2010年6月22日火曜日

シェーンブッハー 『クレジット・デリバティブ』


 良い本だと思う。タイトルはデリバティブとなっているが、クレジット・リスク・モデル全体について 体系的にきれいにまとめられている。ダフィー&シングルトンが昔のペーパーを集めてまとめ直した雰囲気があるのに対して、こちらは本としてきちんと整理されている印象。
 いつものように、細部にはこだわらないで全体をサラッと眺めたあと、詳しく読み始める。3章が『クレジット・スプレッドと債券価格に基づく評価』で”リスク・ニュートラル確率”、”インプライ生存確率”、”条件付き生存確率”、”インプライド・ハザード・レート”などの重要な概念が定義されて、”回収率のモデル化”、”基礎単位による評価”などが説明される。続く4章が『数学の準備』。「点過程やジャンプ過程の確率解析の議論は形式主義的なので、初心者にはとっつきにくいものかもしれない」というとおり、とっつきにくい。とっつきにくさの一因は英語の用語に対する日本語訳が本によって微妙に異なるために混乱するせいだと思う。数学、特に確率論を専門にやってきた人なら、数式ですっきり理解できるんだろうけど。日本語の意味が分かりにくいときは英語で読んだほうが意味を掴みやすいときがある。

default indicator function デフォルト特性関数
counting process 計数過程
predictable compensator 可予測な補正過程
marked point process マーク付き点過程

4.4の強度あたりから、日本語だけではイメージできなくなってくる。”補正過程は計数過程における局所ジャンプ確率の移動強度になっている。”、”ジャンプ強度”、”ジャンプ測度”、”補正測度”、”ランダム測度”。

”いくつかの正則条件のもとで、到達強度は次の時点の(条件付き)ハザード・レートと一致するから、強度は停止時刻の局所的到達率である。同時に、強度はデフォルト特性関数の補正過程を定義しており、モデルの変数の(確率だけではなく)変動を表現する重要な道具である。それゆえに、デフォルト時刻の強度は多くのデフォルト・リスク・モデルの核になっている。”
”基本的に、計数過程には2つのあい異なる捉え方がある。1つは確率過程と(強度を含む)可予測補正過程の見地からの捉え方であり、もう1つは(ハザード・レートを含む)次のジャンプ発生時刻の分布を分析する手法という捉え方である。”
”本書が取り扱う範囲では強度と条件付局所ハザード・レートは常に一致する。”

シェーンブッハーだけだとモヤモヤなので、中川先生のFRMの授業のレジュメを見て理解する。このクラスの資料は大変素晴らしい。今読んでやっとその価値が理解できる(笑)。

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