2012年5月27日日曜日

2012年度日本ファイナンス学会 1日目

日本ファイナンス学会に行ってきた。今回は会場が一橋ICS。ところで、プログラムの期日が2011年5月26日・27日になっている。それから一ツ橋キャンパスも今は千代田キャンパスが正式名称らしい。大会実行委員長が私の師匠の本多先生。


セッション1:会場1 ファイナンスにおける最適化

第1報告:「Investment timing with fixed and proportional costs of external financing」
報告者:西原 理(大阪大学)
討論者:今井潤一(慶應義塾大学)

企業はリスクニュートラルと仮定。動的計画法。リアル・オプション。グロース・オプションで行使タイムングを最適化。上界、下界については解析的に解ける。内部資金だけで投資するか、外部ファイナンシングを利用するか。キャッシュ・リザーブが多い企業ほど投資が遅れる。単位時間当たりのCFが確率過程。


第3報告:「Optimal switching strategy of a mean-reverting asset over multiple regimes」
報告者:鈴木 清(野村證券)
討論者:大西匡光(大阪大学)

株式のロング・ショートのスイッチングを動的計画法を応用して分析。リバランスが最適な領域と継続領域。繰り返し最適停止問題。value matchingとスムース・ペースティング。General step witching 最適戦略。


セッション1:会場3 株式市場の情報効率性

第2報告:「Can Investors in the Japanese Stock Market Profit from the Analyst?」

報告者:岡田克彦(関西学院大学)
討論者:太田浩司(関西大学)

ブルームバーグ・ニュースから株式アナリストの格付け情報をテキストマイニング。Trading Simulation。形態素解析プログラムJUMAN/係り受け解析プログラムKNPを利用。Dynamic calendar time portfolio。ペアがマッチングしないときはショートは日経225先物を利用。翌日の寄り付きでポジションを持つとする。分析してみると、格付け変更前にかなりリターンがあり、発表後の翌日以降はあまりリターンが上がらない。年次換算で2~3%(取引コストを考慮すると1~2%)のリターンが獲得できる。1億円くらいの個人投資家ならもうかるが、ファンドが大きくなるとマーケットインパクトによる損が大きくなる。
討論者から、「アナリストレポートの2/3は、経営者予想公表から3日以内に出されている」との指摘があった。経営者予想修正時点でレーティング変更をある程度予想できればもっと大きなリターンが得られる可能性があると。


セッション2:会場3 資産価格の評価

第1報告:「Term Structure Dynamics in a Monetary Economy with Learning」

報告者:小野貞幸(広島大学)
討論者:森田 洋(横浜国立大学)

鉱工業指数、インフレ率などをファクターとして金利がレジーム・スイッチする期間構造モデル。Bakshi and Chen(96)を以下の点で一般化。①二つの経済ファンダメンタルズとして選択した実質生産量と貨幣供給量の平均成長率が観測不可能、②実体経済と金融市場の成長レジームの不確定から投資家信条が変化、③債券の適正価格を決める上で投資家信条のダイナミクスが重要となりデータが示す構造を形成する。信条の確率過程は超過リターンのGARCH効果を説明できる。投資家が経済状態に関してより不確定であるか、よりリスク回避的である場合、債券の超過リターンのボラティリティが大きくなる。経済ファンダメンタルズのノイズが小さいとき、債券の超過リターンのボラティリティが減少する。
討論者から、無相関の場合、実質的に1ファクターとなるとの指摘。



第2報告:「所得階層別データと株式収益率のクロスセクションによる消費資産価格モデルの検証」

報告者:祝迫得夫(一橋大学)
討論者:福田祐一(大阪大学)

富裕層において消費CAPMと整合的な結論。アグリゲートな消費でCRRA型でうまく行くだけではなく、クロスセクションでのパターン説明力をモデルのパフォーマンス評価の主眼に置いて分析。パフォーマンスの改善も示唆されるが、単純にクロスセクションのパターンを説明するという展ではFama-Frenchの3ファクターモデルのほうがC-CAPMより優れていることも確か。
さすがに祝迫さんだけあって、手堅い分析。

セッション2:会場4 高速取引システム


第3報告:「オーダーフローに潜在する情報のインパクト:東証arrowheadにおける検証」

報告者:宮津和弘(イケア・ジャパン)
討論者:大家幸輔(大阪大学)

arrowhead稼動前後のオーダーフローの不確実性を情報エントロピーによって評価する。RUNS分布理論を応用して系列相関およびオーダーインバランスを定量的に扱う。arrowhead稼動後の系列を擬似変換により約定まとめ曲線をモデル化して影響を調整。
「約定まとめ」は知らなかった。「約定まとめ」とは1991年に取引システム完全電子化の際、情報提供頻度が速過ぎるとの懸念から意図的に3秒のタイムラグを約定間に挿入。最頻時で4秒の集計、つまり約定をまとめる。東証arrowhead高速取引の本質は約定の個別化。


基調演説:「Capital Market Theory after the Efficient Market Hypothesis」 Dimitri Vayanos

Momentum, reversal, and value. An institutional theory(Vayanos and Wooley 2011). Practical applications of the theory(Vayanos and Wooley 2012).

モメンタムとバリューは投信などのファンド間のフローで発生する。ファンドマネジャーと投資家は合理的。資産にネガティブなショックあったとき、ファンドのリターンが低下し、資金流出、ファンドが資産を売る、資産価格が低下する→モメンタム。資産価格がファンダメンタルな価値を下回るとリバーサルが発生する。

VayanosはMITで大橋先生と同期だったそうだ。

2 件のコメント:

たごさく さんのコメント...

お疲れ様です。
二日目のみ行ってきました。
本来、一日目の方に聞きたいものがあったんですが子供の運動会と重なってキャンセル。
いずれにせよ、公開されているpdfの予稿集を事前に予習しないといけませんね。

J.S.エコハ さんのコメント...

たごさくさんも来られていたのですね。
事前に予稿集を読むのが理想ですけど、いつも直前に来るので、なかなか読む時間がないですね。