2010年5月17日月曜日

Dynamic Term Structure Modeling

全部で650ページ、ひたすら期間構造モデルについて書かれている。丁寧に記述されているので分かりやすい。ただし、期間構造モデルの分類の仕方にすこし癖があるので慣れるまでは戸惑った。
この本は期間構造モデルを大きく二つに分けている。一つはファンダメンタル・モデル、もう一つはpreference-freeモデル。違いは、前者が”リスクの市場価格 MPR”の明示的な特定化が必要なのに対して、後者は必要ない。preference-freeモデルにはsingle-plus, double-plus, triple-plusの三種類がある。
preference-free single-plusモデルがMPRの特定化を必要としないトリックはファンダメンタル・モデルの下で与えられるボラティリティ関数の型と同じ型を使うことで確率的債券価格過程を外性的に特定化することである。外性的な確率的債券価格過程は、外性的に与えられる時点ゼロの債券価格、またはフォワードレートの解と組み合わされて、時間均一なリスク中立短期金利を導く。
preference-free double-plusモデルがsingle-plusモデルと異なるのは、MPRの特定化が不要なことに加えて、時間不均一な短期金利のドリフトを許容することで、初期時点の債券価格に完全にフィットさせることが可能。
preference-free triple-plusモデルがsingle,doubleと異なるのは、それに加えて、時間不均一なボラティリティを許容するから。現実的にはtriple-plusモデルはパラメータが多くなりすぎることと”スムージング”の批判を免れないことから、preference-free double-plusモデルで十分とのこと。
ページ数は多いが、英語が平易なのですらすら読める。期間構造モデルの本としては、なかなかいい本だと思う。

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