2013年7月28日日曜日

フィリップ・コトラー「マーケティングは日本を救うか」

世界的なマーケティング学者のコトラー氏は、来日した際はたっての希望でJR東京駅の駅ナカを視察。「世界中の鉄道事業者が参考にすべきだ」と感想を語ったそうだ。また日本のマーケティング研究者は「事例や理論を世界にもっと発信すべきだ」と言う。
日本社会はマーケティングの考えを矮小化する傾向、はたしかにあるかもしれませんねえ。某弊社のマーケティングをみるにつけ、ため息しかでてきません...
1990年以降の日本の低迷期はどこに問題があったのか、という問いにコトラー氏が答えています。
「70年代から80年代の日本企業は『よりよい製品をより安く作る』ことにかけてチャンピオンだった。当時はそれだけで欧米のメーカーと違いを出すことができた。日本国内だけで十分な収益を上げることができ、一部の消費財では輸出に注力しなかったのも理由。成功したことで若干、守りに入っていた。失敗を恐れすぎている。そこからは成長は望めない。チャンピオンということで驕慢にもなっていた。
そして最も重要な事は戦後の日本を牽引してきた松下幸之助、本田宗一郎、盛田昭夫のような創業者でクリエーティブな考えを持つ人材の系譜が途絶えてしまったことだ。
(60年代に)マーケティングに必要な4つのP(プロダクト=製品、プライス=価格、プレイス=流通、プロモーション=販売促進)を提唱したが、日本ではまだ理解が進んでいない気がする。マーケティングそのもののステータス(地位)が低い。
どうもマーケティングをプロモーションとだけ捉え、テレビで30秒の広告を打てばいいと考えているだけのビジネスパーソンが多くいる。マーケティング担当者が果たして製品開発にまで入り込んでいるだろうか。価格や流通の販路(チャンネル)の決定についても関与の度合いが弱い。
マーケティングの担当者は経営全般に深く関わるべきだが、日本の企業の大半ではそれにふさわしい職種となっていない。米国などではCMOという役職があるが、日本でCMOを据える会社はごく一部だ。
日本の経営者はおそらく、マーケティングは営業部門が受け持つと考えてるのだろう。そうではなくて、CMOは市場と深く関わり、どのような商品を先々作るのかということに参画しなくてはいけない。さらに新製品を投入する時期やチャンスを見極めて、新製品のポートフォリオ(組み合わせ)を最適化することも求められる。顧客の声の把握だけでなく、技術の進歩にも精通し、新しい技術を商品開発に持ち込む力量も問われる。
CMOは経営の意思決定を行う立場にいて、このキャリアを経てからCEOに就いて経営全般を見るのがいいと考えている。
(日本にCMOにふさわしい人材が育ちにくいのは経営トップが)マーケティングによって製品や組織を変えることができることを認識していないからだ。違いを打ち出せるはずなのに、そのことが分かっていない。マーケティングをサービス機能やコミュニケーションの手段だと捉え、企業が目指すべき重要な役割を担えることに気づいてない。
顧客増が大切なのだ。先進国ではさまざまな商品やサービスがあふれている。なぜ、そうした環境で売れないのかを考えれば答えはこうなる『自分の会社に目を向けてくれる顧客が少ない』のだ。足りなければ顧客を増やすしかない。
自社について顧客により深く理解してもらい、頼るくらいの特別な感情を持ってもらうまでの関係を気づくことが大切。あるアウトドア用品メーカーは長く使った用品でも満足していなければ返品を受け付けている。『この会社は自分のためにここまでやってくれるのか』と思ってもらうことだ。」
(もっと顧客を増やす手段は)「新興国への取り組みだ。これまでのマーケティングはお金のある先進国などにいる20億人を対象としてきた。これからは新興国などの50億人も含めて考えるべきだ。」

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