2013年12月21日土曜日

『重力はなぜ生まれたのか』 ブライアン・クレッグ

「現在、科学者たちは宇宙をたった二つの基本的な理論で説明しようとしている。一般相対性理論と量子力学である。一般相対性理論は重力の法則であり、宇宙の大規模な構造がどのように形成されるかを明らかにしてくれた」ホーキング

「アインシュタインの相対性理論が革新的なところは、速度を加速度に置き換えたことだ。そして、加速度と重力は区別できないことを明らかにしたことにある」

ISSの中の宇宙飛行士は静止していれば地上の90%の重力を感じるが、実際には軌道運動のため遠心力が働き、これが重力と相殺して無重力状態にいると感じる。

・物理現象をどのような座標軸でながめるのか?
・光はどの座標系から見ても同じ速度で進むのか?

光は最短距離をとるように進む(最短時間で進む道を通る)。フェルマーの原理と呼ばれる。

アインシュタインが特殊相対性理論などを発表した「奇跡の年」1905年の10年前にウェルズの小説「タイムマシン」が出版されている。その小説の中で時間を4番目の次元としている。

「時空」という概念はヘルマン・ミンコフスキーが提案した。

3次元空間を1次元にまとめてしまって、空間と時間の2次元で考えるという発想はすごいな。

アインシュタイン方程式というのが出てきた。ニュートン力学だと重力に影響するのは質量だけだった。アインシュタインの理論だと、質量、速度、エネルギー、圧力が影響してくる。

質量は時空を歪める。相対性理論の世界では質量は速度に依存する。質量と速度は姿を変えているけれど同じ(E=mc^2のこと)。圧力も重力に影響を与える。

質量に由来する重力の影響は時間にも及ぶ。「空間の歪みは時間にも及ぶ。同時に時間の歪みは空間にも及ぶ。これが相対性理論のエッセンスだ」

gravitoelectromagnetism(重力電磁気力)。重力があたかも電磁気力と同じような影響を及ぼす。マクスウェル方程式と同じ形式で表現できるため重力電磁気力と呼ばれている。

宇宙を支配する四つのの力。重力、電磁気力、強い力、弱い力。後ろの二つは核力。

「量子は、フェルミオンとボソンという二つの種類に分けられる。二つの形式的な違いは、素粒子のスピンの大きさの差である。ここでいうスピンは、実際に回転している量を意味するものではない」

「フェルミオンが同じ場所に複数あるとしよう。すると、それぞれ異なる量子状態をとらねばならなくなる。これがパウリの排他原理である」

「太陽の2倍の質量(トルーマン・オッペンハイマー・ヴォルコフの限界質量)を超えると中性子星は壊れる。つまり、重力崩壊する。行き着く先は、想像どおりのブラックホールだ」

星からできたブラックホールの典型的な半径は、実はたったの15キロメートル

ブラックホールの特異点というのが出てきた

角運動量をもたないものはシュヴァルツシルト・ブラックホール、角運動量をもつ(自転する)ものはカー・ブラックホールと呼ばれる。あと、ライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホール、カー=ニューマン・ブラックホールというのも出てくる。

反物質が出てきた

「ディラックは量子論と特殊相対性理論を結びつける数学的な方法を見出した。それまで量子論はニュートン力学的な時空で考えられていた。ディラックはシュレティンガー方程式を相対論的な速度で運動する量子に適用できるようにした」

「対称性」の重要性を最初に指摘したエミー・ネーターの庇護者としてヒルベルト登場。

この本は、私のような物理の素人にも説明が分かりやすいです。顔写真が多いので物理学者に親近感がわきます。

Theory of Everythingへの道。実はM理論のMが何を意味するのか誰も知らない。

「従来の量子論でもっとも際立つ結果の一つは、不確定性原理である。その例は「量子の位置と速度を同時に、正確に知ることはできない」というものだ」 

「その複雑さと、予測できることがないことで、M理論は検証不可能な理論になっている。この先、理論がどこに落ち着くか、誰もわからない。科学の”聖杯”の前によろめいているようにも見える」

「弦理論とM理論に挑むのは、ループ量子重力理論である。この理論では、10次元や11次元はでてこない。その分、非常にシンプルである。しかし、ひもや膜のような基本的なユニットがないので、より抽象的な視点で理解する必要がある」

チェコ生まれでバークレイ物理学研究所で研究しているPetr Horavaは、空間と時間に本質的な区別をつけた。一般相対性理論と量子論を融合させるより、まず一般相対性知豚をバラバラに分解し、万物の理論を構築するときに問題となることを逐一取り除いていく方法をとった。

「現時点で有力な量子重力理論は、弦理論かループ量子重力理論だろう。どちらを選ぶかは、ある意味、どの宗教を選ぶかに似ている。いずれの理論も複雑な数学を使って構築されている。一方で、どちらがいいかを判断する観測も実験もできない」

「アインシュタインが重力波の存在を予言してから40年後、重要な発見があった。ポール・ディラックが重力場の新たな方程式を解き、重力子(グラヴィトン)が重力を媒介することを予言したことだ」

Petr Horava

「グラビトン」といえば、『大鉄人17(ワンセブン)』の必殺技ですね。

「重力レンズによってできる像は、「私たち」、「レンズ源として機能する銀河」、「レンズ効果を受ける背景の銀河」、これら三つの位置関係で決まる」

「最近の観測から、宇宙は加速膨張していることがわかってきた。この加速膨張を担うものは、ダーク・エネルギーと呼ばれている」

物理学の基礎を理解した人でも、反重力を信じて真面目に研究し続ける人もいるんですねえ。例としてエリック・レイスウエイト、トーマス・タウンゼント・ブラウン、ニコラ・テスラがあげてある。

「ファインマンは講演の冒頭で、いつもこう説明する。「物理学は究極の質問である”なぜ?”に答えることはない」」

「自然がいかに振舞うかを少しずつ理解していき、やがて法則を知り、いくつかの大切な定数の値を知る。それでも私たちは次の問題に答えることはできない。「なぜ重力は引力なのですか?」」

「ファインマンはまた言う。「科学は”なぜ?”」という問いに、意味のある答えをだせない」

「私達がある理論を好むか否かは問題ではない。重要なのは理論が実験で検証できる予測を与えるかどうかだ。理論が哲学的な見地から見て好ましいとか、理解しやすいとか、常識に合っているかという問題ではないのだ」(ファインマン)

「その理論が喜ぶに値するかどうかは問題ではない」
「難しいことは確かだ。でも、そんなものは放っておけばよい。常識など消し去ればいいのさ」(ファインマン)

「宇宙が誕生したとき、すべての素粒子の質量はゼロだったと考えられています。ところが、その後、さまざまな種類の素粒子がそれぞれ質量を獲得したことになります。そのときに活躍するのがヒッグス粒子です」

「宇宙は誕生して間もなく、「自発的対称性の破れ」という現象を経験します。これは2008年にノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎氏が、1960年に提案したアイディアです。ヒッグス氏はこの現象に着目しました」

『重力はなぜ生まれたのか』は物理学者の写真や図が豊富に載せられていて親近感がわくのだけれど原著『Gravity』にはないらしい。これは原著より翻訳を買いたい。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは。
金融工学から重力の本まで目をとおしているのですか
すごいですね。
この本は知らなかったです。本屋で見てみようと思います。いつも論文等などは
参考にさせていただいています。
また更新してくださいね。
(あと、2009年でなく2008年ですね。
南部さんのノーベル賞は)

J.S.エコハ さんのコメント...

ご指摘、ありがとうございます。
訂正しました。