2010年2月27日土曜日

世に棲む日日 全4巻 読了

高杉晋作、凄すぎ。

現代の日本はこの時期に形成されているので、彼がいなかったら全く違ったものになっていた可能性もある。歴史に与えた影響力という点では、坂本龍馬を上回っているのではないか。

2巻のなかばで吉田松陰は死んでしまうので、あとは高杉晋作の活躍がメインになる。

圧倒的な戦力(科学技術)で開国を迫る欧米。まともに戦っても勝ち目はない。そういうときにどうすべきか。弱腰の幕府は欧米の言いなり。高杉のとった戦略は、『幕府の統治者としての正当性を否定し、天皇を象徴的な日本の統治者として、長州は独立し欧米と戦う(尊皇攘夷)。長州は敗北して焦土となるだろうが、そのなかから本当の新しい日本が生まれる』というものだった。しかも、途中から攘夷の意識は後退して、欧米とはうまく付き合って、幕府を倒すという風に方向を変えていく。ただの田舎の弱小藩だった長州藩が、狂気の藩となって歴史を動かし始める。夥しい血が流れる。

実際に、長州はイギリスと開戦して、あっさりやられてしまう。薩摩と会津の陰謀で反天皇のレッテルを貼られるし、幕府も長州に攻めてくる。そこでの高杉の活躍は信じがたい。超人的である。

長州内でも佐幕派と改革派の間の勢力争いは凄まじいが、不利になったときの高杉の逃げ方も天才的。日本で始めて、農民や商人の混成部隊である奇兵隊を組織するが、権力に対する執着がない。ある程度、仕事が終わると、あとは芸者遊びに明け暮れる。なんというやつだ。こんなやつがいたのか。

興味深いのは、高杉が上海へ洋行したとき、『西洋文明の正体は道具であり、そのモトは数学だ』と認識して、上海で数学書を買い求めている点である。世界を見ることができた高杉と見ることができないまま死んだ吉田。世界を見たことは、後の高杉の行動に大きく影響してくる。

この本を読めば、明治維新は、実は革命以外の何物でもないことが分かる。

2010年2月21日日曜日

三浦良造先生、最終講義

2月20日(土)の三浦先生の最終講義を聴くために竹橋からICSに歩いていると、少し前を三浦先生が歩いておられた。感慨深いせいか、いつもよりゆっくりと歩いていらっしゃる気がした。裏口で追いつくとそのままエレベーターまでご一緒させていただいた。

写真は、始まる数分前だが、最終的には予想通り席が足りなくなり、椅子が追加されていた。

タイトルは『数理統計学と”金融工学”の中で』。内容は、三浦先生が研究されてきたことをほぼ時系列に概観するというものだったが、授業中とまったく同じ喋り方なので、まるで授業を聞いているようだった。

①適応型順位推定の話、②変換モデルの話、③”金融工学”、④大学院作りと学会活動、⑤今後の発展への期待。

途中、Edokko optionの話も出てきた。また、コンピューターが普及する前と後で、統計の世界も大きく変わったことが分かった。

三浦先生、お疲れ様でした。私もあんな風に歳をとれたらいいな。

2010年2月19日金曜日

口述試験の日も雪だった

     
左はICSが入っている学術総合センターの模型、中央は4階まで吹き抜けになっているロビー、右は6階の第1教室。
俺の口述試験は3日目の最初。早めに8Cの部屋に行くと部屋の中央に2メートルくらい離れて机が向かい合わせで置いてあり、先生の椅子2つと生徒の椅子1つが置かれている。まるで取り調べを受けるかのよう。
座って待っているとにこやかに大橋先生がいらっしゃった。始まる前に俺の仕事のことなどを聞いていただき、和やかな雰囲気に。それから伊藤先生がいらっしゃる。
 ( ̄◇ ̄;) アレッ・・・。中村先生ではないのか・・・。ということで、完全に読みは外れた。
大橋先生、伊藤先生ということで終始フレンドリーに進む。Epstein Zin効用を使う意味、VARの定数項に状態変数の平均を使う意味、テイラー展開による近似の精度、為替リスクの解釈など、ほぼ想定内の質問が10個前後続く。必死に覚えた式展開は一切聞かれなかった。まあ、いいけど。基本的には、自分が書いた内容をちゃんと理解できているかどうかチェックするというのが目的のような感触。
ただ、最後に大橋先生が「端的にいってしまうとCampbell et al.の手法そのままで、データを変えただけといってもいいですか」と聞かれて、ハイと答えた。そうです。私の論文にはオリジナリティが欠けています。残念だけど事実です。これが今の私の精一杯です。
かなり時間があまりそうなペースで、最後のあたりは、伊藤先生が無理無理、質問をひねり出すというという感じ。大橋先生は、論文を読んで質問をノートに準備してきた模様だったが、伊藤先生はパラパラと眺めただけという感じだった。
ということで、やや拍子抜けするほどあっさりと終わってしまった。でも、これは担当教官によるみたいだ。中村先生、中川先生、三浦先生に当たった人は相当突っ込まれたらしい。本多先生の話は聞かなかった。担当教官でこれだけ違ってくると、全体としての評価の整合性はどうなるのかという点は気になるが、まあ、もう終わってしまったことで、もう、どうでもいい。
そうだ。本当に全ては終わったのだ。終わった!終わった!終わった! \(^◇^)/
我々は最後まで戦い抜いて、勝利したのだ・・・(たぶん)。
しばらくは、だらだらとのんびりしたい。
『世に棲む日日』の続きを読もう。これ、おもしろいです。お薦めです。
ブログのタイトルもかえようかな。『ゴルフと金融工学の勉強』にしようかな。

2010年2月16日火曜日

口述試験 始まる

今日から口述試験が始まっている。おれは三日目の18日(木)だ。

先に終わった同期からの貴重な情報によると、先生は一人ごとに変わるらしい。計量系、財務系も関係ないようだ。誰になってもおかしくない。まあ、結局は誰が来てもいいように準備するしかないわけだが。7個くらい質問されるらしい。

そうはいっても、多分おれの担当はメインが中村先生だろう。もうひとりはおそらく中川先生か大橋先生。

修論は読み返すたびに単純なタイポやら式の番号の振り間違いを発見して、アッ- (°∇°;) となってしまう。とほほ・・・。

2010年2月15日月曜日

吉田松陰 世に棲む日日

今回の大河『龍馬伝』は面白い。映像の緊張感からして『天地人』と全く別次元。福山もなかなかがんばっている。

本屋に行くと龍馬関連の本がずらり。でも、俺はひねくれているので龍馬関連は買わないで、かわりに司馬の『世に棲む日日』全4巻を買った。先々週の龍馬伝で生瀬演じる吉田松陰が出てきて黒船に乗り込もうとするのを見て、一度吉田松陰をきちんと把握しておきたいと思った。

世界史を取った関係でこのあたりの日本史は弱いのよね。俺は山口県出身というそれだけの理由で吉田松陰に前から興味があった。明治維新前後は長州が活躍するのでなんとなくうれしい。松下村塾跡は修学旅行で行ったし、そのとき吉田松陰の小さい銅像を買って今でも田舎の部屋に飾ってある。山口県人は吉田松陰が好きである。でも、俺は彼が何をしたかよく知らない。

『世に棲む日日』はいきなり「長州の人間のことを書きたいと思う。」と始まる。おおっ、期待が高まる。最初は幼少時代の松蔭にたいする凄まじい教育の話が書いてある。「松蔭というこの若者は長州藩によって純粋培養された」そうだ。ということで、当面の気分転換は吉田松陰。

2010年2月14日日曜日

タクシードライバー、 ディアハンター

口述試験は多分、中村・中川コンビなので、相当細かいところまで突っ込まれる可能性を考えて準備する。自分の修論を読み返して、大量の細かい間違いを発見したが、致命的なものは今のところない模様。

Campbell et al.の手法を一言でいうと、離散時間のEuler方程式と予算制約を対数線形近似することで最適な多期間ポートフォリオと最適消費を求めるもの。

彼らは対数消費・富の比率が状態変数に関して2次形式と予想して、それを証明しているのだが、なんで予想できるのかが、よく分かってなかったがやっと分かった。ポートフォリオの期待リターンは状態変数に関して2次形式。なぜならリターンの増加は直接ポートフォリオのリターンを増加させ、同時にアロケーションも増加させるから。ここで、対数消費・富の比率はポートフォリオの期待リターンと線形関係なので、結局対数消費・富の比率は状態変数に関して2次形式となる。

オレは一日中勉強する集中力を持ち合わせていないので、休憩時間に映画で気分転換。

タクシードライバー(1976)は音楽や人々のファッションが70年代だが、内容や映像は今見ても古くない。デニーロ演じるトラヴィスは戦争のせいか、もともとなのか精神的に病んでいる。強い疎外感を抱えている。選挙事務所の女性をデートに誘うのだが、最初のデートにポルノ映画。ここがシナリオとして弱い。それまでは普通の会話をしてきているのに、ポルノ映画に誘うことがおかしいと分からないという設定は無理がある。結局、彼女が会ってくれなくなることから逆恨みして大統領候補暗殺を企てるのだが、ここも飛躍がある。弱い。モヒカンのデニーロは怪しすぎる。怪しすぎてSPに追い回されて失敗する。その勢いで少女買収のヒモ(ロン毛のハーヴェイ・カイテルも怪しすぎる)達を殺す。メディアからはヒーローとして扱われて、昔の彼女の見方も変わってトラヴィスが精神的にやや救われる。
血まみれのデニーロが指鉄砲で自分の頭を打つときの狂気の表情とその後の俯瞰シーンの異化効果が印象的。あの指鉄砲を見て、ディアハンターのロシアンルーレットを思いついたのかもと勘ぐってしまう(多分違うが)。デニーロ33歳の名演技。

ディアハンター(1978)
久しぶりに見たが、やはり名作の印象。アカデミー賞。結婚式から葬式まで、人間関係を丁寧に描いている。いくつか間違って記憶していた。みんなで名曲『君の瞳に恋してる』を歌うのは結婚式ではなくてその前の日に無人の酒場でだった。マイクとニックは兄弟ではなかった。ロシア系アメリカ人という認識も無かった。それで教会の上がロシアっぽくなっていたわけだ。結婚式の後もロシア民謡でみんな踊りまくるし。デニーロの顔がイタリアなのでイタリア系かと思っていた。

唯一弱いのは、ニックがロシアンルーレットをやる動機付け。メリル・ストリープのような恋人が待っているのだから、怪我をしたらとっととアメリカに帰りたがるのが普通だと思う。あとは、この映画のみならず、ブラックフォーク・ダウンにいたるまでアメリカ映画はアメリカ人の目からでしか戦争を描けないこと。そういう意味では、イーストウッドの『硫黄島からの手紙』は貴重な例外。イーストウッドは役者としても好きだったが、まさか監督としてここまで大化けするとは思いもしなかった。『ミリオンダラー・ベイビー』も素晴らしかったし。『インビクタス』も是非、見たい。と、なぜか最後はデニーロとは関係ない話に。

2010年2月10日水曜日

統計科学の数理 期末試験

カリキュラム評価を忘れないで共同研修室にメールで提出しておく。これを出していないと 《単位がみとめられない》 という恐ろしい事態になる。

日曜日の強風で花粉症を発病。風邪をひいていないのに、風邪の症状だけ出るというのはなんだか損をした気分。頭がずきずきして統計科学の数理の試験勉強がほとんど出来なかった。

試験は予想通りで宿題でやったことがほぼそのまま出ていた。しかも持ち込み可なので助かった。2問だけ、ややひねってあった。この科目は、ちゃんと授業に出ていて試験も受ければ、 《落としようがない》 科目だった。修論をやりながらの身としてはありがたかった。これで通常の試験はすべて終わった。終わった。終わった。

試験の難易度の設定が《簡単》にしてあるというだけで、科目の中身は結構高度。単純な回帰分析でもこれだけ奥深い。統計は奥深い。

しかし先生、試験でタイポはやめてくれ。もしかしたらオレが間違っているのかもしれないと、しばらく考え込んでしまった。みんなも気づいていたのなら(みんなのために)早めに指摘しようね。

2010年2月7日日曜日

桃 もうひとつのツ、イ、ラ、ク

統計科学の数理の試験勉強の合間に、姫野カオルコの『桃 もうひとつのツ、イ、ラ、ク』を読む。姫野の代表作の長編『ツ、イ、ラ、ク』と対になった中短編集。『ツ、イ、ラ、ク』の中の出来事や登場人物を別の視点から描くことで『ツ、イ、ラ、ク』の小説の世界をより強固なものにすることに成功している。しかもそれぞれ作品ごとに文体を変えて書いている。ということで姫野は僕の中ではジョイス、筒井康隆の系列に連なる。

姫野に関しては、一番最初に最高傑作の『受難』を読んでしまったために、ついつい『受難』のような作品を期待してしまい、次に読んだ『ツ、イ、ラ、ク』の評価が厳しくなってしまったかもしれない。『桃』を読んだことで、『ツ、イ、ラ、ク』の良さもまた分かるということもある。

『桃』のなかでは「世帯主がタバコを減らそうと考えた夜」が一番衝撃的(特に男にとっては)。女の作家でよくここまで書けるな。他の5編もそれぞれ衝撃的。ただし、『ツ、イ、ラ、ク』の出来事が重要な小道具になっているので、『桃』を読む前に『ツ、イ、ラ、ク』を読むべき。

『受難』『ツ、イ、ラ、ク』『桃』と比べると『コルセット』は平凡な出来。

修士論文の口述試験

2月5日の金曜日は久しぶりにICSのM2の飲み会。修論を提出したことで、皆さん安堵の表情。

自主的に幹事をやってきたKさん、ご苦労様でした。ICS在学中にリーマンショックを受けて会社が事業から撤退するという困難を乗り越え、今度は香港でヘッジファンドをやられるそうで。ご活躍をお祈りしています。

直前に口述試験のスケジュールが発表された。担当教官を消去法で除いていく(本多、大橋、三浦)と、どうやらオレは中村・中川の可能性が高い。これで覚悟はできた。論文で使った式展開を何も見ないで導出できるように準備して最後の戦いに備えよう。

コーチング

土曜日を丸一日つぶして親会社の「マネジメント研修」を受けてきた。

「マネージャーの役割」、「部下を知るコミュニケーション」、「チーム力を高めるリーダーシップ」について少人数のグループに分かれて議論したり、ロールプレイイングしたり。

丸一日費やして、おれのマネージャーとしての能力は向上したのか?
う~ん、なんだかなぁ。いろいろやった割には何も変わっていないな。

こういうのって、MBAのケーススタディをやった後に感じるものと同じ胡散臭さを感じるのだよなぁ。結局、『正解というものはないので、皆さんで考えてください』ということになってしまうのよなぁ。

内容が系統立っていない。準備された資料も”セルフアセスメント”という21項目のチェック表、”部下のデータベースを作るための質問”40問、チームビジョンを明確にするための質問例10問の3つだけでA4で6枚程度。この程度で、この研修にはいくら金がかかるんだろうな。

最後に参考文献ということでこの会社の社員が書いたコーチング関係の本がずらっと出ているが、タイトルが微妙に違うだけで中身は殆ど一緒なものを焼きなおして出しているんだろうなということが、タイトルを見ただけで想像できる。丸一日かけてこんなことをするより、このなかのどれか一冊(どうせ中身は同じなので)を配ったほうが効率的なのでは。

今日のコーチ(41歳)が元コンサルと最初に聞いてしまったのも影響したかも。コンサルと聞いただけで胡散臭さを感じてしまうのよね。社会におけるコンサル会社の存在意義をまったく感じられない。まあ、オレが偏っているんだとは思うが。

前に古本屋で買ったまま、ツン読になっている『ザ・コンサルティングファーム 企業との危険な関係(Dangerous Company)』でも読んでみるか。

2010年2月2日火曜日

統計科学の数理 第13回 離散データの統計モデル

生存分析と信用リスク測定 part2

観測打ち切りcensoring。比例ハザードモデルの尤度関数。ベースラインにパラメトリックモデルを使う場合は最尤推定法でモデルをあてはめることができる。Cox回帰分析、部分尤度関数、リスク変数以外のデータを別の形に書き換える。Rの関数Coxph。ノンパラメトリック・ベースラインの推定。累積ベースライン・ハザード関数を階段関数でモデル化する。リスク変数が時間依存する場合。

離散データの統計モデル
多幸分布の検定、分割表の検定、Logitモデル、Deviance:=Logitモデルにおいて、線形回帰モデルでの残差平方和に対応するもの。

先生は授業の回数を間違えていたのだろうか。最後に、PC実習をやるということでPCルームで授業をやるもPCは使わず。Rのサンプルを後でアップするとのこと。何だか。

来週は試験。範囲は回帰分析のみ。中間よりもやさしくする?

何はともあれ、ゼミももうないのでICSでの通常授業はすべて終わった。終わった。終わった。


口頭試験に備えて修論を読み返すと、タイポを次々と発見する。なんで提出前にあれほど見直しても見つからなかったんだろう。不思議だ。プレ発表会のときに中村先生がわざわざ移動されてきたので、一人は中村先生だと考えている。もう一人は大橋先生か?とりあえずCampbell et al.の原論文の完全理解を目指す。

2010年2月1日月曜日

修論提出の日は雪だった















雨のなか、ICSに行き、修論提出の手続きを無事に終了。正直、ほっとした。途中、何人かの同期とすれちがう。皆さん安堵の表情。 家に着くころには雨は雪になっていた。

統計科学の数理が間違って今日行われるようにイントラネットに登録されていたり、急に仕事が忙しくなったりと変な一日だった。本当は昼休みに手続きをしにいくつもりだったのだ。20:00時までに提出しないといけないというのも精神衛生上良くなかった。手続きだけ先にしても良いというのは気がつかなかった。先に言っといてよね、という感じ。知っていれば金曜日にやっておいたのだが。

なにはともあれ、無事に修論を提出し、自分用のICSロゴ入りのハードカバーも手に入れた。このロゴが欲しかったのよね。ミーハーといわれるなかれ。

中をめくると、あの苦しかった日々がよみがえってくる。などと感慨にふけっていると師匠からメール。

「なお、口頭試験は「試験」です。提出して疲れているかもしれませんが、試験ですので十分に準備してください。どのような質問がでてくるかはその時になってみないとわかりませんが、基本的に最終提出物に書いてあることについて尋ねられますので、その質問に対して「ディフェンス」することが求められます。特に新しいことをする必要はありませんが、自分の原稿を他人のものだと思ってよく読みなおして、試験に臨んでください。最初の5分くらいで、内容についての大まかな説明を求められる可能性が高いので、その部分についてはよく準備をしておいてください。」

冷たいようで実はやさしい師匠であった。