2011年2月26日土曜日

映画「英国王のスピーチ」

映画「英国王のスピーチ」  日経夕刊で絶賛。エリザベス女王の父、ジョージ6世は子供時代から吃音に苦労し人前で話すのが苦手。ドイツに宣戦布告し全国民に団結を訴えかける国王の歴史的大演説は成功するか。俳優達の名演技は語り継がれるだろう。
ジョージ6世を懸命に支えた王妃は、辛い思い出だから映画化は自分の死後にしてほしいと望んだ。その言葉を守って完成した映画は、観る者の心に深く訴えかける秀作となったそうだ。
是非、観てみたい。
一方で、こういう意見もある。
Newsweek_JAPAN
『英国王のスピーチ』の史実に異議あり!【前編】 - 『英国王のスピーチ』史実に異議あり!【後編】 -
個人的には、史実を題材にしていても、それが小説や映画になったものは全てフィクションだと認識している。ノンフィクションもドキュメンタリー映画もフィクション。構成に作者の意図が入るから。龍馬伝もマイケル・ムーアも新田次郎もフィクション。だからこそおもしろい。

Andrei Schleifer/Inefficient Markets 金融バブルの経済学


ハーバード大学のシュレイファー教授による行動ファイナンスの入門書。シュレイファー教授は私が割りと好きな学者の一人。本質的に裁定取引には制約があり、人間はシステマチックに合理性から逸脱するという理由から効率的市場仮説(EMH)の限界を指摘。驚いたことに「金融バブルの経済学」というタイトルで翻訳も出ていた。Amazonでの翻訳の評価は厳しい。
シュレイファー教授は"Contrarian investment, extrapolation, and risk" Lakonishok, Shleifer, and Vishny(1994)の論文で有名。学者だった頃のローレンス・サマーズとの共著論文もある。共同研究者であるラコニショック、ヴィシュニー両教授と運用会社 LSV Asset Managementを設立している。
シュレイファー教授のほとんどの論文はハーバードのこちらのサイトからダウンロードできる。
第1章「金融市場は効率的か?」と第7章「未解決の問題」がこの本のための書き下ろし。残りの章は過去の論文をまとめたものとなっている。
第2章 金融市場のノイズトレーダーリスク Noise Trader Risk in Financial Markets
第3章 クローズドエンドファンドのパズル Investor Sentiment and the Closed End Fund Puzzle
第4章 専門家による裁定取引 The Limits of Arbitrage
第5章 投資家心理のモデル A Model of Investor Sentiment
第4章ではノイズトレーダー、アービトレージャー、アービトレージャーのファンドへの投資家の3つの市場参加者でモデル化している。ファンドへの投資家が過去のパフォーマンスに基づいて資金の出し入れを行う場合、裁定取引が最も魅力的となっているまさにそのときにアービートレージャーはポジションの清算を余儀なくされ、ミスプライスがより深化してしまうことになる。裁定取引は価格暴落の修復よりも金融パニックの深化をもたらす。つまり、価格がファンダメンタルズから非常に離れたときには裁定取引が役に立たなくなる。
第4章では論文発表後に起きたLTCM危機の分析が4.4節として補足されている。1998年8月16日、ロシアはルーブル建て債務のほとんどについて債務返済を停止し、不意にルーブルを切り下げた。さらにロシアの銀行が西側の債権者に債務を支払えなくするだけではなく、ルーブル建ての債券を保有する西側の投資家の口座を凍結した。しかし、ロシアは海外の債務に関してはデフォルトをしなかった
そのときのデフォルトしたルーブル建ての債券はかなりの部分が高利回りに引きつけられた西側のヘッジファンドに保有されていた。ヘッジファンドの多くは債務不履行を予想して、通貨ルーブル(のフォワード)をロシアの銀行に売るだけではなく(通貨切り下げへのヘッジ)、ロシアの海外債務を空売りして、リスクをヘッジしていた(ロシアは国内債務をデフォルトするときには必ず海外債務もデフォルトするという理論(?)に基づいて)。
LTCMは1998年8月には自己資本の30~40億ドルの半分近くを失った。
2007年のクオンツ危機も基本的にはこのモデルで同様に考察することができると思う。





2011年2月22日火曜日

統計数理研究所公開講座の情報

統計数理研究所から公開講座の案内が来ていた。

平成23年度前期に開催される統計数理研究所公開講座の情報を
に掲載しました。

A. 赤池情報量規準と統計モデリング
B. サンプリング入門と調査データの分析法
C. 統計学概論
D. マルチンゲール理論による統計解析の基礎
E. 多変量解析法
F. モデルフリー制御器設計の新展開 ― FRIT(Fictitious
Reference Iterative Tuning)法の基礎理論とその応用-

多くの方のご参加をお待ち申し上げております。
どうぞよろしくお願いいたします。

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[問合せ先]
大学共同利用機関法人
情報・システム研究機構
統計数理研究所
統計科学技術センター
情報資源室
公開講座係 kouza20@ism.ac.jp
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Efficient & Exceptional C++を目指して


C++のコーディングの技術をもう一段向上させたいと思っていたので、ビックカメラに行って良さそうな本を物色してきた。その中で上の2冊を購入した。Efficient C++はプログラムの速さなどのパフォーマンスの改善、Exceptional C++は例外処理などの技術の向上が期待できる。どちらもちょうど欲しかった内容でよかった。
しばらく、C++の技術向上に取り組みたい

2011年2月19日土曜日

数学の勉強法(特に文系) その2


(理系の人はスルーしてください)
私もそうだったのですが、文系の人間がいきなり数理ファイナンスの教科書を読んでもチンプンカンプンだと思います。その場合、確率解析が分からないというよりも、それ以前の極限、微分・積分が分かっていない可能性があります。
数理ファイナンスでは微分・積分が特に重要です。そのため、大学への数学の増刊号の「微積分 基礎の極意」を読んでから「解法の探求・微積分」をやっておけばいいと思います。

2011年2月16日水曜日

Financial Crisis Inquiry Report

今回の金融危機の原因を分析した'Financial Crisis Inquiry Report'はここからタダでダウンロードできるよ。662ページあるけど。マイケル・ルイスはこの内容に批判的だったみたいだけど。
マイケル・ルイスのコラムはこちら。「金融危機の真の原因教えます、調査委報告は的外れ」

マネタリーベース

マネタリーベースはベースマネー、ハイパワードマネーとも呼ばれます。流通現金と金融機関の中央銀行預け金を足したものです。中央銀行以外の経済部門に対して中央銀行が供給しているきわめて狭い意味での「通貨」の総称です。
マネタリーベースは厳密に言えば、非金融部門が保有する通貨の総量をとらえようとするマネーサプライ統計に含まれるものではありませんが、マネーサプライをめぐる議論でしばしば話題に上る概念です。
マネタリーベースやマネーストックのデータは日銀のウェブサイトでダウンロードできます。日銀のサイトの統計データは非常に充実しています。各国の金融、マクロデータもオリジナル・ソースをDLできるように確認しておくと便利です。日銀のウェブサイト

2011年2月13日日曜日

計量経済学の基礎

計量経済学の入門書としてベストだと思う。理論面も線形代数、統計学の準備について数学的にきっちり説明してある。林のEconometricsやGreeneのEconometric Analysisにいきなり行く前に、この本を読んでおけば理解も深まるし、速く読むことができるだろう。

なにより素晴らしいのはWindowsのPCにCygwinを導入しOctave(フリーのMatlabクローン)が動く状態まで自動で設定してくれるバッチファイルがCDとして付いていて、本の例題を自分で簡単に実践できることだ。計量経済学はやはり自分で手を動かして実際にデータを分析することで理解が深まる。Mac用のインストールの仕方も書いてある。
EViewsなどのパッケージ・ソフトは便利なのだが、出力結果に目がいってしまい、中でどういう計算をしているのかがブラックボックスのままで使ってしまいがちになる。
この本で、そういう計量経済分析・統計ソフトがなかでどういう計算をしているか(ほとんどは行列計算なわけだが)の概念を理解しておけば、出力結果の解釈もより正確になり深みがでるだろう。

2011年2月11日金曜日

コードを例外安全なものにしよう

例外(exception)安全な関数とは、例外が投げられても、リソース漏れを起こさず、データを有効に保つ関数のこと。そのような関数には、基本保証をするもの、強い保証をするもの、投げ(throw)ない保証をするものがある。
強い保証は、しばしば、「コピーと交換」で実装できる。しかし、強い保証が、すべての関数で実際的であるわけではない。
ある関数内で別の関数を呼び出す場合、「呼び出される関数」より良い保証を「呼び出す関数」ですることは、通常、とても困難である。

あから2010、将棋ソフト

あから2010は、清水戦では4つのソフトにそれぞれ1台のコンピュータが与えられ、169台のコンピュータをつないだクラスタ用に書き直された4つのソフトとの合議制だったが、テスト不足を理由にクラスタの発言力は低く抑えられていて、合議の重要な部分はクラスタでないコンピュータが担っていた。
コンピュータも刺激される! 将棋ソフトは関数の集合体だから刺激的な手が入力されれば、それに対する出力(次の指し手)は必ず影響される。それが刺激には刺激で返すのか、刺激されたから慎重になるのかは、そのソフトの演算手法と係数調整による。
「あから」はなんとしても、穴熊をけん制したかった。現代将棋は玉の堅さを尊重する。自動学習機能を持つソフトウェアがその思想に影響されるのは当然のことである。
ある局面を見たくないから、悪手や疑問手になるかもしれない手を選ぶ、ある局面を見ずにすむ手を高く評価する、これこそ棋風というものであろう。棋士もソフトウェアも、勝とうが負けようが、その棋風に殉ずるのだ。
ソフトウェアは「詰みのありそうな局面」かどうかを判断することが非常に苦手。そのかわり、最終盤に至ると通常の思考ルーチンに加えて、詰み検索ルーチンを起動する。これは詰み筋の読みに特化したルーチン。詰みを見逃すことはまずない。
羽生名人は若かりし日に、将棋ソフトが名人に勝つ日を2015年と予想した。将棋ソフトが非常に弱く、アマチュアの中級者と互角に戦うことも難しかった時代の言である。

効率的なC++での開発を目指して


ビックカメラで将棋ソフトの「世界最強銀星将棋9 風雲龍虎雷伝(ボナンザ)」と「激指」を見つけてしまった。すごく欲しい。。。でも今買ってもやる暇はない。どうせ圧倒的に負けるのは目に見えているし。
代わりに本屋で「ボナンザvs勝負脳」と「Effective C++」を買って帰る。C++は、これまでは自分で使うだけだったので動けばいいというスタンスだったが、これからは共同開発を念頭に、理解しやすく、保守しやすく、移植性があり、拡張しやすく、効率的なプログラムにする。
「C++は単一のルールを持った1つの言語というより、C、OOP、テンプレート、STLという、それぞれ独自のコンベンションを持つ4つの「サブセット言語」の連合と考えたほうがよい。C++で効率よくプログラミングするためのルールはC++のどの部分を使うかで変わってくる。
#defineより、const、enum、inlineを使おう。プリプロセッサよりコンパイラを使おう。#defineにはスコープという考え方がない。
クラスで使う定数のスコープを限定するため、その定数をクラスのメンバにすることがある。その場合、その定数が実際に1つだけ存在するように、staticにしなければならない。
オブジェクト内部のデータへのハンドルを戻す関数は避ける。そのハンドル自体より、ハンドルが指し示すオブジェクトが先に破棄される危険があるから。」
最近、仕事上の最大のボトルネックがコーディングになってきていると感じる。真剣に、効率的な開発を探求しないとやばいです。
職業は、限りなくプログラマに近い、ポートフォリオ・マネージャー兼クオンツ・アナリストです!
私のまわりでインドに行った人は、100%の確率で全員、帰国時に体調を崩した状態で成田に着いている。インドに行かれる方は、みなさん気をつけて。

2011年2月6日日曜日

あから2010

阿加羅とは10の224乗のこと。
「あから2010」は情報処理学会が対清水戦に向けて用意したシステム。実績ある既存の将棋ソフト、激指、ボナンザ、YSS、GPS将棋がそれぞれの最善手を提案し、提案手が割れた場合は、多数決による合議で指し手を決定。
激指は鶴岡慶雅氏、横山大作氏が、GPS将棋は東京大学田中哲朗研究室が、ボナンザは保木邦仁氏が、YSSは山下宏氏が開発した将棋ソフトウェアで、いずれも世界コンピュータ将棋選手権で優勝経験のある錚々たるメンバーである。合議を統括する仕組み(合議マネージャ)は電気通信大学伊藤毅志研究室と保木邦仁氏が開発を担当している。

2011年2月5日土曜日

測度と積分、林のEconometrics


「測度と積分」と「Econometrics」をこれから定期的に精読することにする。
「測度と積分」は1章で、集合論、確率論でよく使われている数学記号や定義がまとめてあるので便利。
林の英語は読みやすい。モデルと推定手続きの違い。計量経済学では経済データは確率変数であると前提を置く。モデルとは経済データを生成しているであろう確率分布のある族。推定手続きとはモデルから、データを生成していると思われるある特別な分布を選ぶ、データに基づいたプロトコル。
計量経済学におけるほとんどの推定手続きはGMM推定原理の特殊化。例えばGMMを古典的線形回帰に適用すれば、結果的な推定手続きは計量経済学のも最も基礎的な推定手続きであるOLSである。

投信ネット販売、ギーク、エジプト

金曜の日経夕刊「投信、ネット購入広がる」。いいことだ。投信を買うのに証券、銀行に手数料払う必要ないよ。直販でいい。金融機関の手数料稼ぎのためにパフォーマンスの良い投信が売られて手数料の高い投信に乗り換えられていくという日本の悪癖がなくなればいい。パフォーマンスで売れる時代よ来い。
本の「フェイスブック」を読んでいるのだが、そのなかで「ギークたちは、プログラミングに熱中してくると、ある種の恍惚状態に陥る。音楽やテレビなら気にしないのだが、話しかけられて気を散らされるのは耐えられないのだった」とある。だから隣のやつともIMで会話するw。。。その気持ちが分かるオレもギークなのか?
アルジャジーラのWebサイト。エジプトの動向は注意が必要。
ところで、在日メキシコ大使館からの抗議を受けて、フジテレビの「外交官・黒田康作」の脚本の大幅な書き直しが必要なのではないかと、他人事ながら少し注目している。

2011年2月4日金曜日

ブルームバーグのリスクモデル・セミナー、ICSの科目履修申込

ブルームバーグのALPHA新リスク分析セミナーに行ってきた。
バーラとの違いは市場βファクターがないこと、全体に透明なこと。
独自のファクターの組み込みはDO IT YOURSELFでって言っていたので、やろうと思えばできるんだろうな。おまけとして竹のボールペン、アメリカンなでかいメモ用紙、マウスパッドをくれた。

帰りにICSに寄って「金融数理の基礎」の科目履修の申込をした。2年前に取ったときは離散時間モデルのみで、集合論、測度論などには触れられなかった。これを機会に測度論を勉強したい。秋学期までに「測度と積分」を精読する。
林先生の計量経済学は今年は断念して来年に回す。1年半かけてEconometricsを精読する。
ついでに図書館によって本を借りる。
Interest rates, Exchange rates and world monetary policy (Floyd)
Exchange rate under East Asian Dollar Standard (McKinnon)
Credit Risk: Modeling, Valuation and Hedging (Bielecki and Rutkowski)
Modern pticing of interest-rate derivatives (Rebonato)
微分方程式入門(高橋陽一郎)