リーマンの2007年11月の決算時で自己資本225億ドル、総資産6911億ドル。レバレッジ比率約30倍。総資産はトレーディング用のロング・ポジションと担保付貸出が大半。後者はヘッジファンドに対するプライム・ブローカー業務による部分とレポからない、いずれもオーバーナイトが中心の短期の資産。現金は73億ドルで1%を占めるにすぎない。
負債側は、レポによるファンディングとショートポジションが60%を占め、長期負債はわずかに18%にしかすぎない。12%の買掛金はヘッジファンドからの現預金。
レポとリバース・レポが重要な割合を占めていた。
リーマンが社内で「レポ105」と呼ぶレポ取引による会計操作の目的はバランスシートを縮小し、ネットベースのレバレッジ倍率を小さく見せることだった。これは格付けを維持するためであった。格付け会社はグロスではなくネットベースで見るからである。
通常のレポ取引では102ドル相当の価値のある債券を相手に提供して100ドルの現金を調達し、2ドルの部分が超過担保に相当し、これが価格変動分に対するクッションになる。しかしこの場合には105ドル相当の債券を提供することによって、この取引はレポ取引ではなく売買取引扱いとなり、調達した現金で負債を返済することによって、バランスシートを縮小した。しかし資産の質は時間とともに流動性の劣る資産の塊になってしまった。彼らのファンディングはレポ取引が中心であり、有価証券を担保に資金を調達する。リーマンも最後はこのファンディングで行き詰った。
投資銀行はレバレッジの拡大によって、高いROEを達成してきた。このときの資金調達の主要な部分が、レポ取引とリバース・レポ取引の活用。バランスシート拡大のための資金調達手段であるレポは、短期のロールオーバーが中心。したがって資産サイドの大幅な下落により自己資本が毀損するような状態になると、株価が売られるだけでなく、レポの担保の掛け目も厳しくなる結果、現金の調達力が低下し、しかもレポの期間も1週間から、3日、1日というように短期化してくる。
リーマン破産に関するJENNER&BLOCKのチェアマンAnton R. Valukasによる2200頁のレポートはこのウェブサイトで見れる。
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