2010年5月30日日曜日

コンラッドの「闇の奥」、新しい神話

読んでいて、「あれ、『地獄の黙示録』に似ているな」とおもったら、なんのことはない、『地獄の黙示録』は実は『闇の奥』を基に作られていたのだった。
導入部は私たちという視点だが、本編のほとんどは「マーロウ」が語る構成の一人称。マーロウの視点からコンゴの森のなかで狂っていったと思われるクルツが描かれる。象牙収集などのために欧州白人に黒人が過酷な労働を強いられていることなども描かれる。当時としては衝撃的な内容だっただろう。その衝撃を薄めるためか、あるいはコンラッドの文章のスタイルなのか分からないが、描写が直接的ではなく、あいまで象徴的なときが多い。それでこの小説は難しいという印象を与えるのかもしれない。
神話から多くの戯曲や小説が生まれたように、新しい作品を生み出す力を持つ作品というのがある。例えば、ホメロスの『オデュッセイア』からジョイスの『ユリシーズ』が生まれたように。あるいはハメットの『血の収穫』から黒澤の『用心棒』がうまれたように。
『闇の奥』からもゴールディングの『蠅の王』、村上春樹の『羊をめぐる冒険』『1Q84』、伊藤計劃の『虐殺器官』が生まれていることを考えると、『闇の奥』は現代の新しい神話といえる。
翻訳は丁寧で大変読みやすい。

7 件のコメント:

雷光のぽのうさぎ さんのコメント...

外資系証券のトレーディングにたずさわる者です。金融工学バリバリのお話で、楽しいですね。筆者様は理系のバックグラウンドをお持ちなのでしょうね。
ICSは非常に興味があるのですが、18:20始業は厳しいです。毎日通えますが、その時間に間に合うのはせいぜい週1日、多くて2日です。これでも履修して卒業することは現実的に可能なのでしょうか。

J.S.エコハ さんのコメント...

雷光のぼのうさぎさん、

コメントありがとうございます。外資系証券のトレーディングをされているそうで、うらやましいです。私も外資系証券でトレーディングをしたいです。

実は私は文系です。6年前に新設されたクオンツ部門のリーダーに指名されたのであわてて金融工学の勉強を始めました。ICSに通ったのも独学では限界があると感じたからです。

ICSは本当にお奨めです。教授陣は日本のトップレベルです。国立なので安いです。1年目のゼミが月曜の18:20からですが、それ以外の授業は20:00からの授業をうまく選べば卒業に必要な単位は取得可能だと思います。

是非、具体的に検討されてはいかがでしょうか。

雷光のぽのうさぎ さんのコメント...

さっそくのコメントありがとうございます。

実は筑波も考えたのですが、原則は毎日通学で2コマ連続受講とのことなのであきらめました。上司と相談して検討してみます!

それにしても文系出身とはとても思えないほど、しっかり研究されているのですね。なかなかここまではたどり着けないと思います。私も文系なので勇気が出ました。
会社の評価体系など難しい点もおありのようですが、外資系のクヲンツなどぜひアプライされることをお勧めします。ポジションがあればディレクターレベルでの採用も十分可能性があると思われます。

J.S.エコハ さんのコメント...

そうですね。いつか外資系のクオンツにアプライしてみたいと思います。あるいは自分でヘッジファンドを始めるか。

ICSは受験のときに上司の推薦が必要だと思いますので、上司の方とじっくり相談されたらいいと思います。一時的に労働時間が減っても、その分レベルアップして会社に貢献すればいいと思います。

雷光のぽのうさぎ さんのコメント...

余計なコメント、大変失礼いたしました。

実はさっそく上司に相談したのですが。。。
気持ちは理解するが「なるべくやめておけ」とのことでした。(はっきりダメとは言いません、あくまで自己責任という扱いです。)
クヲンツになるのでなければ込み入った知識は必要ないし、、夜に行われるグローバルの会議を私のスケジュールにいちいち合わせられない、という理由でした。

なので独学を続けたいのですが、やはり数学が厳しいです。筆者様はどのように数学を学習されましたか。どうも数学をやっていると論文を読まねばと焦り、論文を読むと数学でつまづきます。。。泣けてきます。

J.S.エコハ さんのコメント...

雷光のぼのうさぎさん、

それは残念ですね。クオンツにならなくても数理ファイナンスの知識は必要なのですが、そのあたりがなかなか理解されないですね。
私のICSの同期には外資系のバイサイドの人が何人かいましたが、セルサイドは時間の捻出が難しいかもしれませんね。
でも、外資系でキャリアアップを考えるのなら、なおさら自分のスキルを自分で上げていかないと、いつリストラされるかわからないですよ。確固たるスキルがあれば、転職も容易だと思います。
文系にとっては数学が壁になりますね。近いうちに文系のための数学の勉強法をブログにまとめたいと思います。

雷光のぽのうさぎ さんのコメント...

やはり私もそう思います。理論が分からなかったり、英語が全然話せなかったりでもここまで生き延びている人もいます。でも、これからはそうはいかないでしょうし、何より知的追求をしていかないと仕事が面白くありません。
私もできる限り頑張ってみようと思います。
数学の勉強法をアップされるのを楽しみにしています。