2013年3月23日土曜日

『池上彰の政治の学校』 (朝日新書)



私は、政治に関しては素人なんですが、この本はとてもためになりました。

「実はこの審議会こそ、官僚主導を支える重要な仕組みの一つなのです」

「役所が独自の基準で、審議会のメンバーを『選ぶ』ということはどういうことか。つまりこれは、『審議会』というのは名ばかりで、委員を選ぶ段階で、その審議会の結論は決まっているということを意味します」

「推進派と反対派、そして中立派がバランスよく揃うようにはします。けれども、反対派といっても、極端な人は呼びません。それをしてしまうと、審議会が空中分解してしまうから、原理主義者のような人は外しておく」

審議会の答申を大臣に手渡す前に、官僚は記者クラブで事前レクチャーをする。記者クラブに属するメディアは事前に原稿を書いておいて、答申が提出されたところで記事を発表。「なぜ官僚がこのようなことをするかというと、誤解されたままの記事を書かれたくないからです」

「彼らの問題意識は、自分達が作った無数のシナリオの中から、どうやって自分達がもっとも良いと思うものを実現させるかにあります。そのときに、絶対に必要なのが『いろいろな国民の意見を聞きました』ということなのです」

「日本最大のシンクタンクはどこか。そう聞かれれば、やはり『霞ヶ関』と答えるしかありません。...本来の政治主導は、政治家がすべてを動かすということではありません。政治家の仕事は『大方針を決める』ことです。そして後は官僚たちに任せる」

橋下氏が支持を集める理由は「橋下氏ならば、今の日本の閉塞感を打ち破ってくれるに違いない。国民がこのように期待していること。これこそが橋下氏の支持の源泉なのです」

「低所得者にとって優しい社会とは言えない『小さな政府』を目指す小泉氏を、小泉改革によってもっとも痛みを受ける低所得者層の人たちが支持しました。彼らはただ今の世の中に不満を持っていました。何かに虐げられているなと感じていた。だから現状の政府を攻撃して、力を奪うべきだと考えたのです」

「しかし恐ろしいのは『とにかく今とは違った状況を作ってくれ』という要求を繰り返していても世の中は改善されないだろうということです。有権者側も具体的に『このような世の中を作ってほしい』と発信して、その一方で有権者が求める世の中を作ることができる政治家を育てていかなくてはいけません」

「政治家が民衆の人気取りに走ってしまい、本当に必要な政策を実行しない。そして民衆もそれをとがめることができない。それがポピュリズム(衆愚政治)の基本的な症状です。菅直人は、この現代版ポピュリズムに翻弄された典型例でした。目先の支持を求めて突然『脱原発を推進します』と言ってしまう」

「小泉氏の場合は、総理大臣になる前までは靖国神社などにまったく関心がなかったのに、『中国からの圧力に負けない強い政治家』を表現するために総理大臣になってから参拝を始めたわけです。これはあきらかにポピュリズムです」

「中曽根康弘氏は、昔から靖国神社に参拝していたし、総理大臣になっても靖国神社に参拝していたけれども、そのことで中国との関係が悪くなったので参拝を控える判断をしました。これはポピュリズムではありませんね」

「ポピュリズムは、政治につきものの宿痾です。国民の支持がなければ政治はやっていけません。けれども、これは民主主義のパラドックスなのですが、国民に媚びるような行動を取っていては、国にとってよい政治はできません」

「『明日の国のことを考えるのが政治家で、明日の自分の選挙のことを考えるのが政治屋だ』という有名な言葉があります」

「今の日本が閉塞感に満ちていて、重苦しい雰囲気が覆っている最大の原因は、国民が政治に対して絶望感を持っているからだと思います」


一票の格差問題については、「自民党というのは基本的に農村部、地方を代表する党で、議員の多くは地方選出議員でした。だから都市部の人口が増えても選挙制度をいじりたくないのです。自民党が選挙区改正を渋っているうちに一票の格差が広がる構造になっていったのです」

農村部から選ばれた議員が多い。農村部には高齢者が多いから高齢者の支持を受けて選ばれた議員が本来の人割合で選ばれるよりも多い。政治家は議員になった後は自分に投票してくれた人のために働くから、高齢者のために働く議員が相対的に多くなる。

「いくら若者の雇用を何とかしなくてはならない、若い人が子供を産みやすい環境を作らなくてはならない、といったところで、若い人たちは投票してくれないわけですから、政治家としてはどうしても政策実現の優先順位が下がります」


0 件のコメント: