彼は二度結婚し、離婚と一夫多妻を支持した。彼はイタリアでガリレオと知り合う。ガリレオの望遠鏡で見た月のイメージはずっと後になって、『失楽園』のサタンの盾の描写のなかで再現するだろう。彼はラテン語とイタリア語で詩を書いた。
1667年、いまや盲目となったミルトンは『失楽園』を出版する。荘重なスタイルはミルトン特有のものであるが、読者は読んでいるうちに、この詩に機械的なところがあるのに気づく。情熱に動かされて書かれたものではないからだ。」
イギリスでもっとも権威のある批評家サミュエル・ジョンソンは、『失楽園』は読者が賛美し、放棄し、二度と読まない、そういう書物の一つだ、と18世紀に書いている。「もっと長かったらと思う読者は一人もいない。それを読むことは楽しみというより義務だから。われわれは教訓のためにミルトンを読み、疲労困憊消化不良になって部屋を出、別の本に気晴らしを求める。われわれは主人を捨てて、遊び友だちを探す」
シェークスピアの時代は、演劇は文学の下位ジャンルだったので、シェークスピアが偶像崇拝されることはなかった。シェイクスピアは役者であり、作者であり、興行主だった。彼とつきあいのあった役者たちによれば、彼はいとも簡単に台本を書きあげ、ただの一行も台詞を消したりはしなかったという。
すぐれた文学者のベン・ジョンソンいわく、「消せばよかったのにと思う台詞なら、彼(シェークスピア)にはいっぱいある」。シェークスピアは亡くなる四、五年前に故郷に引退して屋敷を購入し、訴訟と金貸しで時を過ごした。名誉は彼の関心事ではなかった。彼の最初の全集は死後のものである。
ロマン主義運動は正式にはワーズワスとコールリッジの『叙情バラッド集』が出た1798年に始まる。ワーズワスによると、「詩は力強い感情が自然に溢れ出たものであるが、その起源は冷静になって回想された感動にある」
コールリッジの「詩作品はおおよそ400頁からなるが、「失意のオード」をのぞけば次の三篇に還元される。それらは一種の『神曲』を構成しているとある人たちは言う。最初の「クリスタベル」が地獄篇、二つ目の老水夫の歌」が煉獄篇に相当するだろうが、後者のストーリーは不思議な贖罪の物語である
三つ目の「クブラ・カーン」が天国篇になるだろう。この詩の誕生には奇妙な経緯がある。コールリッジは阿片を服用したあと旅行記を読んでいて、音楽、言葉、映像の三層からなる夢を見た。
彼は歌をうたっている声を聞き、ふしぎな音楽を耳にし、中国の王宮の建造を見て、次のことを知る(人は夢のなかでそうしたことを知るものだ)。音楽は宮殿の建造であり、宮殿はマルコ・ポーロを庇護した皇帝クビライ汗のものだ。この詩はかなり長いものになるはずだった。
眠りから醒めたとき、コールリッジは夢のことを憶えていて、それを書きはじめた。しかし途中で邪魔が入って、終わりのほうはもう憶いだすことができなかった。彼が回収した50行あまりの詩は、そのイメージと韻律ゆえに文学の不滅の一頁になっている。
詩人の死後何年も経ってから、夢のなかで示された設計図にしたがい、皇帝クビライ汗が宮殿を造営したことが明らかになった。」
このコールリッジの逸話はボルヘスのお気に入りで『続審問』の「コウルリッジの夢」でも取り上げていますね。実際の年代はクビライ汗の方がはるかに前なのですが、未来の詩人の夢に従って宮殿を造営したという捉え方がボルヘス的。
トマス・カーライルの雄弁な韜晦の書『衣服哲学』(原題は「仕立て直された仕立て屋」の意)。
トマス・カーライル『衣服哲学』
「1836年、ジャン・パウルの文体の影響を受けて、カーライルは雄弁な韜晦の書『衣服哲学』(原題は「仕立て直された仕立て屋」の意)を出版した。この本は架空の観念論哲学者ディオゲネス・トイフェルスドレックの伝記を述べ、彼の学説を解説し、彼の著作からの長い引用を取り入れている。
カーライルは人類の歴史を、われわれが絶えず読みかつ書きつづけ、「そこにはわれわれのことも書かれている」一種の神の暗号とみなした。
彼は民主主義を投票記入所がもたらす混沌にほかならないと考え、権威主義に信頼を寄せた。彼はクロムウェル、フリードリヒ大王、ビスマルク、征服王ウィリアム、パラグアイの独裁者フランシア博士を尊敬し、南北戦争のさいは奴隷制を支持した。」
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンは異常なほど内気だったので、大人とのつきあいを避け、子供に親交を求めた。アリス・リデルという名の少女を楽しませるために、ルイス・キャロルという筆名で、のちに彼を有名にする二冊の本『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を書いた。
「ギボンは18世紀に、過去の世紀の人びとがビザンチウムの城壁やアラビアの砂漠で生きたこと、もしくは夢見たことをふたたび夢想した。
『ローマ帝国衰亡史』の頁を操るということは、無数の登場人物からなる小説のなかに入りこみ、そこで迷うという幸福にひたることである。そしてその主人公は人間の世代、舞台は世界であり、その巨大な時間は、王朝、征服、発見、そして言語と偶像神の変化によって測られるのである。」
ギボンの『ローマ帝国衰亡史』、面白そうだけどちくま学芸文庫で約500頁で全10巻あるのね。最後まで読み切る自信がない。( ̄∇ ̄)
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