高杉晋作、凄すぎ。
現代の日本はこの時期に形成されているので、彼がいなかったら全く違ったものになっていた可能性もある。歴史に与えた影響力という点では、坂本龍馬を上回っているのではないか。
2巻のなかばで吉田松陰は死んでしまうので、あとは高杉晋作の活躍がメインになる。
圧倒的な戦力(科学技術)で開国を迫る欧米。まともに戦っても勝ち目はない。そういうときにどうすべきか。弱腰の幕府は欧米の言いなり。高杉のとった戦略は、『幕府の統治者としての正当性を否定し、天皇を象徴的な日本の統治者として、長州は独立し欧米と戦う(尊皇攘夷)。長州は敗北して焦土となるだろうが、そのなかから本当の新しい日本が生まれる』というものだった。しかも、途中から攘夷の意識は後退して、欧米とはうまく付き合って、幕府を倒すという風に方向を変えていく。ただの田舎の弱小藩だった長州藩が、狂気の藩となって歴史を動かし始める。夥しい血が流れる。
実際に、長州はイギリスと開戦して、あっさりやられてしまう。薩摩と会津の陰謀で反天皇のレッテルを貼られるし、幕府も長州に攻めてくる。そこでの高杉の活躍は信じがたい。超人的である。
長州内でも佐幕派と改革派の間の勢力争いは凄まじいが、不利になったときの高杉の逃げ方も天才的。日本で始めて、農民や商人の混成部隊である奇兵隊を組織するが、権力に対する執着がない。ある程度、仕事が終わると、あとは芸者遊びに明け暮れる。なんというやつだ。こんなやつがいたのか。
興味深いのは、高杉が上海へ洋行したとき、『西洋文明の正体は道具であり、そのモトは数学だ』と認識して、上海で数学書を買い求めている点である。世界を見ることができた高杉と見ることができないまま死んだ吉田。世界を見たことは、後の高杉の行動に大きく影響してくる。
この本を読めば、明治維新は、実は革命以外の何物でもないことが分かる。
2010年2月27日土曜日
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