2013年3月21日木曜日

池尾教授のインタビュー『アベノミクスをどう評価しますか?』


今週の東洋経済、46ページの池尾教授「アベノミクスをどう評価しますか?」は、まったく同感ですね。一読をお勧めします。ポイントをまとめておきます。

「(消費者や企業のマインドが前向きになるように働きかけることと)インフレ期待を政策的に操作できるということは、似ているようで異なる。(民間の銀行が日本銀行に預ける)準備預金の残高を増やすとインフレ期待が高まる、といった主張は正しくない。

今の日本はゼロ金利の状態にある。こういう状態の下では(日銀が準備預金の残高を増やせば物価が上昇するという)いわゆる貨幣数量説的な関係は成り立たない。金融政策を研究している世界の専門化の間でも、ゼロ金利の制約下では量的緩和は効かない、というのがむしろコンセンサスだ。

企業のマインドはすごく大切だ。しかし、やる気さえ見せれば期待を変えられるというのは、議論としておかしいと言わざるをえない。根拠のない偽薬のような政策であっても効くことは一時的にはありうるかもしれないが、持続的なものではありえない。

デフレ脱却のために、とにかく物価が上がればよいかというと、そうではない。世間でいうデフレ脱却というのは、景気がよくなることを指している。賃金が上がらないのに物価は上がるのは困る、というのが一般的な考え方だ。

金融政策で仮に価格の持続的な下落を止められたとしても、金融政策だけで実質賃金を引き上げることはできない。

黒田次期総裁は『財政ファイナンス、為替誘導はしない』と述べている(それ自体は正しいと考えている)。財政ファイナンスも為替誘導もなしで、異次元の金融政策といって何をするのか、私にはよく理解できない。

(残されているのは)満期までの残存期間の長い国債をもっと大量に買う、あるいは、日銀の準備預金の金利を撤廃するくらいの手段しかない。それらが異次元の金融緩和なのか疑問だ
白川総裁の日銀を批判してきた人も、だんだんと現実の制約を考慮せざるをえなくなり、白川日銀とさして違いのない手段しか取れないだろう。

岩田副総裁は『準備預金の残高を80兆まで増やせば、インフレ期待は2%まで高まる』と述べているが、本当にそうなるか結果を見守りたい。その後もお手並み拝見といきたいところだが、実験場のど真ん中で生活しているような立場なので、いつまでも傍観者ではいられない。特に、やらないはずの財政ファイナンスに結局、ずるずると陥っていかないか危惧している。

金融政策や財政政策がうまく機能したとしても、基本的には時間を買う政策だ。これまで何度も時間を買ってきたが、買った時間を浪費するのがこれまでの日本の基本パターンだった。次は日本の成長力をどう引き上げていくかという問題に直面する。

そもそも金融政策だけでデフレから脱却できるかのような議論については、そこは信念を持って間違いだと主張したい。」

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