2011年12月26日月曜日

米国ファイナンス学会2012

米国ファイナンス学会2012のすべての論文はこのサイトからダウンロード可能(SSRNのアカウントを作る必要があるが、無料で作成できる)。
さっそくキャンベル先生の論文をDL。"Hard Times" (Campbell, Giglio, Polk)。"Hard Times"って、まるでスプリングスティーンの曲名のようで、相変わらずタイトルのつけ方がうまい...
概要:制約なしとICAPMのクロスセクション制約ありのVARで調べたところ2000-2002と2007-2009の株式市場の下落の原因は異なる。前者が割引率の大幅な上昇、後者は将来利益の合理的期待の減少。後者は、リターン改善で相殺されないので特に合理的な長期投資家にとって深刻だ。

2011年12月7日水曜日

「すべて僕に任せてください」 今野浩

大学・大学院のどろどろとしたことが実名で書かれている。大学・大学院の先生の大変さは社蓄を上回る。
「これからは、1800時間以上は働かないようにして下さい」 3500時間働いているモーレツ教授は憤慨した。「1800時間?! 何を寝ぼけたことを言っているんだ。そんなことをしていたらMITに勝てない!」
なかなか論文が増えない白川さんに「君、まさかジャーナル・オブ・ファイナンスとか、エコノメトリカなんかに出したんじゃないでしょうね!」
IBM東京基礎研究所に勤める二宮祥一氏の招聘にさいして「おかしな奴が連れてきたからといって、おかしな奴とは限らない」
企業との共同研究なのに「あなたたちのように、規制で保護されてきた人とお話ししても、時間が無駄になるだけです」
「このとき文部省は、一橋大と京大を東西の金融工学の中心と位置づけ、一橋に対して近い将来、東工大の『理財工学研究センター』と合併するようアドバイスしたようである。」
「50歳までは無理だということは、自分でもわかっていたはずですよ。それを知っていて、生きている間はトコトンやろうと思ったんですよ。そういう奴です」
「日本の確率論は、戦後一貫して世界のトップを走ってきた。そして白川が尊敬する楠岡成雄氏は、大御所伊藤清教授の薫陶を受けたチャンピオンである。つまり確率論の世界的権威なのだ」
「済みませんが、もう少しわかり易く抽象的に説明して頂けませんか」 (東大工学部を代表する数理工学者森口繁一教授が、ある工学上の問題について東大数学科の看板教授吉田耕作氏に相談を持ちかけたときの吉田教授)
「実務家の関心は研究結果とその実効性だけで、途中の細かい話はどうでもよい。一方、大学の研究者たちの関心事は「細部」である。専門誌に発表される100編の論文のうち95編は、誰かがやった研究の細部を変更して、”新しい”と称する結果を導いたものである」
いろいろと裏話が聞けておもしろい。「天才は才能を浪費する」んですね。

2011年12月5日月曜日

金融数理の基礎 第9回

確率空間
  • Ω:a set、F:Ω上のσ-加法族、 P:F→[0,1](確率測度)
  • 確率測度はLebesgue測度を[0,1]に制限したもの。
確率変数
  • B:R上のBorel集合族(開区間や閉区間を全て含む最小のσ-加法族)
確率分布

2011年11月19日土曜日

金融数理の基礎 第7回

3つの収束定理
  • Fatou's lemma
  • 単調収束定理
  • 優収束定理(Lebesgueの収束定理)

金融数理の基礎 第6回

Lebesgue可測関数
  • 単関数(simple function、step function)
  • 非負可測関数
第四章 Lebesgue積分
単調収束定理
  • Lebesgue積分は単関数を下から近似していくイメージ
  • Lebesgue積分は単関数の場合には成り立つことが大事 → 極限として一般化
可積分関数(integrable function)
  • 負の場合は注意が必要。+∞、-∞ではルベーグ積分できない。

金融数理の基礎 第5回

第3章 可測関数(measurable function)
Lebesgue可測関数
  • 単関数(simple function、step function)
  • 非負可測関数

金融数理の基礎 第4回

第2章 測度 2つのアプローチ
(1)measureというものの一般的公理
(2)R上のLebesgue測度を導入
零集合(zero set) "ε"で論じる話
  • 1点集合は零集合、可算集合(濃度がアレフ・ゼロ)は零集合。可算集合の可算この和集合も零集合。
  • 非可算集合でもCantor集合は零集合
(Lebesgue)外測度
  • 被覆。区間の外測度はその長さに等しい。
  • 外測度は可算劣加法的である。
Lebesgueの可測集合とLebesgue測度
  • 集合がLebesgue可測であるとは。
  • M(σ-加法族)の基本的性質。可算加法性。
  • 開集合、閉集合はLebesgue可測。
  • 有限集合、N、Q、R\QもLebesgue可測
  • 素朴に測りたいもの → Borel集合族
  • Borel集合族+zero setの集合=M (Lebesgue測度)

金融数理の基礎 第3回

集合に関する計算規則
集合の直積(product)
集合族(集合の集まり)
  • べき集合(power set)
濃度(power)
  • 全単射が作れるなら濃度は等しい。
  • 自然数、有理数の濃度はアレフ・ゼロ。
  • Bernsteinの定理
  • 実数の濃度はアレフ1。非可算濃度。連続体仮説。選択公理
位相空間


2011年11月12日土曜日

Visual Studioのプロジェクトのコピー

MicrosoftのVisual Studioでプログラムを開発しているのだが、前に作ったプログラムに似ているけどちょっと違うものを作りたいときがある。そういうときは古いプロジェクトを別のフォルダに物理的に丸ごとコピーしてプロジェクト名を変えた後、".vsproj"、".sln"のファイルをテキストエディタで開いて、プロジェクト名とnamespaceらしきところの名前を修正するとうまくいった。

2011年11月7日月曜日

行列指数関数の積分

債券のモデルを連続時間でモデル化してカルマンフィルタによる最尤法でパラメータ推定をすることがある。その場合、途中で行列指数関数の積分計算を何回も計算する必要があるが、この積分を行列指数関数で求めるテクニックがある。


2011年11月6日日曜日

加茂ゴルフ倶楽部

out 58, in 67, total 125。ティーの高さを低くしたことでドライバーが少し改善したことが収穫。フェアウェイはところどころ荒れていた。グリーンはきれいだが角度がつけてあって難しい。アプローチ、バンカーの練習場もあった。カートは自分で運転するやつ。
ドライバーが少しまともに当たりだしたせいで、OBも増えて、ロストボールも増えたw。ボールを捜す時間も増えた。
カーナビのデータが古くて木更津北で降りて遠回りをしてしまったが、木更津東まで道が伸びているのでそこまで行ったほうが早い。初めての海ほたる&アクアラインだったが、運転していて見る余裕はなかった。
ゴルフはちゃんと練習したいのだが、なかなか時間が取れない...

2011年10月22日土曜日

「ユーロ 危機の中の統一通貨」 田中素香

2章にユーロ導入までの道のりが書かれている。通貨統合を決定的にしたのは「ドイツ統合という戦後の世界政治の大転換であった。」
通貨統合前の西ドイツの「世論調査では常に60%以上が通貨統合に反対であった。」
「『EC統合とはドイツ問題である』といわれた。ドイツは20世紀、イギリス、フランスの植民地帝国主義に対抗して中欧地域に覇を唱え、二度のヨーロッパ戦争・世界大戦の口火を切った。EC統合は第二次世界大戦後に西ドイツを西欧に包摂して、仏独不戦体制の構築を目的にスタートした。ECとは西ドイツを平和のうちに西側体制に包摂するための知恵と努力の結晶であった。」
しかし1989年11月のドイツ再統一によって欧州情勢は全面的に転換した。主権を回復したドイツがECを離れてソ連(あるいはロシア)と取引し、再び中欧に支配権を確立するような次のヨーロッパ戦争につながるかもしれないという警戒感がEC各国を支配した。
「イギリス・サッチャー首相とフランス・ミッテラン大統領はドイツ統一に反対したが、ソ連の再強化を警戒したアメリカは強く統一を支持し、ソ連のゴルバチョフ大統領も統一に反対しなかった。米ソが支持するとなれば、イギリス、フランスが阻止するのは不可能であった。不可能とわかると条件闘争になる。
EC諸国はドイツ統一を無条件に承認し、東ドイツを即ECに迎え入れ、また西ドイツの中央銀行制度を模範に通貨同盟を組織するという約束をした。その代償としてドイツはマルクを放棄し単一通貨を採用する。マルク放棄とドイツ財政のECレベルでの規制によって「独り歩き」を封じる。
この取引をコール首相に代表されるドイツ支配層は受け入れた。ドイツ財務省の手になる当時のユーロ解説文献には、「マルクを放棄する以外に統一ドイツが他のEC諸国に受け入れられる道はなかった」と書かれている。
マルク放棄を決意した西ドイツ政府は、統一通貨を西ドイツ風に制度化することを要求した。統一通貨はマルク同様に物価安定を目標とすること、欧州中央銀行制度は西ドイツ連銀制度をモデルにすること、などである。ECBの所在地がドイツの金融センターであるフランクフルトに決まったのも、その一環と考えられる。」
「ドイツ統一がなければ、あれほどすんなりとドイツ型の通貨同盟が受け入れられることはなかったであろう。通貨統合を時代の風が後押ししていたのである。そしてこのことは、ユーロが『政治的通貨』というDNAを継承していることを物語っている。
さらにコール首相の決断が非常に重要であった。コール首相は世論調査の結果が通貨統合に不利であってもまったく動揺しなかった。『欧州統合は平和か戦争かの問題だ』と繰り返し、世論を押し切った。統一ドイツが統一通貨の制度に組み込まれなければ、また戦争に向かうかもしれないという危機感をもっていたのである。ドイツ南部で敗戦の日を迎えた若きコールは鉄道が麻痺していたため故郷の街まで徒歩で帰ったのだが、その途上で見たドイツの町々は空襲で見るも無惨に破壊されていた。『ドイツは二度と戦争をしてはならない』と念じて彼は政治家になった。」
2010年6月に開かれた80歳の祝賀会においてコールは「ドイツ人がドイツのことだけを考え、ギリシャやユーロ圏全体のことを考えないことに警告を発した。戦争体験世代が政界からいなくなった21世紀のヨーロッパに危機感を抱く人は少なくない。」


「メジャー級アメリカ経済学に挑んで 佐藤隆三」(2)

佐藤隆三名誉教授はクルーグマンとは30年間におよぶ家族ぐるみの付き合いだそうだ。「彼は伊豆の私の別荘の岩風呂が気に入り、それ以来すっかり温泉および”日本式フロ”ファンになってしまった」そうだ。

「筆者が米国で博士号を取得したころ、『3S』の語が流行していた。日本の学者が国際会議に参加した折の言動を揶揄したものだった。日本人の学者は国際会議で一切発言をしない(Silent)。話しかけられると黙って笑うだけ(Smile)。そして会議中はほとんどウトウト寝ている(Sleep)というものだ。国際会議のあとで日本に帰国すると、彼らは、鞄一杯につめた英語の資料や論文を直ちに翻訳してその国際会議に関する報告とする。昔の学者の英語力はこの程度のものだったらしい。」
「数学の授業には英語の表現力はあまり必要ではない。米国人の友人の話によると、日本人のT教授は優秀な数学者だったがその顔はほとんど憶えていない、という。教授は授業中は黒板に向かって黙々と数式を書き続けて、学生の方を向いて物を言うことはほとんどなかったというのだ。」
「スタンフォード大学でPh.D.を取った米国人の若い助教授が、あるアイヴィー・リーグ校に就職した折、入門コースを教えさせられて、いきなりポントリャーギンの最大値原理を使って、資源の最適配分の理論を教え始めたらしい。このことで学生が学部長に訴え出て大騒ぎになったというエピソードもある。それ以後は、入門科目は若い助教授に任せるのではなく業績のあるシニア・プロフェッサーの担当とした学部もある。」
「米国の入門教科書は、サミュエルソンのEconomicsをはじめとして、ほとんどすべてが部厚くて重い。日本語の薄い教科書とは対照的だ。これにはちゃんとした理由がある。米国の入門コース担当の教授は、目の前にある山のような教材を、いかに要領よくかいつまんで学生に教え込むかに工夫を凝らす。自信のある学生はクラスのペースに加えて、部厚い教科書を自力で全部読破することも許されている。つまり部厚い教科書は必要とされる教育のアプローチすべてを網羅していて、入門担当教授の腕の見せどころは、どう最重要箇所を拾い出していくか、なのである。
日本の場合、教科書とは通常、膨大な学問の中の、ほぼアウトラインに等しい。担当の教授が時には名人芸を使って、肉付けをしていく。教科書にない知識をクラスの学生の能力に合わせて補足していく。このやり方如何に教授の人気や名声がかかっている。」

日経の【投信ウオッチ】 「クオンツ型が首位に」

2011年10月20日の日経夕刊【投信ウオッチ】に過去5年間の代替投資型の騰落率ランキングが出ている(「クオンツ型が首位に」)。1位は「クレディ・スイスGTAAファンド(CSアルファ)」
クレディ・スイス投信っていつのまにかアバディーン投信投資顧問になっていたのか!...
代替投資型2位は『大和住銀ジャパン・スペシャル ニュートラル・コース(ヘッジあり) :愛称「ギアチェンジ」』先物で常にショートしているのね。ちゃんとアルファを生み出していて感心...
また22日の【日経朝刊】には「ヘッジファンド1.6兆円流出」「株・商品安で成績悪化」の記事。北米89億ドル、欧州72億ドル流出。「世界のヘッジファンドの運用残高は9月末に1兆7644億ドル」となった。マンは26億ドル流出、ポールソンは9月の下落率2割で年来5割、GSはクオンツHFを償還。

2011年10月20日木曜日

ベクトル自己回帰モデル (VAR)

今日の日経・経済教室でノーベル賞を取ったシムズとサージェントの業績が解説されていました。シムズが提唱したVARも注目度が上がっているようです。そこでVARに関連した本を紹介します。
私が初めてVARを知ったのは北川源四郎の「時系列解析プログラミング」でした。私にとってはバイブルのような本で、いまでもしばしば参照します。この本は現在絶版ですが、モンテカルロ・フィルターの章を加えて、Fortranのコードを除いた形で「時系列解析入門」として発売されています(コードは著者のウェブからDLできる)。右の本はAICで有名な赤池弘次の「ダイナミックシステムの統計的解析と制御」です。日本でおそらく最初のVARの応用であるセメントキルンの制御を題材にVARが詳しく書かれています。
「時系列解析の方法」は時系列分析を概観した入門書です。ここまでは工学系の本でしたが、「経済の時系列分析」は時系列分析の経済分析への応用に関して書かれた比較的初期の本です。
経済への時系列分析の応用を念頭に書かれた本としては、やはりハミルトンの「時系列解析」がバイブルといえます。日本語訳は絶版のようですが、英語版はまだ売っています。分厚いので、持ち運ぶ気にはなりません。

実際に、時系列モデルで経済を分析した本としては宮尾龍臓の「マクロ金融政策の時系列分析」があります。係数に制約を置いた「構造VARモデル」を利用したさまざまな分析が載せてあり、大変参考になります。Juseliusの「The Cointegrated VAR Model」は共和分VARモデルを使った経済分析の手法が丁寧に解説してあります。
VARモデルは、今ではEViewsなどの計量分析ソフトにはデフォルトで入っているので簡単に利用できます。

2011年10月19日水曜日

「メジャー級アメリカ経済学に挑んで」佐藤隆三


米国経済学界のエピソードを楽しみながら、50年にわたる経済学の変遷を俯瞰できる
第Ⅰ部が「米国経済学界の50年」で米国経済学界のエピソードを楽しみながら、50年にわたる経済学の変遷を俯瞰できる。第Ⅱ部は「日米経済の50年」で日米経済摩擦、日米の政治家、企業家の話題が語られていて興味深い。第Ⅲ部で「震災後の経済政策」として著者の研究を生かした日本復活へのメッセージが語られる。
個人的には第Ⅰ部が特におもしろかった。米国の経済学者、大学・大学院のエピソードが豊富に紹介されており、米国で経済学・ファイナンスのPhD取得を考えている人には大変参考になる。
50年にわたる米国の経済学の変遷を俯瞰できる。「戦後の経済学の潮流は二つに大別することができる。一つはゲーム理論化の流れで、もう一つは動学的最適化である。」
MIT・ハーバード学派とシカゴ学派の対立。サミュエルソンを中心とした錚々たる交友関係に圧倒される。スティグリッツ、マートン、ブラインダー、シーゲル、シラー、クルーグマン、フィグルスキー、サミュエルソンの実弟ロバート・サマーズとその子息ラりー・サマーズ。ソロー。クズネッツ、ヒックス、レオンチェフ、トービン、モジリアニ、フォーゲル、ミラー、スペンス、ヴァーノン・スミス、エングル、マスキン。ほとんどがノーベル賞受賞者である。
マートンはコロンビア大学の学部で数学とエンジニアリングを専攻した後に、カリフォルニア工科大学で応用数学の修士を取った。マートンの父はサミュエルソンの親友。「MITのPh.D.プログラムに入ったのはサミュエルソンの薦めによるものだろう。」
サミュエルソンの「経済分析の基礎」の訳本で教授の名前を(サミュエルソン本人の希望により)サミュエルソンとしたところ、「サムエルソン」としていた都留教授から「なぜサムエルソンをサミュエルソンと変えたのか」と突然電話がかかってきたそうだ。この裏話をシンポジウムで披露すると、スティグリッツやクルーブマンたちが、われわれの日本語表記はどうなっているのか心配になってきた、と言い出して一般参加者の笑いを誘った。
サミュエルソンが熱海で迷子になったとき「後ろから見ると日本人は全部同じに見えた(だからお前を見失ったんだヨ)」と言っていた。
サミュエルソン教授の持論は「天才と凡人の差はその集中力の差に過ぎない」
米国大学受験と留学の現状。学部の入学プロセス。「米国の一流名門校に入るためには、名門高校のトップ10番以内の成績をとっていること、そしてSATで満点もしくはそれに近い高い点数をとっていることが必要となる。」例外的な枠として、「同窓生子弟の枠、マイノリティーの枠、そして大金持ち・有名人の枠等がこれに当たる。」
米国のトップ名門校はまずアイヴィーリーグ八校。ダートマス、ハーバード、ブラウン、コーネル、イェール、コロンビア、プリンストン、ペンシルバニア。ほかにMIT、ジョンズ・ホプキンス、ニューヨーク(NYU)、カーベギーメロン、デューク、シカゴ、ノースウェスタン、スタンフォード、カリフォルニア大バークレー校、UCLA、ミシガン、ミネソタ、ウィスコンシン、やや劣るがライス、テューレーン。
「大学院のしくみ。米国の私立名門校には日本の大学院との決定的相違点がある。それは、学部卒業(学士号取得)後、いきなり博士号(Ph.D.)取得プログラムに入ることである。つまり日本式な博士課程前期(修士)、博士課程後期(博士号)がないことである。ちなみに博士号Ph.D.はDoctor of Philosophyの略だが、日本で通用しているドクターコースの呼名ではなく、あくまでPh.D.コースと呼ばれる(ドクターコースというと医者のコースと勘違いされる)。
日本の学生が米国の一流校の大学院に留学希望する場合、競争相手は全米大学の学部をトップで卒業したばかりの学士号保持者である。その多くは前述のアイヴィーリーグ等の一流校の卒業生で、学部時代には経済学は言うに及ばず、物理、高額、コンピューター・サイエンス、数学、応用数学を専攻した学生達だ。初めから学部卒業後、就職の道を選ばないで学者になろうとしているアンビシャスな人々である。」
「学部レベルではカネがあれば入学も可能だが、一流の大学院となると、もうカネは物を言わなくなる。これこそが米国の知的社会における徹底した実力主義を示している。」
「五十年前に筆者がPh.D.コースに留学した頃は、東洋人の留学生といえば日本人と決まっていた。いまはだいぶ事情が変わってきた。東洋人で最も優秀なのは中国人、韓国人、インド人で彼らは日本人よりも勉強熱心だ、との印象が定着している。それはGREやTOEFLのスコアが平均的に日本人より高く、GREの数学部門で満点の学生も多いからだ。」
留学のための五箇条
「第一に、GREやTOEFLのスコアを何が何でも満点を目標に伸ばすことである。第二に、日本のいまの制度から、博士号前期は日本の大学院で過ごし、その期間にたとえ数理経済の分野に進む意思のない者も、数学と理論の実力を養っておくことである。」
「第三に、日本からの留学生は、学部を出たばかりの米国人学生と比べても年齢も上で大学院生活の経験もある。その有利性をいかに示すか、博士号前期(修士)や後期で習得した研究を一つの論文にまとめて入学願書の添付することだ。」
「第四に、どこの大学を選ぶかがポイントになる。すべり留めとして一流大学以外を一つか二つ選ぶのが無難だ。また、日本の教授が個人的に推薦してくれる等のきっかけとひっかかりがある大学を選ぶことだ。」
「第五に、自分の能力を正確かつ正直に書いてくれる人を推薦者としてえらぶこと。ブラウン時代に日本の首相の推薦状を提出した学生は、即刻不合格になった。」
Who's Who in Economics(主要経済学者名士録)に選ばれることとノーベル賞との関係やノーベル賞の選考過程、豆知識なども語られている。「正式にはノーベル経済学賞の名称はどこにも存在しない。経済学賞については、1968年にスウェーデン中央銀行が創立300年を記念して基金を寄付し設置したものである。正式な賞の名称は「経済科学に対するアルフレッド・ノーベル記念スウェーデン中央銀行賞」である。」ハイエクとミュルダールは「ノーベル経済学賞」に反対していたそうだ。貰うべき人で漏れている人などについても語られていて興味深い。
ノーベル経済学賞を目指している人は特に必読かも...。

2011年10月15日土曜日

金融数理の基礎 第2回

集合
  • 集合とは、外延的定義、内包的定義
  • 無限集合:自然数N、整数全体Z、有理数Q、実数全体R
  • 空集合(empty set)。 
集合の基本的演算
  • 部分集合、互いに素(disjoint)、和集合、差集合、対称差(symmetric difference)
  • 論理規則としての分配率
  • 集合の計算規則:可換則、結合則、分配則、de Morganの法則
  • 空集合は全ての集合の部分集合。
写像(map)
  • 任意のx∈Aに対して、あるy∈Bを1つ対応させる規則fを「AからBへの写像f」と呼ぶ。
  • B=Rのとき、fを関数(function)と呼ぶ。
  • 逆像(inverse image):大事。逆像のほうがきれいなことが多い。可測などの話に繋がる。
  • 逆像は一般に、写像ではない。
  • 単射(injection)、全射(surjection)、全単射(bijection)
  • 写像と集合の計算規則
区間
  • 開区間、閉区間

関数解析:位相に関係する言葉

位相に関係する言葉の定義をノルム空間に則した形で復習。

閉集合 Xの部分集合Aが閉集合であるとは、Aの集積点がすべて、Aに属することである。
開集合 Aが開集合であるとは、Aの補集合A^c=X\Aが閉集合であることである。これは次のことと同値である:任意のa∈Aに対して、δ>0を十分小さくとればB(a, δ)⊂Aが成り立つ。
閉包 Aを含む最小の閉集合をAの閉包という。記号ではA ̄またはA^aで表す。Aの閉包はAにAの集積点を全部付け加えたものである。
緻密 A ̄=Xであるとき、AはXで緻密であるという。AがXで緻密であるための必要十分条件は、任意のu∈XがAに属する点列で近似されること、すなわち、uに対して、u_n∈A, u_n→uであるような列{u_n}が存在することである。また、Aの部分集合A_0がAで緻密であるとは、任意のu∈Aに対して、u_n∈A_0, u_n→uであるような列{u_n}が存在することをいう。
コンパクト集合 ノルム空間Xの部分集合Aがコンパクトであるとは、Aに属する任意の点列は、Aの中に極限をもつような部分点列を含むことである。Aの閉包がコンパクトであるとき、Aは相対コンパクトであるという。
有界集合 Xの部分集合Aが有界集合であるとは、Aの上でノルムが有界なこと、すなわちM≧0を適当にとって、任意のu∈Aに対して||u||≦Mが成り立つようにできることである。
可分 Xの部分集合Aが可分(separable)であるとは、Aの部分集合A_0で、たかだか可算個の点からなり、かつAで緻密なものが存在することをいう。
集積点 一つの集合Xに関してある点Aが集積点であるとは、点Aにどれほど近いところにもXに属する点が無数にあることをさしていう。ただしAが集合Xに属するというのではない。

2011年10月10日月曜日

ノーベル経済学賞にサージェントとシムズ


今年のノーベル経済学賞に、アメリカのニューヨーク大学のトーマス・サージェント教授と、同じくアメリカのプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授の2人が選ばれました。
ちょうど、今月の経済セミナーの「マクロ経済学における動的最適化」の記事で神戸大学の上東貴志教授がサージェントの本を紹介されています。
"Dynamic Macroeconomic Theory" Thomas J. Sargent
「少し古いですが、離散時間モデルの最初の取っ掛かりとして、細かいことを気にせずに読むのがいいと思います」
"Recursive Macroeconomic Theory" Lars Ljungqvist and Thomas J. Sargent
「離散時間モデルを使ったマクロ経済学に関しては、これが標準的なテキストといえますが、最初は多少難しいかもしれません」
むむ、多少というより、相当難しいです...

Ramon Marimonによるサージェントとシムズに関するエッセイ

日経 「ヘッジファンド型投信」

2011年10月10日の日経・資産運用面で「ヘッジファンド型投信」を取り上げている。

「現在は108本が運用されている。リーマンショックからの3年間で比較可能な48本の平均は8%強のマイナスで同期間の日経平均32%下落とくらべると、下げ相場で耐えるという特徴が表れる。プラスは13本。マーケット・ニュートラル好調。住信アセット「LSオープン」(11%、2億円強)、日興アセット「日本株コアα」(7%、5億円弱、来年4月に繰り上げ償還)。他のヘッジファンド型投信も昨年までに設定された投信は大半が100億円に満たない。
投信市場では新興・資源国の資産で運用し、毎月高額の分配金を出す商品に人気が集中してきた。ヘッジファンド型投信は『特に日本株型は期待収益率が低く、資金が集まりにくい』(住信アセット)ことに加え、運用内容が複雑で対外的な情報発信が不十分なことも多い。『収益の源泉が分かりにくいことから、個人に本格的に普及していない』(マネックス証券)
野村アセットの「グローバルトレンド」はシリーズ合計残高が2000億円を超えた。日興アセットの「フォーシーズン」は地銀などが扱う。『個人向け商品で最も大事なのは透明性』(辻村アクティブ運用本部長)との考えから、運用は相場動向が把握しやすい先進国通貨のロング・ショート。
『個人の多くはまだ、ヘッジファンドが資産を守るための商品だと認識していない』(大和証券の関根投信部長)。「『いまもうかりそう』ではなく、『ポートフォリオを組む上で必要』という発想で選ばれるようにならないと定着しないだろう」(福田啓太FP)。」
今年設定の主なヘッジファンド型投信として、他にも『GTE資産成長型(東京海上アセット)』、『GAMエマージングストラテジー(日興アセット)』、『日本株ロング・ショート戦略(ユナイテッド)』、『エマージング・ロングショート(ブラックロック)』など。
注意点として、初期費用・コストが高めなことも指摘。

ファイナンスのための関数解析 第1回

金融数理の基礎の次のコマで隔週で開催予定。Aさんの公開博士ゼミの位置づけ。関数解析は、一回きちんと勉強したいと思っていたので、できるだけ参加したい。
  • 集合(set)、群(group)、環(ring)、体(field)、線形代数、内積空間、ノルム空間、Banach空間、Hilbert空間、カントール
  • 位相空間(topological space)、距離空間(metric space)
  • 測度空間、確率空間
距離空間の定義
  • 単位元、逆元、可換群
線形独立性と次元、基底

金融数理の基礎 第1回

Introductionということで、基礎的な概念の確認。
条件と命題
  • 命題、条件、かつ、または、否定、ド・モルガンの法則
p⇒qの形の命題
  • ならば、逆(命題)、対偶
  • 三段論法、対偶法、背理法
  • 必要条件、十分条件
All(任意の、全ての)とSome(適当な、ある)
  • 「任意の」および「適当な」の否定
命題の真偽表
和分数訳、数文和訳

2011年10月1日土曜日

金融政策と為替レート(翁邦雄)


「経済セミナー」2011年10・11月号(No.662)は「最適化」の特集。また楠岡先生と武隈先生の対談「数学からみる経済学」も載っている。

「金融政策の新潮流」という翁さんの連載は「金融政策と為替レート -為替レート決定理論とソロス・チャート」。
第1節は「為替レートの水準を決めるものは何か:理論的整理」。購買力平価説、マネタリー・アプローチ、オーバーシューティング・モデルを概観。「為替レートの変動は短期的にはモデルでは予測困難なことが次第に明らかになってきた。こうした傾向は円・ドルレートのみならず、主要為替レートに例外なくあてはまり、これまでのところ為替レートを説明する理論モデルの予測力は、いずれも(前期の為替レートを今期の為替レートとほぼ同じと予想する)ランダム・ウォーク・モデルを確実に上回るにいたっていない」
株や土地、為替レートなどの資産価格について「美人投票」原理の問題が起きる。「この場合、投資家にとって重要なのは、本来的な資産の価値(ファンダメンタル・バリューなどと呼ばれる)ではなく、他の投資家が当該資産の価値をどう評価するか、という『予想についての予想』であり、それが実際の資産価格を決めるという意味で自己実現的な性格を持つ。」
第2節は「為替レートと金融政策」で事例研究として「為替レートとソロス・チャート」、「為替レートに対する日米中央銀行の立場」。
「為替レートと金融政策の直接的な結びつきを主張するために、日本でしばしば持ち出されるものとしてソロス・チャートがある。これは、ヘッジ・ファンドの運用者として著名なジョージ・ソロスが考案したとされ、2国間のマネタリー・ベースの比率と為替レートには因果関係がある、とするものである。(中略)この説明はマネタリー・アプローチに沿ったもので、直感的に理解しやすく、為替レートを押し下げようとする日米の金融緩和競争という構図も明確である。
しかし、 (1)マネタリー・アプローチの前提である購買力平価は成立するとしてもきわめて長い時間がかかる(PPPパズル)、 (2)マネタリー・アプローチで念頭に置かれてきた通貨供給量は物価との関連性からM2など広義通貨集計量であり、マネタリーベースではない、 (3)M2と物価の関連性は世界的に低下ないし不安定化している、 (4)マネタリーベースとM2の相関はきわめて低く、マネタリーベースはM2の安定的な代理変数ではない、といった点に照らすと、70年代型のマネタリー・アプローチによる説明には無理がある。」
「もし、円・ドルレートがソロス・チャートに沿って動くことがある、とすれば期待を通じて資産選択に影響を与える経路、すなわち (1)マネタリーベースが将来の金融政策ひいては将来の為替レートの予想値と関連がある、 (2)美人投票的な投資家の自己実現的期待による、という2つの可能性のいずれかが考えられる。」として、以下の点を指摘している。
「(1)為替レートとマネタリーベース比率の間には、概ね相関している時期と全く相関していない時期がある。換言すれば両者の関係はきわめて不安定であり、計測期間の取り方で、相関係数は大きく変化する。
(2)日本銀行が金融政策として量的緩和を行った2003年~2006年は、グラフと為替レートは逆行している。これに対し、バランスシートの拡大が金融緩和の代理変数にはなりえず、金融市場の状況次第では逆相関もありうることをバーナンキが明言した(Bernanke 2009)。
これらの点から、マネタリーベースの比率を購買力平価のように長期に予想為替レートに安定的な影響を持ちうる変数として解釈するのには無理がある。他方、
(1)投資家への説明のしやすさ(マネタリー・モデルは実証的には破綻したが、その直感的な説得性はきわめて大きい)
(2)ソロスのカリスマ性の高さ
などに照らすと、ソロス・チャートが時期によって投資家の自己実現的予言の拠り所として、為替レートに影響を与える可能性は否定できない。」
「ただ、円・ドル相場以外の主要通貨間の為替レートとマネタリーベース比率の関係は希薄で、そのせいかGoogleで検索する限り、英語ではソロス・チャートにあたるものについての議論は、何通りか検索を試みた限りでは、ヒットしなかった。円・ドルに限って自己実現的な予言の拠り所になることがあるとすれば、それはなぜなのか、という点についてはさらに追加的な検討が必要であろう。
このようにソロス・チャートの基盤は脆弱であり、為替投機には使えても、アカウンタブルな金融政策の基盤にはなりえないだろう。」
また、為替のコントロールについては、「米国では実際の介入業務はニューヨーク連銀が行っているが、財務省とFRBが介入権限を持っている。日本では財務省に介入権限があり、日本銀行は政府の代理人として介入実務に携わっているに過ぎない。」

2011年9月25日日曜日

「最初の刑事」 ケイト・サマースケイル

非常におもしろかったです。お薦め。後半がどんどんおもしろくなるのだが、ネタばれになるのでもちろん言わない...
「『探偵小説とは、ハッピーエンドになる悲劇なのだ』とレイモンド・チャンドラーは1949年に書いている。物語の中の探偵は、私達を殺人に直面させることでスタートし、私達を赦免することで物語を終わらせる。探偵は、私達の嫌疑を晴らしてくれる。不明確な状態から私達を解放してくれる。私達を、死に臨む状況から救ってくれるのである。」
ちなみに10月1日のNHK BSプレミアム「週間ブックレビュー」で黒鉄ヒロシさんがこの本を取り上げるようです。この日の特集は池上彰さんの「世界を変えた10冊の本」。

ガメラの着陸シーンは超カッコいい

「ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒」のなかでガメラが回りながら降りてきて、着地寸前に手足から出ている噴射が水平から垂直に方向が変わって、一瞬空中でゆらゆらと静止するときの間が好きです。
このYouTubeの4:48からがそのシーンです。

高速で回転しながら降りてくるガメラ
手足の穴からの噴射の角度が徐々に変わる
噴射が垂直方向になり、ホバリング
背中から姿勢制御のための補助噴射っぽいものが出る。芸が細かい。
顔出し
燃えるハチ公

2011年9月23日金曜日

"There's no place like America Today" by Curtis Mayfield


ミュージックマガジンが山下達郎の特集をしていました。そのインタビューでカーティス・メイフィールドについて語っています。
「カーティス・メイフィールドの『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』。これ一枚。本当に煮詰まったらいつもこれを聴く。このアルバムのみが僕を救ってくれる。」
カーティス・メイフィールドは「People Get Ready」のヒット曲で有名なImpressionsでも活動していました。その後、ソロになって多くのアルバムを発表しています。私はこれまで「MOVE ON UP」というベスト版しか持っていなかったのでが、さきほどアマゾンから『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』が届いたのでさっそく聴いてみます。

2011年9月18日日曜日

高速道路 なぜ料金を払うのか(宮川公男)



今日の【日経読書】に「高速道路 なぜ料金を払うのか」(宮川公男)。宮川公男って、聞いたことがあるなと思ったら、「基本統計学」を書かれた宮川さんか。一橋大学商学部長などを経て統計研究会会長。
「基礎統計学」は一橋ICS用に最初に買った参考書で感慨深い。
菅前政権がはじめた東北地方の高速道の料金ゼロ政策。遠回りして料金逃れをするトラックなどが続出した。その大半は被災地支援と関係がない。
趣旨は悪くない。問題はしくみだ。運送会社を非難するメディアも多かったが、「責められるべきは、お粗末なやり方で被災者を支えられると考えた民主党政権のほうだ。」
「高速無料化は政治家にとって手っ取り早い人気取り策だ。一般道より早く着く恩恵の対価として利用者が払うべき負担を、ほかの納税者につけ回す無料化を、本書は徹底して批判する。貫かれているのは『ただのランチはない』という経済の原則だ。」
「高速道を社会的資産と位置づける著者の考え方への論争の深まりを期待したい。
小泉政権が推し進めた道路公団民営化の迷走もあらためて総括した。高速道路政策を歪めてきた張本人が透けてみえてくる。」
ということで、この本はぜひ読みたい。

2011年9月17日土曜日

上原ひろみをYouTubeで聴く



「上原ひろみ サマーレインの彼方」は上原ひろみを扱ったノンフィクションです。私は単行本を持っているのですが、いまは幻冬社から文庫で出ているようです。
最近はYouTubeにも上原ひろみの曲がアップされています。そのなかからお薦めの2曲を紹介します。

ネット4社共同プログラム 資産倍増プロジェクト専用ファンド


以前から注目していた、「ネット4社共同プログラム 資産倍増プロジェクト専用ファンド」のパフォーマンスをグラフ化してみました。基準価額は三菱UFJの「日本応援株ファンド(日本株) スマイル・ジャパン」が8,364円、DIAMの「新興国中小型株ファンド」が8,423円、「新興市場日本株レアル型」が8,326円です。設定からまだ1、2ヶ月しか経っていないのに既に15%前後、基準価額が下落しており、残念な結果となっています。なぜ、この3ファンドが選ばれたのか首を傾げたくなります。

現在の純資産はそれぞれ5.4億円、8.2億円、5.4億円です。この程度だと、運用会社側としても利益の出ていない水準と思われます。
ネット証券は投信販売において大きなポテンシャルを持っていると思いますが、ネット証券の人たちはまだその自覚がないようです。

2011年9月16日金曜日

1961年からの米国の日次のイールドカーブのデータ

これはありがたい。米国の1961年からの日次のイールドカーブのデータ。89MB注意。下のFRBのウェブサイトからダウンロードできます。

米国イールドカーブのデータ系列の作成法等の解説はこちら(PDF注意)

しかし、89MBのExcelファイルだなんて。圧縮すれば3MBなのに...
日銀も、日本のイールドカーブのデータを整備して提供してくれないかな...
今月は金利モデルとクレジット・スプレッド・モデルの開発に集中

2011年9月14日水曜日

ブルース・コブナーが退職するそうです

ブルームバーグによるとキャクストンのブルース・コブナーが退職するとのことです。

以下、少し引用。
「コブナー氏は13日、運用資産100億ドル(約7700億円)のキャクストン・アソシエーツ(ニューヨーク)の運営をアンドルー・ロー最高投資責任者(CIO、45)に引き継ぐと発表した。同社を1983年に創業したコブナー氏(66)は顧客宛ての書簡で、個人的な理由で年末までに退職する意向を示した。社長で共同創業者のピーター・ディアンジェロ氏(64)も退職する予定だ。」
「キャクストンのロー氏は、ゴールドマン・サックスでロンドンの自己勘定取引事業の元責任者だった経歴を持つ。来年、キャクストンの会長兼CEOに就任予定だ。世界で社員220人を擁する同社の日々の業務運営のため経営委員会を設置する計画だ。ロー氏は、トレーディングのスタイルは常にコブナー氏と似ていて市場を理解し、理にかなわないと思われる場合にはリスクを軽減するなど貴重な教訓を学んできたと語る。ロー氏はインタビューで「大半の業務移行は収益性の不足とパーソナリティーの問題で失敗している。市場の動向を正しく捉えることができなければ、うまくいかなくなる」との見方を示した。」
ローといってもMITのAndrew Loではなくて、Andrew Lawです。

2011年9月10日土曜日

コモディティーズ・セミナー

某証券のコモディティーズ・セミナーに行ってきた。詳細は某証券に悪いので書かないが、いくつかポイントをまとめておく。

米国、ユーロ圏の成長見通しは引き下げるが、中国は据え置く。コモディティの需要においてエマージング市場の比率が高まっており、需要は引き続き強い。一方、供給は生産能力増強投資の抑制から頭打ち。コモディティの需給は引き続きタイトなので、価格は下支えされる。
原油開発の損益分岐点が80ドルまで上昇している。社会不安への対応からサウジアラビアの分岐点はさらに上昇している。
コモディティ・アルファの源泉は(1)先物カーブのスプレッドからのアルファ、(2)主要インデックスのロール・ルールによる取引集中からのアルファ、(3)ファンダメンタルズ分析によるアウトパフォーマンスからのアルファ。
コモディティと他の金融資産との連動性は再び弱まっている。
リビアは政治と治安が空白状態になる可能性が高い。そのためリビアの石油採算再開は困難。
サウジと米国の緊張は高まっている。また、国民の不満を抑えるために歳出を大幅に拡大している。国王の後継者問題も不安要因。
米国は年末の駐留軍撤退の準備を進めているが、イラク国内の紛争は増加している。
イランでは核開発が進行中。
ナイジェリアは不安定で武装勢力の攻撃などにより生産停止リスクが高い。

矢野顕子×上原ひろみ

「矢野顕子×上原ひろみ Recording LIVE IN TOKYO ~Get Together~」に行ってきた。場所は昭和女子大学人見記念講堂。

上原ひろみのピアノは圧倒的だった。繊細でダイナミック。
レコーディング・ライブだったので、録り直しのため”チルドレンズ・イン・ザ・サマー”や”CAPE COD CHIPS”、”ラーメンたべたい”など4曲を2回演奏してくれてラッキー。他に”あんたがたアフロ”、”りんごの唄(?)”、”グリーン・ティー・ファーム”など。”CAPE COD CHIPS”は矢野が歌詞をつけて歌っていた。「詞をつけるのが大変だった」と言っていた。”りんごの唄(?)”は正式名を覚えていないけど、途中で例の”りんごの唄”が出てくる。この楽譜を上原が矢野にFAXしたときに10枚もあることに矢野が驚いたそうだ。

矢野顕子のMCはおもしろかった。上原はほとんどしゃべらない。
 矢野 「ひろみちゃん、そんなにたくさん弾いて疲れない?」
 上原 「ピアノって楽しいですね!」...

上原は、右手でピアノの弦を押さえて、左手で低音のキーを使ってパーカッシブに弾いたりしていた。上原の場合、ピアノは打楽器に近い。
上原はピアノを弾くことが楽しくて仕方がないのだろう。そのエネルギーが観客に伝わってくる。CDもいいが、ライブはもっと凄い。
上原ひろみのような天才と同時代に生きて、生で演奏を聴くことができて満足だ。
上原ひろみを生で見て、自分も今日からピアノの練習を始めようと思ったのは、ここだけの話...

この模様は11/23にライヴ盤『Get Together ~LIVE IN TOKYO~』として発表される。また、この二人による通常のライブ・ツアー「今年は2人でさとがえるツアー」も12月9日から17日に全国で行われる。


2011年8月28日日曜日

「日本電産 永守イズムの挑戦」読了

この本はおもしろかったです。お薦めします。文庫化にあたり、永守社長のインタビューなどが加えてあるので、文庫版を買ったほうがいいです。

「海外企業の場合は、業績の悪い会社を買ってはいけません。海外企業の場合には、高い高級品を買ったほうが、たとえ買収価格が高くても、悪い会社を買ってとんでもない化け物をつかむよりも、リスクが少ない。安物にだまされるよりいいということです。
(資本参加する企業のサイズが大きくなると買収リスクが高まるのでは?との質問に) いえいえ、必ずしも規模の大きいほうがリスクが大きいということはないのです。人材がいますから、リスクはむしろ小さい。むしろ中途半端な規模の会社のほうがリスクは高いと思います。
人材がいれば、こちらが指導してあげれば、それでやってくれます。規模の小さい会社の再建も大きい会社の再建も、同じだけ時間はかかるし、私の労力はほとんど変わらないのです。それなら、大きい会社を買収したほうがいい。」

巻末の「永守重信語録」からいくつか抜粋

「雇用創出こそ企業の最大の社会貢献である。
仕事が達成できない理由に”人が足りない”からというのが口癖になっている幹部がいる。そういう部門をよく観察すると一番教育ができていないし、工夫も不足している。
チャレンジのないところから決して成功は生まれない。何もしない者より、何かをしようとした者を応援する。そんな社員に拍手を送る会社であり、経営者でありたい。
『ノー』の連発からは何も生まれない。『すぐやる』『必ずやる』『出来るまでやる』という、常に前向きな姿勢をもってこそ、すばらしい成果が待っている。」

ジャクソン・ホールでのバーナンキ議長のスピーチ

2011年8月26日にバーナンキ議長がジャクソン・ホールでスピーチを行った。


日曜日の日経にその関連記事がいくつか出ている。

バーナンキ議長「長期の経済成長をもたらす政策の大半は、中央銀行の外側にある」
明確な成果がでなかったQE2。「住宅の非常に深い低迷と歴史的な金融危機」が景気回復を予想外に遅らせる。

カーネギーメロン大学のメルツァー教授「もはや流動性の問題ではない」
米国銀行はすでにFRBに約1.5兆ドルの超過準備預金を保有。リスクを取らない資金が滞留する。むしろゼロ金利の定着による弊害が浮かぶ。

プリンシパリス・アセットのP.マルムグレン社長 「9月のFOMCでQE3の決定はないだろう。(ジャクソン・ホールでも)QE3に対する支持は全くといっていいほどない。『オペレーション・ツイスト』に踏み切る可能性はある。長期金利の引き下げが狙い。FRBのバランスシートを膨らませることにはならない。この手法も全会一致の余地は小さいが、QE3よりは実施しやすい。市場関係者の期待を満足させず、マーケットはしばらく荒い値動きが続くのではないか。ただQE3をやれば人為的に長期金利を押し下げ、インフレ率を高めるなど問題が大きい。政府の財政政策が麻痺しているからといって、FRBがその代替手段にはなれない。2012年秋の大統領選が終わるまでは財政運営が正常化するのは難しいとみている。ユーロ圏の不安定性が最大限の危機。米経済よりも欧州の方が根が深い。」

池尾和人教授 「QE2は長期国債を減らして短期国債を増発するという発行済み国債の満期構成を変更する行為にすぎず、定量的な効果は大きくなかった。」


2011年8月27日土曜日

A Pseudorandom Walk


ツイッターでこの絵が紹介されていて笑った。


この絵をリツイートした人のコメントが " this is painfully accurate " となっていて、余計に笑えた。絵のファイル名がmr_market_is_a_drunken_dirty_old_man.png。
日本もアメリカも似たようなもんですね...


2011年8月26日金曜日

久しぶりの豪雨


今日は、午前中に庭の芝刈りをして、午後はのんびりヨガをやりながら、昨日の疲れを取っていると、突然の豪雨となった。家の前の道が冠水して川のようになっている。隣の家の車用段差プレートが流されていたので、取ってきて流されない場所に置いておいた。電車も何本か止まっているようだ。

久しぶりのゴルフ@佐野ゴルフクラブと佐野プレミアム・アウトレット

駒コース OUT73、IN 60で133。ときどき雨。さすがに久しぶりで前半が悪い。ドライバーが悪い。
帰りのついでに佐野プレミアム・アウトレットに寄る。いろいろなブランドの店がたくさん並んでいる。COACHは全部50%OFFだった。古い財布がぼろぼろになってきていたので、財布を買う。
9/27 IN 65、OUT53で118。

2011年8月20日土曜日

流れ星を「見下ろす」写真

「ペルセウス座流星群をNASAの宇宙飛行士が宇宙ステーションから見下ろして写真に撮り、その画像をTwitterに投稿したということで話題になっている」というニュースをGigazineで見た。
大気圏突入といえば、ガンダムの名シーンだよね。
「大気圏突入に成功するガンダムと失敗するザクの高感度カメラ映像」(嘘ですよ...)
この写真は「はやぶさカプセル大気再突入の地上観測―光学軌道決定と流星研究(藤田和央、はやぶさ地上観測チーム)」の”高感度CCDによるハヤブサ本体とSRCの高感度カメラ映像"です。
ハヤブサにもカルマンフィルタが使われている。
ガンダムの大気圏突入シーンでのシャアのセリフが好きです。
「ク、クラウン。ザクには大気圏を突破する性能はない、気の毒だが。しかしクラウン、無駄死にではないぞ。お前が連邦軍のモビルスーツを引き付けてくれたおかげで撃破することができるのだ。」

池井戸潤 ”下町ロケット”

池井戸潤「下町ロケット」読了。おもしろかった。第145回直木賞受賞作。池井戸の作品は、ハズレがなく、安定しておもしろい。
池井戸は元三菱銀行マン。彼の小説のプロットには銀行と中小企業の対立や中小企業の資金繰りがよく使われる。銀行マンの経験が彼の小説のリアリティを高めている。
そして彼の小説には読んだ後でサラリーマンに希望を感じさせてくれる性質がある。

2011年8月18日木曜日

林 貴志の「ミクロ経済学」

林文夫の"Econometrics"と林貴志の"ミクロ経済学"を同時に読み始めるなど。
林貴志の"ミクロ経済学"の"はじめに"より。
「例えば『市場が完全競争的ならば、そこでの資源配分は効率的である』という命題は厚生経済学の第1基本定理として、ミクロ経済学の主要な『お題目』の一つとされている。もし、これを『市場経済は良い配分をもたらす』と解釈したならば、大間違いである。肯定的に取ろうが、否定的に取ろうが、である。ミクロ経済学は社会に関わる学問であるから、当然そこで用いられる術語には、(中途半端に)日常用語と重なりあうことが多い。これが危険である。『市場経済は良い配分をもたらす』として上の命題を振り回すのも、あるいは逆に『市場経済が良い配分をもたらすというのは嘘だ』として攻撃するのも、両方ともに間違いである。

初級書で留保条件をあえて述べずに結論のみを与えるのは、議論の背後にある前提条件および論証プロセスを読者が顧慮しなくなってしまう危険性をはらんでいる。結果、前提条件を無視して結論を振り回したり、あるいは本来その議論が述べていないことにまで結論を拡張してそれを批判の的にする、というようなことが少なからず行われる。残念ながら、経済論壇では日常茶飯事のことといってよい。野心的な議論は大歓迎であるが、それは同時に、前提抜き・論証抜きの結論を排した『禁欲的』なものでなければならぬ。」

2011年8月14日日曜日

バットモービルが欲しい

これが「バットマン ビギンズ」のバットモービルだ!

このバットモービルを見たいがために、普段映画館に行かない俺が​わざわざ映画館まで行って1人でみたんだよなあ。これが出ている​という理由だけでもバットマン・シリーズのなかで「バットマン ​ビギンズ」が俺の中では最高。映画も良くできているよ。

俺も早くブルース・ウェイン並みの大金持ちになって、趣味で悪い​やつを退治する生活に入りたいよ...

WAVEがHMVへ


近くのモールでCDショップのWAVEが撤退した後に、HMVができていた。がんばって欲しい...
上の左の写真はコレクターズ・エディション~「ジョニ・ミッチェルの肖像」+「ウーマン・オブ・ア・ハート・アンド・マインド」/ジョニ・ミッチェル [DVD]。HMVでこれを売っていたんだよなあ。バラ売りしていたDVD2枚を1セットに。「ウーマン・オブ・ア・ハート・アンド・マインド」はDVDで既に持っているんだよなあ。「ジョニ・ミッチェルの肖像」はビデオでしか持ってなくて前からDVDが欲しかった。まあ、このセットではなく単品で買えばいいか...
上の右はシャドウズ・アンド・ライト[完全版] [DVD] ~ ジョニ・ミッチェル。ジョニ・ミッチェルの最高傑作はこれ。もう、凄いの一言。特にジャコ・パストリアスのベースは凄い!

本屋で「ポスト・マネタリズムの金融政策」(翁邦雄)、「日本文学史早わかり」(丸谷才一)を買って帰る。そういえば「億を稼ぐトレーダーたち」も売っていた。村上春樹訳のチャンドラー「ロング・グッドバイ」って文庫になっているのね。清水俊二訳の「長いお別れ」も好きなので、村上訳を買うかどうか躊躇するな...