2014年5月4日日曜日

『金融システムと金融規制の経済分析』


図書館から借りてきた『金融システムと金融規制の経済分析』の第4章「金融危機と金融規制(金融危機と市場型間接金融―「影の銀行システム」の経済分析」はこの論文が元になっていますね。

「金融危機と市場型金融の将来」 池尾和人(2010)

「経常収支黒字国から経常収支赤字国に資本移動が円滑に起こる仕組みができあがっていたからこそ、グローバル・インバランスの急拡大は可能になった。その仕組み(影の銀行システム)がうまく回らなくなったときに、サブプライム・ローン問題という形で危機が生起することになった」

欧米の大手金融機関が破綻や大打撃を受けたのは、「サブプライム・ローン関連を含む証券化商品を自ら(あるいは、投資ヴィークルを通じて)保有していたからである。」

「投資家に直接に証券化商品を販売するのではなく、担保付負債を発行するということで、金融機関はレバレッジを高めるとともに、投資家に対して流動性を供給するという機能を果たすことになっていた。証券化商品の太宗が資金仲介システムの内部で保有されていたという事実は重要である。」

一時期、「証券化悪玉論」がまことしやかに語られたが、実際はそれが事態の中心ではなかった。本当に転売して、投資家にリスクを転嫁していたのなら、いずれかの機関投資家が破たんしたとしても、リーマンのような投資銀行が破たんすることはなかった。

「危機の原因は、証券化という仕組み自体にあるというよりも、アメリカ(およびヨーロッパ)の大手金融機関の内部統制とリスク管理の体制にあったと理解すべきだということになる」

「1990年代以降、事業会社や機関投資家による大口の短期資金の安全運用ニーズが急拡大した。証券化の技術だけでは安全資産は提供できても、短期の流動性は提供できない。レポ取引の拡大は、こうした短期安全資産の不足という問題に応えるという意義を持っていた。」

「銀行預金がマネーなら、レポはそれ以上に立派なマネーだと考える必要がある。そして、影の銀行システムは、レポという大串のマネーを提供するシステムとして存在意義を持つようになったといえる。」

「短期の流動的な安全資産に対する運用需要の高まりに直面して、アメリカの金融サービス産業は、証券化と自ら短期で借りて長期で運用する行動をとることによって、その需要に応える供給を行ったわけである。」

アメリカの投資銀行等がきわめてリスクの凝縮された劣後部分を自ら保有する等の危険な行動をどうしてとっていたのか。理由の一つはアメリカ住宅価格の全国的下落はありえないというある種の慢心の広がり。もう一つはHFやIBのインセンティブ構造の歪みを指摘。

「現代の金融に関しては、リスクを分散・再配分する機能の方が重要になっているといえる」

〈参考文献〉
"The Changing Nature of Financial Intermediation and the Financial Crisis of 2007-09"
Adrian and Shin(2010) (PDF)

"Shadow Banking" Pozsar, Adrian, Ashcraft, and Boesky(2012)

"A Model of Shadow Banking" GENNAIOLI, SHLEIFER, and VISHNY(2013)(PDF)

"The "Other" Imbalance and the Financial Crisis"  Caballero(2010)

"The Subprime Panic" Gorton(2008)

"Market Liquidity and Funding Liquidity" Brunnermeier and Pedersen (2009) (PDF)

「日本銀行のマクロプルーデンス面での取組み」 日本銀行(2011) (PDF)

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