2015年10月25日日曜日

エニグマ アラン・チューリング伝

アラン・チューリングを描いた「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」という映画でベネディクト・カンバーバッチがチューリングを演じている。王様のブランチで紹介していた司会の谷原章介が「昔からチューリングが好きだった」と言っていて、なかなか侮れない。

チューリングはコンピュータの論理的な原型を生み出した論理数学者。第二次大戦では秘密裏に英国でドイツ軍の暗号「エニグマ」を破る仕事で中心的役割を果たした。当時は罪だった同性愛で有罪となりホルモン治療を経た後、42歳を前に自殺。

映画『イミテーション・ゲーム』の元になったチューリングの30年前の伝記がようやく翻訳された。それがアンドルー・ホッジスの『エニグマ アラン・チューリング伝』。著者は数学者らしいのでチューリングの研究内容も詳しく解説されている。

膨大な情報量に加え、訳者の言うように文体が(誰が何をどう考えたか思索しながら)粘着的なのでなかなか進まない。しかし頑張って読む価値は十分にある。

アンドルー・ホッジスの『エニグマ アラン・チューリング伝』を読んだ後では、チューリングを扱った映画『イミテーション・ゲーム』も物足りなさを感じる。


天才数学者アラン・チューリングは、英国政府の機密作戦に参加し、ドイツ軍の誇る暗号エニグマ解読に挑むことになる。エニグマが“世界最強”と言われる理由は、その組み合わせの数にあった。暗号のパターン数は、10人の人間が1日24時間働き続けても全組合せを調べ終わるまでに2000万年かかる

チューリングは1936年に、ゲーデルが不完全性定理を証明したのと同じ24歳の若さで『計算可能性とその決定問題への応用』を発表。すべての命令を一定の規則に基づく記号列に置き換えて計算する『チューリング・マシン』の概念は現在のコンピュータに実現されている。

チューリングはケンブリッジ大学の奨学金でプリンストン大学大学院に留学していて、ノイマン、ゲーデル、チューリングの三人の天才が一堂に集まっていたが、チューリングは一度もゲーデルと会った形跡がない。ノイマンは何度もチューリングと会っていて助手に誘ったがチューリングは帰国して軍に志願。

チューリングはイギリス情報局秘密情報部の暗号機関ブレッチリー・パークに赴任して、難攻不落と呼ばれるナチス・ドイツの暗号機エニグマの解読に取りかかった。彼は36機のエニグマの動作を同時にシミュレートできる解読機ボンブを開発し、ついにその解読を成功させた。

チューリングは、連合国軍を勝利に導いた英雄とみなされ、チャーチルから大英帝国勲章を授与された。しかし、エニグマに関する情報公開は固く禁じられ、1970年代まで国家機密にされていたため、チューリングの偉業については、母親でさえ知らされなかった。

チューリングは少年時代から同性愛者だった。1952年、映画館で知り合った19歳の青年を自宅に招いて宿泊させた。数週間後、その青年と彼のゲイ仲間がチューリングの家に泥棒に入り、裁判の過程でチューリングが同性愛者であることが暴露されてしまった。

当時のイギリスでは同性愛そのものが「違法」であり、彼には「定期的な女性ホルモン投与」という屈辱的な刑罰が与えられた。大学教授のスキャンダルは、新聞にも大きく報道された。その二年後、チューリングは、41歳の若さで自殺した。

『エニグマ アラン・チューリング伝』、2章でヒルベルトやゲーデルについて少し解説してある。

アラン・チューリングはケンブリッジでウィトゲンシュタインの数学の基礎に関する授業に出ている。受講者はすべての講義に出席すると誓わなければならない。受講生はまず、ウィトゲンシュタインの個人面談を受けなければならない。「この面談は印象に残るほど長い沈黙で有名だ」


『エニグマ アラン・チューリング伝』を読むと、とりあえずアラン・チューリングはガチホモということは分かった。

コロッサスの技術的成功からチューリングは真空管を何千個も同時に一緒に利用できることを知った。次にいわば素手でディライラに取り組んだ。「彼の狂気にはつねに一貫性がある」

アラン・チューリングは「真理以外のものすべてに対する敬意を欠いていた」

チューリングの業績をまとめた"http://AlanTuring.net"なんてのがあったのね。
http://www.alanturing.net/

チューリングの代表的な論文 

『計算可能数について:決定問題への応用を含めて』
"On Computable Numbers, with an Application to the Entscheidungsproblem"  (1936)(pdf)

『計算機械と知性』チューリング(1950)
"Computing Machinery and Intelligence" (1950)(pdf)
http://www.csee.umbc.edu/courses/471/paers/turing.pdf


0 件のコメント: