2012年7月20日金曜日

マクロ経済学のパースペクティブ

『マクロ経済学のパースペクティブ』は、マクロ経済学の近年の発展に興味を抱く人たちが最初に読む本としてお薦めできます。特徴は直感的なストーリーの紹介、モデルの分類と一般的な図式の解説、簡単な数式の展開とモデルの有用性の紹介、日本経済への含意、多数の参考文献など。残念ながら絶版です。

「もともと現在の国民所得統計は、ケインズ以来のマクロ経済学の成立をうけて作られたものだ。統計に限らずマクロ経済学の見方からは『経済学など役に立たない』と豪語するどんな実務家であっても、実は影響を受けているものなのである」

「経済学のモデル分析は極めて難しく、かつそれゆえ面白いと言える。現在のマクロ経済学の内容は極めて多種多様であり、ミクロ理論のほとんどの分野の知識はもちろんのこと、最適成長モデルやゲーム理論を知ることが必要とされるし、確率過程論、動学的最適化理論、時系列分析などの知識も必須である。さらにマクロ経済学はあくまで実践の学問であり、制度的諸慣行に対する知識も必要であり、また鋭い現実感覚が一級のマクロ経済学者の必要条件であることは言うまでもない」

「RBCモデルは極めて非現実的と大きな批判を浴びており、また初期の主張はほとんど実証的にも成り立たないことが明らかとなっている。にもかかわらず、このRBCモデルの基本構造とその批判・反批判を知ることは、マクロ経済学の現状を知るうえで不可欠である。近年ではRBCモデルは何らかの一般均衡動学モデルを組み立てて、シミュレーションにより導出された人工的経済の数値と実際の景気循環の数値を比較する研究と位置づけることが妥当。またその含意も新古典派の究極の到達点と考えるより、あくまで一つの『技術的な』分析手法と位置づけることが妥当」


4 件のコメント:

たごさく さんのコメント...

「相場は理屈じゃねー」などとのたまい、資産市場を動かす理論的背景の分析を軽視、いや蔑視する運用会社にかつていた者として、kameさんのような方の存在は励みになります。あなたのブログを見るたびに、「定性判断という名の山勘」で人のおカネを運用するような人間には早く消えて欲しいと切に願います。

J.S.エコハ さんのコメント...

たごさくさん、どうもありがとうございます。
わたしも、たござくさんと同感です。「定性判断という名の山勘」で人のおカネを運用するような人が早く消えていくように、私も頑張りたいと思います。

わかちこ さんのコメント...

齊藤『新しいマクロ経済学』、ローマー『上級マクロ経済学』と比較してレベル的にはどのくらいですか??

J.S.エコハ さんのコメント...

わかちこさん
『マクロ経済学のパースペクティブ』はローマーの『上級マクロ経済学』の骨組みと言うかエッセンスを抜き出して直感的に理解させようという本ですね。だからローマーよりはやさしいです。
『マクロ経済学のパースペクティブ』で全体像を把握してからローマーに行くのがいいんじゃないでしょうか。
『新しいマクロ経済学』はローマーとほぼ同等だと思います。