日経、日曜日に考える。マイナス金利の経済への影響について、従来この政策を提唱してきた賛成派の岩田一政氏と、反対派の池尾和人氏の意見を併記している。
岩田氏によるとマイナス金利が景気を刺激するメカニズムとして2つ。1つは金利低下で企業投資や個人の住宅購入など経済活動が刺激される。もう一つはリスク性の資産の購入が増えて、市場環境を好転させるルート。
岩田一政氏がマイナス金利を推す理由も、今の量的・質的緩和だと2017年6月に長期国債の購入が限界に達するからでしかないようですね。岩田氏のいう効果って、もうすでにほとんど出尽くしている気がする。
個人的には、池尾和人氏とまったく同意見ですね。
池尾 「黒田総裁が言うように、金融政策に『できること』はまだあるだろう。ただそれは『有効な手段』がまだあるということを意味しない。『有効な手段』とは、効果が副作用をそれなりに上回り、経済を好転させるような政策措置だ。マイナス金利政策がそれに該当するのかには疑問がある。
今回の決定は、緩和策をさらに進めても有効性はあまりないという金融政策の限界を示したというのが実態だろう。量的・質的緩和をさらに『進化』させるのではなく、『退却』のシナリオを考えた方がいい
過度の円高防止はともかく、さらなる円安促進が今の日本経済にとってどの程度プラスなのかには議論の余地がある。原油価格などの下落のメリットを素直に享受した方がよいのではないか。
日銀当座預金の金利がマイナスになれば銀行の収益に何らかの悪影響が及ぶはずだ。それによって個人や企業に円滑にお金を供給するという銀行の金融仲介機能が損なわれてしまう懸念がある。」
私もそこを強く懸念してます。
「貸し出しが伸びない本当の理由は、日本経済に成長期待が持てず、信用度が高い企業や個人から十分な資金需要が生まれない点だ。当座預金の金利がプラス0.1%からマイナス0.1%に低下したからといって、銀行融資が大きく増えるとは考えにくい。
一部の信用力の高い企業の資金調達は確かに楽になるかもしれない。しかし、資本市場での調達が難しい中小企業に対しては、銀行の金融仲介機能低下がジワジワと負の影響を及ぼす懸念がある。総じてみれば、こちらの方が重みを持つのではないかと危惧している。その点は看過できない。
問題は、金融政策に追加的な工夫をしても、副作用を上回るような効果が新たに生まれる余地はあまりない点だ。大量の国債購入を進めた量的・質的緩和政策はそのことを示したし、日銀が今回導入した『マイナス金利付き量的・質的緩和政策』も同様の結果にしかならないだろう。
2%物価目標を2年程度で実現するという量的・質的緩和は短期決戦型の政策だった。その意図が実現しなかった以上、持久戦型の枠組みへの転換を考えるべきだ。そうしないと、経済に対する副作用ばかりが大きくなりかねない。」
失敗したプロジェクトを、悪影響を出さないまま早めに終わらせるのはなかなか難しい。ましてや大胆な金融緩和は現政権の看板になってしまっているので、看板を下ろすのは不可能だろうし方向転換も難しそう。
今回の金融政策決定会合で「できること」のプラス面とマイナス面を金融政策決定会合で真剣に議論した結果採用したのかどうか疑わしいですね。最初から票を固めておいての多数決なので、その結果があるべき政策なのかどうか何とも言えない。
マイナス金利導入を発表したのに、円安になるどころか円高になっているのは、黒田総裁周辺の人にとっては相当な誤算なんじゃないでしょうか。まあ、実際にマイナス金利が始まってからの動きに望みを託しているんでしょうが。
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