに完全に一致させることができる。しかしこのことがパラメータ推定値の数値的な不安定性をもたらすという危険が伴うことに注意すべき。
理論的な債券価格と観測された価格の完全な一致を得る別の方法としてHeath-Jarrow-Mortonの方法がある。これはフォワードレート曲線の初期条件として、観察された期間構造をおよその値として用いる。

この本は、シュリーヴ『ファイナンスのための確率解析Ⅱ』と違って途中の数式による証明をほとんど省略している。したがって全体の見通しや直感的理解はこちらのほうが得られやすいかもしない。

2010年11月23日火曜日

演習で学ぶ現代制御理論 森泰親

数値例による演習と詳細な解答を通じて現代制御理論の理解を深めることのできる良書。
現代制御は、状態方程式を用いて時間領域で解析・設計することが可能となり、所望の制御系を設計できるかどうかの見通しがよくなった。その代わり、理論が難解になった。古典制御に比べて現代制御がむずかしいと感じる理由は次の4つ。(a)状態方程式というものになじめない、(b)行列計算についていけない、(c)定理と証明ばかり目立ち、その目的が見えない、(d)肝心のアルゴリズムがまとめられていない。
いったん状態方程式でシステムを表現してしまえば、化学プラントもジェット機も同じように扱うことができるのが状態方程式の特徴のひとつである。本書では、電気回路、機械振動系などのシステムを状態方程式で表現する演習の具体例を通して状態とは何かの答えを探る。
現代制御では行列計算を多用する。行列式の展開、逆行列計算、対称行列の性質、重複固有値を持つ場合の固有ベクトル計算などは、数多くの数値例を通して理解を深めることができる。また、行列のランク計算、行列の正定、半正定、負定の判定は、比較的大きなテーマなので1つの節を設けている。
 「現代制御の現場での適用を考えたとき、計算機とMATLABは必要不可欠な道具であろう。しかしながら、それらは、現代制御理論を理解した後にいよいよ実際に使ってみるときに必要となる道具であって、いま理論を理解しようとするときには、便利すぎるMATLABはかえって邪魔になる。それは、どうしても、現代制御理論の理解よりもMATLABの使い方に興味が走ってしまい、プログラムの入口と出口の引数設定方法の解釈に留まり、肝心の中身を軽んじるからである。
 指数、対数、三角関数などの意味や原理がまったくわからなくても手元に電卓があれば即座に答えを手に入れることができる。この場合、単位や入力方法の勘違いで間違った答えが出ていても気が付かないであろう。もっと極端に、電卓が壊れてまったく違う答えを表示していてもそれを信用するであろう。これは非常に危険なことである。答えを簡単に入手できるMATLABはこの電卓と同じだと思わなくてはならない。現代制御理論を十分に理解しないままでは、MATLABに使われ振り回されているのであって、それを道具として使っているとはいえない。
 教科書に書かれている式の展開を、自分の手でひとつひとつ確認することで行間を読み、はじめて現代制御理論を自分のものにすることができる。」

状態空間モデルの経済学への応用、Nonlinear Filters 谷崎久志先生

谷崎久志先生のウェブサイト http://bit.ly/b2pJIL 状態空間モデルの経済学への応用、Nonlinear Filters、Computational Methods in Statistics and EconometricsなどのPDFが無料でDLできる(印刷不可)。

「状態空間モデルの経済学への応用」(絶版)は可変パラメータ・モデル(回帰モデルの回帰係数が時間とともに変化するイメージ)で日米のGDPや為替を分析。私が時系列分析に興味を持つきっかけとなった本。カルマンフィルタが何かもよくは知らなかったが、こういう分析がしてみたいと思った。
Nonlinear Filters(Tanizaki 1996)はまだ読んでいないが、モンテカルロ・フィルタ(パーティクル・フィルタ)やMCMCについても書かれている模様。印刷不可とはいえ、本のPDFをそのまま無料で公開している谷崎先生は太っ腹。

2010年11月22日月曜日

鶴カントリー倶楽部

西コース69、東コース60で129。アイアンが安定してきた。ドライバーがひどい。昼からは前の前の組との間隔が詰まりすぎで、延々と待たされる。コースは山の上に作った感じで高低差がかなりあるので初心者にはつらい。ただ、打ち下ろしのホールでチョロしてしまったボールが止まらないで下まで転がっていってグリーン手前まで届いたのには苦笑い。

2010年11月20日土曜日

シュリーヴ2で期間構造モデルの復習

マルチファクター(アフィン・イールド)モデルでは、抽象的なファクターを推移させることから始め、これらのファクターから金利を得る。しかし金利は資産の価格ではないため、リスクの市場価格を金利のみから推測することはできない。
このモデルでは割引債の価格を求めるための唯一の手段はリスク中立価格評価式を使うことであり、そしてリスク中立測度を得ない限り、これを使うことはできない。したがってこれらのモデルは最初からリスク中立測度の下で構築する。
リスク中立測度の下では割り引かれた割引債価格はマルチンゲールとなる。割引債とマネーマーケットを取引することでは裁定取引ができない。モデルを構築した後で、割引債や派生証券の市場価格と整合的になるようにキャリブレーション。実確率測度、リスクの市場価格は決して登場しない。
対照的にHJMモデルは各時刻における状態をフォワード曲線で近似する。HJMにおいては割引債価格は間接的にリスク中立価格評価式から得られるのではなく、直接的に得られるので、このモデルが裁定を許容する価格を与えないように注意する必要がある。
HJMはブラウン運動によって起因されるモデルが無裁定であるための必要かつ十分な条件を与えるものであり、単に1つのモデルという以上のものと言える。ブラウン運動に起因されるモデルは全て、HJMの無裁定条件を満たさなくてはならない。
実務への応用のためには、フォワード金利が対数正規分布に従うモデルを構築した方が都合が良いと考えられるが、これは不可能。かわりに単利のフォワードLIBORを状態変数として用いるものがフォワードLIBORモデル、市場モデル、あるいはBGMモデルと呼ばれる。

2010年11月15日月曜日

シュリーヴ2、アイズレー・ブラザーズ

シュリーヴの「ファイナンスのための確率解析Ⅱ」の日本語訳のP350の補題8.5.1およびP351の下から5行目の「優マルチンゲール」は「劣マルチンゲール」の間違いです。原書ではちゃんとsubmartingaleとなっているので、翻訳時の間違いと思われます。他にも何箇所か翻訳時の間違いがあるので注意が必要です。

The Isley Brothersの『Go All the Way』は輸入版はもう発売されていたので、待ちきれず輸入版を購入。待っていたよ、このときを。素晴らしい。言葉にならない。今聴いても全然古くない。アイズレーの最高傑作だと思う。アメリカでもCDになってなかったみたいだな。とにかく聴いてほしい。一曲目のGo All the Wayからめちゃくちゃかっこいい。特にギターのリフ。基本的にはファンクなのだが、リズム・パターンが独特で洗練されている。どうやったら思いつくのだろう。
山下達郎やプロデューサーのジャム&ルイスにも多大な影響を与えている。

2010年11月13日土曜日

ステート・ストリート 第7回リサーチ・カンファレンス

 

 
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ主催の第7回 リサーチ・カンファレンスに行ってきた。場所は東京ミッドタウン。既にクリスマス・イルミネーション。
(1) 2011年 マクロ的展望: ”オール・オア・ナッシング”が当たり前に SSGM ティモシー・グラフ
(2) 投資家行動のイノベーション: リスク志向における為替収益性のインパクト SSGM ジョン・アラバジス
(3) レジーム・シフトとダイナミック・ポートフォリオの構築 SSA デービッド・ターキングトン
(4) ダウンサイド・プロテクションと流動性マネジメント SSA サイモン・ミルグレン
(5) システミック・リスクの測定手法 SSA ウィル・キンロー
(6) 座談会: 「嵐の後のノルマルシー」
アステラス企業年金基金、日産自動車財務部、日東電工企業年金基金、ラッセル・インベストメント

SSGAは、State Street Global Marketsの略、SSAはState Street Associatesの略。SSAはステート・ストリートのグループ会社だが、独立していて、高度なリサーチやアドヴァイスを行う組織らしい。ハーヴァードと関係があるらしい。
年金基金の方々の座談会がおもしろかった。直接、年金の方々のお話を聴くのは初めてだったのだが、本音でいろいろと語っておられた。ダウンサイド・リスクの管理が最大の課題。先物・オプションの活用。リバランス。日本株式のウェイト。オルタナティブの扱い。アクティブ、パッシブの比率、など。
日本株に関しては日東電工企業年金基金は日本株は全てロング・ショートに変更するということだった。日本株にはプラスのβが期待できないという考え。他の基金の方も株式のリスクは減らしたいという考えだが、長期的な成長を考えると株式のエクスポージャーもある程度持ち続けざるをえないという認識。その際にどうやって株式のリスクをコントロールするか。

2010年11月11日木曜日

2010年11月10日水曜日

Kalman-Bucyのフィルター理論(1)

離散時間のフィルタはカルマン・フィルタと呼ばれる(Kalman 1960)。連続時間のフィルタはカルマン・ブーシー・フィルタと呼ばれる(Kalman-Bucy(1961)。
津野のこの本は連続時間のカルマン・ブーシー・フィルタの数学、特に確率論の立場から解説したものである。実務の話はいっさい出てこない。類書がない、非常に貴重な本だと言える。

「フィルター問題では2乗平均ノルムを採用する。確率空間(Ω、、P)上の確率変数X(ω)でXの2乗平均ノルム∥X∥が有限になるものの全体L^2(Ω、)がフィルター問題で考察する確率変数の空間である。この空間L^2(Ω、)はHilbert空間になる。
フィルター問題の基礎は直交射影である。Ωのσ加法族HGをとる。L^2(Ω, G)の元XのL^2(Ω, H)への直交射影の像X^~は、X(ω)のHへの条件付期待値である。すなわち次式が成立する。
                  X^~(ω)=E[X|H](ω)

2010年11月8日月曜日

ブルームバーグのエクセルAPIセミナー

ブルームバーグのエクセルAPIセミナーに行ってきた。場所は丸ビル21階。ブルームバーグは機能が多くて、多分全体の5%くらいしか使いこなせてないと思う(汗)。
ブルームバーグ側もそこは把握していて、よく使う機能をエクセルのテンプレートとして準備してくれている。XLTPでそれらのライブラリを見ることができる。企業の財務諸表や財務指標からアナリストの推奨履歴まで一目で分かるシートがそれぞれ作ってある。
XFDVで投資信託の配当込み基準価額を計算してくれるシートをダウンロードできる。これは便利。これを自分でやると結構めんどくさい。そんな時間はこれを使って節約し、もっと他の貴重なことに使うべきだ。
社債の格付け、CDSデータ(WCDS)や評価(CDSW)、デフォルト確率推移までダウンロードできる。カウンターパーティリスクの評価もできる(CVA)。
新しいエクセルAPI関数として、補間関数=BInterpol()、日付算出関数=BAddperiods()、日付計算関数=BCountperiods()、決済日算出関数=BDP(フォワードティッカー,"SETTLE_DT")。端末からXLTP XCLRと入力することでこれらの関数の利用方法を参照することが可能。


2010年11月7日日曜日

喜連川カントリー倶楽部

喜連川コース 70、OUT 63で133。やっぱり練習しないとすぐにスコアが落ちるね。
すごくきれいで適度にむつかしいコース。すごく好きになりました。
帰りの東北道が大渋滞でつかれたよ。( ̄ρ ̄)

2010年11月3日水曜日

The Isley Brothersのアルバムがリイシューされる!!


おお、なんと!! オレの大好きなThe Isley Brothersのアルバムが一斉にリイシューされる。超ウレシー。全部アナログ・レコード(死語)で持っているんだよね。普通の人には左の『Between the Sheets(シルクの似合う夜)』がお奨めだけど、個人的には右の『Go All the Way』が一番好きで超ウレシー。ずっと手に入らなかったのよね。なんかテンションあがってキター。

測度論、確率論(1)


 株価、債券価格(金利)、為替など、金融市場の数学モデルを作る場合、各時刻で偶然起こった現象を含んだ確率過程として記述する。偶然性は、標本空間と呼ぶ可測空間(Ω、)を導入してとらえる。『標本空間』の上に確率測度を設定することができる。つまり、確率過程は、(Ω、)上の『状態空間』と呼ばれる別の可測空間(S、)値を取る確率変数の集まりX={X_t;0≦t<∞}である。
 我々の目的のために、状態空間(S、)はボレルσ族を具備したd次元ユークリッド空間をとる。つまりS=R^d、=B(R^d)である。ここでB(U)はある位相空間Uの開集合をすべてふくむ最小のσ族を表すものとする。
シュリーブの『ファイナンスのための確率解析Ⅱ』の8章、アメリカン・オプションのところで「停止時刻」が出てくるが、測度論、確率論の知識を前提に議論が進むのでなかなか理解が進まない。やはり測度論、確率論を一度きちんと勉強しないといけないと思う。

大まかに言えば、測度はある空間の部分集合の非負関数で完全加法的なものである。ここで完全加法的とは互いに素な集合の列の和の測度が、それぞれの集合の測度の和となることを意味する。
測度論は積分論の基礎であり、この両理論は現代数学、とくに解析学、関数解析学、確率論において重要な役割を演じている。
Aが『有限集合』であるとは、Aに属する元の個数が有限であることをいう。空集合も有限集合と考える。有限集合でない集合を無限集合という。
Aが『可算集合』であるとはAが自然数全体の集合Nと同等であることをいう。Aが『高々可算集合』であるとはAが有限または可算集合であることをいう。Aが『非可算集合』であるとはAが有限集合でも可算集合でもないことをいう。
整数全体の集合Zは可算集合である。集合Aが高々可算集合、B⊂AであればBも高々可算集合である。
Eを集合とする。x、yの関数dが次の四条件を満たすときにE上の距離であるという。 [0]任意のx、y∈Eに対して0≦d(x、y)<∞が対応する。 [1]任意のx、y∈Eに対してd(x、y)=d(y、x)、[2]任意のx、y、z∈Eに対してd(x、y)≦d(x、z)+d(z、y) [3]任意のx∈Eに対してd(x、x)=0であり、逆にx、y∈Eに対してd(x、y)=0であればx=y.このときEとdの組(E,d)を『距離空間』、Eの元を『点』という。AをEの任意の部分集合とするとき、dをAに制限すると(A,d)も距離空間となる。(A,d)を(E,d)の『部分距離空間』という。
Ωを空でない集合とする。これは有限集合でも無限集合でも良い。このΩを標本空間として、その部分集合に対して確率を定義したいが、一般に確率はΩのすべての部分集合に対して定義されているわけではない。そこで確率の定義されているΩの部分集合全体をBとする。
部分集合A⊂Ωに確率が定義されている。1)Ω∈B、2)A∈B⇒A^c∈B、3)部分集合列 An∈B (n∈N) ⇒ ∪_{n=1}^∞ A_n ∈B 。これらを満たすΩの部分集合の集まりBをΩ上のσ集合体という。
B1とB2をΩ上のσ集合体とする。B1∩B2はΩ上のσ集合体である。SをΩの任意の部分集合族とする。このときSをふくむ最小のΩ上のσ集合体が一意的に存在する。これをσ[S]と書き、Sから生成されるΩ上のσ集合体という。
E=(E,d)を距離空間、OをEの開部分集合全体からなる集合族とする。このときOから生成されるE上のσ集合体B(E)≡σ[O]をE上の『ボレル集合体』、Eの部分集合でB(E)に属するものをEの『ボレル集合』という。
Eを距離空間とする。このときEの開部分集合、閉部分集合、コンパクト部分集合、可算集合、有限集合はすべてEのボレル部分集合。 (注意:ボレル集合体は距離空間に限らず、もっと一般の位相空間についても同様に定義される。ここでは距離空間しか扱わない)
特に重要なのはEがd次元ユークリッド空間R^dの場合。R^d上のボレル集合体B(R^d)を簡単のためB_dと書き、『d次元ボレル集合体』、またB_dに属するR^dの部分集合を『d次元ボレル集合』という。

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Xを抽象空間とする。Xのベキ集合、すなわちXのすべての部分集合の族を2^xで表す。Aを2^xの空でない部分族とする。Aが集合の交わりに関して閉じているとき、すなわちB、C∈AからB∩C∈Aが出るとき、AはXの上の乗法族であるという。
Aが有限和、補演算(補集合をとる操作)に関して閉じているとき、AはX上の『有限加法族』(finitely additive class)(または『集合体』(algebra of sets))であるという。
Aが単調極限に関して閉じているとき、AはXの上の単調族であるという。X自身がAに属し、かつAが可算直和と固有差に関して閉じているとき、AはXの上のDynkin族という。
Aが可算和、補演算に関して閉じているとき、AはXの上の『σ加法族』(σ-algebra)(または『可算加法族』『完全加法族』『ボレル集合体』(Borel field))という。

2010年10月31日日曜日

世界国債暴落 世界を蝕む日本化現象

高田創さんは信頼している人のひとり。現在、みずほ証券金融市場調査部長チーフストラテジスト。

 「世界国債暴落」というややセンセーショナルなタイトルだが、中身は真面目で丁寧な世界国債の現状分析になっている。ギリシアの実質デフォルトや世界的に財政赤字が拡大している環境のなかで、日本や世界の国債市場をどうみればよいかが書かれており、非常にタイムリーな出版だと思う。
 個人的には第7章の「ソブリン格付けは信じられるのか」がおもしろかった。ムーディーズの「ソブリン格付け」の考え方が分かりやすく整理してある。簡単に言うと、 ①利払い能力、 ②借り換え能力、③財政均衡能力。それを踏まえて「バランスシート調整下のソブリン格付けの考え方」が述べられている。
 2002年5月にムーディーズは日本国債をA格まで引き下げた。その7年後に一転して日本国債の格付け引き上げを発表している。背景に、 ①ムーディーズの理論体系の転換、 ②日本国債の特殊性を加味した判断、 ③世界の日本化、を指摘している。
「国債はそんなに簡単に暴落しないと考えるのが」筆者達の結論的な認識である。
現在の投資環境はグローバルにつながっており、債券市場の影響が株式市場などにも直結することから、債券投資家に限らずあらゆる投資家必読の書ではないかと思う。
 なお、最初のページの脚注でわざわざK氏について触れているのは、上品な著者らの皮肉に聞こえる。

2010年10月30日土曜日

経済、金融政策を考えるときに読んでおきたい本

私が読んで、参考になったと思った本。でも、いまだと結構、絶版になっているようだな。経済合理性のためとはいえ、しょうもない本が増刷される一方、重要な本がどんどん絶版になる日本の出版業界。重要な本は電子出版での流通が望ましい。小説でも重要な本があっという間に絶版になる日本。今読めなくても、将来絶版になる恐怖からついつい買って積読に。ル・クレジオの「巨人たち」とかも再版してくれないかな。





2010年10月26日火曜日

マクロモデル分析の新潮流 塩路悦郎 一橋大学教授

日経新聞の「やさしい経済学」のコーナーで塩路教授が解説していた。
「新しいマクロモデルとは、旧来型における機械的な家計・企業の前提を、将来についての予想も考慮しながら最適な行動を選ぶ家計・企業の前提に置き換えようとする試みなのである。
これまでのマクロ経済学では「古典派」対「ケインズ派」の対立と見られてきた。古典派モデルの特徴は価格が完全に「伸縮的」だと想定する点にある。もう一つの特徴は実物変数が名目変数とは無関係に決定される、という性質。
新しい動きの最初が、1980年台前半にプレスコット米アリゾナ州立大学教授らが提唱した実物的景気循環(リアルビジネスサイクル=RBC)理論。古典派の流れをくんで価格は完全に伸縮的とされ、名目変数は重要な役割を果たさない。古典派との違いは家計・企業は将来の経済状況や政策を予想しながら現在の行動を決定すると想定した点にあった。比度日とは経済の構造や政府の意図を理解して合理的な予想を立てるとされる。
重要な要因は生産能力である。生産能力は生産要素(生産設備と労働時間)の量とそれら生産要素がどれだけの生産性を発揮するかで決まる。生産性の高い経済ほど起業は生産設備の増強に積極的になり、高くなった賃金につられて家計もより長い時間働こうとするからである。RBC理論では景気変動の主な源泉は生産性の変動と考えられた。好景気とは通常以上の勢いで生産性が伸びているときで、生産性が通常の伸び方に比べて一時的に鈍ると不況になる。
ケインズ派では価格は短期的には粘着的とされ、生産は基本的に需要で決まると考えられていた。ケインズ派の多くは『長期的には生産性がGDPを決めるが短期的には価格の粘着性によって需要がGDPを決める」という話を展開する。
RBCは「長期も短期も生産性が大事だ」とする。
1990年代中ごろから「人々は将来について予想を立てつつ最適に現在の原則を尊重しつつ、価格の粘着性という新しい要素を加えた研究が盛んになった。これが「ニューケインジアン」。景気の将来予想が悪いときには現在の物価上昇率も低めになる。
ニューケインジアンのモデルは次の3本で表せる。第1が総需要を決定する式、第2がフィリップス曲誠意、第3が金融政策ルール。
DSGE(Dynamic Stochastic General Equilibrium)「動学的確率的一般均衡」。DSGEはこうした特徴を持つマクロ経済理論全てを含む点に注意。現時点で有力なDSGEはRBCとニューケインジアン。
3つの困難がある。第1は、金融政策の効果が「個別企業はたまにしか価格を変えない」という仮定から導かれている疑念。第2はこのモデルが現実のデータにうまく合うには、労働市場に何か不完全性があるとみなすことが大事。第3は、現在のモデルでは、今回の金融危機のような大きな出来事の原因を説明する力があまりない。」


2010年10月23日土曜日

経済学とはなにか (根井雅弘)

「自由放任主義の下では大恐慌のように大量失業が発生する可能性があるので、総需要管理を慎重に行い経済を完全雇用に近い状態へ誘導、完全雇用が実現すれば市場メカ二ズムに信頼を置く新古典派の復活、というサミュエルソンの新古典派総合は1970年代前半までは、経済学界の主流派だった
実際は、「総合」というよりは、両者が並列している妥協の産物であった。ケインズ経済学が中心のマクロ経済学と、一般均衡理論が中心のミクロ経済学が、両者をどのように連結するべきかという問題をよそに個々バラバラに研究・教育されていた
アメリカのケインジアンは、歴代のアメリカ大統領に雇用維持のための財政赤字は無害だと説いて、冷戦下の「軍産複合体」に利用されやすい状況をつくってしまったのではないか。本当はケインズ革命が成就したあとに「雇用の内容」を問う方向へ経済学者の関心が向かうべきであった
J・ロビンソンは「不確実性」の下での意思決定を問題の中心においたことが『一般理論』の核心であると解釈していたので、「均衡」分析によって『一般理論』をモデル化したIS/LM(ヒックスの初期の仕事)を決して認めなかった
AからBへの距離はBからAへの距離と同じである。しかし時間においては、今日から明日への隔たりは24時間であるのに、今日から昨日への隔たりは、詩人たちがしばしば注意してきたように、無限であるそれゆえ、時間に対し空間的比喩を適用すると、それはきわめて扱い難いナイフのようなもので、均衡概念はそれを振り回す人の腕をしばしば傷つけるのである(ジョーン・ロビンソン『資本理論とケインズ経済学』)
1960年代後半からアメリカがベトナム戦争の泥沼に陥り、軍需を含めた総需要が過大になるにつれて、インフレ問題が論争の的になってきた。サムエルソンやソローなどのアメリカのケインジアンはフィリップス曲線をできるだけ内側にシフトさせる所得政策を提言したが、インフレ期待が厄介に
長期的にはフィリップス曲線は自然失業率を通る垂直線となる、という「自然失業率仮説」の登場によってフィリップス曲線の信頼度が著しく低下したことは間違いない。それは同時に、主流派であった新古典派総合が次第に影響力を失っていく過程でもあった
ロバート・ルーカスやトーマス・サージェントたちは、合理的期待形成仮説をもって、人々が政策の効果に関して事前に合理的期待を形成するならば、短期的にも、政策の効果はないと主張して、一躍、学会の注目を浴びるようになった
ルーカスの仕事の核心は、マクロ経済学をミクロの経済主体の最適化行動によって基礎づける方法論を確立したこと。現代の経済学界は、一部の例外を除いて、ルーカスの方法論を受容しているといってよいだろう
ルーカスは、『非自発的失業』という用語自体を無用なものと考えている。『失業者』とは将来もっと条件のよい職に就くために『職探し』をしている人たちと捉えられる
わが国の学界でも少数派になったケインジアンの吉川洋は、ルーカスのあとに登場した『リアル・ビジネス・サイクル理論』によって、新古典派は「終着駅」に着いたと解釈している
マンキューらのニューケインジアンは新古典派総合と同じ欠陥を持っており、主流派の一角に食い込んではいるものの、『長期的雇用理論』としてのケインズ経済学の再生に関心を持っている人たちの問題意識とはかけ離れていると判断せざるを得ない
社会研究の知られることの少ない、知ることの困難な領域に深く分け入る際には、自らの仕事を注意深く進め、その限界を十分意識して進めるならば、すばらしい貢献を成し遂げることであろう(A・マーシャル『経済学原理』)
同時期に複数の学派が存在し、お互いに反目している場合、「対話」を通じて自分たちに足りないものを発見する方向に行けば生産的なものが生み出される可能性があるが、単にお互いが「反目」しあっているだけなら貴重な時間の無駄になる恐れがある」

経済政策を売り歩く人々(ポール・クルーグマン)


「政策プロモーターとは、政治家が聞きたがっていることを言って聞かせるエコノミストのことである。真剣な経済学者たちの考え方は、政策プロモーターのわかりやすいスローガンよりも真理へのよりよいガイドであるばかりではなく、より興味深いものであるという確信を得られれば幸いである。
経済的困難に際しては、政治的に利用しやすい経済学のアイディアが前面に出てくる。それは、しばしば明らかに誤っているのだが、真剣に考えることに耐えられない向きには、なるほどと思わせるような類のアイディアなのである
政策プロモーターの大きな特徴は、彼らがどこから来たかではなく、どういう言葉で話し、誰が彼らの話に耳を傾けているかという点にある。学者は大抵、他の学者を対象として論文を書く。仮に、もっと広く一般大衆を対象に書くとしても、常に自分の同僚の反応を頭の片隅においているだろう
その結果、学者は、自分や他の学者達が間違っていると考えていることは、いかに聞こえが良かろうとも発言することを控えるようになる。そして、学者の言葉の裏に潜むものは、どんなに簡単なことであっても、一般人が理解できないようなものであることが多い
一般人に売れるのは、ほとんどが政策プロモーターの著作である。なぜなら、テレビに出演する多くが政策プロモーターだからであり、またそれが彼らの仕事だからである。一般視聴者たちは、見るものをそのまま受け止め、それらは先入観として残ってしまうことになる
学者は、政策プロモーターを演じることもできるが、そうしているうちに学者であることを止めてしまう。少なくとも、学者仲間達は、彼のことを学者とみなさなくなってしまう。
政治家からすれば、政策プロモーターはきわめて役に立つ。学者と違って、彼らの見解はたやすく選挙民の関心をひきつけるものに転換させることができるから。特に、経済が不況に陥っているとき、政策プロモーターが高成長のマジックを呼び戻す方法を知っているとうそぶくときにはなおさら
テレビによく登場する人物は、大した専門家ではないというのが通説である。なぜならば、実際に研究をしている専門家は多くのテレビ出演をこなすほど暇ではないからである。また、テレビ番組の質の高さは、必ずしも高度な研究に関するものでなくてもよい」

政策プロモーターの典型が勝間和代だ。