2016年2月11日木曜日

日経2/8、経済教室「マイナス金利の功罪 上」 植田和男


日経、経済教室、植田和男さんの「マイナス金利の功罪:『現金の金利ゼロ』、効果制約」。植田さんの言う通りです。

「08年のリーマン・ショック以降の非伝統的金融緩和政策の一つの限界は、金融資産価格が金融政策に強く反応してきたにもかかわらず、実体経済の資産価格に対する反応が鈍いことである。

日本だけでなく、ベースマネーが大幅に拡大した欧米でも賃金や物価上昇率の動きは停滞している。マネーの伸びが高まれば、2~3年程度の期間でそれにほぼ見合ってインフレ率が高まるという貨幣数量説は、ここ数年の経験の説明には無力だ。

欧米で非伝統的金融政策に対する実体経済の反応を限定的にしてきた一つの要因は、世界的金融危機の後遺症だろう。金融危機後のリスク回避的な動きは、金融政策の効果が期待できる金融資産投資では和らいだが、実物資産投資ではまだ続いていると考えられる。

深刻な金融危機をはるか前に経験した日本では、むしろ長引いたデフレによるインフレ期待の低迷や人口減少に伴う成長期待の喪失が足を引っ張っているといえよう。

もう一つ、市場が感じた金融緩和策の限界は、緩和手段が底をつきつつあるのではないかとの懸念だ。そもそも最近の量的緩和策などは、政策金利がゼロに接近し、それ以上は下げにくいという制約の中で採用されてきた工夫だ。

欧州に続き日銀が採用したマイナス金利政策にはどの程度の可能性があるのか。大きな問題は、現金の金利がゼロである以上、その他の金利をあまり大きなマイナスにはできないという点だ。人々がマイナス金利の資産から現金にシフトしてしまい、マイナス金利の波及効果を弱めてしまうからだ。

マイナス金利の経済への影響については不透明な面が多い。国債買いオペと相まって、国債金利、さらには高格付け社債金利などには強い押し下げ圧力が働くだろう。しかし貸出金利、実物資産投資などへの波及効果は欧州の経験をみても不確かだ。」

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