Tiroleは今年のノーベル経済学賞ですね。
Tiroleの『国際金融危機の経済学』、オアゾの丸善だと洋書が6840円で翻訳が2000円。
「IMF改革、国際的な最後の貸し手機能、および融資形態等のトピックについては、著名な経済学者の間で白熱したやりとりもあり、最近多く議論されてきている。議論すること自体は健全ではあるが、過度に敵対する立場をとるのはあまり建設的なこととは思えない」
「経済学者はいまだに基本的には資本移動の自由化を支持している。しかし危機の解釈に関しては意見が大きく分かれている。とくに危機に際して資本管理や国際金融制度のガバナンスをいかに行うかについては、意見が分かれている」
「このような危機は、本来望ましい資本移動の完全自由化にともなって起こる、望ましくはないが避けがたい副産物にすぎないのであろうか。世界は、試練が日常茶飯事に起こっている企業モデルに近づくべきか、それとも破綻はほとんど起こらない地方債モデルへと近づくべきだろうか(たとえば、対外直接投資やポートフォリオ投資の自由化と、短期資本移動の自由化前における金融仲介業を監督する強力な機関の設立)。」
「短期資本移動に対しては、暫定的あるいは永続的な規制を課すべきだろうか。これらを外国為替制度とどううまく折り合いをつければいいだろうか。危機は適切に対処されたのだろうか。そして、国際金融制度は改革されるべきなのだろうか」
「本書は、このテーマについて私がどれだけ理解しているか問い直したことをきっかけに執筆したものである。ここ数年の間に何度か、説得的で論理的な提案へと考えが揺れ動いたこともあれば、同じく雄弁ながら単純で一貫性のない議論にも同じくらい説得力があるように思えた」
「これはたんに私の思索が不十分であるからかもしれないが、同時に深く尊敬している経済学者たちが、事実認識に関しては幅広く合意に達しているのに、それを説明する理論については強く対立していることを知って不思議に思ったことも事実である。」
「本書では、国際金融機関の本来の任務を規定した原則に立ち戻り、市場の失敗の具体的な形を特定化し、危機の防止と国際金融制度設計についての指針を提示したい。他のアプローチや補完的なものを排除するものではない。いうまでもなく、ここにとりあげた特定の視点が、問題を明確化するうえで役立つことと信じている」