「ユニクロ帝国の光と影」を読んだ。山口の田舎から出てきて、ファーストリテイリングを世界的企業に成長させた柳井社長には前から興味があった。私は、合理的経営を愚直に実践し続けることで会社を成長させた経営者として、ウォルマートのサム・ウォルトン、ヤマト運輸の小倉昌男さんとユニクロの柳井正さんを尊敬している。
柳井社長とファーストリティリング側からの情報提供量が少ない中で、苦労してまとめた本という印象。柳井社長の父・等に関する情報と中国工場への取材に基づく情報が、これまでの「ユニクロ本」にない新しい付加価値だと思う。
第八章が柳井社長へのインタビューになっているがそれだけでは分量が少なく本として成り立たないので、「一勝九敗」や「成功は一日で捨て去れ」からの引用とか、元社員へのインタビュー、柳井の父・等についてや、中国工場への取材なども加えてある。
柳井社長は影響を受けた企業としてデルをあげているが、オリジナリティよりも「業界の先例を研究してそれに改善を加えるのがユニクロ流」なのはマイクロソフト的だし、大きく成功しているにもかかわらず病的なまでに強烈な危機感を持ち続けているところはビル・ゲイツに似ている。
SPAとはGAPの造語でSpecialty store retailer of Private label Apparelから3文字をとったものだが、この本は、ユニクロが日本で最初の本格的なSPAになれたことが成功の要因と結論づけているようだ。また、小郡商事からのユニクロ商法の原点として(1)返品なしの買取仕入れ、(2)安売りが武器、(3)単品ごとの管理をあげている。
あとは当たり前のことを当たり前にこなしていって成長した感じ。あたりまえのことをあたりまえにするのも難しいのだが。著者は柳井のことを「非情の人」として書きたいようだが、この程度のことはどこの経営者でもやっている当たり前のことだと思う。後継者が育っていないことも、どこの企業も悩んでいる問題であってユニクロだけの問題ではないだろう。
この本では玉塚元社長の更迭を重要な出来事として追っているが、柳井社長の玉塚氏に対する評価は非情に手厳しい。だからこそ更迭したのだろうが。玉塚氏は更迭後に、澤田氏とリヴァンプを設立し、いまはローソンの副社長に就任している。
ブラトップの開発責任者で2008年に「日経WOMAN」の<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>に選ばれた、執行役員の白井恵美氏にいたっては、<周りの人と協力できないし、自分のことをすごく才能があると勘違いしているが、仕事が全くできない人>とばっさり切り捨てている。
ユニクロの柳井社長が尊敬する経営者はウォルマートのサム・ウォルトン、ダイエーの中内功、日本マクドナルドの藤田田。
柳井流の厳しい経営を表す言葉としてよく引用される「泳げないものは溺れればいい」と言う言葉は、実はビル・ゲイツのことを書いた本からの引用らしい。
ファーストリテイリングにおける2010年での株主構成比は柳井夫妻と二人の息子の一家4人で45.8%。
0 件のコメント:
コメントを投稿