低金利通貨が減価しやすいという現象は、多くの先行研究で確認されている。これは、「カバー無し金利平価」と呼ばれる理論と正反対の動きであり、経済学において最も注目されている謎の一つである。
本稿では、4通貨(日本円、英ポンド、スイスフラン、ドイツマルク)の対米ドルレートに対してレジーム・スイッチング・モデルを適用し、為替レートとそのボラティリティ、および、内外金利差の関係について分析した。4通貨に共通してみられた主な結果は以下の通りである。
(1) 為替レート変動のかなりの部分は、金利差との関係の変化に起因する。
(2) 低金利通貨の増価は、減価と比べ、頻度が低いが、発生した場合の動きは速い。
(3) 低金利通貨の減価と低ボラティリティ環境の間には、相互依存関係がある。
(4) 上記(1)~(3)の結果は、為替レート変動の計測期間別にみると、6か月よりも3か月の方において、より明確である。
これらの結果は、以下の様な市場参加者の見方と整合的である。すなわち、低金利通貨安の背後には、短期的な投資を中心としたキャリー・トレードの影響があり、特に低ボラティリティ環境下ではこうしたポジションが構築されやすいが、一旦巻き戻されると低金利通貨は急騰し、ボラティリティも高まり易いとの見方を裏付けるものとなっている。
国際商品市況は、2009年以降、株価との連動性を高めつつ、上昇基調を続けている。その主たる原因を探るために、市況変動についてVARモデルによる要因分解(historical decomposition)を行った。その結果、世界経済の回復に伴うコモディティに対する実需の増加と、世界的に緩和した金融環境の2つが、市況上昇を牽引していることが定量的に確認された。この点は、2008年夏にかけての市況急騰が、証券化商品市場や株式市場など他の金融資産市場からの大幅な資金流入(flight to simplicity)によってもたらされたこととは大きく異なる。また、リーマンショック以降、コモディティと株式の市場間連動(cross-market linkage)が高まっていることに関しては、金融危機に伴う世界経済の大きな振幅が商品市況と株価の共変動を高めた側面のほかに、コモディティの価格が消費財としてよりも投資対象資産として変動する傾向を強めている側面――いわゆる、コモディティの金融商品化――も影響していることが定量的に確認された。
日銀のワーキング・ペーパーはレベルが高いけど、欧米のワーキング・ペーパーの中には、実務に直結した(つまり、いかにお金を儲けるかについて書かれた)ペーパーも多いので、探せばいろいろと参考になるよ。欧米の学者は本気で金儲けしようと考えている人が多いし、あわよくば金融機関に高額で引き抜かれることを狙っている人もいるからね。
3 件のコメント:
はじめまして
金融機関勤務のamnsty(twitter)といいます。
もしよかったら、欧米系でおススメのワーキングペーパーシリーズを教えていただけませんでしょうか?
欧米系だとSSRNとかNBERなどでしょうか。
ご紹介ありがとうございます。
実務に直結したものを読みたかったので、いろいろ探してみます。
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