2016年3月13日日曜日

宇沢弘文の経済学 社会的共通資本の論理

図書館で借りてきた『宇沢弘文の経済学』、意外と面白い。

「リベラリズムの思想はJSミルに始まり、ジョン・デューイによって1つの哲学的体系として集大成された。このリベラリズムの思想を経済学の体系として定式化したのが、ソースティン・ヴェブレンである」

「ヴェブレンの制度主義は、すべての人々の人間的尊厳が守られ、魂の自立が保たれ、市民的権利が最大限に享受できるような、リベラリズムの理念に適った経済体制を実現しようとする。この制度主義の考え方を具体的なかたちで表現したのが社会的共通資本である」

「ヴェブレンの経済学は、ウェズレイ・ミッチェル、ジョン・コモンズなどによって制度学派の経済学として、経済思想の歴史の中で1つの流れを形成することになった。制度学派の経済学の基礎をなしていたのがリベラリズムの思想である」

「ヴェブレンがリベラリズムというとき、それは、人間の尊厳と自由を守るという視点にたって、経済制度にかんする進化論的分析を展開することを意味していた」

「ヴェブレンは、ダーウィンの進化論の影響を強く受けて、人間の行動は、自然、文化、歴史、社会、経済、法などさまざまな制度的諸条件によって規定され、また、人間の行動が、これらの制度的諸条件の進化的展開のあり方に決定的な影響を与えると考えた」

「ヴェブレンに始まる制度学派の経済学は、現在では、進化論的経済学とよばれている」

「リベラリズムの思想は、同じシカゴ大学で、ヴェブレンの同僚であったジョン・デューイによって、プラグマティズムの哲学として集大成され、20世紀前半のアメリカの思想形成に決定的な役割を果たすことになった」

ヴェブレンは女性のドレスを論じることで当時支配的となりつつあった新古典派経済学の考え方を批判し、否定しようとした、と。メンガー、ジェボンズ、ワルラスの3人によって構築された新古典派経済学の考え方は、マーシャルによって経済学の新しいパラダイムとして広く学会に普及、浸透しつつあった。

ちなみに、新古典派経済学(Neoclassical Economic Theory)という表現を用いたのはヴェブレンが最初だったらしい。

0 件のコメント: