2010年3月7日日曜日

信用リスク評価の数理モデル

信用リスク関連の洋書を借りてきてパラパラと目を通す。1冊がそれぞれ高いのでどれを買うか迷っているが、既に持っている木島、小守林の『信用リスク評価の数理モデル』で主なモデルはカバーされているようだ。

「金融自由化の進展に伴い、従来のようにデフォルトするかしないかを判定するのではなく、デフォルト確率を正確に予測し、信用リスクに見合うリターンを確保するという考え方が重要になって来ている。また、デフォルトの可能性のある債券の評価やクレジット・デリバティブの価格付けでは、デフォルト確率をいかに予測し、それをどのようにモデルの中に反映させていくかが重要なテーマである。

 欧米ではこのような信用リスクに関する研究が1980年代後半から盛んになり、現在でも日々新たな研究成果が生まれている。わが国でも、バブル崩壊による信用リスク顕在化という厳しい現実の下、欧米に遅れること10年を経てようやく多くの金融機関が信用リスク評価と管理のための技術獲得に取り掛かったところである。

 将来のデフォルト時点を現時点で完全に予測できることはできないので、この不確実性を表現する道具として確率統計および確率過程のフレームワークを利用する。このため、デフォルト時点の確率分布の考え方を最初に整理しておいたほうがよい。

 経済学と数理工学との学際領域である金融工学という分野で、わが国が欧米のはるか後塵を拝しているということは疑いのない事実であり、これはひとえに金融工学の理論を理解し、それを新商品開発やリスク管理に結び付けることのできる人材の絶対的不足に原因がある。」

7章が市場性資産の信用リスク評価について書かれている。

「市場性資産の信用リスクを国債とのスプレッドでとらえる場合には、他の金融資産管理との整合性をとるために、デフォルト時点と回収率を組み込んだ社債の価格付けモデルが必要となる。この章では、デフォルトのある割引債(割引社債)の評価モデルをリスク中立化法のフレームワークで説明する。利付き社債は割引社債のポートフォリオとして価格付けされる」

7章の主な参考文献をDLしておく。多くの論文をDefaultRisk.comでDLすることができて、ありがたい。

Black and Cox (1976) "Valuing corporate securities: Some effects on bond indenture provisions"
Black and Scholes (1973) "The pricing of options and corporate liabilities"
Duffie and Singleton (1997) "An econometric model of the term structure of interest rate swap yields"
Duffie and Singleton (1998) "Simulating correlated defaults"
Duffie and Singleton (1999) "Modeling term structures of defaultable bonds"
Hull and White (1990) "Pricing interest-rate-derivative securities"
Jarrow, Land and Turnbull (1997) "A Markov model for the term structure of credit risk spread"
Jarrow and Turnbull (1995) "Pricing derivatives on financial securities subject to credit risk"
Longstaff and Schwartz (1995) "A simple approach to valuing risky fixed and floating rate debt"
Merton (1974) "On the pricing of corporate debt: The risk structure of interest rates"

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