2013年11月3日日曜日

『日本の競争戦略』 マイケル・E・ポーター

「日本の半導体メーカーの後退理由は何であろうか。端的にいってしまえば、これらの企業はすべて、オペレーション効率のみによる競争の犠牲となったのである。相互破壊的な消耗戦は現在も続いている」
「(97年当時)すべての日本の半導体メーカーは、トランジスターからマイクロ・プロセッサーまでフルラインの製品を揃えている。対照的に米国の半導体メーカーは、何をしないかについて終始明確であった。例えば95年までにTI以外の全メーカーは、メモリー・チップから撤退している」
「継続的改善の積み重ねは、戦略ではない。競合他社の模倣や同じ手法を少し上手に行うことも、戦略とは呼べない。競争に対するこのような日本企業のアプローチと戦略の欠如がもたらす危険性は、いくつかの代表的な産業事例によって鮮明に例証されている」
「他のアジア諸国のメーカーは、汎用製品において日本のオペレーション手法をたやすく模倣できるようになった。すべてのメーカーが同じ物を提供するなか、顧客は価格を基準に選択し、それは必然的に利益を減少させる結果につながる」
日本の戦略なき競争の例として半導体の他にアパレルとチョコレートが上げてあります。
「すべての顧客に対してすべてのものを提供しようとするということは、戦略へのアンチテーゼである。日本のチョコレートメーカーの類似戦略および模倣戦略は、国内市場の収益性を犠牲にしたのみならず、国際的競争優位を生むいかなる可能性も排除してしまった」
継続的改善のみで戦略がないというのは某弊社も含まれるのでガクブルしてる。
「オペレーション効率は、企業が卓越した業績を追求する二つの方法の一つでしかない。もう一つの方法が、戦略である。すなわち、特色のある製品やサービスを提供し、独自のポジショニングを打ち出して競争する方法である」
「オペレーション効率とは、同じかあるいは似通った活動を競合他社よりもうまく行うことを意味する。戦略の中核は、事業で競争する上で必要な活動を競合他社とは異なるやり方で行うことにある」
「戦略は、独自のポジションを選択し、それに応じて活動を調整するということにとどまらない。戦略とは、顧客に価値を提供する上で、トレードオフを行うことである。トレードオフが発生するのはいくつかの戦略的ポジションとそれらに必要な活動に整合性がかけている場合である」
「つまり、何をしないかという選択が、戦略の核心である」
「戦略を持っている日本企業は希である。日本では継続的なオペレーション効率の改善と戦略とが混同されている」
「戦略の欠如は日本型企業モデルに内在する多くの要素によってももたらされる。成長を追及する一方で収益性を無視する傾向は事業の模倣化と総合化につながる。幅広い製品ラインや多機能性、短いサイクルでの新製品導入等、日本企業に共通の企業行動は戦略上のポジショニングを曖昧にしてしまう」

マイケル・ポーターの「何をしないかという選択が、戦略の核心である」という言葉から、冨山和彦氏の「捨てることにこそ戦略の本質がある」を思い出しました。 『結果を出すリーダーはみな非情である』 冨山 和彦 
「リーダーの不可欠な資質のひとつは、論理的な思考力、合理的な判断力である」
「日本では経済全体としては資本主義だが、会社の中は社会主義的な仕組みで成り立っている」
「利害対立が生じた場面で、ある人たちにとって不都合な意思決定をしなければならないとき、そこで求められるリーダーシップはまったくの別物だ。むしろ現場で力を発揮しているリーダーは、共同体内に不協和音を生じさせるような場面では意思決定ができなくなってしまう」

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