2011年8月18日木曜日

林 貴志の「ミクロ経済学」

林文夫の"Econometrics"と林貴志の"ミクロ経済学"を同時に読み始めるなど。
林貴志の"ミクロ経済学"の"はじめに"より。
「例えば『市場が完全競争的ならば、そこでの資源配分は効率的である』という命題は厚生経済学の第1基本定理として、ミクロ経済学の主要な『お題目』の一つとされている。もし、これを『市場経済は良い配分をもたらす』と解釈したならば、大間違いである。肯定的に取ろうが、否定的に取ろうが、である。ミクロ経済学は社会に関わる学問であるから、当然そこで用いられる術語には、(中途半端に)日常用語と重なりあうことが多い。これが危険である。『市場経済は良い配分をもたらす』として上の命題を振り回すのも、あるいは逆に『市場経済が良い配分をもたらすというのは嘘だ』として攻撃するのも、両方ともに間違いである。

初級書で留保条件をあえて述べずに結論のみを与えるのは、議論の背後にある前提条件および論証プロセスを読者が顧慮しなくなってしまう危険性をはらんでいる。結果、前提条件を無視して結論を振り回したり、あるいは本来その議論が述べていないことにまで結論を拡張してそれを批判の的にする、というようなことが少なからず行われる。残念ながら、経済論壇では日常茶飯事のことといってよい。野心的な議論は大歓迎であるが、それは同時に、前提抜き・論証抜きの結論を排した『禁欲的』なものでなければならぬ。」

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