2010年12月20日月曜日

ヘッジファンドの運用評価尺度



シャープレシオとは
「リスクに見合ったリターンの度合い」を示す。無リスク資産に対する平均超過リターンを超過リターンの標準偏差で割ったもの。背景には当然CAPMの概念がある。つまり手元資産がゼロで無リスク金利で借り入れをしてリスク資産に投資した場合のリターンを考えている。ICSの本多先生が授業でインフォメーション・レシオと比較しながら、インフォメーション・レシオには背景となる理論がないのに対し、シャープ・レシオはそれを支える理論があるが、しばしば理解されないで使われているということを述べられていた。

シャープレシオ適用に対する問題定義
シャープレシオは簡単できわめて理にかなった尺度であるため、伝統的な資産運用やヘッジファンド運用の世界で広く使われている。しかし厳密にはシャープレシオが適用可能なのは「リターンの分布が正規分布であること」が用件。この欠点に対して様々な新しい評価尺度が提案されている。
●目標リターンを下回る部分のみに注目したリスク尺度LPMを用いた評価尺度
オメガ(1次)、ソルティノ・レシオ、アップサイド・ポテンシャル・レシオ(2次)、3次のカッパ。
●最悪(Drawdown)なリターンの状況に注目したリスク評価尺度
カルマー・レシオ(最悪)、スターリング・レシオ(平均)、ブルケ・レシオ(標準偏差)
●ある確率p%で発生するリターンの状況のなかで最悪なリターンを示すVaRに注目したリスク評価尺度
超過リターン対VaR、コンディショナル・シャープレシオ、修正シャープレシオ

Eling(2008)の実証結果によると、ヘッジファンドのリターンは、正規分布を仮定したシャープレシオを用いても、正規分布を仮定できないという考えのもとにその他の評価尺度を用いたとしても、結果として得られる各ヘッジファンドのパフォーマンス順位付けには大きな差が見られない。

一方、ロー(2002)はヘッジファンドのリターンは自己相関を持っている場合が多く、月次のリスクを単純に年率換算すると実際のリスクより小さな値になってしまうことを実証・指摘した。

う~ん、この本(高橋、浅岡2010)は今まで読んだヘッジファンドの中で最も良い。分析が深く、最新の論文もサーベイしてある。ついでにロー教授から直接、ただでもらった「HEDGEFUNDS」(2008)も読みたくなった。

ヘッジファンドに対する投資家の志向の変化
(1)流動性の重視、(2)透明性の向上、(3)レバレッジ比率の低下、(4)複雑なものから、より単純なのものへ、(5)報酬の低下

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして
シャープレシオって単純にデルタ取るストラテジーなら非常に有効ですが、例えばエクイティロングショートやCBアーブなどデルタ取らないストラテジーって、どのように標準偏差算出してるんでしょう?

J.S.エコハ さんのコメント...

シャープレシオが有効かどうかはわかりませんが、リターンの標準偏差を使うと思います。