面白いです。数学、物理に興味がある人にお薦めです。数学者の研究・生活、現代数学の流れ、数学と物理の関係などが数学の専門家以外にも分かるように描写されています。
主な登場人物は彌永昌吉、秋月康夫、佐藤幹夫、河合隆裕、柏原正樹、神保道夫、三輪哲二、広中平祐、森重文、井原康隆、望月新一、荒木不二洋、小嶋泉、九後汰一郎、中西襄、大栗博司、伊藤清、湯淺太一、岡本久、山田道夫、岩田覚、藤重悟、室田一雄、などです。
「数学の最も親しい友人は物理学である。新しい物理は新しい数学を生み、新しい数学は新しい物理を支え続けた」
宇宙際幾何学者
京都大学数理解析研究所・教授
望月新一
大栗博司氏は『古都がはぐくむ現代数学』にも出てきます。
大栗博司氏の高木レクチャーの記録
"Geometry As Seen By String Theory"
Hirosi Ooguri(2008)
「代数的量子論とミクロ・マクロ双対性」小嶋泉(2007)
座談会「数物学会の分離と二つの科学」
出席者*:彌永昌吉 伏見康治 今井 功 岡部靖憲〈東大工〉 小嶋 泉〈京大数理研〉桑原邦郎〈宇宙科学研〉
(司会)江沢 洋〈学習院大理〉[1995年10月9日,機械振興会館にて]
205ページに伊藤清氏の最初の論文の冒頭が掲載されているんですが、手書きのガリ版刷りなんですね。ここから始まったのかと思うと感慨深いです。
「条件付確率法則の定義に就いて」伊藤清(1942) (PDF)
大阪大数学のHPで紙上談話会の論文読めます。
伊藤清博士ガウス賞授賞記念行事 2006年9月14日(木)
ガウス賞伝達式
(日本数学会のビデオ・アーカイブ)
「マートンは後に伊藤の数学について「連続時間モデルの数学には、確率論と最適化理論の最も美しい応用が含まれている。しかし、もちろん科学的に美しいものすべてが実用的であるべきだとは言えない。それとまた、科学では実用的なものがすべて美しいわけではない。だが、ここにはその両方がある」と」
マートンは元々は応用数学だったので、ちゃんと伊藤解析を勉強していたらしい。ブラックとショールズはおそらくそうではない。
かな漢字変換システムWnnの名前の由来。当時、PCよりも劣るWSの単文節変換に対して、せめて「私の名前は中野です」という文を一発で変換してほしいと中野秀治氏が主張したことから、Watashi、Namae、Nakanoのローマ字の最初の文字をつなげてWnnとしたそうだ。
クレイ数学研究所のミレニアム賞金問題7題
「ナヴィエ‐ストークス方程式の理論は、偏微分方程式論の常としてきわめて技術的である。しかし、読者はその技術的な困難に圧倒されてはならない。本当に重要なアイディアは技術の細部とは無関係であろうと筆者は信ずる。まだ手のつけられていない問題がきっと隠れているに違いない」岡本久
「最も単純化した方程式から次第にモデルを複雑にし、方程式の階層を考え、順に解の性質を調べる。最も単純化したモデルは現実を直接に記述しないとしても、その解はより複雑な方程式を調べるときの貴重な情報となる」 山田道夫
「このように、対象に近くまで迫れない場合、コンピュータと理論を中心とした解析、つまり数理科学の方法こそ最大の「武器」となる」
岩田覚、藤重悟、リサ・フライシャー、アレクサンダー・スクライファーは、劣モジュラ関数(離散的な問題での凸関数に関係)の最小化の研究により、2003年の国際数理計画シンポジウムで離散数学分野では最高の賞であるファルカーソン賞を受賞した。
「数学は体力だ!」アンドレ・ヴェイユ
「朝起きた時に,きょうも一日数学をやるぞと思ってるようではとてもものにならない。数学を考えながら,いつのまにか眠り,朝,目が覚めたときは既に数学の世界に入っていなければならない。どの位,数学に浸っているかが,勝負の分かれ目だ。数学は自分の命を削ってやるようなものなのだ」佐藤幹夫
「所員をなるべく雑用から解放し、静かに数学に没頭できるようにすること、それがまず必要」
京都大学数理解析研究所所長の森重文氏。「何が一番大事か」との質問への答え。
「昼ご飯をカフェテリアに集まって食べるというルールは他分野の話を聞くにはもってこいです。物理、生物、情報の人と共通話題を探していると、同じ概念の全く違う見方に出会います。当初の研究計画などは関係ありません。IHESは研究者の楽園でした」 小谷元子
数理解析研を含む京都、大阪の数学に対して東洋紡の社長を務めた谷口豊三郎が「谷口奨励会」という科学技術の援助組織を戦前に立ち上げて援助されていたそうだ(76年に谷口財団となり、2000年に解散)。
京都大学数理解析研究所 講究録は設立以来の1800冊以上が全文公開されている。これはすごいな。
2013年12月31日火曜日
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