2013年1月27日日曜日

東大の福田慎一教授、「金融緩和、成長戦略一体で」


日経「経済論壇から」は東大の福田慎一教授、「金融緩和、成長戦略一体で」「財政赤字穴埋め警戒」。植田和男氏、加藤出氏、池尾和人氏、吉川洋氏の意見を総括していて、私もまったく違和感はない。

「日銀が大量に供給してきた流動性のほとんどは有効活用されず、退蔵され続けたままというのが実情である。当面の財政支出の拡大や規制緩和などによる成長期待との歯車がうまくかみ合わないと、その効果はほとんど期待できそうにない」

「1%のインフレ率の達成もおぼつかないわが国では、物価目標ありきの政策運営を極端な形で推し進めることには弊害は少なくない。最も危惧されるのは、日銀が物価目標達成の意志を示すために中央銀行の節度を逸脱してしまうことである」

「中央銀行が、金融資産を実勢価格よりも高めの価格で買い入れるなど、いわばヘリコプターからお金をばらまくような金融緩和を続ければインフレは実現するであろう。しかし、中央銀行は、物価目標の達成のためには何でもやってよいわけではない」

「現在は物価の下落が資産デフレや信用収縮と同時進行するデフレ・スパイラルの状況とはいえず物価上昇のメリットはそれほど大きくない。規制緩和やグローバル競争への対策を中心に据え、GDPを日本経済の実力に見合った形でいかにして増加させるかを模索することが物価目標の実現以上に重要である」

「わが国では、製造業を中心に生産性の伸び悩みが指摘されて久しい。生産性の向上が見込まれない限り、賃金の上昇は難しく、仮に物価が上昇したとしても生活コストを圧迫するだけとなる。...賃金が増えないのに生活コストが上昇すれば多くの人々は不満を募らせるだろう」

「現在のわが国の国債市場の平穏はデフレを織り込んだ結果であり、デフレ脱却とともに国債市場の平穏は失われる恐れが大きい。デフレからの脱却は優先課題であるとしても、政策運営には同時に慎重さも求めれる面は多い」

「株高や円安は海外の景気拡大などさまざまな要因に左右され、日銀の追加緩和によるものかどうかは判断ができない。投資家の期待は移ろいやすい。肝心なのは実体経済に効果が及ぶのかであり、冷静に効果を見極めて政策を評価することが重要である」

「吉川氏は日本の長期停滞の原因を再考することがデフレ脱却の第一歩となると指摘。新しい市場を生み出すプロダクト・イノベーションの役割を強調する。金融緩和や財政支出の拡大といった経済政策は、成長戦略と歯車があってはじめて効果を上げていく」

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