5月22日、23日と上智大学で行われた『日本ファイナンス学会』に行ってきた。久しぶりにアカデミックの世界にどっぷりとつかる。たまにはレベルの高い話を聞いて刺激を受けないと。いくつか、印象に残ったものの備忘録。
『モンテカルロ・フィルタによる信用リスクの推定』 三崎広海(東京大学)
デフォルトのないイールドカーブを2ファクターでモデル化し、クレジット・スプレッドのインテンシティ(強度)を別のファクターでモデル化。パラメータの推定にモンテカルロ・フィルタを利用。今、自分が仕事でやろうとしていることに非常に近いので参考になった。もっともこちらはモンテカルロ・フィルタではなくカルマン・フィルタが精一杯だが。モンテカルロ・フィルタは計算負荷が高い割りに、出てくる結果はあまりカルマン・フィルタと変わらない印象がある。実務的には計算負荷が大きいと実用化は難しい。
『多変量・動的コピュラ関数を用いたアセット・アロケーション』 中村信弘(一橋大学)
われらが中村先生。相変わらずの中村節。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の競争入札委託研究らしい。多変量・動的コピュラモデルでモデル化し、それを使って投資ホライズンまでの将来リターンをサンプリングしてCVaRを最小化手法で基本資産クラスの最適投資ウエイト決定問題を解く。コピュラは動的混合ヴァインコピュラ(ヴァインコピュラといえばNさんを思い出す)。討論者の塚原英敦さん(成城大学)はコピュラの専門家らしいが、すごいロン毛とサングラスっぽいメガネでどうみても大学教授には見えないな。会場からピントはずれな質問が出て驚く。ピントが外れすぎていて中村先生も質問の意味がなかなか理解できないようだった。
『イールドカーブと景気予測』 高岡慎(琉球大学)
Nelson-SiegelモデルでGDPを予測。GDPはカルマンフィルタで月次化。討論者の祝迫さんは、Nelson-Siegelでなくてもイールド・スプレッドでいいのでは、GDPを月次化したものを予想してもあまり意味は無いので鉱工業生産などを予測すれば、という尤もな指摘。同期のMさんも来ていた。
『信用リスク移転機能の発展と最適ローンポートフォリオ選択』 新谷幸平(日本銀行)
ポートフォリオ選択問題を用いてクレジットデリバティブや証券化が銀行経営に与える影響を分析。個人的には非常に面白かった。ただ、討論者がひどい。他にいなかったのかな。
『アジアの株式市場もおける連関と金融危機』 張艶(福岡女子大学)
ただ単にアジアの各市場のリターンをVARで分析しましたというだけの研究。これならICSの修論のほうがレベルは高い。討論者は青学の芹田先生。
出口で偶然、ICSの沖本先生にお会いした。向こうから会釈をされたので、こちらも会釈をした。「ICSの人ですよね」と話しかけていただいた。名前はともかく、顔は憶えていていただいていたらしくて、少しうれしい。時系列分析を学習するものとして、沖本先生を尊敬しております。少しお話をした。2週間前にアメリカから戻られたとのこと。このあとも、2箇所ほど出張して話をされるということで、巨大なサムソナイトを持ち歩いておられた。
近くの教会に行くクリスチャンと上智大学が会場となった測量士試験を受ける人たちで、歩道がものすごく混んでいた。やれやれ。測量士試験を受ける人たちは職人風の風貌の人も多く、明らかにファイナンス学会系の人種とは異なっていた。歩道で測量士試験関連の専門学校のバイトの人たち数人が並んでビラを配っていて、俺にも渡そうとする。だから、おれは測量士試験とは関係ないって。