2017年10月29日日曜日

『脱線FRB』 ジョン・B・テイラー

テイラー・ルールの提唱者として有名なジョン・B・テイラーは次期FRB議長候補にもなっている。図書館で彼の『脱線FRB』という本を借りてきて読み始める。

《テイラー・ルール》 政策金利=中立名目金利+α(今期インフレ率ーインフレ目標)+β(GDPギャップ) 中立名目金利(自然実質金利+インフレ目標)とインフレ目標をそれぞれ4%と2%、αとβをそれぞれ1.5と0.5とすると1980年代から2000年にかけての政策金利を説明できると。

本の内容は以下の彼の講演や論文の寄せ集め。

"HOUSING AND MONETARY POLICY" John B. Taylor(2007)
http://www.nber.org/papers/w13682.pdf

"Globalization and Monetary Policy: Missions Impossible"
John B. Taylor(2009)
http://www.nber.org/chapters/c0787

"A Black Swan in the Money Market" John B. Taylor, John C. Williams(2008)
http://www.nber.org/papers/w13943

"The State of the Economy and Principles for Fiscal Stimulus"
John B. Taylor(2008)
https://web.stanford.edu/~johntayl/Principles%20for%20Fiscal%20Stimulus.pdf

"The Costs and Benefits of Deviating from the Systematic Component of Monetary Policy"  
John B. Taylor(2008)
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.436.4115&rep=rep1&type=pdf

"The Way Back to Stability and Growth in the Global Economy"
John B. Taylor(2008)
https://www.imes.boj.or.jp/english/publication/mes/2008/me26-4.pdf

"THE FINANCIAL CRISIS AND THE POLICY RESPONSES:
AN EMPIRICAL ANALYSIS OF WHAT WENT WRONG"
John B. Taylor(2009)
https://www.perimeterinstitute.ca/images/conferences/taylor_policy_responses.pdf

これに対して、解説で大津敬介氏がウッドフォード(2001)を紹介している。

"The Taylor Rule and Optimal Monetary Policy" Michael Woodford(2001)
http://www.columbia.edu/~mw2230/taylor.pdf

ウッドフォード(2001)は、典型的なケインジアン粘着価格モデルにおいて、テイラー・ルールが、経済厚生損失関数を最小化させる最適金融政策ルールであることを証明した。

注意点として、GDPギャップは現実のGDPと潜在GDPとの乖離率として定義されるが、もともとテイラーは現実のGDPの時系列トレンドからの乖離率としてGDPギャップを計算した。時系列トレンドが潜在GDPと等しい限り問題はないが、乖離しているとGDPギャップを過大評価してしまう。
また、テイラー・ルールでは中立名目金利が4%と設定されているが、自然実質金利は一定ではなく、毎期の経済状況の影響を受ける。
目標インフレが2%と設定されているが、この経済学的根拠は乏しい。経済厚生の観点からすると、インフレ税やメニューコストの負の効果を避けるため、インフレが存在しないことが望ましいはずである。そう考えると、インフレ目標はゼロであるはずである。

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