2014年5月3日土曜日

『非伝統的金融政策の経済分析 資産価格からみた効果の検証』 竹田陽介 矢嶋康次

四連休だし、この本を少しずつ読み始めている。

「代表的なニュー・ケインジアンのフィリップス曲線ではCalvo(1983)型の企業の価格設定モデルを前提とするため、価格水準自体の硬直性は生まれるが、インフレ率の硬直性は説明できない」

「現実に観察されるインフレ率の硬直性を説明するため、Calvo(1983)に代わる様々な理論モデルが提案されてきた。そのひとつに、合理的無反応(Rational inattention)の議論がある」

「Sims(2003)や Reis(2006)は、シャノンらの情報理論に基づき、情報の集積によって生じるエントロピーが閾値を超える場合に初めて、経済主体が情報獲得に動くという仮説に基づき、Mankiw and Reis(2002)の硬直的情報モデルを正当化した。」

「合理的無反応」のモデルだと「今期のインフレ率が依存するのが、今期のインフレ率に対する過去の時点における予測であり、Calvo(1983)型の硬直価格モデルにおいては、将来のインフレ率に対する今期の予測であるのとは対照的である」

"「予測市場」に向けて" 竹田陽介(2007)ニッセイ基礎研所報 vol47 
E-stability の下では、PLMから ALMへの写像が、最小二乗学習の下での合理的期待均衡(REE)の漸近的安定性を保証する。

"Staggered Prices in a Utility-Maximizing Framework"  Calvo(1983) (PDF)

「日本の90 年代におけるフィリップス曲線」 竹田、小巻、矢嶋(2001)ニッセイ基礎研所報vol17

「日本におけるニュー・ケインジアン・フィリップス曲線の推定」 竹田、小巻、矢嶋 (PDF)
(個人的には、潜在成長率をHPフィルタで推定してGDPギャップを求めるやり方は好きではない)

"Communication and Monetary Policy" Amato, Morris, and Shin (2003) BIS Working Paper No.123 (PDF)

Amato他(2003)によると、「中央銀行が金融資産均衡価格から情報を抽出し、金融政策に活かすようにすると、市場参加者は自前で獲得した情報に依存せず、金融政策において中央銀行が発する情報に依存して、金融資産価格形成を行うようになる。」

「そのため、金融市場には、情報集約機能が働かなくなり、均衡価格の持つ情報量がノイズを持つようになる。ノイズを持つ均衡価格から得られる情報では、中央銀行が適切な金融政策運営を行うことが困難になり、中央銀行は自前の獲得情報に基づき金融政策を行うようになる。」

「したがって、中央銀行による市場との対話では、Grossman and Stiglitz(1980)と同様、一方向的な情報発信は均衡とならない。」
今のJGBと日銀なんて(ry

"Information and Competitive Price Systems" Grossman and Stiglitz (1976) (PDF)

"On the Impossibility of Informationally Efficient Markets"  Grossman and Stiglitz (1980) (PDF)

『ゼロ金利政策下における時間軸効果:1999-2000年の短期金融市場データによる検証』 白塚 重典・藤木 裕(2001)

『国債流通市場における情報に基づく物価連動債の評価』 北村行伸(2006) (PDF)

ちなみに竹田・小巻・矢嶋(2005)によると、英国の中銀および民間予測機関とも、物価連動債価格の持つ情報を抽出しているのに対して、FRBは物価連動債を利用していないそうだ。米国では英国に比べてノイズが相対的に大きいことに起因すると考えられると。

「わが国のデフレーションに際しても、デフレーションを克服するための政策の処方箋として、期待に働きかける政策が盛んに主張されてきた(Eggertsson and Woodford[2003]:Svensson[2003]:Auerbach and Obstfeld[2005])」
「しかし、デフレ期待そのものがどのようなメカニズムに基づき推移してきたかについて分析された例は見当たらない。Fisher1933はデフレの負債を通じたマクロ経済的影響を分析。債権者と債務者の間に消費性向の差を仮定、マクロ経済全体の消費が予期せぬデフレによって変動する可能性を指摘」

"The Debt-Deflation Theory of Great Depressions" Fisher(1933) (PDF)

1933年のEconometricaの論文がすぐに読めるなんて、いい時代になったものです。

"The Zero Bound on Interest Rates and Optimal Monetary Policy" Eggertsson and Woodford (2003)

"Escaping from a Liquidity Trap and Deflation: The Foolproof Way and Others" Svensson(2003)

"The Case for Open-Market Purchases in a Liquidity Trap" Auerbach and Obstfeld(2005)

"The Proof and Measurement of Association between Two Things" C. Spearman(1904) (PDF)

スピアマンの順位相関の1904年の論文が読めるなんていい時代になったものです。

竹田・矢嶋(2013)では、Carlson and Parkin(1975)を可変パラメータモデルに一般化してカルマンフィルタで推定するNardo(2003)の手法を用いて日本の期待インフレ率を推定しています。

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