2014年4月23日水曜日

『ケインズ説得論集』

近所の図書館にあったので借りてきてパラ見しているけど、これは超面白いですね。ケインズってすごいな。早速買おう。
「レーニンはこう語ったと伝えられている。資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだと。政府はインフレを継続することで、密かに、気づかれることなく、国民の富のうち、かなりの部分を没収できる。この方法を使えば、国民の富を没収できるだけでなく、恣意的に没収できる。
インフレによって、当然といえる以上に、そして本人の期待や望みすら大きく超えるほどに棚ぼたの利益を得た人たちは、「暴利をむさぼる悪徳商人」だとされるようになり、労働者階級の憎しみを受けるとともに、インフレで貧しくなった有産階級からも、それと変わらないほど強い憎しみを受ける。
インフレが進み、通貨の実質価値が月ごとに激しく変動するようになると、債務者と債権者の間の恒久的な関係、資本主義の根幹になっている関係が完全に混乱し、ほとんど意味を失う。そして富の獲得の過程が博打と富くじに堕していく。
レーニンはまったく正しかった。社会の基盤をくつがえすには、通貨を堕落させることほど巧妙で確かな方法はない。インフレの過程では、経済法則の隠れた力をすべて、社会秩序を破壊する方向に動員でき、しかも、社会の秩序が破壊されていく理由を、百万人に一人も理解できないのである。」

『ケインズ説得論集』の英語版はこちらからフリーで読める。

ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』の英語版はこちら

日本語訳はこちら

"A Trieties on Probability"(1921)はこちら

「平和の経済的帰結」の英文はこちらで見れます。

「孫の世代の経済的可能性」(1930)の英文はこちら。


iPS細胞の復習

どんな細胞にもなれるという性質を生物学では「全能性 totipotent」という。ヒトの幹細胞は全能ではない。皮膚の幹細胞は皮膚の細胞にはなれるが、筋肉や神経の細胞にはなれない。

胚(Embryo)から取り出した幹細胞(Stem cell)、ES細胞(Embryonic sStem cell)は全能性を持つヒトの幹細胞。ES細胞は、適切な条件を与えれば無限に増え続けることができる。そしてどの細胞にも分化できるが、胎盤にだけはなれない。

胚とは、胎児とよばれるようになる前の、細胞のかたまり。初期の胚のうち、受精卵が6~7回分裂し、100個ほどの細胞のかたまりになったものを胚盤胞という。この内側にある内部細胞塊から作るのがES細胞。

1981年、マーティン・エバンス博士らはマウスの初期胚からES細胞を作り出すことに成功。1998年にジェームズ・トムソン教授がヒトのES細胞を作り出すことに成功。

適切な培養条件を保てば、ES細胞はおよそ二日に1回というペースで無限に増殖させ続けることができる。ES細胞はあらゆる細胞になることができるが、胎盤になることができない。ES細胞を子宮に戻しても個体は生まれない。

ヒトES細胞を使った再生医療は実用化されていないらしい。理由として、試験管の中で望みの細胞や臓器を作り出す技術がまだ完成していない、倫理上の問題、免疫による拒絶の問題など。

「なんといっても、クローン羊ドリーがすべてのはじまりですね。哺乳類の大人の細胞が、完全に初期化するということが証明されたわけです」と山中伸弥教授。

ジョン・ガードンは、カエルの細胞の核をあらかじめ核を取り除いた卵に移植すれば、卵の中で核が初期化されることを1962年に示した。しかし当時、カエルではうまくいっても哺乳類ではうまく初期化できないというのが生物学の常識だった。

イアン・ウィルマット博士は1997年世界初のクローン羊ドリーを誕生させた。大人の羊の体から細胞を取り出し、その核を、あらかじめ核を取り除いておいた卵子に移植した。こうして作った卵から、もとの羊とまったく同じ遺伝情報を持つ別の羊ドリーを誕生させた。

クローンES細胞に成功すれば拒絶反応のない再生医療の道が開ける。世界で初めてのクローンES細胞は2001年に理研の若山照彦博士がマウスで作り出した。今回、話題になったあの人てすね。

ES細胞の中で活発に働く物質を山中教授は「初期化因子」と呼んだ。実体は特定の種類のタンパク質だろうと考えられた。このタンパク質を細胞の中に送り込めば初期化が起きES細胞にかわるはず。しかし望みのタンパク質を細胞の中に効率よく送り込む技術は開発されていなかった。

山中教授はタンパク質を送り込むかわりに、その因子の設計図である遺伝子をレトロウイルスベクターを使って送り込むことにした。

山中教授が作ったiPS細胞は、胚をこわす必要がない点と、拒絶反応の心配がない点が、ES細胞との決定的な違い。

山中教授は理研のデータベースに着目し25000種の遺伝子からES細胞でとくに活発にはたらく100種程度の遺伝子リストをつくりあげた。

さらに、特に大事な24種の遺伝子へと4年ほどかけて絞り込んでいった。そしてこの24種の遺伝子全てをいっぺんに大人のマウスの皮膚細胞の中へと強引に送り込んでみた。すると皮膚の細胞は初期化され、ES細胞とそっくりな細胞になった。

次に、24個のうちどれか1つだけを差し引いた23個を与えていった。すると初期化が起きる場合とおきない場合があった。そうして初期化になくてはならない遺伝子4種類を割り出した

山中教授が突き止めた4個の初期化因子はOct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc。

4個の初期化因子はヤマナカファクターと呼ばれる。c-Mycを除く3個の遺伝子だけを使って作り出した改良型のiPS細胞は「がん」を引き起こす危険を減らすことに成功した。ただし、レトロウイルスベクターを使う限り、がん化を引き起こす危険性がある。これは今後の課題。

日本で研究していた山中教授と米国で研究していたトムソン教授は、2007年11月20日、ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作成した、とまったく同じ日に発表した。「同着でよかったんだと思いますよ。このような研究に、勝ったも負けたもありません。研究が進むことが大切ですから良かった」と山中氏

トムソン教授らが使った遺伝子のうちOct3/4とSox2は山中教授と共通だが、残りの2個、NsnogとLin28は異なる。

2014年4月15日火曜日

シャープ・レシオとその他の指標の順位相関

超過リターンをリスクで割ったシャープ・レシオはリターンが正規分布であることを想定しているので、リターンが正規分布ではないと言われるヘッジファンドのパフォーマンス分析には適さないとよく言われる。

これについてMarin Elingは"Does the Measure Matter in the Mutual Fund Industry?"(2008)において、ヘッジファンドとミューチュアルファンドのリターン・データを使って、シャープ・レシオとその他の指標を順位相関(Spearman's (1904) rank correlation coefficient)を計算し、結果に大差がないという結論を出している。

Spearman's (1904) rank correlation coefficientは変数の関係が線形である必要はないし、変数がインターバル・スケールで計測されている必要もない。

検証された指標は、Omega, Sortino ratio, Kappa 3, Upside potential ration, Calmar ration, Sterling ration, Burke ration, Excess return on VaR, Conditional Sharpe ration, Modified Sharpe ratioである。




2014年4月13日日曜日

Win8.1にVMwareを入れて仮想化しWinXPと古いソフトを動かす

毎年使っている年賀状作成ソフトがWin8.1では動かなかったので、VMwareで仮想化してWin8.1の中にWin XP環境を再現することにする。VMwareは無料でこちらでDLできる。



 VMware Playerのファイルをダウンロードしてインストール。あっけないほど簡単に終わる。


 Win XPのDVDをPCに入れて、「新規仮想マシーンの作成」を選ぶ。


 通常はこれでOKだけど、私の場合、XPのDVDがWin95からのアップグレード版だったのでWin95のディスクを入れろという指示が。Win95を探しているとWin95のかわりにXP Proが見つかったのでそれをインストール。


 XPのインストールが始まる。ちゃんとXPのプロダクト・キーをメモしておいた昔の自分を褒めてあげたいw



 「インターネットをサーフィン」という言い方も死語ですねえ。


 おおっ...


 無事にWin8.1の仮想環境にWin XPをインストールすることができた。こちらも驚くほどあっけない。


 例の年賀状ソフトがWin8.1上のWin XPでちゃんと動いた。ありがたや、ありがたやw


 Visual C++ 2013と仮想XP上のVisual C++ 2005でシームレスに開発できるってすごいですね。


ついでにUbuntu(Linux)も仮想環境にインストールしてしまおう。




坂口安吾を「えあ草紙・青空図書館」で読む

日経「半歩遅れの読書術」で経済学者の猪木武徳氏が坂口安吾の『二流の人』を取り上げていたので久しぶりに安吾を読みたくなった。青空文庫で無料で読める。

青空文庫:坂口安吾


えあ草紙・青空図書館 を使うと読みやすいです。

Chromeなどのウェブブラウザー上で青空文庫の縦書きに対応した無料の電子書籍リーダー「えあ草紙」、とても便利ですね。


齊藤先生お薦めの 『安吾の新日本地理』を「えあ草紙」で読む。


えあ草紙・青空図書館はスマホでもこんな感じで読めます。


2014年4月6日日曜日

『それでも金融はすばらしい』 ロバート・J・シラー

私は、原書のハードカバーを買ってから積読中なのですが、近所の図書館に翻訳が置いてあったので借りてきました。翻訳にはペーパーバック版への「はしがき」も追加されていました。その中にシラーが行った「ファイナンス卒業生に向けての演説」も含まれています。原文はこちらから読めます。

「金融ファイナンスは、最高の場合には、単にリスクを管理するだけでなく、社会の資産の管理保全者として機能し、社会の最も深い目標を支援する存在となる。

次世代の金融ファイナンス専門家たちは、金銭報酬だけでなく、金融の民主化の進展に伴う満足感という形で最も真なる報酬を受け取ることだろう―金融の便益を、最も必要とされる社会の隅々にまで広げるのだ。

これは新世代にとっての課題だ。そしてこれには君たちが動員できる想像力と技能のすべてが必要となるはずだ。金融再発明に幸運を祈る。世界は、君たちに成功してもらわねばならないのだから。」

序章で金融資本主義を定義している。

「最も大きなレベルでとらえると、金融とは目標構造の科学だ ― ある一群の目標実現に向けた経済的取り決めの構築と、その目標実現に必要な資産の管理を行う活動となる。

何をめざすかが明確になれば、関係者たちには目標設定のため、適切な金融のツールと、専門家の助言がしばしば必要になる。この点では、金融はエンジニアリングに似ている。

financeという言葉自体が「目標」を意味するラテン語に由来するという事実は、興味深いのに、ほとんど見過ごされている。辞書によると、financeのもとになったのは古典ラテン語のfinisで、これは一般に「終わり」「完結」と訳される。

またある辞書によるとfinisがfinanceに発展したのは、負債の終了(返済)が金融に不可欠な要素だからであるという。だが、ここではfinisが古代においても現代英語のendと同じく「目標」を意味していたことも思い起こしておきたい。」