2014年10月25日土曜日

10/24の日経スクランブル、『頼りない日本株投信』

10/24の日経スクランブル「頼りない日本株投信」。
「震源地の米国株に比べ相場の戻りはいまひとつ。割安な銘柄を拾う国内投資家の層の薄さが大きな原因で、中でも日本株投資信託の存在感の無さは際立つ。日本人が買わない日本株投信は、海外要因で揺れ続ける日本株市場の問題の核心かもしれない」
「「日本株投信ですか?正直、売れ行きはあまりよくないです。理由はいろいろありますが、日本株が長期的に上がるイメージをいまだに抱けないのが最大の原因でしょう」。投信販売の最前線に立つ野村証券のある支店長はこう話す」
「公募投信は全体の残高が過去最高を更新中だが、押し上げ役はもっぱら海外株投信や海外REITファンドだ。日本株投信はカヤの外で、市場全体に占める残高比率は9.3%(9月末)と15年前のおよそ半分の水準に低下した。」
「残高全体の約8割を米国株ファンドが占める米投信市場とは大違いで、これでは相場の下支え約になりようがない。なぜかくも人気がないのか。原因を探る過程で、ある象徴的なファンドを見つけた。野村アセットマネジメントが2000年に設定した「ストラテジック・バリュー・オープン」だ。」
「実はこのファンド、プロの日本株運用者の間では長期間、安定的にベンチマークを上回る成績を上げてきたことで知られる。設定以来、年間でベンチマークの東証株価指数に負けたのは1年だけだ」。優れた成績なのに国内では売れていない。類似ファンドを足しても残高は60億円にすぎない。
「興味深いのが、このファンドは海外で爆発的に売れているのだ」。08年に応手で販売開始。パフォーマンスの高さから年金基金が資金を委託。今では公募投信として欧州、アジア、南米の17カ国で販売、海外投資家分の残高は約4500億円に達する。
「海外投資家は過去のパフォーマンスとその再現可能性を念入りに調べ、納得がいけば資金を預けてくれる」。河野光成シニア・ポートフォリオマネージャーは言う。
「運用成績がいい投信がちゃんと売れる市場を作ること。それが証券界の大きな課題だ」。日本証券業協会の稲野和利会長は言う。
ストラテジック・バリュー・オープンのパフォーマンス。しかし、フィデリティ日本成長株って、TOPIXインデックスなのかと思うくらいTOPIXに連動していますね。


まあ、海外要因というか、米国株要因で動くのは、日本だけじゃなくて、欧州や新興国の株式市場も同じだと思いますけどね。

2014年10月18日土曜日

『桶川ストーカー殺人事件 -遺言』

「桶川ストーカー殺人事件」を読むと、いざというときに警察はまったく頼りにならないということが良くわかる。埼玉県警上尾署、ひどい。「告訴状」を勝手に「届出」に改竄するなんてありえない。被害者には告訴は取り下げてもまたできると嘘を教えているが刑事訴訟法では一度取り下げると告訴できない。

ストーカーというと単独犯のイメージだけど、桶川ストーカーの異常さは、ストーカーがその筋の人にお金を払ってい集団で嫌がらせや殺人をさせたこと。そして警察がちゃんと捜査しようとしないこと。

桶川の事件は、写真週刊誌FOCUSのスクープだったんだけど、それがテレビで取り上げられ、政治家が取り上げたことでストーカー規制法が成立するんだね。やはりテレビの影響力は大きい。

告訴状をつき返した上尾署のM次長は、後にM次長によって左遷させられたという警察官によって放火されている。その警察官は刑務所で自殺している。

「桶川ストーカー殺人事件」の著者、清水潔氏によると、全国の警察のうち雑誌取材の対応ぶりワーストスリーは埼玉県警、京都府警、北海道警なのだそうだ。

2014年9月1日月曜日

『アベノミクスの終焉』 服部茂幸

データを丁寧に分析しながら、いわゆるアベノミクスと呼ばれる経済政策の効果を検証した良書です。その結果、第一章において以下のように異次元緩和が成功したという証拠はないと結論づけています。

(1)異次元緩和が始まると、経済成長率は低迷した。しかも、低い成長率を支えるのは、政府支出と消費増税による駆け込み需要である。異次元緩和が日本経済を復活させているという証拠はない。

(2)消費者物価の上昇も、輸入インフレによるところが大きい。円安の停止により輸入インフレが止まれば、消費者物価の上昇も止まる可能性が高い。実際、2013年末より消費者物価は上昇していない(14年4月の消費増税による物価上昇は除く)

(3)そもそも、アベノミクスの前の日本経済は全体的に世界同時不況から回復してきていた。

(4)アメリカやヨーロッパとの比較においても、日本のほうが経済回復のペースは速い。就業率についても、日本は危機前のピークをすでに越えているのに対して、アメリカでは08年の危機で急低下したまま、ほとんど回復していない。アメリカで成功しているとはいえない政策を日本で行って、日本経済が復活する保障はない。

アベノミクスの黒田=岩田日銀に対しても厳しい評価ですが、ミンスキーの流れをくむ著者らしく、不動産バブルを発生させて破裂させて世界的な金融不況を引き起こしたとして米国の中央銀行総裁のグリーンスパン、バーナンキに対しても厳しく批判しています。

2014年8月16日土曜日

『日銀、「出口」なし!』 加藤出

加藤出さん、さすがの面白さです。
日本や欧米の金融政策を概観できて、お盆休みの暇つぶしに最適ですね。

2章によると、バーナンキ、コーン、イエレン、FRBスタッフの間では、マネタリーベースを拡大する日銀の量的緩和は効果がないと既に結論づけていたそうだ。
FRBの政策はマネタリーベースを増加させることを目的としていないので、量的緩和策と区別するため大規模資産購入策LSAPと呼ばれた。
FRBがこの信用緩和策を大規模に実施すると、結果的に銀行システムに準備預金が大量に供給される。しかしFRBは、準備預金の増加はあくまで政策の副産物であって、それ自体は経済を刺激しないと明確に述べている。

バーナンキ「量的緩和は貨幣流通量に影響しない。銀行がFRBに預けた電子的金額が大きく増えただけで、それはそこに居続けている。それがインフレを引き起こす兆候は見えない」
"Q&A testimony to House"


3章で元IMFエコノミストのピーター・ステラ氏のコラムが紹介されている。今日、信用創造は準備預金残高に結び付けられていない。現代における準備預金の唯一の真の役割は、銀行間の資金決済にある。

「準備預金とマネーサプライの関係は、あなたが学校でおそらく学んだものとは異なっている」
"Exit-path implications for collateral chains" | vox

ステラ氏は、2013年5月のコラム「日本銀行劇場:これは能の後の歌舞伎か?」で日銀のマネタリーベース・ターゲットに懐疑的な見方を示した。

「日本銀行劇場:これは能の後の歌舞伎か?」ピーター・ステラ
http://stellarconsultllc.com/blog/?p=133

また、植田和男氏の講演も紹介してある。
『非伝統的金融政策、1998年―2014年:重要な金融的摩擦と「期待」の役割』 植田和男
2014年5月24日金融学会講演(PDF)

そのなかでクルーグマンとウッドフォードの意見が紹介してある。

クルーグマン「私の理解では、日本が以前(2000年代前半に)、大規模な量的緩和を行った際は準備預金の増額にすぎず、効果をもたらさなかった。一方、米国型とは、非伝統的な資産の大量購入を指す。特に日本の場合は、国債金利があまりに低く、これを買っても効果は小さい。ほかの資産の購入がどの程度の効果を生むのかは誰にも分からず、議論も分かれるが、やっても失うものはないのだから、試すべきだ」

個人的には、安倍政権も、実質賃金低下が政権に与える負の影響を気にし始めている気はしますね。

物価目標と並ぶ異次元緩和のもう一つの柱となった「マネタリーベースを2年で倍増させる」との目標。こちらの評価はどうか。ウッドフォード教授に問うと「それも、私だったらやらない」との答えだった。
「(物価上昇率とマネタリーベースの)2つの目標の存在は混乱を招く。それに大きな効果を生まなかった過去の量的緩和の手段と極めて似ている。量的緩和が目標にしたのは当座預金の残高でマネタリーベースとは違うが、両者の動きは密接に関係している。有効でなかった目標をなぜ再び持ち出したのか」

加藤氏はJohn H. Rogersも紹介しています。
"Evaluating Asset-Market Effects of Unconventional Monetary Policy: A Cross-Country Comparison" Rogers et al,(2014)
「FRB、BOE、ECB、日銀の異例の金融政策が債券利回り、株価、為替に与えた影響を分析。日中や一日の短い変化では効果が認められたが、株価、為替への効果は利回り低下を通じてというよりアナウンスメント効果の方が大きい。さらに持続的効果を検証したらそれはゆっくりと消えてしまっていた」
ちなみに、John H. RogersはFRBの中の人。

3章、日銀の01年のようにBSを大きくしてマネタリーベースの供給を増やすことを意図した政策をQE0、08~09年に多くの先進国の中銀が行った、金融市場のパニックを鎮めるための資産購入策をQE1、その後のポートフォリオリバランスを狙った政策をQE2と呼んでみる。

「米国では、金融危機時に行われたQE1は資産価格によく効いた。しかしQE2の効果は不明瞭である。表面的には株価の上昇が見られたが、それは経済情勢の好転によるもので、それを除くとQE2の効果は限られる。
しかし、QE1があまりに効いたため、ヘッジファンドなど海外投資家の間で、「QEは効果がある」という誤解が続いた。彼らは、実はQE0、QE1、QE2の区別がついていないのである。
日銀の今回の量的質的緩和策は、QE1ではなく、QE2。だが、このような海外投資家の誤解が存在するため、同政策の導入で株価は一時上昇した。ヘッジファンドにしてみれば、自分たちの理解が理論的に正しいかどうかは実は重要ではなく、周りの投資家がどう動くかが大事。皆が誤解して動けばOK。

海外の投資家に接することの多いであろう加藤さんの話なので、まあそうなんだろうなあと思います。黒田さんもその辺を分かっていてあえて「マネタリー・シャーマン」的な演技をしてるんでしょう。


(おまけ)
Guest Contribution: Myron Scholes on Whether QE2 Will Work

2014年8月9日土曜日

ハミルトン『時系列解析』の分析をRで一部再現するパッケージを試す

PDFと音楽のデータをPCからスマフォにコピーしているときに、昔ダウンロードして放置していた「RcompHam94」というRのパッケージを見つけた。これはJ.D.ハミルトンの名著『時系列解析』の一部のサンプルをRで再現するというものらしいので、早速試してみた。

まず以下のリンク先のzipファイルをPCの任意の場所に解凍しないでそのまま保存する。

http://dss.ucsd.edu/~jhamilto/RcompHam94_0.1.zip

ここではD:\sampleというフォルダに保存した。
 zipパッケージのなかにCompanion.pdfという解説のファイルがあるので参考にそれを開いておくと便利。表紙のタイトルは"An R Companion to James Hamilton's Time Series Analysis with R"。
zipファイルのdemoというフォルダの中をみると16個のRのデモ・プログラムがある。
まず、Rに「RcompHam94」のパッケージをインストールする。そのためRを立ち上げるときにアイコンの上で右クリックをして 「管理者として実行」を選ぶ。
Rを立ち上げたら、「パッケージ 」のメニューから「ローカルにあるzipファイルからのパッケージインストール」を選ぶ。
 保存しておいた「RcompHam94_0.1.zip」を選ぶ。
無事にパッケージがインストールされた。
デモを動かすにはコンソール画面で「demo(topic="p112",package="RcompHam94")」 と入力。topicはさっきのdemoのフォルダにあったRのプログラムの一つ。
デモ"p112"の実行画面。左が実行されたRのコマンドと出力結果。右が出力結果のグラフで上が自己相関係数、下が偏自己相関係数。
いくつか動かないサンプル・プログラムもあるので、時間のあるときに中身を詳しく調べてみたい。

2014年7月26日土曜日

初心者がVisual C++で"Hello World"を表示させる方法

初心者にとってはC++の入門用の教科書の簡単なサンプルコードをVisual C++で動かすのも簡単ではないと思います。ここではVisual C++2013で"Hello World"と表示させてみます。

Visual C++はMicrosoftのVisual Studio 2013に含まれています。Visual Studio 2013にはVisual BasicやC#も含まれています。無償版をMicrosoftのウェブサイトからダウンロードしてインストールすることができます。ここではすでにVisual Studio 2013無償版がインストールされているとします。

C++の教科書の簡単なサンプルコードをVisual C++で動かす方法はふたつあります。一つは「空のプロジェクト」を作る方法、もう一つはVisual Studioが用意するコンソール・プリケーションのテンプレートを利用する方法です。

まず、「空のプロジェクト」を作る方法を示します。メニューから「ファイル/新しいプロジェクト」を選びます。
左側のテンプレートで「Visual C++」を選び、「Win32 コンソール アプリケーション」を選びます。下のところでプロジェクトの「名前」や「場所」を適当に決めます。
アプリケーションの設定で「コンソール アプリケーション」を選び、追加のオプションを「空のプロジェクト」として「完了」ボタンを押します。
メニューから「プロジェクト/既存項目の追加」を選びます。
「C++ ファイル(.cpp)」を選び、名前を付けます。ここでは「Hello.cpp」とします。
教科書のサンプルコードを書き込みます。ここでは
サンプルコード
------------------------------------------------------------
 #include  <iostream>
 using namespace std;

 int main() {
   cout << "Hello World" << endl;
 }
------------------------------------------------------------
と打ち込みます。
打ち込んだら、メニューから「デバッグ/デバッグなしで開始」を選びます。
「ビルドしますか?」で「はい」を選びます。
するとコンソール画面にめでたく「Hello World」と表示されます。
以上が一つ目の方法です。二つ目の方法として、コンソール・プリケーションのテンプレートを利用する方法があります。
先ほどのアプリケーションの設定のところで「コンソール アプリケーション」を選び、追加のオプションで「空のプロジェクト」のチェックを外して「完了」ボタンを押します。
するとVisual Studioが空のコンソール・アプリを準備します。

次の二文を「_tmain」の前に加えます。
--------------------------------------------------------------
 #include <iostream>
 using namespace std;
--------------------------------------------------------------
そして「_tmain」の { } の中の「return 0;」の前に次の文を加えます。ちなみに「_tmain」が通常のC++の「main」に該当します。
--------------------------------------------------------------
   cout << "Hello World" << endl;
--------------------------------------------------------------
メニューから「デバッグ/デバッグなしで開始」を選びます。

2014年7月12日土曜日

須田美矢子氏の『リスクとの闘いー日銀政策委員会の10年を振り返る』は必読

日銀の政策委員会の審議委員を10年間務めた経済学者の須田美矢子氏の『リスクとの闘いー日銀政策委員会の10年を振り返る』は、著者の意見が驚くほど率直に散りばめられた第一級の資料に仕上がっている。

どれほど率直かは、たとえば「はじめに」のなかの以下の文章を読むだけでも感じられるだろう。

「このように金融・経済情勢がめまぐるしく変化する中で、計量的に算出した過去の平均的な姿を単純に先行きに当てはめて予測をしても、それが実際に役立つとは限らない。また、理論でしばしば仮定するように、人々の先行き予想は定常均衡に向かって収束していくという単純化は現実的ではなかった。人によって予想は異なるし、様々なニュースに反応して大きく振れることもあって、それを簡単にコントロールできるものではなかった。さらに、政策を行う上で非常に大事な信認の維持は、既存の理論で簡単に取り扱える問題ではなかった。市場動向、日々出てくる指数や先行きを示すサーベイデータや内外の政策変更をチェックし、金融市場や経済・物価情勢に関する足許の変化から、先行きに対するインプリケーションを的確に読み取り、リアルタイムでそれらを金融政策運営で活かしていく―こうした実務は、言葉でいうほど簡単ではなかった。それにもかかわらず、内外を問わず著名な学者が望ましい政策論を断定的に展開しているのを見聞きすると、なぜそのようなことが簡単にいえるのかというのが率直な感想であった。それに加えて、その取り上げられ方に、もっと大きな問題を感じていた。」

この本がカバーしている範囲も著者が関わった日銀法改正から政策委員会、量的緩和、質的緩和、インフレーション・ターゲティング、コミュニケーション・ポリシー、マクロ・プルーデンスの視点など多岐にわたっており、しかもそれぞれのテーマについて著者の忌憚のない意見が述べられている。

日銀の金融政策に興味のある人は必読だろう。