2009年11月3日火曜日

Joni Mitchell ジョニ・ミッチェル


"A Tribute to Joni Mitchell"は希代の天才、Joni Mitchellに捧げられたアルバムで、ビョーク、エルビス・コステロ、アニー・レノックスなど錚々たるメンバーがJoniの歌をカバーしている。そのなかで、われらがPrinceは、名曲 "A case of you" を歌っている。今、それを聴きながら書いているわけだが、 オリジナルがダルシマーの弾き語り風なのに対して、Princeのものは完全にゴスペルそのもので、美しいファルセットで歌っており、PrinceのJoniに対する敬愛ぶりが伺える。

Joni Mitchellは最初のころはフォーク的で「サークル・ゲーム」や「ボス・サイズ・ナウ」などのヒット曲は多分、皆さんもJoniの曲とは知らずに一度は聴いたことがあるはずだが、途中からジャズの影響が強くなり最後にはジョニ的としか言いようのない独自の世界を確立してしまった。

全てのアルバムが傑作と言えるが、耳障りのいいヒットチャートをにぎわすような曲作りではないので好き嫌いは分かれるかもしれない。個人的には、Jaco PastoriusやPat Methenyなどの錚々たるメンバーを従えてやったライブの"SHADOWS AND LIGHT"が一番好きだ。ここでのJacoのプレイは衝撃的。最後には黒人アカペラ・グループでこれも私の好きなThe Persuasionsまで出てきて"Why do fools fall in love"と"Shadows and light"を歌う。

Princeの" A case of you"を聴きながら、あらためてこの曲は名曲だと思った。自分が失恋した男のことを歌った切ない曲である。

Just before our love got lost you said
"I am as constant as a northern star"
And I said "Constantly in the darkness
Where's that at?If you want me I'll be in the bar"

On the back of a cartoon coaster
In the blue TV screen light
I drew a map of Canada
Oh Canada
With your face sketched on it twice

Oh you're in my blood like holy wine
You taste so bitter and so sweet
Oh I could drink a case of you darling
Still I'd be on my feet
oh I would still be on my feet

Oh I am a lonely painter
I live in a box of paints
I'm frightened by the devil
And I'm drawn to those ones that ain't afraid

I remember that time you told me you said
"Love is touching souls"
Surely you touched mine
'Cause part of you pours out of me
In these lines from time to time

Oh, you're in my blood like holy wine
You taste so bitter and so sweet
Oh I could drink a case of you darling
And I would still be on my feet
I would still be on my feet

I met a woman
She had a mouth like yours
She knew your life
She knew your devils and your deeds
And she said "Go to him, stay with him if you can
But be prepared to bleed"
Oh but you are in my blood

You're my holy wine
You're so bitter, bitter and so sweet
Oh, I could drink a case of you darling
Still I'd be on my feet
I would still be on my feet


愛が終わる前あなたはこう言った
「僕の心は北極星のようにいつも同じところにある」
だからわたしは言ったの
「いつも暗闇の中にいるってこと? 
あなたが私を欲しいなら私はバーにいるわよ」

テレビのスクリーンの青い光のなかで
マンガのコースターの裏にカナダの地図を書いた
そう、カナダの地図
その上にあなたの顔を二度重ねて描いたの

ああ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン
とても苦くて、とても甘い
あなたなら、ひとケースだって飲める
それでも私はちゃんと立っていられるわ
きっとこの足で立っていられる

私はひとりぼっちの絵描き
絵の具箱の中で暮らしている
私はとても怖がりだから
恐れを知らない人に惹かれてしまう
あなたがこう言った時のこと、よく思い出すの
「愛とは魂にふれること」
そう、あなたはたしかに私の魂にふれた
だからあなたの一部がときどき歌になって
私の中からあふれ出す

ああ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン
とても苦くて、とても甘い
あなたなら、ひとケースだって飲める
それでも私はちゃんと立っていられるわ
きっとこの足で立っていられる

女のひとに会った
あなたによく似た口元をしていた
彼女はあなたの人生を知っていた
あなたの内側にいる悪魔も、
あなたの行いも知っていた
そして言ったの
「彼のところに行けばいい
できるものなら、一緒にいればいいわ
でも血を流すことは覚悟しておいてね」

ああ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン
とても苦くて、とても甘い
あなたなら、ひとケースだって飲める
それでも私はちゃんと立っていられるわ
きっとこの足で立っていられる

(Joni Mitchellの全曲の歌詞が公式サイトのjonimitchell.comに掲載されている。訳はネット上にどなたかが公開していたもの)

本人と会ったことはもちろんないが、おそらく芸術への衝動が強すぎて、生きることが非常に不器用なタイプの人ではないかと想像される。「芸のためなら男も泣かす」といった雰囲気がある。ドキュメンタリーDVDの「ジョニ・ミッチェル: ウーマン・オブ・ハート・アンド・マインド」をみていると別れた昔の男たちのグラハム・ナッシュ、ジェイムス・テイラー、ラリー・クラインなどがインタビューに応えているが、みなJoniへの好意的な思い出を述べているのがおもしろい。Joni本人は「作品を作るためには恋愛が必要だ」と語っている。

Joni Mitchellは、絵も天才的にうまくてアルバムのジャケットもほとんど自分で書いている。昔はそれほどでもなかったものがどんどん上手くなっていった。本人は曲作りの気分転換に絵を描くことが必要だといっている。CDの歌詞集にも彼女の絵が使われており、それも大きな魅力のひとつ。

写真は彼女が書いた絵を集めた画集の表紙。この絵は彼女のアルバム"Turbulent Indigo"のジャケットにも使われたもの。ゴッホのファンの人なら分かると思うが、ゴッホが自分で自分の耳を切ったときの自画像がモチーフになっている。

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