NHK『カラーでよみがえる東京100年』で永井荷風の有名な日記、『摘録 断腸亭日乗』が引用されていて興味深かったです。引用されていたのは、昭和十六年六月十五日ですね。荷風生存中に出版された時には削除されていた部分。荷風の日記がウェブに公開されているので読むことができます。
『摘々録 断腸亭日乗』
「国民一般の政府の命令に服従して不平を言わざるは恐怖の結果なり
麻布連隊反乱(二・二六事件)の状を見て恐怖せし結果なり
元来日本人には理想なく強きものに従ひ、その日その日を気楽に贈ることを第一となすなり」
より詳しく引用すると
「日支今回の戦争は日本軍の張作霖暗殺及ぴ満洲侵略に始まる。日本軍は暴支膺懲と称して支那の領土を侵略し始めしが、長期戦争に窮し果て俄に名目を変じて 聖戦と称する無意味の語を用ひ出したり。欧洲戦乱以後英軍振はざるに乗じ、日本政府は独伊の旗下に随従し南洋進出を企図するに至れるなり。然れどもこれは 無智の軍人等及猛悪なる壮士等の企るところにして一般人民のよろこぶところに非らず。国民一般の政府の命令に服従して南京米を喰ひて不平を言はざるは恐怖 の結果なり。麻布聯隊叛乱の状を見て恐怖せし結果なり。今日にて忠孝を看板にし新政府の気に入るやうにして一稼(もうけ)なさむと焦慮するがためなり。元 来日本人には理想なく強きものに従ひ其日々々を気楽に送ることを第一となすなり。今回の政治革新も戊辰の革命も一般の人民に取りては何らの差別もなし。欧 羅巴の天地に戦争歇む暁には日本の社会状態も亦自ら変転すべし。今日は将来を予言すべき時にあらず。」
さすが荷風という印象。
2015年2月11日水曜日
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