動的なポートフォリオ選択の背後にある理論は、Samuelson (1969)とMerton (1969, 1971)によって最初に定式化された。動的なポートフォリオ選択問題の解は、デリバティブ商品評価と緊密に関係しており、両者とも同じ経済的概念と解法テクニックを用いる。
"Lifetime Portfolio Selection By Dynamic Stochastic Programming"
Paul A. Samuelson(1969)
"Lifetime Portfolio Selection under Uncertainty: The Continuous-Time Case"
Merton(1969)
"Optimum Consumption and Portfolio Rules in a Continuous-Time Model"
Merton(1971)
「動的ポートフォリオ選択問題は、一種の最適制御問題である。これは動的計画法によって解くことができ、同じ手法は原子力発電所や月へのロケット移送、複雑なデリバティブ証券の価格評価にも使われている(最後の例は他の二つよりも興味を引かないだろうが)。このことからもわかる通り、ポートフォリオ選択は、文字通りロケット科学なのである」
「動的計画法は、長期投資期間の問題を一期間の問題の繰り返しへ変換する。動的計画法は極めて強力な手法で、サミュエルソンはこれを経済学の多くの分野へ導入することで1970年にノーベル賞を受賞した。連続時間におけるこの問題の価値関数はハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式と呼ばれる偏微分方程式に対する解によって与えられる。さらに一般的な形態はファインマン・カッツ定理と呼ばれ、熱力学において広く用いられている。これらは、航空機と弾道ミサイルの制御にも用いられる非常に重要な物理と数学の概念である。ポートフォリオ選択はロケット科学なのである」
ファインマン・カッツだからね。Feynman–Kacを「ファインマン・カック」と読むとカッく悪いから。
長期投資期間におけるポートフォリオ選択問題に対する動的計画法の解法を知ることで、長期投資に関して広く信じられている二つの誤解を解くことができる。それは「バイ・アンド・ホールドは最適ではない」ということと「長期投資は短期投資である」ということ。
「バイ・アンド・ホールドは、毎期取引を行う最適な動的戦略に劣後するため、長期投資家はバイ・アンド・ホールドではなく、購入と売却を繰り返すことになる。バイ・アンド・ホールドにまつわる混乱は、ジェレミー・シーゲルによる1994年初版の有名な書籍『Stocks for the Long Run(株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド)』を多くの人が誤って解釈してしまったことにも部分的に起因する。この書籍はしばしば「バイ・アンド・ホールドのバイブル」と評される。シーゲルは株式への長期にわたる配分にこだわることを唱えており、もしその配分が一定なら、それは一定配分比率を維持するために、投資家は株式が下落すれば株式に追加配分する。すなわち、長期投資家はバイ・アンド・ホールドするのではなく、常に売買するのである」
「長期の投資期間を想定するから、長期投資家は近視眼的な短期投資家と根本的に異なる」というのも、動的計画法の解によればこれは明らかに間違い。
「動的計画法は、長期投資におけるポートフォリオ選択問題を連続した短期投資問題として解く。すなわち、長期投資家は何よりもまず短期投資家なのである。彼らは、短期投資家が行うすべてのことを行い、長期の投資期間という利点があるからそれ以上のことを行うことができる」
「動的計画法の解は、長期投資家として成功するためには、短期投資家として成功することから始めるべきであることを示唆している。著者が述べたいことは、これができてから長期の投資期間がもたらすすべての利点を享受すべきだ、ということなのである」
「リバランスをすることは、最も基本的かつ欠かすことのできない長期投資戦略であり、それは自然に逆張りとなる。最適リバランスの重要な帰結によれば、長期投資家は能動的に、過去に上昇した資産クラスまたは株式を減らし、価格の下落した資産クラスまたは株式のウェイトを高めるべきである。こうして、リバランスはバリュー投資戦略の一種となり、長期投資家は紛れもなくバリュー投資家なのである」
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