浅野先生の論文はいつも新しい発見があって楽しい。
インデックス運用の意義と問題(浅野幸弘 2002)
「インデックス運用のパフォーマンスが良いのは銘柄調査や売買をしないから。価格形成能力をゆがめるが、ゆがめばアクティブ運用の余地が出てロングショートなどのヘッジファンドが価格を復元する。
問題はむしろ、インデックス運用がこうした価格のゆがみと言う形で隠れたコストを負担していること。インデックスに銘柄入れ替えがあったときに、入れ替え日あるいは資金流出入日に引けの成り行きで売買する傾向があり、マーケットインパクトなどの大きなコストを引き起こしている。多くは現行のパフォーマンス評価によってもたらされたエイジェンシー・コストとみられる。
インデックス運用はフリーライダーである。他人が付けた株価を高いとも低いともいわずに受け入れる。投資家が全員インデックス運用をしたら市場は資金配分の機能を果たすことができなくなってしまう。いわばアクティブな投資家の判断や売買によって形成された価格や市場機能に便乗して運用する。アクティブ運用のコストを何ら払わずに利用する。
また、インデックス運用はさらに市場の価格形成力を阻害する恐れがある。
インデックス運用の隠れたコスト
1)株価をファンダメンタルズから乖離させるのでヘッジファンドに投資機会を提供している。そうした形でコストを負担しているといえる。
2)市場操作の余地。アクティブな投資家が先回りして売買することによってインデックス運用に高く買わせたり、安く売らせることができる。実際に2000年4月の日経平均銘柄入れ替えのときにこのようなことがおこった。投機筋は大きな利益を手にしたが、それは日経平均のリターンの低下としてインデックス運用者(そしてインデックス投資家)の負担によった。
3)インデックス売買のコスト。トラッキングエラーが最も小さいのは完全法だが、この方法は銘柄入れ替えの実施日の引けに成り行きで売買することになる。そうすればインデックスに完全にトラックするから。しかし、インデックス運用が多いと、そうした売買が一度に集中してマーケットインパクトが大きくなり、インデックス運用はそのコストを負担することになる。」
私が外国株のファンドマネジャーをしていた90年代後半のアメリカでも、401kのお金がS&P500インデックスファンドに流れ込み、S&P500採用銘柄と非採用銘柄のバリュエーションの乖離が拡大していった。割高をショート、割安をロングすればいいのだが、いつ修正が起きるか読みづらいので1年単位で評価されるFMは手を出しにくい。
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