数理経済学者による鮮やかな村上春樹論
第1部で「人生の問題」、第2部で「どんな社会が幸せな社会といえるのか」という問題を経済学の数学的思考で扱っている。最後の第3部で村上春樹の小説を数学的思考の技術で分析している。その手際が非常に鮮やかで舌を巻く。
- 「ハードボイルド・ワンダーランド」と「ノルウェイの森」は同じ(生と死の空間的配置に関する)トポロジーを持った空間になっている。つまり同じ世界観で時空が再構成されている。
- 村上春樹の小説の中では、数学は、あたかもソフトウェアのように機能している。ソフトウェアは見えない。それは「機能する」だけだ。
- 村上は、幾何学を有効利用して、小説を書いている。図形を描かずに、ことば、だけで。自分の心象を伝えるのに、位相空間を提示している。村上は心の暗闇に対して幾何学を用いている。
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