2013年10月14日月曜日

岩井克人さんの「資本主義を考え抜く」

岩井克人さんの「資本主義を考え抜く」を今さら読んでる。東大経済学部の後、MIT大学院でサムエルソンの研究助手に。MITは新古典派経済学の中心地だった。博論の第1アドバイザーがロバート・ソロー、第2がサムエルソン。新古典派に違和感を感じカリフォルニア大、エール大へ。

『不均衡動学』はアカロフ、トービンらは評価してくれたが、学会全体にはなんのインパクトも与えなかった。岩井氏本人は学者として成功したと思っていないそうだ。

「日本の大学内では、マルクス経済学が圧倒的に優勢でした。近代経済学が強かったのは一橋大、阪大と慶応大くらいでした。東大の近代経済学は館龍一郎先生と小宮隆太郎生成が牽引していました。より若い小宮先生のゼミの門をたたきました」

「小宮先生の明晰さは恐ろしいほどでした。複雑な現実問題を前に、論理的に思考するとはどういうことかを、幸運にも間近に体験できたのです。主流派の学説でも、疑問があれば遠慮なく議論を挑んでいく、その学問への態度に、尊敬の念を抱きました」

宇沢先生は「シカゴ大では、数理経済学の最先端の研究を手がけ、世界で最も光輝く学者の1人でしたが、心は別のところにあるのを、アルコールのにおいの立ちこめる飲み屋で知りました」

岩井氏の最初の論文の査読者がエール大のクープマンス教授で、彼の招きで1973年にエール代経済学部助教授に。

個々の企業の「結果をマクロに集計すると学界を支配している合理的予想理論と「矛盾」します。経済全体の総需要と総供給が乖離するとき、個々の企業の価格を平均した現実の物価水準は必然的にその予想と一致しなくなるからです」という説明は、これだけだとよく分からないなあ。

「それが、スウェーデンの経済学者ヴィクセルが展開した「不均衡累積過程」理論の出発点にほかならず、ケインズが『貨幣論』で提示した「基本方程式」と同等であることにも気がつきます」

新古典派をさらに極端にした学説が主流になっていて、それを否定した不均衡動学は受け入れられず、エール大でテニュアは取れなかったが、アカロフはケインズ『貨幣論』に匹敵すると評価。学部長のトービンが2年間人任期を延長してくれて、その間に東大から声がかかり帰国。

「サーチ理論という数理経済学の手法を使うと、貨幣の存在構造を「貨幣とは貨幣として使われるから貨幣である」という自己循環論法として証明できることに気づき、論文にします。手紙の誤記や編集長交代などによってある専門誌への掲載が駄目になりました」

「好きな研究だけをしてきたので、学界の評価が低いのは仕方ありません。社会的認知は有り難いのですが、後ろめたさもあります」

岩井氏は高2のときにプルーストの『失われた時を求めて』新潮文庫全13巻をすべて読んでる。すごいですねw。奥さんは小説家の水村美苗。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「不均衡動学の理論」において、何箇所かに誤り・誤植があると思います。
数式をフォローしている方と情報交換したいと思うのですが。
Captain

J.S.エコハ さんのコメント...

私は「不均衡動学の理論」は読んでないですね。